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【今シーズン一番の成功体験】明治安田生命J2第32節 大分トリニータvsベガルタ仙台

 さて、今回は大分トリニータ戦を振り返ります。

↓前節のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

↓前回対戦のレビューはこちら

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スタメン

 ベガルタ仙台は、前節・大宮アルディージャ戦でラストプレーでエヴェルトンの決勝ゴールが生まれ、12試合ぶりの勝利を挙げた。堀体制初勝利となった前節は全員が集中力を高く保ち、攻守においてハードワークすることで拮抗した試合を制することができた。リーグ戦も残り11試合となり、ここから上昇気流に乗って巻き返しを図りたいところだ。

 仙台はエヴェルトンが出場停止。代わりに鎌田がスタメンとなった。それ以外に変更はなし。ベンチには中島とケガから帰ってきたホ・ヨンジュンが久々にメンバー入りを果たした。

 大分トリニータは、前節・ファジアーノ岡山に0-1の敗戦。後半戦に入ってからなかなか調子が上がらずにここ5試合でわずかに1勝と苦しんでいる。クオリティの高いボール保持はあるものの、それをゴールに結びつけられていない。プレーオフ争いも混沌としているなかで、なんとか抜け出したいところだ。

 今節は4-2-3-1のシステムを採用。また5人のメンバーを入れ替えた。上夷、安藤、弓場、渡邉、伊佐がそれぞれスタメンとなっている。ベンチには古巣対戦となる長沢や梅崎らが経験豊富な選手が控えている。

 

前半

(1)左偏重の攻撃/切り替えの素早さ

 前半は大分がボールを保持し、仙台陣内でプレーする時間が長く、また奪われてからも素早い切り替えからボールを再奪取していった。

 大分のビルドアップから見ていくと、大分は両センターバックが広く開く。自陣深い位置なら、センターバック間に西川が加わり、ミドルサードまで運べたら、弓場が落ちたり落ちなかったりとセンターバックをサポートしながらボールの前進を試みる。

 対する仙台は、2トップが基本的にボランチを背中で消しながら、センターバックの前に立つ。またボールを持っているセンターバックに対して、サイドハーフが出てきてプレッシングのスイッチを入れる。

 

 そんな仙台に対して大分は左サイドを中心に攻め込んでいく。ビルドアップの出口は大外レーンに立つ高畑か松崎の背後でポジションを取る野村。彼らが安藤からボールを引き出して列を越えていく。

 大分はそこから野村、高畑の2人の関係に加えてボランチや渡邉、伊佐などが加わりながら、蜂須賀の背後を取っていく。特に野村と高畑はお互いに出し手・受け手を入れ替えながら、果敢に左サイドを崩していくシーンが印象的だった。

 このような形で大分は左サイドを中心に崩していく。29分に野村のクロスからファーサイドで町田が合わせたシーンは狙い通りの形だった。

 

 加えて大分は、素早い切り替えからボールを再奪取する。左サイドでスモールフィールドを作って攻撃するため、ボールを奪われても素早い切り替えから仙台の選手を捕まえて簡単に脱出させない。また仙台が困って中山を目掛けてロングボールを蹴ろうものなら、エアバトラーである安藤がしっかり跳ね返して起点を作らせない。

 このように仙台に攻撃の機会を与えないようにして、大分が主導権を握っていく。

 そして31分に仙台のゴールキックを安藤が跳ね返すと、目測を誤った福森の頭上を越え伊佐が抜け出す。伊佐のシュートを林が止めるも、そのこぼれ球を保田が押し込み大分がペースそのままに先制に成功した。

 

(2)我慢強く守った先にあったPK獲得

 前述したように、前半の仙台は大分の左サイドの攻撃と素早い切り替えの前に太刀打ちできない時間が長かった。

 それでも、自陣で守備ブロックを組んで辛抱強く守った。失点以降は渡邉に3度のチャンスが巡ってくるもいずれも林のセーブで難を逃れる。

 このように辛抱強く最少失点で抑えられたことで、40分近くになると徐々にプレス強度の落ちた大分のプレッシングから脱出して、カウンターへ持ち込むシーンも作れるようになる。

 

 そしてアディショナルタイムに入った45+2分。大分陣内深い位置での大分のスローインを奪ってペナルティエリアへ繋いでいく中山のポストプレーを受けた鎌田が安藤に倒されたPKを獲得する。

 このPKを中山がしっかりキーパーの逆を突いて同点に追いつく。中山にとってはリーグ戦2ゴール目。6月の天皇杯藤枝MYFC戦以来のゴールとなった。

 

 これがラストプレーとなり、仙台は悪い時間帯が続いていたが土壇場で追い付いて後半へと折り返すことができた。

 

後半

(1)攻め筋を変えた大分/脱出できるようになった仙台

 前半の大分は、攻守において自分たちが準備してきた形をピッチで表現し先制点を奪いながらも、一瞬の隙からPKを与え追いつかれる格好となった。

 よって、後半も前半と同じように、いやそれ以上に仙台へ圧力を掛けたいところだった。

 左サイド偏重だった大分の攻撃だったが、後半に入ると左サイドを起点に同サイドを崩す形と逆サイドへの展開から上夷のクロスという2つのパターンを使い分けるようになる。大分としては左偏重だったことを伏線に左右への揺さぶりから仙台の守備に穴を空けたかったのだと思う。

 対する仙台は、後半も自陣で4-4-2のブロックを組みながら、少し低い位置ではあったが大分の攻撃に対抗する時間帯が続いた。

 49分にはサイドチェンジで広げられ、上夷のクロスに弓場が合わせ、こぼれを渡邉がプッシュするもいずれも若狭が体を張ってシュートブロックした。

 

 大分が攻め筋を変えてきたことは、仙台にとって悪い話ではなかった。

 大分がワイドにピッチを使い出したことで、大分のポジションが少しだけ広がったことでボールを奪われたときの切り替え時に仙台の選手をすぐ捕まえられなくなる。

 よって、多少ではあるが時間とスペースを得られた仙台は2トップとダブルボランチを中心に齋藤学へ展開することで脱出できるようになった。

 加えて、前半はどうしても守備に加勢する時間が長かった松崎の負担も軽減され、松崎がサイドの高い位置でキープする時間も増え始め、仙台は前半よりも大分陣内へボールを運ぶことに成功していった。

 

(2)一気に畳みかけた2ゴール

 徐々に大分陣内へとボールを運べるようになった仙台は、61分に中山と齋藤学に代えてホ・ヨンジュンと氣田が投入される。

 ほぼ同じタイミングで大分も町田と伊佐に代わって鮎川と長沢が投入された。

 

 大分が長沢と鮎川の2トップに変更したことで、手数を掛けずにクロスボールを入れるようになる。

 大分がシンプルな攻撃に変化したこと、それに加えて暑さの影響もあり大分の切り替えが遅くなったことで、仙台は大分のプレッシングに捕まることが少なくなった。

 逆転ゴールのきっかけは、大分のアーリークロスを回収して、中盤で慌てずに繋いでマイボールにしたところだった。

 左サイドから右サイドへ展開し、蜂須賀から松崎が高畑の背後でボールを受け、安藤を引き付けるとターンからクロス。ホ・ヨンジュンのヘディングシュートは西川にセーブされるも、こぼれを郷家が押し込んで逆転に成功した。

 慌てずにボールを前進でき、松崎、ホ・ヨンジュン、郷家と各選手の特徴を活かせた得点となった。

 

 勢いが増した仙台は続く72分に追加点を挙げる。

 前半の大分さながら攻守の切り替えから高い位置でボールを再奪取すると左サイドを崩して、最後はホ・ヨンジュンのマイナスクロスに内田が合わせる。

 大分が混乱していた状況のときに一気に畳みかけて2ゴールを奪えたのは非常に大きかった。またいずれのゴールも大分のセンターバックを引き出したことでペナルティエリアにスペースを作った見事な得点だった。

 

(3)ただでは終わらないタフなゲーム

 一気に畳みかけた仙台だったが、3点目を奪った直後の76分に上夷のクロスを長沢に合わせられ1点差に詰め寄られる。

 この場面では、サイドの奥で起点を作られてしまったこと、クロッサーへの寄せが甘かったことが悔やまれる。長沢としては得意としている形のゴールだった。仙台時代にもああいうゴールでチームを助けてくれた記憶が蘇った。

 

 1点差に詰め寄られた仙台は、さらに内田が足を攣って交代を余儀なくされる。代わりに菅田が入り、同時に松崎に代わって加藤も投入される。この時点で仙台は、加藤と蜂須賀をウイングバックとする5バックへ変更し、逃げ切りを図った。

 ラスト5分とアディショナルタイム7分間は、幾度となく大分のサイド攻撃に遭うが全員が集中した守備で跳ね返していく。アディショナルタイムに入って左コーナーキックから安藤が、直後には途中投入されていた野嶽に決定機が生まれたもののゴールを許さなかった。

 

 そして長いアディショナルタイムを守り抜いてタイムアップ。仙台は今シーズン初の逆転勝利で、久々の連勝を記録した。

 

最後に・・・

 前半から大分にペースを握られた非常に苦しいゲームとなったが、失点を最小限に抑えて追いつくことができた。正直に言えば、同点に追いつくのは出来すぎの内容だったが、焦れずにピンチを凌いだことで訪れたチャンスだったと思う。結果的にあの同点ゴールがこの試合のポイントとなった。

 

 また交代選手を含めた起用がハマったことで今シーズン初の逆転勝利へと繋がった。ここまで選手交代で強度が落ちたり、連携が乱れたりして効果的な交代は少なかったが、この試合ではいずれの交代も効果的で逆転へと持っていくことができた。それだけチームとしての戦い方が整理されてきたということだろう。

 この勝利はチームにとって、とても大きな成功体験になったと思う。タフなゲームを制することが自信へと繋がる。

 

 12試合ぶりの勝利から連勝をして、チーム状況は良好だ。しかし、まだまだ巻き返していかなければならない。次節はホームでヴァンフォーレ甲府との対戦。甲府はリーグ前半戦は好調だったものの、ここ1か月勝ててない状況が続ている。そのような相手にホームで勢いを持って飲み込んでいきたい。

 次節も集中した守備とハードワークをベースに地に足を付けていい戦いをしてくれることを期待したい!!

 

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