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【ダービーは勝ってなんぼ】明治安田J2第10節 ベガルタ仙台vsモンテディオ山形

 さて、今回はモンテディオ山形戦を振り返ります。

 みちのくダービーファーストラウンド。

↓前節のレビューはこちら

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スタメン

 ベガルタ仙台は、前節・藤枝MYFC戦で1-1の引き分け。前半は藤枝にボールを保持され先制点を奪われたものの後半は積極的に前へ出たことで同点に追いつくことができた。逆転までは持って行けなかったものの、アウェイで最低限の結果を残した形だ。

 今節は今シーズン初めてのみちのくダービー。今オフには氣田、加藤が山形へ移籍するなど昨シーズン以上に盛り上がる要素がある今シーズンのダービーだ。最高の天気、最高の雰囲気で山形をホームへ迎え撃つ。

 仙台は藤枝戦を同じ11人を選んだ。ベンチには遠藤が開幕戦以来となるメンバー入りを果たした。

 一方のモンテディオ山形は、鹿児島ユナイテッドに2-0で勝利。前半序盤に先制すると、後半は後方の組み立てから髙江が追加点を奪い勝利した。

 今シーズンは下馬評は高いものの3勝1分5敗と思うように結果を残せていないのも事実。このみちのくダービーを制し、連勝を達成することで上位へ食い込んでいきたい一戦だ。

 山形は、左サイドバックに山田、ボランチに髙江、トップ下に國分、そして左ウイングに氣田が前節と変わってスタメンとなっている。ベンチには川井がメンバー入りとなった。

 

前半

(1)1点以上の重みがあった先制点

 山形キックオフで試合が開始されると、早速ファーストプレーで山形が仙台陣内まで押し込みチャンスを作る。その直後にも國分にチャンスが訪れるがシュートはゴール上へと越えていった。

 

 そんな山形のボール保持での狙いは明確だった。

 仙台がプレッシングの際に2トップと両サイドハーフがビルドアップ隊に対して高い位置で構えるため、仙台のサイドハーフサイドバックには距離が空く。そこに右サイドには國分を、左サイドには山田を配置しビルドアップの出口と設定することで仙台のプレッシングを越えて敵陣へ迫っていこうという狙いを持っていた。

 

 しかし、そんな山形の狙いに対して仙台も早い時間で対応することができた。

 まずプレッシング部隊は2トップが山形のダブルボランチをケアしながら、西村に対してどちらかがプレッシングに行く態勢を取る。両サイドハーフの相良、郷家は熊本と安部それぞれにプレッシングへ行く。

 肝心の國分と山田に対しては、長澤が國分へスライドで対応。山田へは髙田が縦スライドで対応するようになっていた。全体的に守備基準点を明確にし、山形のボール保持へ対抗した形となる。

 そしてそんな山形のボール保持を奪ってショートカウンターから先制点を奪った。

 後藤から山田へのフィードを狙い通り髙田へプレスを掛けミスパスを誘発。奪った中山はシンプルに相良へ渡すとカットインから強烈なシュートが右隅へ突き刺さり仙台が先制に成功する。

 山形のボール保持に対して前線から圧力を掛け、髙田もしっかりそれに連動する形で山田のミスを誘発した。相良のシュートは文句なし。いい時間帯、狙い通りのシチュエーションからゴールを奪った。

 

 そしてこのゴールは単なる1点に留まらない。その後の山形は、山田に対する高田のマークを警戒し、左サイドへ展開せずに右サイドからの前進が増えていく。

 もちろん山形らしくセンターバックからダブルボランチへボールを付けることで仙台のプレッシング部隊を越えることがあったが、真ん中から右サイドに山形の前進が集中したことで、仙台はある程度的を絞って対応することができた。

 その象徴として、前半途中に長澤と工藤の立ち位置を変えて、より可動範囲が広い工藤が國分への対応を担当することになる。

 

 山形のアタッキングサードでの連携面やアイデアが足りてないことも相まって仙台は概ね危ないシーンを作ることなく前半を過ごすことができた。

 

(2)効果的だったロングスローからの攻撃

 また、仙台がペースを握れたのは前述の守備に加えてロングスローからの攻撃も山形に対して効果的だったからだ。

 

 仙台は前半からロングスローのチャンスを多く得ることができた。山形のセットプレーの守備はコーナーキックでもロングスローでもゾーンで守る。そのため、基本的には全員がペナルティエリアに帰陣している。

 しかし山形がペナルティエリアに帰陣していることで、仙台としては弾かれたセカンドボールを回収しやすくなった。よってこの試合のロングスローは高確率でセカンドボールを回収し、二次攻撃、三次攻撃へと繋げられている。

 そして、そんなロングスローがきっかけで生まれたのが2点目だった。

 左サイドからのロングスローを長澤が回収しペナ角からクロスを上げる。これは後藤が弾くが、再び長澤が回収し丁寧にクロスを上げると、これを菅田が合わせた。

 前半、ずっと繰り返していたロングスローからの攻撃で追加点を奪えた仙台。山形はゾーンディフェンスのために人と人の間にクロスを入れられると対応が難しい。そこへ長澤の高精度クロスが効いた形となった。

 

 残り時間も丁寧に山形の攻撃を守った仙台は、今シーズン初めて2点のリードを持って後半へ折り返すことができた。

 

後半

(1)シャドーの立ち位置を修正した山形

 山形は前半でアクシデントがあった安部に代えて川井を投入。上図のような配置で後半へ挑んだ。

 後半の山形は、ボール保持時のポジションを3-4-2-1の陣形に整理する。

 右サイドへ流れることが多かった國分と中央で彷徨っていた氣田が仙台のボランチ脇にポジションを取るようになった。

 仙台のダブルボランチとしては、山形のダブルボランチへ行きたいものの、國分と氣田の両シャドーが自分たちの影響下に入ってしまったことで局面的に数的不利になることもあり、前半よりも中央から剥がされ前進されることは増えていった。

 

 それでもここ最近は相手の攻撃が加速してもそれと同じくらいのスピードで帰陣できるようになり、センターバックを中心にしっかり守ることができた。

 61分には氣田に独走を許しそうになりながらも、後ろから一瞬のタイミングを逃さなかった小出がスライディングで防いだシーンは、この試合の仙台の高い集中力を印象付けるプレーだった。

 

(2)ミドルブロックでゲームを締める

 山形は62分に氣田から後藤優介、76分には國分に代えてこちらも古巣対戦の加藤が投入される。

 一方の仙台は、67分に競り合いで頭部を負傷した長澤に代わって松井が投入される。

 

 時間の経過とともに、仙台は2点リードしていることもあって、次第に前線からのプレッシングからミドルブロックで構える形に変化し、失点を許さない姿勢を強めていく。

 それでも前線にポイントが欲しい仙台は、中島に代えてエロンを投入し、前線のプレッシング強度を維持するとともに前線に収めどころを作る。

 

 山形は82分に山田と南に代えて、小西と坂本を投入する。しかし、全体的に攻撃が淡白な山形はコーナーキックからでもクロス攻撃からでも林を脅かすことができない。

 

 アディショナルタイム6分に突入すると、仙台は相良と中山に代えて知念とオナイウを投入し、5-4-1でゲームのクローズへと取り掛かる。

 その後も最後まで集中力を切らさなかった仙台がこのまま試合を終わらせた。

 4試合ぶりのクリーンシートを達成し、完勝と言っていい内容でみちのくダービーファーストラウンドを制した。

 

最後に・・・

 両チームのサポーターが作り出す最高の雰囲気でのダービー。コロナ禍以降で最多の入場者数となったホーム・ユアスタで仙台は完勝することができた。

 ボール保持をベースとする山形に対して、ビルドアップを引っ掛けてショートカウンターで仕留めた先制点はまさに狙い通り。開始10分で先手を奪えたことで勝点3を大きく引き寄せた。

 また、この試合では郷家や工藤などの地元出身選手が最後まで気持ちを見せてハードワークしていたことが印象的だったし、山形の両ウイングに対して髙田、石尾の両サイドバックもほとんど仕事をさせなかったなど個人単位で見てもハイパフォーマンスが光った試合でもあった。

 

 加えて、この試合は森山監督が目指しているゲームプランに近い展開にすることができたと思う。前半からフルスロットルで襲い掛かり、早い時間に先制点を奪うと、前半のうちに追加点ももぎ取る。後半は3点目も目指しながら11人が集中力の高い守備でしっかり守り切る。開幕10試合目にして、理想通りの戦いをできたことはチームにとって非常に自信に繋がるものだと思う。

 

 もちろんこれで満足するわけにはいかない。次節はアウェイで西の横綱清水エスパルスとの対戦。高い個人能力をベースにしっかり勝点3を拾って首位に立っている。

 そんな清水に対して、仙台はやるべきことを変えずにしっかりハードワークして挑んでいきたい。個人能力が高い相手に1対1だけではなく数的優位な局面を多く作って隙を作らないことが重要だ。

 また1週間いい準備をして、アウェイで勝点をもぎ取り仙台へ帰ってきて欲しい!!

 

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