ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

【会心の逆転勝利】明治安田J2第30節 ベガルタ仙台vsモンテディオ山形

Jリーグ2025

　さて、今回はモンテディオ山形戦を振り返ります。みちのくダービー2ndラウンド。

↓前節のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

↓前回対戦のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

 

スタメン

　ベガルタ仙台は、前節・首位の水戸ホーリーホックと1-1の引き分け。前半序盤に先制されたものの、後半は猛攻を仕掛けて菅田のヘディングシュートで同点。アディショナルタイムには宮崎がネットを揺らしたものの、オフサイドで取り消しに。悔しい引き分けとなった。

　しかし暑さも和らいで、前線からのプレッシングが復活したことで、いい守備からいい攻撃へと繋げられるようになったのは収穫だった。今節はライバルであるモンテディオ山形とのみちのくダービー。ここで勝利することで、上向き始めている内容と結果を結びつけ、さらに勢いを加速させたいところだ。

　仙台は、林がコンディション不良で欠場。代わって仙台ユース出身で、ファジアーノ岡山から今シーズン戻ってきた堀田が移籍後初スタメンとなった。それ以外にはボランチに鎌田、2トップが郷家と宮崎のコンビに代わっている。ベンチには負傷離脱していた石尾が戻ってきた。

 

　一方のモンテディオ山形は、前節・カターレ富山に3-0の快勝。ホーム連戦で2試合連続3ゴールを奪っており、攻撃陣の調子が良い。

　山形はみちのくダービー1stラウンド後に渡邉晋監督を解任し、横内昭展監督が就任して立て直しを図っている。特に攻撃ではトップ下の土居を中心に流動的な攻撃が特徴だ。

　プレーオフ圏とは勝点差も広がっており、なかなか難しい状況ではあるが、ダービーを制することで一縷の望みを繋げていきたい一戦となった。

　山形は、連勝中なだけに同じ11人をスタメンに起用。ベンチではゴールキーパーに長谷川、そして熊本が前節と変わってメンバー入りとなっている。

 

前半

(1)いい守備からいい攻撃へ

　キックオフと同時に勢いよく試合に入ったのは仙台だった。宮崎、郷家の前線からのプレッシングをきっかけに山形のボールホルダーから時間とスペースを奪い、好きにさせない。

　ボールを奪えば、山形のボランチ周辺で2トップや中盤の選手がボールを受けることでカウンターやボール保持の局面へと移行させる。ボールを奪われても、素早いトランジションで圧力を掛けて逃がさない。山形が窮したキックを回収することで二次攻撃へと繋げていった。

　仙台は課題であった試合序盤に、いい守備からいい攻撃で流れを作り、主導権を握ってゲームへ入ることが出来た。

 

(2)左シャドーの宮崎とポケットを強襲する右サイド

　積極的なプレッシングと素早いトランジションで試合序盤からゲームの主導権を握った仙台は、ボール保持率を高めてゴールを目指していく。

　仙台のボール保持は、真瀬を高い位置に押し出す3-4-3の形。1つ目のポイントは左シャドーに宮崎を配置したことだった。

　本来であれば1トップの位置に宮崎を配置するのが常套手段だが、宮崎を左シャドーに置くことによって、山形のボランチ周辺での起点づくりをはじめ、宮崎の落ちる動きに対してマーカーの城和が付いてくれば、山形のセンターバックにギャップが出来るため、そこを郷家や荒木、時には3列目から鎌田が背後へランニングすることでダイナミックな攻撃を仕掛ける。

　城和が付いて来なければ、宮崎がボールを受けて押し込む展開へ。26分には奥山から宮崎にボールが渡ると、城和が付いて来なかったために宮崎が前を向きドリブルを開始。そのまま郷家へスルーパスを通し、郷家のファーサイドを狙ったシュートはヒュワードベルに阻まれる。このようにシャドーポジションで宮崎を活かす新たなオプションが生まれた。

 

　一方で右サイドは荒木、真瀬を中心としたコンビネーションでの崩しを狙った。

　山形の守備は4-2-4。左サイドハーフの國分が井上の前に立つため、大外の真瀬にボールが渡れば左サイドバックの野嶽が縦スライドでプレスを掛ける。

　しかし、山形は基本的にセンターバックが仙台の2トップのマークをするために、野嶽の背後のカバーリングを行わない。よって仙台は荒木が野嶽の背後であるハーフスペースへランニングすることで、真瀬からボールを引き出す。状況に応じて荒木が大外、真瀬がインナーラップでハーフスペースをランニングすることもあったが、流動的にポジションを入れ替えながら、ハーフスペースからポケットへの侵入を狙った。

　さらに真瀬と荒木に加えて松井も絡んでいくことで、さらにボール保持を高めながら、機を見てポケットへの侵入を狙っていく。

　幾度となく、ポケットへ侵入するものの最後のクロスがクリアされたり、合わなかったりしてゴールを奪うことが出来なかったが、これが後半の伏線へとなった。

 

(3)ワンチャンスを活かした山形

　前半序盤から仙台にボールを保持され、なかなかチャンスを作れなかった山形だが30分を過ぎていくと少しずつボールを持てるようになっていく。

　そして先に試合を動かしたのは劣勢だった山形だった。

　右サイドバックの岡本を起点とするボール保持から列を降りた田中へ。田中の鋭い楔パスを國分が受けると、菅田と奥山の間をランニングしていた氣田へスルーパス。氣田はそのままファーサイドを狙ったシュートを放ち、堀田の手に当たりながらもゴールへと吸い込まれて先制に成功した。

　山形としては、なかなか自分たちの攻撃の形を見出せなかったなかで、ようやく作り出したワンチャンスを活かした格好となった。

　一方の仙台としては、押し込みながらも決め手に欠く展開のなかで、このシーンでは山形のボール保持に対してダブルボランチが左サイドに寄ってしまったために、中央の國分にスペースを与え、そこへ楔パスを通されたことで失点を喫してしまった。前節、前々節に続いて前半に先制されてしまう試合展開となってしまった。

 

　失点後の仙台は、その後もバタつくシーンがあり井上の判断が遅くなったところからピンチを招くも、なんとか守り切る。

　残り少ない時間で、仙台は攻めに出て行くもののシュートまで持ち込むことが出来ずにハーフタイムを迎えることとなった。

 

　前半は仙台が主導権を握って敵陣で押し込みながら、劣勢だった山形にワンチャンスを活かされ、1点ビハインドで後半へと折り返す。

 

後半

(1)カウンターの応酬から同点、そして逆転へ

　後半のメンバーを整理すると、山形は前半途中でゴールキーパーのヒュワードベルが筋肉系のトラブルで負傷し長谷川と交代している。

　1点を追う仙台は、後半開始から奥山と松井に代わって復帰後初戦となった石尾と武田を投入した。

 

　後半序盤は、同点を目指す仙台と追加点を狙う山形がお互いに攻めに出るオープンな展開となる。ゆえにトランジションが激しく起きて、ボールを奪えば両チームともにカウンターを発動し、お互いのゴール前での展開が増えていった。

 

　そんな展開のなかで次にスコアを動かしたのは仙台だった。

　攻めに出た山形の攻撃を真瀬がカットすると荒木へ。荒木は右サイドへ流れた宮崎へスルーパスを送るとカウンターを発動。宮崎は一度シュートを狙うもブロックされ、再び自分の下へ返ってくると今度はマイナスのパスを選択する。

　3列目から飛び出した鎌田は防がれたものの、そのこぼれを狙っていた相良がゴール右隅へコントロールショットを決めて同点へ追いつく。

 

　この同点によって一気にボルテージが高まったユアスタの雰囲気に乗せられ、仙台はさらに強度を上げていく。

　仙台の同点後もカウンターの応酬が続いたが、集中力の高い守備で抑えると、前線では宮崎がポイントになり、逆にカウンターへ持ち込んでいく。

　そして山形を押し込むと同点から5分後に逆転に成功する。

　きっかけは、郷家が長谷川に対して猛烈なプレッシングを仕掛けたところ。プレッシングを受けた長谷川が窮してキックしたボールを回収すると、仙台は左サイドから右サイドへ展開。

　真瀬から武田へボールを渡ると、武田はポケットへランニングしていた荒木へスルーパスを送る。荒木の絶妙なクロスに最後は郷家が中央で合わせて逆転に成功した。

 

　このゴールは前半に書いた山形の守備の弱点を突いたものだった。サイドで真瀬が受けた段階で野嶽と國分が真瀬へ対応し、ポケットへランニングしていた荒木にはボランチの中村が対応していた。このことによって真瀬から横パスを受けた武田はフリーの状態となり、なんでもできる状況に。結果的に武田は絶妙なスルーパスを荒木へと通して、安部との駆け引きに勝った郷家がニアから中央へ走り込んだところへ荒木のピンポイントクロスが合ったゴールとなった。

　前半から狙い続けていたエリアに武田を投入したことで、さらに攻撃の厚みを増し、結果的に逆転ゴールを生んだベンチワークはお見事だった。

 

(2)ユアスタの熱量が選手たちを走らせる

　後半序盤で逆転に成功した仙台は、ボルテージが最高潮に達したユアスタの熱量を体全身に受けて、さらに集中力を高めて戦う。

　山形の攻撃に対して、守備ブロックを組んで守るだけではなく、行けるときは郷家や荒木を筆頭に山形のビルドアップ隊へプレッシングを仕掛けて、楽にプレーをさせない。

　そして、そんなプレッシャーが実ったのが70分だった。

　山形陣内での山形のスローインに対してプレッシングを掛け、ロングボールを蹴らせると、鎌田がヘディングで回収。そのボールをさらに相良がヘディングで宮崎へ繋げると、宮崎はそのままドリブルでペナルティエリアに侵入し、最後は左足でニアの天井を撃ち抜くシュートで追加点を決める。

　宮崎は前節、同様のシーンでセーブされてしまったものの、このシーンではしっかりニアの天井を撃ち抜いて見せた。また、前節はネットを揺らしながらオフサイドの判定もあり、まさに鬱憤を晴らすかのようなゴールであった。20試合ぶりのゴールは、この試合はさらに有利に進める貴重な追加点となった。

 

　山形は、この得点前に土居と國分に代えて高橋と坂本亘基を投入しており、さらに76分にディサロと田中に代えてベカ・ミケルタゼと寺山を投入し、5枚の交代カードを切り終える。

 

　2点差となった仙台は、その後は山形に押し込まれる展開もありながら、全員が集中力の高い守備で跳ね返していく。特に山形のシュートチャンスには複数人でブロックに行くなどこれ以上の失点を許さないという気迫を感じた。

　85分には中村のパスを受けた坂本がシュート性のクロスを送り、高橋が押し込もうとするがゴールラインギリギリで石尾がクリアする。

 

　仙台は82分に宮崎に代えてエロン。足の攣った相良に代えて中田。アディショナルタイムには郷家に代えて工藤を投入し、守備強度を保ちながらゲームのクロージングを目指した。

　アディショナルタイムには、カウンターから真瀬のクロスにエロンが合わせるもポストに直撃し4点目とはならず。

　それでも最後まで足を止めることがなかった仙台が、山形の攻撃を守り抜き3-1で勝利。2011年以来のみちのくダービーシーズンダブルを達成した。

 

最後に・・・

　みちのくダービー2ndラウンドは、会心の逆転勝利となった。

　試合の入りから主導権を握り、ボールを保持しながら押し込む展開を作り出せた。

　もちろん3試合連続で先制を許してしまったことは課題だが、前半は決して悪い内容ではなく、後半に石尾と武田の途中投入で攻撃の火力を上げて逆転することが出来た。

 

　同点、逆転とゴールが決まるごとにボルテージが高まるユアスタの熱気が選手たちを走らせたことは言うまでもなく、まさに全員で勝ち取った勝利と言えるだろう。

　郷家や荒木は最後まで相手ディフェンスにプレッシャーを与え続け、守ってはセンターバックを中心に最後まで体を張って跳ね返し続けた。

 

　大事なのは、このダービーを制した次のゲーム。今までもそうだがダービーは私たちの想像以上にエネルギーを使うために、疲労度が高い。今までもダービー後の試合は勝てておらず、次節も難しい試合が予想される。

　次節の対戦相手である北海道コンサドーレ札幌は、徳島ヴォルティスに4人の出場停止者がいながらも勝利し、プレーオフ進出を諦めていない。

　監督交代後は浮き沈みはありながらも、勝利数は増えており、個々のクオリティも高い。油断できる相手でないのは間違いない。

　仙台に期待したいことは、ダービーに出れなかったフレッシュな選手の活躍だ。ダービーに出られなかった悔しさをエネルギーに変えて戦う新たなヒーローの登場に期待したい。

　ダービーの勢いをより加速させるためにも重要になる次節。今節同様に試合の入りから相手に襲い掛かって主導権を握り、守っては集中力の高い守備で札幌の攻撃を防ぎながら、勝利を目指して欲しい！！

 

ハイライト


www.youtube.com

 

公式記録

www.vegalta.co.jp