ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

【チャンスの神様は前髪しかない】明治安田J2第6節 ベガルタ仙台vs徳島ヴォルティス

 さて、今回は徳島ヴォルティス戦を振り返ります。

↓前節のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

 

スタメン

 ベガルタ仙台は、前節・ロアッソ熊本スコアレスドロー。2試合連続のスコアレスドローとなっている。前々節のブラウブリッツ秋田戦とは変わってチャンスはそれなりにあったものの1点が遠かった試合となった。

 ホーム連戦となる今節こそ、ゴールを奪って3試合ぶりの勝利をもぎ取りたいところだ。

 今節は、連戦ということもあり4人のメンバーを入れ替えた。ボランチに長澤が復帰。左サイドハーフにオナイウで、右サイドハーフに郷家。2トップは今シーズン初スタメンとなる鎌田と中山のコンビとなった。ベンチには川崎フロンターレから期限付き移籍で加入した松井がメンバー入りを果たした。

 一方の徳島ヴォルティスは、開幕から不調が続いている。前節もレノファ山口FCに1-2で敗戦し、これで1勝4敗。失点も12失点と非常に多い状況となっている。序盤にして背水の陣となる今節こそアウェイで是が非でも勝利し、浮上のキッカケを掴みたい一戦だ。

 徳島も6人のメンバーを入れ替えている。右サイドバックエウシーニョボランチは永木と児玉のコンビ。右サイドハーフに中野、左サイドハーフに坪井。ワントップに柿谷を起用した。ベンチには古巣対戦となる島川やブラウンノア賢信、渡、高田など攻撃的な選手が控えている。

 

前半

(1)徳島のビルドアップに対する対処方法

 試合開始から前線からのプレッシングで勢いを持って試合に入ったのは仙台だった。2トップとサイドハーフが高い位置を取りながら、徳島のビルドアップ隊へ仕掛けていく。

 対する徳島の配置を見ていくと、基本的にビルドアップ隊はセンターバックと永木がアンカーとなる3人に児玉が右ハーフスペースを主戦場としながら時折サポートする形を取る。

 前線では左ウイングの坪井は大外に張ることが多いが、右ウイングの中野はハーフスペースのエリアまで絞ってボールを受けるシーンが多かった。

 

 仙台は前述したように前からプレッシングに行くが、永木を掴まえられないと簡単に前進を許してしまうシーンがあった。15分には永木が石尾からパスを引き出したところをきっかけに中野のドリブルから最後は柿谷のシュートまで繋がった。

 

 その後の仙台は、中山と鎌田が縦関係になって、永木を監視しながらセンターバックへ圧力を掛ける。児玉に対しても長澤が自由にさせない守備で、徐々に徳島のボール保持の精度を落としてマイボールへと回収することが増えていった。

 

(2)ボランチ脇から侵入していく仙台

 徳島のボール保持へ対応できるようになった仙台は、自分たちのターンへと持ち込む回数を増やしていく。

 この日の仙台も3-4-3のボール保持スタイル。徳島の守備ブロックは、仙台のビルドアップ隊に対して前からプレッシングに行くというより構えるスタイル採用していたため、仙台はビルドアップ隊から落ち着いてボールを動かすことができていた。

 仙台は、ビルドアップ隊から鎌田、郷家の両シャドーへ楔パスを付けることで一気に徳島陣内へと侵入していくことに成功する。

 徳島の守備ブロックは、構える時間が多いものの、特にボランチサイドハーフの間の距離が遠く、その間のスペースに仙台の両シャドーが顔を出すことでボールを受けることに成功した。

 

 押し込めた仙台は、クロスからやセットプレーから決定的なチャンスを作っていった。26分には郷家のヘディングシュート、直後の27分にも菅田が惜しいヘディングシュートを放つもゴールとはならなかった。90分トータルで考えるとここの時間帯で決めたかったところだ。

 

 前半は序盤こそ徳島に隙を与えてしまったが、守備でしっかり抑えながら自分たちのターンを増やすことでチャンスを数多く作った仙台だった。しかしゴールを決めきることができずに前半を無得点で折り返す。

 

後半

(1)ボランチ周辺を手直す徳島

 前半は、ボール保持局面でしっかりボールを握れなかった徳島。後半はボランチ周辺の立ち位置を修正することでボール保持の安定から押し込む展開へと変えていく。

 後半の徳島は、児玉がビルドアップ隊の一員に加わりセンターバックと永木、児玉の4人で前進していくように変わった。

 アンカーに固定だった永木も左斜めの位置に落ちたりとポジションに拘らない立ち位置でボールに触れる回数を増やしていく。

 

 ビルドアップ隊の変化に伴って、ビルドアップのサポートをしていた両サイドバックも高い位置へ押し上げることに成功する。特に左サイドバックの橋本は高い位置を取れるようになると左サイドからの仕掛けやクロスでチャンスを作り出していく。

 またトップ下の杉本のポジションの縛りに拘らないことで輝き出す。中央で受けると持ち前のテクニックでバイタルエリアへ侵入していた。

 よって、前半は仙台が押し気味に進めていた試合も、次第に徳島が押し込む展開へと変わっていった。61分の橋本のクロスに柿谷が合わせたシーンは決定的なものだった。

 

(2)チャンスを活かし切れない仙台

 後半は徳島の修正によって押し込まれる展開だったが、それでもここ最近の集中力の高い守備で最後のところはやらせない仙台。

 中盤の競り合いでボールを奪うとチャンスを作ることも継続してできていた。

 64分には長澤とオナイウに代わって中島と相良を、74分には鎌田と中山に代わって松井とエロンが投入される。

 中島の推進力で再び攻勢に仕掛ける仙台は、65分に相良がチャンスを迎えるもスアレスにセーブされる。

 また両者ともに消耗戦の様相を呈していたなかで、新加入の松井は危機察知能力と出足の早さでボールを回収し次のチャンスへと繋げようとしていたのが印象的だった。

 

 一方の徳島はラスト10分のところで交代カードを切る。永木、エウシーニョ、中野に代わって島川、西野、高田を投入する。守備の強度を保ちながら高田のドリブルで勝負を仕掛ける。たしかに交代直後の高田のドリブルは非常に厄介だったが、石尾がなんとか最後のところをやらせなかった。

 

 仙台も82分に菅原を投入。菅原、エロンの2トップに対して少し放り込むような形でボールを送ることが多くなった。しかし、攻撃が雑になってしまったことで反対に徳島敵陣へと侵入する回数が減っていったように思える。

 

 連戦最後のアディショナルタイムは、お互いに意地と意地のぶつかり合いとなった。最後まで両者ともに隙を与えなかった試合はスコアレスドローでタイムアップ。仙台にとっては3試合連続のスコアレスドローとなった。

 

最後に・・・

 3試合連続スコアレスドローというのもなかなかないものだ。相変わらず守備の集中力は高く、特に最後のペナルティエリアで林、菅田、小出を中心に跳ね返す部分はこの連戦で最後まで継続できた。

 一方で3試合連続無得点に終わった攻撃は、特に前半は自分たちが狙いとしていた形から決定機まで持っていくことができた。しかし、その決定機を活かし切れないと時間の経過とともに相手のペースになってしまう。いかにチャンスを活かせるか。90分という試合のなかでいかに自分たちの時間帯のときに決めきれるかは今後の課題となってくるだろう。

 

 繰り返しになるが、昨年であればこの3連戦は3連敗してもおかしくない内容だった。しかしそれぞれの試合で勝点を稼げたのも、集中した守備があってのこと。悪いなりに勝点を稼いで、相手の勝点を削ぐというのは長いリーグ戦を考えれば悪くないことだろう。

 しかし、もちろんゴールを決めて勝って喜びたい。歯痒い試合が続いているが、この我慢強さが勝利へ繋がることを信じて次節までいい準備をして欲しい。

 次節の相手はアウェイで横浜FC。今節は2人退場した鹿児島ユナイテッド相手に4ゴールを奪い快勝。連勝して調子も上向いている状態だ。今まで対戦した相手よりも個人能力に優れているチームだけに、いかに今まで以上に束となって戦えるかがポイントになるだろう。まずは、自分たちの守備をベースに迫力のある攻撃でゴールを奪って欲しい!!

 

ハイライト


www.youtube.com

 

公式記録

www.vegalta.co.jp

【「4-2-2-2」という新たなトライ】明治安田J2第5節 ベガルタ仙台vsロアッソ熊本

 さて、今回はロアッソ熊本戦を振り返ります。

↓前節のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

 

スタメン

 ベガルタ仙台は、前節・ブラウブリッツ秋田スコアレスドロー。強風が吹き荒れる環境のなかで秋田のロングボールとセットプレーに苦しむ展開だったが、体を張った守備で勝点1を持ち帰った。

 今節の相手はロアッソ熊本。空中戦を得意とする秋田とは180度変わって地上戦を得意とする相手だけに、相手のやり方に素早く対応できるかがポイントなる試合となった。

 仙台は連戦ということもあり、3人のメンバーを入れ替えた。ボランチには今シーズン初スタメンの松下。右サイドハーフにオナイウ、2トップの一角にエロンが起用されている。

 一方のロアッソ熊本は、前節・いわきFCに0-6の大敗。セットプレーやカウンターからの失点が多く、フィジカルの強い相手に屈した格好となった。短い準備期間のなかで、まずは守備のところ修正しながら、いかに得意なパスワークでゴールに迫れるかがポイントとなった。

 今節は4人のメンバーを入れ替え。右バックに岡崎、ボランチに藤田、右ウイングバックに大本、左ウイングバックに東山がそれぞれ起用されている。ベンチにはU-17ワールドカップで森山監督とともに戦った道脇がベンチ入りを果たしている。

 

前半

(1)2024年バージョンの熊本のボール保持

 前半は、熊本がボール保持を続けてそれに仙台が対抗する局面が多く見られた。

 熊本は今シーズンより3-4-1-2のシステムを採用しているが、昨シーズンとは異なるボール保持の設計を大木監督は仕込んでいる。

 熊本のボール保持の特徴はボールサイドへ人を掛けてスモールフィールドを作り、そこを打開しながらゴール前へ侵入していくスタイル。

 今シーズンの熊本もスモールフィールドを意識しながらも、各ポジションが必要なタスクを担うことでボールを前進させていく。

 ビルドアップの起点は左右バック(大西と岡崎)である。熊本はダブルボランチにしたことで、3-2のビルドアップ隊を形成しボール保持の安定に繋げている。

 前線に目を移すとボールサイドの2トップの一角はウイングとなって、まずは相手サイドバックをピン止めする。このタスクによって、サイドバックサイドハーフの間にスペースが生まれて、そこへ内へ絞っていたウイングバックが移動しパスコースを作ってビルドアップの出口となっていた。

 

 そこからトップ下の伊東がリンクマンの役割でプラス1を作り、ウイングとしてサイドへ流れたフォワードはサイドから中へ切り込んで仕掛けていく。特に左サイドの古長谷はカットインからシュートに持ち込むなど存在感を発揮していた。残念ながらオナイウとの接触で肩を脱臼し、松岡との負傷交代を余儀なくされるが、今後が楽しみな選手の1人であった。

 ちなみにボールサイドと反対のフォワードは中央で構える。ボールサイドになったらウインガーに、逆サイドにボールがあるときはセンターフォワードとして振る舞うのは非常に見ていて面白かった。

 

 仙台は、そんな特異な熊本のボール保持に手を焼きながらも各選手がスライドを頑張ったり、カバーリングをしたりと、1人1人の選手が広範囲を守りながら危ない場面を作らせなかった。

 

(2)熊本の仙台対策

 反対に仙台がボール保持をし、熊本がボール非保持の局面でも熊本は短い準備期間で仙台対策をしっかり準備していた。

 熊本はマンツーマン気味で、仙台のボール保持へ対抗していく。

 仙台の3-2のビルドアップ隊に対して、2トップと大本が縦スライドでプレッシングを仕掛けて時間とスペースを奪う。ダブルボランチへは伊東とこちらも藤田が縦スライドで対応。

 サイドへ目を向けると相良へは大本が前へ出て行くため岡崎がこちらもスライドして対応し、サイドで脅威になるオナイウへは始めから東山が下がって対応。サイドの深い位置になったら大西とタッグを組んで、数的優位でドリブルとクロスを阻止していた。

 

 そんな熊本の準備に対して思うようにボールを動かせない。基本的にどのポジションでも捕まった状態でプレーしているため、なんとか少ないタッチで剥がそうとしたり、逆にドリブルで剥がそうとするも、精度が落ちてミスに繋がり熊本にボールを奪われる展開が続いた。あと1本のパスが繋がれば、みたいなシーンはいくつかあったが、その精度を落としたのは熊本のマンツーマン守備が機能していた証拠だろう。

 仙台は23分ごろに松下が左斜め下に落ちてボール保持を安定させようとした。しかし、松下が降りることによる全体の列とレーンの調整が上手くいかず結果として事態が改善に繋がることはなかった。

 

 前半は熊本の守備に苦しめられ、また特異なボール保持に対応することでなかなか自分たちの時間を作れなかった仙台。

 前半終盤には、ベン・ジョンミンに危険なシュートを打たれるもゴール右に逸れた。

 悪いなりにスコアレスで折り返し、後半への巻き返しを狙った。

 

後半

(1)「4-2-2-2」という新たな取り組み

 仙台は後半からオナイウに代わって郷家。熊本も藤田に代わって三島が投入された。

 

 後半の熊本は前半の戦い方と概ね変わりのないやり方を採用していた。

 対する仙台は、内側から外側へ流れてくるウイングバックに対してサイドバックが勇気を持って前に出てくることで強気の守備が行えるようになった。

 

 また最も前半と変わったポイントはボール保持の局面にあった。

 前半は3-2-5を基準としたボール保持の形だったが、郷家が投入された後半は4-2-2-2の形へと変わった。

 このことでマンツーマン守備をメインとしていた熊本の守備に対してズレを作り、また相良と郷家が中央で楔パスを受けることで、前半にはなかった「タメ」を作れるポイントを作り出したことで、徐々に押し込む形を作り出していった。

 

 そして仙台は62分に松下と相良に代わって長澤と鎌田を投入する。長澤が投入され、手数を掛けずに左右へボールを振れることで次第にリズムが生まれた。

 鎌田はいつものボランチよりも一列前でプレー。郷家とともに中央の相手にとって嫌な位置でボールを受けることとそこから仕掛けることを求められた。

 

(2)なかなかこじ開けられないゴール

 4-2-2-2への変化から次第にゴールへ迫る回数を増やした仙台だったが、なかなかゴールをこじ開けられない。79分には中島から中山へ交代する。

 一方の熊本は守勢に回るなかで、手薄になった仙台に対してカウンターで仕留めようと目論む。76分には大崎、84分には神代、道脇と前線にフレッシュな選手を投入した。

 いくつか熊本にもチャンスが巡ってきそうだったが、そこを阻止したのは仙台のセンターバックコンビだった。苦しい状況でも体を張って守り切る姿は昨シーズンから彼ら2人が大きく成長した部分であった。

 

 その後、仙台は菅原を投入して、より攻勢を強めるが、最後のところでシュートが打てなかったり、熊本守備陣にブロックされたりと最後までゴールをこじ開けられなかった。

 試合は0-0。仙台にとっては2試合連続のスコアレスドローとなった。

 

最後に・・・

 2試合連続のスコアレスドロー。前節はアウェイの厳しい環境で守り切った試合だったが、今回は後半に攻勢を強めたなかで押し切れなかった試合だった。

 まだまだ攻撃は構築中というなかで、この試合はいつもの3-2-5でのボール保持から4-2-2-2に変化を加えたなかでペースを奪い返せたのは1つ良かった点ではないだろうか。

 もちろんゴールを奪えてないという前節からの課題は残ったが、攻撃時のバリエーションは増えていきそうで今後も楽しみな部分である。

 

 シーズン始まる前に森山監督は、J2はスカウティングのスピードが速いという話をしていたが、まさにこの試合の熊本は仙台のボール保持に対してマンツーマン守備で対抗して前半はペースを握ったわけで、今後もこのような試合は増えていくだろう。

 そのなかでいかに引き出しを多く持っているかは重要になってくる。攻撃を構築しながら、相手のスカウティングの先を行くという非常に難題ではあるが、このトライがシーズン後半に生きてくるとも思う。

 

 次節もホームで試合ができる。相手は徳島ヴォルティス。徳島はなかなか調子が上がらず、今節もレノファ山口FCに敗れ、さっそく背水の陣という状況だ。そんなチームとの対戦は非常に難しい。負けているだけにどんなやり方をしてくるかが分からないからだ。

 それでもまずはホームの地の利を生かして、試合開始からフルスロットルで徳島へ襲い掛かることで、相手の考える時間を奪いたい。次こそはゴールを奪って勝ちましょう!!

 

ハイライト


www.youtube.com

 

公式記録

www.vegalta.co.jp