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【タフな90分間】明治安田生命J2第10節 ベガルタ仙台vsファジアーノ岡山

 さて、今回はファジアーノ岡山戦を振り返ります。

↓前節のレビューはこちら

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スタメン

 ベガルタ仙台は、水曜日に行われた清水エスパルス戦で先制されたものの、我慢強く守った後半に郷家のゴールで追いつきアウェイで勝点1を獲得。アウェイ連戦で勝点4を稼いでホームへ帰ってきた。

 今節の相手はファジアーノ岡山。昨年は2試合ともに無得点に終わった相手だけに堅守ではあるが、それをこじ開けて久々のホーム勝利と行きたいところだ。

 今節は右サイドバックに蜂須賀がスタメン。センターバックは小出と菅田のコンビとなった。またベンチには負傷明けで戻ってきた氣田がメンバー入りを果たした。

 一方のファジアーノ岡山は、前節・ロアッソ熊本スコアレスドロー。ここ4試合連続引き分けとなかなか波に乗り切れていない状況だ。

 ヨルディ・バイスと柳のセンターバックコンビは健在だが、前線の軸が定まっていない印象だ。この乗り切れていない状況を打破するためにも、今節はアウェイながら勝利を目指す。

 岡山は4-4-2の布陣を敷いた。ボランチに輪笠と田部井、2トップに櫻川とステファン・ムークが並ぶ。なお、ゴールキーパーの堀田は仙台ユース出身だ。

 

前半

(1)時間とスペースの奪い合い

 前半開始から両チームともに中盤での激しい攻防でゲームの幕が開ける。

 両チームともに考えていることは同じで、全体をコンパクトにして相手から時間とスペースを奪って、主導権を握っていくプランだった。

 仙台は、甲府戦同様に縦横が非常にコンパクトな状態でゲームに入った。中盤での球際バトルに制しながら、エヴェルトン、鎌田、中島らが個人の技術で岡山の守備を剥がしてボールをサイドへ解放し、敵陣へと押し込んでいった。

 一方の岡山も仙台同様にボールホルダーへ強くプレッシングを行うため、仙台は前からプレッシングに来る岡山に対して、ボールを保持するよりも早く縦へボールを付けていくことを優先していた。よって、いつもであれば3-4-3へと可変することが多い仙台のボール保持が、この日は4-4-2のまま攻めていくことが多かった。

 

 そんな時間とスペースを奪い合いを最初に制して得点へ結びつけたのは仙台だった。

 フリーキックのクリアボールへ猛然とプレスを掛ける中島。そんな中島のプレスが高木のパスミスを誘い、そしてそのミスが輪笠のミスにも連鎖し、不安定な状態で堀田のもとへ。堀田はゴールに入りそうなボールを掻き出すのに精いっぱいで、それを見逃さなかった中島が流し込み幸先よく先制に成功する。

 

(2)柳の周りを巡る攻防

 仙台は、強くプレッシングに行く際に狙い目を定めて、再現性の高い守備を行っていた。

 仙台の狙いとしていたのはセンターバックの柳。岡山のビルドアップは堀田が左利きのために、左サイドから右サイドに循環することが多かった。

 堀田から柳へボールが渡ったときに2トップがプレスを開始する。2トップはボランチへのパスコースを切りながら、サイドへ誘導するようにプレスを掛ける。

 後方はサイドバックサイドハーフへしっかり突くことで出所を防ぐ。迷った柳はパスミスを起こし、仙台のターンになるという形となっていた。

 屈強なセンターバックコンビだが、そこまで足元が上手いタイプではないコンビなので、仙台のプレッシングは面白いようにハマっていた。

 

 しかし時間の経過とともに少しずつ変化していく。

 柳はセンターバック間に落ちるボランチの援助をもらいながら、自身でボールを運んでいくようになる。仙台の2トップはボランチへのパスコースを消すことを優先し、簡単にボールを進めらてしまい、自陣に下がって守備する時間が多くなった。

 この辺りはベンチからの指示があったものだと思う。

 

 その後の仙台は、柳に対して秋山が前に出てプレッシャーを与えることで再びミスを誘い出すことに成功する。

 恐らくこちらもベンチからの指示があってのものだと思う。両チームのベンチ前で行われていた攻防だっただけに、両チームともに盛んに駆け引きが行われていた。

 

 前半は岡山のミスを誘発した仙台が、陣形をコンパクトにして戦うことで主導権を握れた展開だった。1点リードで折り返す。

 

後半

(1)仙台守備陣を引っ張る木村の働き

 後半開始からお互いに選手を1人代えた。仙台は秋山から内田へ。岡山はムークから木村へ交代を行った。

 後半開始早々にさっそく狙いが得点に結びついたのは岡山だった。

 柳のロングボールに抜け出した木村。菅田のクリアミスもあってボールを回収するとそのまま右サイドを抉ってクロス。ファーサイドの佐野が冷静に流し込んで同点に追いついた。

 前半は櫻川を狙ったボールが中心だったが、後半は木村が背後へランニングすることで仙台守備陣を引っ張る動きがでたことでセカンドボールを回収できるようになった。

 仙台としては後半もコンパクトに前線からプレッシングを仕掛けたかった矢先に、岡山にロングボールを使われて全体が間延びしてしまった。

 

 また木村の背後への抜け出しは、前半狙いどころにされていた柳にも影響を与え、右サイドで木村が抜け出すことでキム・テヒョンと内田が前へ行けなくなり、柳とその周辺に時間とスペースが生まれるようになった。

 このように、後半序盤は岡山がゲームの流れを引き戻すことに成功した。

 

(2)連戦の最終盤・タフなバトル

 3連戦の最終盤となる後半。両チームともに疲労の色が見え、少しずつ中盤にスペースが生まれるようになる。

 仙台は中島や山田が岡山の中盤とディフェンスラインの間でボールを受け、そこへ鎌田やエヴェルトン、郷家、そして72分に途中投入された氣田が絡んでいく。

 岡山の中盤の強度が落ちて、中央からバイタルエリアへ侵入する回数を増やすものの、屈強なセンターバックコンビに阻まれたり、縦へ攻め急ぐあまりに正確性を欠き、ラストパスにズレが生じるようになった。

 

 岡山は58分にチアゴ・アウベス、72分に河井と高橋を投入し、中盤の守備強度を保ちながらカウンターを発動させるプランへ移行する。ラスト10分になると攻め込む仙台に対してシンプルにロングボールを送り、そのセカンドボールを回収することでチャンスを作り出していた。85分と86分に連続してチアゴ・アウベスにチャンスが訪れるも決めきることができなかった。

 

 仙台は81分にフォギーニョを投入する。間延びしつつあった中盤のカバーを行いながら、前線で2トップに関わることで、チャンスを作り出す役目だった。

 しかし疲労の色も濃くなると、なかなかシュートまで持ち込む場面が減っていった。

 

 両チームともに連戦のなかタフに戦い続けた90分間は1-1のドローで試合終了となった。仙台は3連戦で勝点5を稼ぎ、岡山は5試合連続の引き分けとなった。

 

最後に・・・

 今シーズン初の3連戦の最終戦となった試合。両チームともに球際が激しいタフな展開となったが勝点1を分け合う形となった。

 仙台としてはホームの声援を背に幸先よく先制点を奪えただけに、同点に追いつかれたのは悔しい結果だった。それでもケガ人を多く抱え、ほぼメンバーをいじらなかったなかでタフに戦い続けられたのは1つ成長できた部分かなと思う。

 本音を言えば、後半は攻め急ぐことが多く、少し勿体ないシーンも多かったように思える。久々の出場となった氣田に可能性を感じただけに、もう少し彼にボールを集められたらより迫力のある攻撃ができた気もする。ただ山田や中島をはじめ連戦を戦ったメンバーは、最後は頭に酸素が行っていない状態だったと思うので、難しい面もあった。

 

 連戦のポジティブな部分と言えば、秋山と鎌田の台頭だろう。秋山はセカンドボールの予測と球際の戦いで存在感を見せ甲府戦ではアシストも記録した。鎌田は昨年よりも体幹がしっかりして簡単に倒れなくなったし、もともとの特徴であるボールキープとドリブルも多くの場面で発揮できるようになった。

 ケガ人が多くなっている現状でもこうやって台頭は非常に大きい。このまましっかり底上げを行いながらチームの完成度を高めて行って欲しい。

 

 次節はアウェイで藤枝MYFCとの対戦。J2初昇格ながらも自分たちの攻撃サッカーに自信を持ってゴールと勝利を積み重ねている印象だ。今節も水戸に4ゴールを奪い勝利しているだけに簡単な相手ではない。次節もこの連戦で得た厳しくタフに戦う姿勢を忘れずに勝点3をゲットして欲しい!!

 

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