ヒグのサッカー分析ブログ

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【明けない夜はない】明治安田生命J2第30節 ベガルタ仙台vsザスパクサツ群馬

 さて、今回はザスパクサツ群馬戦を振り返ります。

↓前節のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

↓前回対戦のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

 

スタメン

 ベガルタ仙台は、前節・ジュビロ磐田に1-4の敗戦。失点するまでは悪い内容ではなかったものの、失点後からは自信のなさからか徐々に守備強度が落ち、しまいには菅田の退場もあってなす術がなかった。それでも1人少ない状況で菅原が一矢報いるゴールを決めたことを今節の希望に繋げたいところだ。

 今節の相手は9試合負けなしのザスパクサツ群馬。大槻監督就任2年目にしてしっかりとしたチームビルディングの成果もあり、プレーオフ圏内争いを繰り広げている。現状は群馬より下であることを自覚して、チャレンジャーとしてこの苦難を乗り越えたい。

 今節も前節から大幅にメンバーを入れ替えた。出場停止の菅田に代わって若狭、左サイドバックに内田。ボランチにはエヴェルトンと新加入の長澤、左サイドハーフにこちらも新加入の齋藤学。2トップの一角に鎌田が起用された。ベンチにも郷家、相良が前節と代わってメンバー入りしている。

 ザスパクサツ群馬は、前節・栃木SCとの北関東ダービーを制して9試合負けなし中。前述した通り大槻監督のサッカーがしっかり浸透して、内容と結果が結びついている。長倉の移籍はあったものの、悲願のプレーオフ進出に向けて自分たちのサッカーに自信を持って戦い無敗記録を伸ばしたいところだ。

 今節は、前節と同様の18人をチョイス。調子がいいときはメンバーをいじらないという鉄則に大槻監督は則った。

 

前半

(1)ゲームコントロールをする長澤和輝

 前半の仙台は、磐田戦同様に守備時には前から行くときと後方で構えることをしっかり分別しながら戦えていた。

 またボール保持では、急がずに押し込みながらサイドから仕掛けていくことを目指した。そしてその中心にいたのが加入後初先発となった長澤だ。

 4-3-3を基本とする仙台のボール保持だが、この試合は右インサイドハーフに位置する長澤が、センターバックの間まで降りてボールを動かして、ボール保持のリズムを作っていた。

 他の選手のポジションを見ていくと、基本的にエヴェルトンは2トップの間に位置し、2トップの動きを制限する。右サイドはお馴染みになりつつある松崎と真瀬のコンビはハーフスペースと大外レーンを2人で使い分ける。左サイドはオリジナルポジションを維持する格好となっていた。

 右サイドで攻撃をする際は、長澤が松崎と真瀬との連携からクロスまで持っていく。反対に左サイドは後方から前進していくというよりも右サイドや中央からのサイドチェンジから齋藤学が受けて手数を掛けずにクロスまで持っていくシーンが多かった。

 前節の左サイドは各選手の距離が遠くて機能していなかったが、この試合は左サイドから攻め込むというよりは右サイドに群馬の守備を集約させて逆サイドに振っていくような形に整理されていた。

 

 また、飲水タイム以降は群馬も2トップのプレッシングを合図に前から仕掛けてくるようになる。仙台もボール保持で捕まりそうになるが、時間の経過とともに群馬の陣形が前に来たところで、その背後へ中山を目掛けてロングボールを送ることでプレッシングの回避を狙った。

 林や真瀬からのロングボールが前半では見られ、この辺も再現性があったことからトレーニングで準備していたのかもしれない。

 

 序盤から勢いを持ってサイドから押し込めた仙台だったが、堅守を誇る群馬守備陣を前にフィニッシュまで持って行けなかった。それでもサイドを抉ったり、あと合わせるだけというシーンを何度か作り出せたのはポジティブな部分だったと感じている。

 

(2)手応えを感じたボール非保持

 前述した通り、ボール非保持においても前からプレッシングに行くときと後ろで構えて守備をするときとの使い分けがこの前半ではしっかりできていた。この辺は堀監督や選手の試合後のコメントでも触れている部分だった。

 群馬の3-2-4-1へ可変するボール保持に対して、前からプレッシングに行くときは3-2の群馬のビルドアップ隊に対して2トップ(中山、鎌田)に加えて松崎が外切りのプレスを仕掛ける。また群馬のゴールキックのときはエヴェルトンがダブルボランチを監視する役目を担っていた。右ハーフスペースへ位置する川上へは齋藤学がそのまま付いていくことが明確になっており、仙台の両サイドハーフはお互いに役割が違っていた。

 試合開始からうまく守備はできていたが、1つ穴があり、松崎が外切りでプレッシングをした際に風間に対して長澤が付いていくために、左シャドーとなった平松が降りてきたときに誰も対応できなくなっていた。せっかく前からプレッシングを仕掛けても、平松がビルドアップの出口となり、無効化されてしまうことがあった。

 

 よって仙台は飲水タイム後に修正を施す。2トップが群馬のダブルボランチを監視しながら3バックへ睨みを利かせる。この守備によって長澤が平松へ付いていけるようになり、穴を塞ぐことに成功した。

 もちろん2トップが3バックへのプレッシングを行える回数が減ったことで、守備ブロックを組んで守ることが多くなったが、群馬に決定機を作られることがほとんどなかった。

 ここ最近、失点数が非常に多くなっているだけに守備意識を強く持って、アラートに対応できるようになったのは改善されている証拠だと思った。

 

 好調群馬に対して、しっかり攻守で対応しながら前半をスコアレスで折り返すことができた。勝負は後半へ。

 

後半

(1)あまりにも軽率だった真瀬の退場

 後半は群馬がボール保持するターンから試合が始まる。

 群馬も大きくボール保持の形を変えることはなかったが、右サイドで川上と佐藤がポジションを入れ替わるなどの変化は見られた。

 後半の群馬は早いタイミングでサイドにボールを付けながら、仙台のブロックを広げようという狙いがあったように感じた。

 そこに対して仙台もスライドをしながら対応するものの、49分に杉本に対して真瀬が後ろからタックルし2枚目のイエローカードで退場となる。

 1枚目の遅延行為といい、2枚目のカードといい確かに抗議をしたくなるジャッジだったが、カードを受けながらあのタックルをするのはあまりにも軽率だった。確かに厳しく行くことは大事だが、前半のように丹念に粘り強く対応していかなければならない試合で、気合いが空回りした状態だった。

 

 そして2試合連続で10人となった仙台は混乱状態に陥ると、そこを群馬が見逃さなかった。

 右コーナーキックからのこぼれを仙台が弾ききれずにいると、キム・テヒョンのクリアが中途半端になったところで中塩に左足を振り抜かれて先制点を奪われる。

 軽率な退場から仙台は一気に流れを失うこととなった。

 

(2)即興的な攻撃へ振る仙台

 その後も落ち着かない仙台は群馬にボールを保持され、決定機を作られる。

 前半までしっかり各選手が役目を全うできたものの、1人減った影響で守備基準点を失い、群馬に良いようにボールを前進させられてしまう。

 

 ただなんとかしなければならない仙台は、62分に一気に3人交代へ打って出る。

 中島、郷家、菅原を投入し、中盤の即興性に委ねる攻撃へとシフトチェンジしていく。鎌田、郷家、中島が近い距離でパスを回すことでなんとかチャンスを作り出そうとするも、しっかり帰陣して守備をサボらない群馬守備網を崩すのは容易ではない。

 その後、高崎主審のジャッジにフラストレーションが溜まっていくと、スタジアムの雰囲気ともども審判と戦っているかのような状況に陥ってしまった。

 

 そして73分になんでもないロングボールの処理にキム・テヒョンが途中投入の北川を倒してフリーキックを与えると風間に直接沈められて、リードを2点に許す。

 

 その後は選手交代で強度を保ちながら、しっかりボールを動かすことで仙台の攻撃回数を減らした群馬。

 仙台は、単独で仕掛ける選手がピッチにおらず、パスで崩していこうとするも、クリーンシートを目指す群馬の守備を最後まで崩すことができずゲームオーバーとなった。

 退場から一気にゲームの流れが変わった試合は、群馬が0-2で勝利。仙台はこれで11試合未勝利となり、降格圏と3ポイント差となった。

 

最後に・・・

 長澤、齋藤学といった新加入組がスタメンに名を連ねた今節だった。彼らの存在もあってボール保持・非保持においては少しずつ堀監督のやりたいサッカーというものがピッチで表現される時間も増えてきている印象だ。

 それだけに後半開始早々の真瀬の退場がとにかく痛かった。なんとかこの状況を変えようという気持ちと気合いには感銘するが、カードをもらっている状況のなかでしっかり自分のプレーをコントロールしていくことも必要だったと感じる。

 また2失点目のきっかけとなったキム・テヒョンのファウルも要らないプレーだった。10人で粘り強く戦えば、もしかしたら同点のチャンスが巡ってきたのかもしれないところでの2失点目は痛恨だった。ただ、彼らだけじゃなくてジャッジへ不満を持ったスタジアムの熱気や雰囲気がそうさせたという面ももちろんある。

 

 ポジティブに言い換えれば、選手たちもこの状況を打破しようと必死にプレーしてくれているという証拠だと思う。あとはそれを上手くベテランやベンチからの声掛けでコントロールしていければと思う。内容も少しずつ向上しているので、まず堀監督のことを信じてしっかりこのサッカーを向上していくしかない。

 また、堀監督の言っていた通りで退場者を出さずにしっかり11人で最後まで準備してきたことを表現してもらいたいと切に願っている。

 

 明けない夜はない。きっとこのトンネルを抜け出すことができるはずだ。そう信じて日頃のトレーニングから積み上げていくしかない。

 次節はホームで大宮アルディージャとの対戦。いわゆる6ポインターと呼ばれる試合だとは思うが、大事なのは勝ち急がずにしっかりハードワークして戦うことだ。時には大宮に勝点3を与えないという考え方も必要になってくるかもしれない。まずはやれることをしっかりやっていければと思う。次節もハードワークして泥臭く戦う姿勢を期待したい!

 

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