ヒグのサッカー分析ブログ

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【勝つための選択ができるか】明治安田生命J2第17節 大宮アルディージャvsベガルタ仙台

 さて、今回は大宮アルディージャ戦を振り返ります。

↓前節のレビューはこちら

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スタメン

 ベガルタ仙台は、水曜日に開催されたロアッソ熊本戦で相良のゴールを守り切り、今シーズン初の連勝を達成。攻守ともに少しずつ自分たちが体現するサッカーができるようになり、内容と結果が伴ってきた。

 連戦最後となる試合は大宮アルディージャとの対戦。今節を前に大宮は、昨年まで仙台を率いた原崎監督に代わったばかりだ。様々な想いはあるが、まずは3連勝を目指して戦う。

 仙台は連戦ながら、前節と同じ18人を選んだ。選手の疲労度を考えると、いかに18人で90分を戦いきるかがポイントなる。

 一方の大宮アルディージャは、前節・いわきFCに1-2で敗戦。前述した通りに相馬監督の解任とヘッドコーチだった原崎新監督の昇格を決断した。

 連戦で準備期間が短いなか、原崎監督はどのような準備をしてきたかに注目が集まる。

 大宮は、ボランチに大山をスタメンで起用した以外は変更なし。ベンチには泉澤や富山などベテランで流れを変えられる選手が控えている。

 

前半

(1)大宮守備網をいかにして崩すか

 試合開始序盤は、監督就任直後の試合だけあって大宮がある程度構える形からゲームを始めた。

 そのため序盤からボールを保持して攻撃できていたのは仙台だった。仙台はお馴染みになった3-4-3のボール保持で、特に右サイドの真瀬・郷家のコンビから深い位置までボールを運んでいくシーンが多かった。

 

 そこから時間の経過とともに、大宮の守備体系が見えてくる。

 大宮のポイントはサイドハーフだった。サイドハーフは仙台のビルドアップ隊に対して少し高い位置にポジショニングする。このポジションで3バックからシャドーへのパスコースを遮断しながら、サイドへボールが渡ったときにプレスバックできる位置を取る。仙台のビルドアップ隊へ2トップと協力して、プレッシングを掛けるシーンもあったが、仙台のボール保持が整っているときは、基本的にこのポジションを取っていた。

 ちなみに昨年の仙台もサイドハーフが同じくらいの高さで守備をしていたので、原崎監督のなかでは、この守り方が1つの基準になっていると思う。この高さに保つことで、奪ったときのショートカウンターへと繋げられることが理由だろう。

 

 そんな大宮の守備ブロックに対して、仙台はビルドアップの出口を探りながら、時には山田や両サイドを目掛けてロングフィードを送り、敵陣深い位置へ侵入を目指すこともあった。この辺の柔軟性は、徐々に出来始めていて、相手が低い位置で守備をしていればボールを保持しながら前進するし、前から来る相手ならロングボールからのセカンドボール回収で前進する2つのパターンを作り出している。

 そして、この日の仙台はもう1つの変化を見せる。それは30分前後のこと。

 30分前後に山田と氣田の位置が入れ替わる。山形戦からボランチと繋がることを覚えた氣田は中央の位置から降りて、シャドーとなった山田と郷家が飛び出す0トップのような形に変化する。これでロングボールが多くなり始めていた仙台は、再び地上戦からボールを前進しようと試みる。

 そして32分の先制点は、そんな氣田が中央で受けたところをきっかけにエヴェルトンのサイドチェンジから内田のクロスに郷家が決めて先手を奪った。

 エヴェルトンのサイドチェンジからのクロス攻撃は、開幕からピッチ内アップでやり続けてた形だった。仙台は変化を加え、そして練習通りのゴールを奪えた。

 

(2)可変する大宮のボール保持

 監督交代後、最も変化があったのはボール保持時のスタイルだろうか。

 大宮のボール保持は3-1-4-2の形。大山をアンカーに小島と柴山がインサイドハーフのタスクとなる。4-4-2で守備をする仙台に対してインサイドハーフが仙台のサイドハーフボランチの選手間でビルドアップの出口となり、サイドへ届けることを理想とした。

 それ以外にも2トップの関係が裏に抜ける室井とポストプレーに徹するアンジェロッティという役割が明確になっていたし、両ウイングの茂木と貫は高い位置でボールを受けることにチャレンジしていた。

 シュートまで持ち込めなかったが、サイドから惜しいシーンを作ることもできていた。

 

 仙台はそんな大宮のボール保持に対して、前線からのプレッシングを試みながらも、ある程度は4-4-2で構えて守備を行っていた。前半は大宮の連携不足に助けられていたが、システムがミスマッチしているなかで、楔のパスを通されるようなシーンもあり、ハマっている感じはあまりなかった。

 

 前半は自分たちがボールを保持することで守備の時間を減らし、ハマっていなくても、大宮の連携不足に助けられていた展開だった。

 仙台が郷家のゴールでリードし、後半へと折り返す。

 

後半

(1)プラス1をもたらした富山貴光

 大宮は前半に室井が負傷し富山が投入されている。

 仙台は後半から氣田に代えて中島を投入する。恐らく連戦を考慮しての交代だった。

 

 後半に向けて同点を目指す大宮が修正したのはボール保持の部分だった。

 ボール保持の形は前半同様に3-1-4-2だったが、投入された富山が中盤まで落ちてプラス1を作り出して局面で数的優位を作り出す。

 富山が落ちることで、今度はインサイドハーフが高い位置を取る必要がなくなり積極的にビルドアップ隊をサポートし、ボール保持にリズムが生まれた。

 対する仙台もボールサイドで人を捕まえる守備へと修正を施したが、富山がいることでどうしても捕まらない選手が出てきてハマらないシーンがあった。結果的に、後半は前線からプレッシングを行うよりも、後ろで構えるシーンが増える。

 また大宮は、仙台の守備ブロックをボールサイドに集めたら、逆サイドへ対角フィードを送るようにもなる。特に右から左サイドの茂木へ送る対角フィードは再現性があった。

 

(2)奪ったボールを大切にできるか

 伊藤監督は、ハーフタイムで氣田を下げたように連戦を考慮して早めに交代カードを切っていく。56分には相良と山田に代えて秋山とホ・ヨンジュンを投入する。

 後半の仙台は、前半と打って変わってなかなかボールを保持できる時間がない。それは前述した通り大宮のボール保持が安定したことと、大宮が前線から積極的にプレッシングを掛けてきたことがある。セカンドボールを回収しようにもいい準備ができずに大宮に回収されることとなった。

 そんななかで重要になるのが、奪ったボールを大切にできるかだと思う。しかし、この日の仙台はボールを奪っても早く攻めたい意識が強く、どうしても攻撃が単発で終わってしまう。結果的に全体を押し上げられずに大宮のターンが続くこととなった。

 もちろんリャンや遠藤のようなベテランがピッチにいれば、ボールを落ち着かせる判断ができるが、やはり鎌田や中島といった若い面々はその判断ができないときがある。この辺は、試合を経験することや周りのサポート・声掛けが必要だと思っている。

 

(3)選手交代で攻勢を強める大宮

大宮のターンが続く後半。原崎監督は選手交代でより攻勢を強めていく。まずは67分に左サイドで高い位置が取れると見るや泉澤を投入する。

 82分には石川、岡庭、山崎を投入し、今度は右サイドの攻撃を活性化させる。

 85分以降に5バックとなった仙台に対して、サイドからのクロス攻撃から同点を目指した。そして88分に同点に追いつくことに成功する。

 左サイドから右サイドへ展開し、岡庭のクロスに山崎が合わせる。交代選手が結果を出して土壇場で追いついた。

 

 その後、アディショナルタイムには菅田をパワープレーに上げたが、チャンスは作り切れずにタイムアップ。

 連戦最後となる試合は、1-1のドロー決着となった。

 

最後に・・・

 試合後の伊藤監督のコメントにもあったように、後半は守備で耐え切れなかったことよりも自分たちでボールを保持し、押し込む時間帯があまりにも少なかった。

 連戦最後の試合で、やはり後半45分を守り切るのは非現実的である。前述したが、自分たちが楽になるためにも、ボールを持ったときにどういう選択をしていくかはこれから勝点を稼いでいくときに重要になってくると思う。

 ある程度、今年のスタイルが確立してきたなかで、どのプレーを選択し主導権を握っていくか。若い選手がスタメンに名を連ねることが多くなったなかで、そんな若い選手たちが、ゲームの流れを読んでプレー出来れば、勝点をもっと稼いでいける気がしている。

 ブレずに1つずつ積み上げていくなかで、そういう選択をチームが出来ていけることを今後は期待したい。

 

 次節はホームでジェフユナイテッド千葉との対戦。以前、仙台でコーチを務めていた小林慶行監督との対戦となる。シーズン序盤は勝てない日々が続いていたが、直近で3連勝中。調子を上げてきている。

 千葉は今まで勝ったことのない相手だが、ここでその苦手意識を克服し、再びホームから上昇気流に乗っていきたい。次節もいい準備をして、ハードワークして勝利を掴み取って欲しい!!

 

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