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【厳しい再出発】明治安田生命J2第26節 ツエーゲン金沢vsベガルタ仙台

 さて、今回はツエーゲン金沢戦を振り返ります。

↓前節のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

↓前回対戦のレビューはこちら

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スタメン

 ベガルタ仙台は、前節・栃木SCと2-2の引き分け。ミッドウィークの天皇杯名古屋グランパス戦ではPK戦までもつれるも惜しくも敗退となった。直後の翌13日には伊藤彰監督の退任とコーチの堀考史氏の監督就任が発表された。ここまでの目標に対する成績が振るってないのは確かだが、これで3シーズン連続の監督交代。切って貼ってを繰り返すクラブに果たしてビジョンがあるのかいささか疑問に思うところだ。

 それでも試合は続いていく。残されたメンバーでこの苦境に立たされた状況を脱しなければいけない。残り17試合、意地を見せて欲しいところだ。

 今節は中山が出場停止。反対に鎌田とホ・ヨンジュンが出場停止明けでスタメンに帰ってきた。ベンチには天皇杯で好パフォーマンスを見せたオナイウと菅原がベンチ入りを果たす。

 一方のツエーゲン金沢も、直近4連敗中で21位と降格圏に位置している。金沢もまた苦しい状況が続いている。天皇杯は敗退しているので、1週間の準備期間があった。ホームに戻った今節で地の利と日程の有利さを活かして連敗を止めたいところだ。

 今節はボランチに梶浦、左サイドハーフに加藤をスタメンに起用した。ベンチには杉浦、奥田、大谷など縦への仕掛けを得意とする選手が名を連ねた。

 

前半

(1)不安定だった失点までの時間

 監督交代初戦となったこの試合も、相変わらず不安定な試合の入り方をしてしまう。

 ハッキリしたプレーが出来ずに、奪ったボールを繋げようとするもパスミスが連発し、なかなか自陣から脱することができない。

 金沢にセカンドボールを回収されるとシュートまで持っていかれ、危険シーンを作り出されてしまう。

 そして7分にスローインのセカンドボールを奪われ、失点を喫することとなった。

 スローインルーズボールを繋がれ、最後は大石に切り返しから左足で決められてしまう。

 伊藤体制から変わらず、序盤のハッキリとしないプレーの連続から仙台はここ数試合同様に先手を奪われた。

 

(2)短期間で準備してきたこと

 序盤の悪い流れのなかで失点を喫した仙台。その後は時間の経過とともに、ボールを保持する時間が増えていった。

 この試合の仙台は4-3-3のボール保持となった。エヴェルトンがアンカーになり、鎌田と郷家がインサイドハーフとして振る舞う。

 短期間でまずはボール保持の形に変化を加えた。伊藤体制から変わったことはビルドアップ時にレーンを跨ぐように早いテンポで横パスを回し、縦の楔を入れるタイミングを見計らっていたことだろう。今までは各々がボールを持ちながら悩んでいたが、この試合ではボールを動かしながら前進するきっかけを作ろうとしていた。

 そしてビルドアップの出口となる中盤より前の選手は、インサイドハーフである鎌田や郷家がホ・ヨンジュンを追い越すことでボランチを引き連れ、生まれた中盤のスペースにホ・ヨンジュンが降りてビルドアップ隊からボールを引き出すことにチャレンジしていた。

 また、山田と氣田の両ウイングはオリジナルポジションでは外に張りながらも、状況に応じて中へ侵入して攻撃に絡むことも許されていた。

 マンツーマンをベースに守備を行う金沢が相手だったので、失点以降の時間はうまく選手間が上下で入れ替わりながらボールを縦へ付けることができていた。

 

 しかし、準備期間が短かったことや酷暑のなかのゲームということもあり、次第に前線の動きが鈍くなっていく。一回飛び出すとそのまま張りっぱなしになり、徐々に後方と前方が分断するようになる。よって金沢のカウンターの餌食となっていた。

 飲水タイム以降は山田と郷家の位置を入れ替えるが、監督の指示を飲み込めないままのポジションチェンジだったこともあり、結果的に機能しなかった。

 

(3)サイドバック狙い撃ち

 早い時間帯で先制に成功した金沢は、攻守ともに仙台のサイドバックを狙い撃ちする作戦を準備していた。

 攻撃時は4-2-2-2の形となるが、基本的に地上戦を挑むというよりはシンプルに仙台のサイドバックの背後にロングボールを送ることが多かった。

 スピードのある大石が内田の背後へ抜け出し、中央で待つ豊田とファーから飛び込む加藤を目掛けてクロスを上げていく攻撃には再現性があった。

 

 また守備では4-4-2のブロックを基調としながらも、前線からのプレッシングもしっかり行っていく。

 特に左サイドハーフの加藤は若狭にボールが渡ると一気にプレッシングを仕掛け、時間とスペースを奪う。よって仙台はそもそも機能していない右サイドの前進がより苦しくなっていく。

 仙台の攻撃を抑えていくと、34分からは連続で決定機を迎える。

 仙台はこのピンチをスタメンに戻ってきた林のビッグセーブでなんとか傷口を抑えることができた。ここで追加点を奪われていたら、ほぼ試合が終わっていただろう。

 

 前半は勢いを持って挑んだ金沢が早い時間に先制点を奪う。一方の仙台はボール保持の形に変化を加えたものの、暑さと短期間の準備によりうまく行かず1点ビハインドで折り返す。

 

後半

(1)ボール保持率を上げることに成功した仙台

 金沢は後半から豊田に代えて杉浦を投入する。

 

 仙台は、後半のキックオフからボールを繋ぐ。ここら辺からしっかりボールを保持していこうという意思が見て取れた。

 後半の仙台は4-3-3のボール保持は変えずに、選手の配置を入れ替えた。

 アンカーに鎌田が入り、右インサイドハーフにエヴェルトン。山田と郷家は前半同様の位置となった。

 ハーフタイムに修正した仙台。特に左サイドでは山田がサイドへ流れたり、ハーフスペースで内田からボールを受けたりと流動的に起点を作り、そこへ氣田が絡んでいくことで3人のユニットからサイドの深い位置まで攻略しクロスを上げることが増えた。

 この辺は昨年からコンビを組み内田と氣田、そして周りとの連携を上手く取れる山田の連携が生んだものだった。

 またアンカーの鎌田の周辺にはボールサイドと逆サイドのサイドバックが隣にいるようになる。左サイドからの前進が増えた仙台は若狭が中に絞ってサイドチェンジの経由地となることが多かった。

 

 そしてアンカーに入った鎌田は中盤の底でうまくボールに絡みながらテンポを作ろうとしていた。

 また鎌田は自身がボールを受けるだけじゃなく、自身のマーカーを引き連れることでセンターバックがボールを運ぶスペースを作るなど、様々な工夫が見られた。

 インサイドハーフでは上下に動き、またなんとか自分で打開しようとするプレーが多かったが、アンカーでは周りを見ながらプレーすることができていたと思う。こういうところを見るとつくづく中盤の底が得意な選手なんだなと感じる。

 

 少しずつ立て直しができた仙台だったが、右サイドが機能不全に陥っていた。若狭と郷家の距離が遠く繋がっていない状況で、エヴェルトンも山田のようなフォローがないので、うまくボールが回らずに攻撃が停滞することとなった。

 

 そんな仙台だったが、ボール保持率が上がっていくと66分に同点に追いつく。コーナーキックのこぼれを回収し、一旦自陣から林が菅田へロングフィードを送る。左サイドで収まると氣田のアーリークロスが事故を生み、最後は郷家が押し込んだ。ようやくクロス攻撃が実ったシーンだった。

 

(2)隙を見逃さない柳下監督

 仙台がボール保持率を上げた展開だったが、柳下監督はしっかりハーフタイムに修正を施していた。

 まず、守備では前線から降りて起点となっていたホ・ヨンジュンに対して、井上がマンツーマンで厳しく寄せるようになる。前半は受け渡せばいいのか付いていけばいいのか判断に迷っていたが、ハッキリとホ・ヨンジュンに付いていくことで起点を潰していた。また井上が出たカバーを梶浦がしっかり行っていたのも、徹底している部分だった。

 

 攻撃では、前述しているように機能不全に陥っていた仙台の右サイドを集中的に狙い撃ちするようになる。前半は金沢の右サイドへ流れることが多かった大石だが、後半は左サイドへ流れることが増える。また途中投入の大谷も同じように左サイドへ流れてチャンスメイクしていた。

 

 同点に追いつかれた後も、集中した守備から隙を狙う金沢。78分に狙っていたエリアから勝ち越しゴールを決める。

 フォギーニョからオナイウへの横パスをカットすると長峰から左サイドへ流れた大谷へスルーパス。大谷のグランダーのクロスに杉浦が合わせて勝ち越しに成功する。狙っていた形が実った得点だった。

 

 その後の仙台は中島を投入して氣田、オナイウが両ウイングとなる3-4-3の攻撃的な布陣に変更するが、アドリブが効きすぎてチャンスを作ることができなかった。

 金沢はホ・ヨンジュンを徹底マークした井上が足を攣って黒木へ交代。小野原も同時に投入して守備堅めを図ってゲームをクローズさせた。

 

 試合は1-2で金沢が4連敗から脱出。仙台は苦しい7戦勝なしの状況となった。

 

最後に・・・

 堀新体制になって、まず手直ししたのはボール保持の形であった。前半は戸惑いがあったものの、ハーフタイムの修正もあって、それなりの形まで持って行けたのはこの試合唯一のポジティブな要素だったと思う。

 一方で全体的にメンタルが落ち込んでいる状況からか走れていなかった。特に守備においては、間延びした状態で前線がプレスを開始したり、スライドもラインコントロールも怠っていた。よって中盤に縦パスを通されるスペースが沢山あった。

 この守備面に関しては、伊藤体制時からここ最近ずっと言及しているところである。4月~5月は守備の強度を保つことができていたが、ここ最近は攻撃のアンバランスさもあるが、そもそも守備の強度が大幅に落ちており、結果として失点が激増している。

 次節までに1週間の準備期間があるが、まずはそこでボール保持の部分も大事だが、守備面により一層力を入れて欲しいと思っている。

 

 苦しい状況は簡単に抜け出せない。メンタル的にも苦しく厳しい状況は続くが、こんな状況でも遠い金沢の地まで駆けつけ応援してくれるサポーターがいることを忘れないで欲しいし、プロとしての意地を選手たちにこのクラブで見せて欲しい。

 残り16試合で何を残せるか。まずは目の前の相手に不格好でも泥臭くても全力で戦う姿勢を見たい。

 次節は東京ヴェルディとの対戦。前回対戦では勝利しているものの、ヴェルディも染野の加入などで前回時とは変わっている部分もある。

 タフなゲームになることは間違いない。きっと苦しいと思うが、この状況でも応援するサポーターのために、ホームで全力で戦って欲しい。

 

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