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【夜明けのビート】明治安田生命J2第31節 ベガルタ仙台vs大宮アルディージャ

 さて、今回は大宮アルディージャ戦を振り返ります。

↓前節のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

↓前回対戦のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

 

スタメン

 ベガルタ仙台は、前節・ザスパクサツ群馬戦で0-2の敗戦。前半こそ内容の向上があったものの、後半に2試合連続の退場者を出し、数的不利の状況で失点。なす術なく好調の群馬に屈した。これで11試合未勝利で降格圏と3ポイント差となった。

 今節の相手は最下位に沈む大宮アルディージャ。夏の補強で即戦力となる選手を獲得して、システムも3バックに変更し、ここまで5試合負けなし。そんな大宮との直接対決を制して、巻き返しを図りたい一戦だ。

 仙台は、前節退場した真瀬と累積警告でキム・テヒョンが出場停止。代わりに右サイドバックには蜂須賀、センターバックには第14節水戸ホーリーホック戦以来となるスタメンとなった福森が起用された。また2トップの一角には郷家が名を連ねている。ベンチには、出場停止明けの菅田、加藤、氣田がメンバー入りを果たした。

 大宮アルディージャは、前節・ファジアーノ岡山戦で1-1のドロー。ブラウブリッツ秋田戦同様に終了間際のゴールで勝点1を獲得した。前述した通りに夏の補強と守備力の強化で勝点を拾えるようになっている。仙台のヘッドコーチを辞任した渋谷コーチの就任も守備の強化に大きな貢献をしているようだ。

 ただ、最下位であることは変わらず、今節は下位に沈んでいる仙台が相手だけにアウェイながらも是が非でも勝点3をもぎ取りたい一戦となった。

 大宮は、右シャドーの位置にアンジェロッティを起用した。それ以外は変更なし。ベンチも中野が入った以外は変更がなかった。

 

前半

(1)左サイド中心のアタック

 この試合は、大宮が5-4-1での撤退守備を選んだので、仙台としては容易にボールを保持できる展開となった。

 林から始まるプレーは基本的にボールを繋いでいき、サイドバックセンターバックへ横パスすることで、大宮の簡易的なプレッシングを剥がしてボールを保持する局面へと移行させていった。

 この試合の仙台は、前節と打って変わって左サイドからアタックしていくことが多かった。大宮の右シャドーがアンジェロッティのため、彼の守備タスクが明確ではなかったことや、仙台の本来の狙いの部分が合致した影響があるのかもしれない。

 仙台の狙いはサイドから崩してクロスを上げることだが、クロスを上げるためのパターンは主に2つ。1つは内田から齋藤学への外外循環で攻めていくこと。前述した通り、アンジェロッティの守備タスクが曖昧なため、フリーでボールを持つことができた内田が対面の飯田を引き出して、齋藤学へパスを出し、カイケを釣り出したり、内田自身がオーバーラップしてクロスを上げるといった展開を作っていた。

 もう1つは、中山が背後へのランニングで抜け出してボールを引き出し、サイド奥で起点を作ってクロスまで持っていくことである。ここでキーマンとなったのが、左インサイドハーフで起用された郷家。郷家はカイケの守備範囲にいることで、カイケを誘き出し、新里との距離を空けることで中山のランニングするスペースを生み出した。ボールには触れないプレーだが、ここら辺も仕込んでいた部分だと思う。

 またそれ以外にも、エヴェルトンからの大きなサイドチェンジを使ったりするのなど、この試合は左サイドからの攻撃が中心だった。加えて齋藤学のコンディションも前節よりも向上したことで、より攻撃に迫力を増したのも大宮に脅威を与えるものとなった。

 29分には内田のクロスに松崎が合わせ、32分には齋藤学のクロスに郷家が合わせる決定的なチャンスを作った。

 

(2)11人のまとまった守備

 続いてボール非保持を見ていくと、仙台も大宮同様に構えて守備をする時間が長かった。

 しかし、前から行けるときは両サイドハーフが3バックへプレッシングのを合図に人を捕まえに行く。

 仙台は中山と両サイドハーフが3バックへプレッシングに行き、郷家がダブルボランチを監視する。ボールサイドのボランチはシャドーへ睨みを利かせながら、スペースを埋める。サイドバックウイングバックを捕まえて、サイドでボールを奪うイメージだ。

 しかし、大宮もダブルボランチの技術が高く、また原崎監督のサッカーへの理解度も高いため、彼らがビルドアップの出口となって、仙台のプレッシングを回避するシーンが多かった。

 大宮のボール保持は原崎監督のエッセンスが浸透しており、ボランチの平行サポートやシャドーがサイドへ流れてセンターバックを釣り出し、空いたスペースへ斜めに楔のパスを入れるなど随所に昨年の仙台のような攻撃があった。

 また前線3人は自由に動くことが許され、1トップのシュヴィルツォクもサイドへ流れてボールを受けるシーンもあった。

 

 仙台は大宮に押し込まれ自陣に引いた際には、ボールサイドのサイドハーフウイングバックへ付いていくことを許容し、その代わりサイドバックがシャドーをケアすることを行って、しっかり人を捕まえる意識を持って守備をしていた印象だ。

 また肝となる大宮のダブルボランチには2トップがプレスバックをして対応する。中山や郷家が自陣ペナルティエリアまで下がってスペースをカバーするシーンが何回かあった。

 そのような集中した守備をし、クロスに対してこの日久々の出場となった福森を中心にしっかり弾き返すことで危険なシーンを作らせなかった。セットプレー以外ではオープンにならない限り決定的なシーンを作られることはなかった。

 

 前半は、両者ともに先制点を奪いたいというより失点をしたくないというマインドが強いなかで戦っていて、それが拮抗した展開を生んでいた。スコアレスで折り返す。

 

後半

(1)大宮守備陣の微調整と焦れない仙台

 両者ともに後半に向けて大きな修正はなかったものの、大宮は前半の反省を踏まえて右サイドの守備を微調整する。

 前半は郷家を見ることが多かったカイケだが、中山の背後へのランニングを警戒してか、新里との距離を意識してあまり出てこないようになる。それに加えて飯田も右サイドをしっかり埋めることを優先するようになる。

 この守備になったことで、逆に仙台は郷家が中盤で浮くようになり、そこへボールを入れることでチャンスを作り出そうとしていた。この辺の駆け引きは非常に見応えがあった。

 

(2)カウンター志向を強める大宮

 大宮の狙いを考えると、まずは仙台のボール保持に対して自分たちの目の前でプレーさせ、しっかり弾き返して奪ったところで手数を掛けずにカウンターへ出て行くというプランを考えていたはずだ。

 60分には前線3人を一気に交代し、中野、泉澤、室井という機動力のある3人を前線に配置する。

 ここから大宮はボールを保持することよりも、手薄になった仙台の守備に対して機動力のある3人を中心としたカウンターで仕留める戦い方へと変更した。

 

 逆に仙台は、そのような大宮の戦い方に乗っかってオープンな展開にするのではなく、焦れずにボールを保持してサイドから攻めていこうとブレずにやり続ける。

 飲水タイムを挟んだ70分には、仙台も前線3人を入れ替えて、菅原を頂点に氣田と加藤を両サイドへ配置した。

 齋藤学と松崎は大外に張り出すことが多かったが、氣田と加藤はハーフスペースへポジションを取り、サイドバックを大外に配置することで攻撃に厚みを持たせようとする。73分には長澤のロングフィードに氣田が反応するも惜しくもゴール左へと逸れた。

 

 仙台が攻撃に人数を増やしたことで、徐々に大宮もプラン通りの展開になっていく。サイドバックの背後に前線3人が抜け出してカウンターを発動させていく。いくつかチャンスを決めきれていれば描いた展開を完成させることができた。

 しかし、仙台もこの日は守備陣の奮闘に加えて、中盤の帰陣も早く、カウンターを必死に食い止めようとスプリントして戻るシーンが数多くあった。郷家やエヴェルトンがプロフェッショナルファウルでカードをもらったのも、その証拠と言えよう。それだけ仙台の選手たちからこの試合に掛ける想いが伝わった。

 

(3)ラスト10分の攻防と待っていた最高のご褒美

 仙台は79分に長澤から鎌田にスイッチする。一方の大宮は飯田から岡庭に右サイドを代えた。

 ラスト10分は、お互いが是が非でも勝点3を欲しいなかで痺れる展開となった。仙台はブレずにボール保持から好機を見出そうとし、大宮はカウンターから一発を仕留めようとする。

 ただ、分水嶺となったのは先ほどの鎌田の投入にあった。大宮は最終盤になると足が止まり、次第に中盤が間延びし始める。一方の仙台はフレッシュな鎌田がおり、鎌田がボールをキープすることで全体を押し上げることができたし、エヴェルトンも前へ飛び出していくようになり、アディショナルタイムは仙台が攻勢に出ることができた。

 

 そしてラストプレーとなった90+5分に均衡が破れる。

 鎌田の左コーナーキックをニアでエヴェルトンが合わせて、仙台が土壇場で先制した。この試合、なかなかニアにボールが入らないなかで鎌田の見事なボールにエヴェルトンが合わせることができた。

 

 そして試合はそのまま終了。非常に渋く拮抗した試合は、最後の最後にエヴェルトンの決勝ゴールで仙台が実に12試合ぶりの勝点3をもぎ取った。

 

最後に・・・

 12試合ぶりの勝利は、実にユアテックスタジアム仙台らしい劇的な幕切れとなった。

 ただ、それはミラクルでもなんでもなくて、チーム全体で試合開始から高い守備強度を保ってハードワークできたことと、焦れずにボールを動かしながら何度も大宮の守備陣にトライした結果だと思う。

 そしてこの試合、中盤の底で誰よりもファイトしていたエヴェルトンのところにボールが来たのも、ちゃんとサッカーの神様が見てくれていたんだなと感じた。

 

 センターバックで起用された福森も久々の出場とは思えない素晴らしいパフォーマンスだったし、テレビ画面にアップで映る表情は非常に引き締まっていた表情から気合いと覚悟を感じた。

 長澤と齋藤学の影響も大きく、ピッチ内でのコミュニケーションも増え、ベンチに退いても戦う姿勢は間違いなくこのチームを生き返らせてくれた。

 

 まずは長いトンネルを抜け出したことを素直に喜びたい。そしてこの流れをよりよくするために、今後もトレーニングから高い強度でいい準備をして欲しい。

 次節は、アウェイで大分トリニータとの対戦。大分の質の高いボール保持に我慢強く対応しながら、板に付いてきたサイド攻撃へと繋げていきたい。次節も今節のようにハードワークして、泥臭く戦う姿勢に期待したい!!

 

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