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【力負け】明治安田J2第17節 ベガルタ仙台vsファジアーノ岡山

 さて、今回はファジアーノ岡山戦を振り返ります。

↓前節のレビューはこちら

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スタメン

 ベガルタ仙台は、前節・栃木SCに2-1の逆転勝利で4連勝中。2試合連続で監督交代直後のチームとの対戦だったが、連勝を収めている。接戦をしぶとく勝利しているなかで前節はリード後に交代カードを切りながら強度と出力を上げていく戦いに兆しが見えた。今節はプレーオフ圏内に位置するファジアーノ岡山が相手。高い強度と堅守を誇る岡山の牙城を崩して13シーズンぶりの5連勝を達成したいところだ。

 スタメンは変更なし。ベンチには知念とエロンが前節と代わってメンバー入りを果たしている。

 一方のファジアーノ岡山は、前節・ヴァンフォーレ甲府に2-0で勝利。5試合ぶりの勝利となった。新戦力のグレイソンらに怪我人が出ているなかで、ようやく勝点3をもぎ取った。この勢いを加速させて上位を目指したい岡山。近年相性がいい仙台に勝利し、連勝を達成したい試合だ。

 岡山は、左ウイングバックに末吉を起用。それ以外はベンチともに変更なしだった。

 

前半

(1)両サイドの推進力とPK奪取

 試合序盤は、仙台がサイドから押し上げていく展開だった。

 左サイドの相良は自力でボールを運び、オナイウはここ数試合と同様に背後へ抜け出して全体を押し上げていく。仙台は、両サイドの推進力を持って開始から敵陣へ侵入することができた。

 そして7分には自陣のビルドアップで右サイドへ展開すると、髙田のスルーパスに反応したオナイウがクロスを上げる。これが末吉の手に当たったということでPKを獲得した。

 このPKを中島が成功し、仙台は幸先よく先制に成功する。前節のPKは止められた中島だが、今節は右隅にしっかり決めた。

 

(2)自陣での不安定さが目立った仙台

 幸先よく先制したものの、この試合の仙台には不安定さもあった。

 特に自陣では、ボールを繋げようとしたところで岡山の守備に引っ掛かり、そのままゴール前へ侵入されることが頻発した。

 7分のPK獲得の前のシーンでは、岡山が敵陣でボールを引っ掛けるとゴール前でチャンスを迎え、岩渕は倒されたもののノーファウル。こぼれを早川が狙うがゴール右へ逸れた。

 

 その後も自陣でのボール保持などで引っ掛かると岡山にチャンスを与えていた。

 そしてこの流れから20分に同点に追いつかれる。

 菅田のロングフィードがずれて、竹内が回収し末吉がドリブルで仕掛ける。末吉は仙台の守備を引き寄せて岩渕へ渡すと、岩渕はカットインしながら松井を交わして早川へ。早川は大外の柳貴博を囮に使いながら、石尾を巧みに切り返すとそのままゴール左隅へ突き刺して同点へ追いつく。

 岡山としては何度も繰り返していた敵陣でのボール奪取からの得点。仙台にとっては不安定さを解消できないまま、失点に繋がってしまった形となった。

 

(3)岡山の守備に対する仙台の狙いどころ

 時間の経過とともに、仙台がボールを保持する時間が長くなっていった。

 岡山は前からプレッシングに行くときと後ろで構えるときとで守備の配置が異なっていた。

 岡山の前プレ時は5-2-3となり、仙台の3枚に対して前線3枚を当てるような形となる。

 そんな岡山に対して、まず仙台は3-2の形を作って3バックとダブルボランチがボールを動かしながら、保持の安定を目指した。23分ごろには森山監督から「ダブルボランチは2人とも出て行かない!」という指示が集音マイクに入っていたのもあって、長澤と松井は3バックからボールを引き出せる位置を取ることを優先した。

 ボール保持が安定すると、次第に岡山も前プレを止めて撤退守備へと切り替えていく。このときの岡山は岩渕が3センターの一角になる5-3-2の立ち位置となっていた。

 恐らく前線のルカオを孤立させないために早川を隣に置くことでカウンターを発動しやすいようにしたのではないかと思う。岩渕が3センターの一角を担っているのは守備タスクをしっかりこなせることと、スプリント力があるため一気に前線へ駆け上がれるからだと推測している。

 

 対する仙台は、岡山の「2」と「3」の脇を攻撃の起点として崩しに掛かろうとした。「2」の脇はセンターバックが、「3」の脇はサイドバックがそれぞれ担当することが多く、ボランチも加わりながら左右へ揺さぶりながら、空いた中央のスペースへ楔を入れてコンビネーションから崩すことをトライした。

 37分には、押し込んだ形から石尾のパスを起点に中央でのコンビネーションから長澤のスルーパスに反応した石尾がシュートを放つがブローダーセンに阻まれる。

 前半は中央からサイドからと様々なコンビネーションでシュートまで持ち込んだが、最後にブローダーセンの壁を越えることができずに前半が終了する。

 前半は幸先よく先制したものの、岡山に追いつかれ1-1で後半へと折り返す。

 

後半

(1)与えたくなかった勝ち越しゴール

 後半開始早々の46分に試合が動く。

 小出の中途半端になったクリアボールを回収するとルカオが左から右へ展開。藤田を経由して柳貴博に渡るとアーリークロスファーサイドへ流れてフリーとなった岩渕がゴールに流し込んだ。

 岡山としては前半途中から我慢強く守っていたなかで、前半同様に敵陣でボールを回収したことをきっかけに逆転ゴールを決めることができた。

 一方の仙台としては、最も気を付けなければならない開始序盤の時間帯で失点を喫してしまった。

 

(2)オーバーアタック気味になる仙台と手薄な背後を狙う岡山

 早々にゲームが動いたこともあって、再度岡山は守備ブロックを構築して守備からゲームに入る展開となった。

 後半の岡山は5-4-1の守備ブロックへと変わり、自陣のスペースを埋めながら、仙台の出し手ではなく受け手の選手を捕まえることで、前半のような中央からのコンビネーションを封じしていった。

 よって、仙台は前半以上に攻めあぐねる展開となっていく。

 仙台は61分に石尾に代わって真瀬が投入される。

 岡山が5-4-1のブロックになったことで、仙台はビルドアップ隊の人数を削り、両サイドバックも高い位置を取りながら人数を掛けて岡山の守備を崩しに掛かった。

 しかし裏を返せば仙台はセンターバックしか残っておらず、岡山はそんな手薄になった仙台の守備にルカオを中心にシャドーが加わってカウンターを狙う形になっていく。

 

 そして次にゲームを動かしたのは岡山だった。

 阿部が前線へクリアするとルカオへ渡る。ルカオを重戦車のごとく菅田をドリブルで引きはがすと、ファーで待ち受けていた木村が押し込んで点差を広げた。

 岡山としてはリード後に狙っていた展開での追加点となった。

 

 リードを広げられた仙台は、名願と松下を投入。岡山も中盤の守備強度と前線のエネルギーを注入する目的で輪笠と田中を投入する。

 そして岡山はさらにリードを広げる。

 ブローダーセンのロングボールをきっかけにボールを収めると、藤田のスルーパスに木村が抜け出す。一度はクロスが合わなかったものの、再び木村へ渡ると右サイドから丁寧なクロスを上げ、ファーサイドへ走り込んでいた柳貴博が押し込み4点目を決める。

 岡山の得点はいずれもビルドアップではなく、敵陣でセカンドボールやルーズボールを回収したところがきっかけだった。木山監督の狙い通りの形で効率よくゴールを積み重ねていった。

 

 敗戦濃厚となった仙台だったが、1点でも多く取り返すためにエロンと中山を前線に投入する。途中投入された松下が中盤でリズムを作れば、左サイドでは名願が果敢な仕掛けからチャンスを作り出すが、なかなか岡山ゴールを割ることができなかった。

 試合はこのまま1-4で終了。仙台は今季最多4失点で連勝ストップとなった。

 

最後に・・・

 4連勝中の仙台だったが、高い守備強度と前線に個人能力のある選手を揃える岡山に対して力負けとなった。

 試合を分けたのは後半早々の岩渕のゴールだった。あのシーンは緩んだ試合の入り方になってしまい、そこの隙を岡山に突かれた格好となった。

 森山監督が試合序盤襲い掛かっていくぞと毎試合のように声掛けしているが、その重要性をこの失点を通して痛感したことだろう。このような入り方をするのはこの試合で終わりにして、まずはこれを繰り返さないことが最も重要だ。

 

 大敗したものの、決してネガティブな要素だけではなかった。特に途中投入された名願、松下が存在感を発揮したのは好材料だった。名願は引いた相手に対して果敢にドリブルで仕掛けて、何度もペナルティエリアへ侵入していった。引いた相手を崩すのは容易ではないが、0から1を作り出せる名願の仕掛けは今後も切り札となり得る期待感を持たせてくれた。

 松下は久々に20分超のプレーとなったが、中盤の底から長短のパスを使い分けながら、攻撃に幅をもたらしてくれた。松下らしい背後へのパスもいくつか見れたし、プレーがシンプルになり、より洗練された印象だった。次節は長澤が出場停止のため、もし松下がスタメンで試合に出るのであればとても楽しみである。

 

 次節はアウェイでいわきFCとの対戦。再び勝点2差で迎える。大事なことは連敗しないことだろう。次節は、前述の通り長澤が出場停止で不在となる。チームの心臓を欠くことになるが、そんななかでも松下をはじめ代わりに出る選手が活躍すればまた一段とチームの底上げを図ることができる。

 昨シーズンは1分1敗と、いわきに勝てなかった。いわきも岡山同様に高い強度と出力でハードワークを信条するチームだけに、今節のような集中力を欠いた内容ではあっさりやられてしまう。いわき以上の強度と出力、そしてハードワークで襲い掛かって、勝点3をゲットして欲しい!!

 

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