ヒグのサッカー分析ブログ

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【神は細部に宿る】明治安田生命J2第11節 藤枝MYFCvsベガルタ仙台

 さて、今回は藤枝MYFC戦を振り返ります。

↓前節のレビューはこちら

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スタメン

 ベガルタ仙台は、前節・ファジアーノ岡山と1-1のドロー。前半は高い位置からのプレッシングが機能し、主導権を握れたが、ロングボールを活用した岡山に背後を取られて追いつかれた。

 3連戦を経て、コンパクトな4-4-2が機能し出している仙台。今節の相手はピッチの広く使う藤枝MYFCが相手だけにいかに相手の土俵でサッカーをしないかがポイントとなる試合となった。

 今節は小出が出場停止。右サイドバックには若狭が入った。左サイドは内田と氣田のコンビとなる。ベンチには久々に相良がメンバー入りし、離脱していた中山もベンチ入りとなった。

 一方の藤枝MYFCは前節・水戸ホーリーホック相手に4-1の勝利。J3から初昇格を果たした初年度ながら、その超攻撃的なサッカーでリーグトップの18点を記録し、今シーズンの台風の目となっている。

 3連勝を掛けた今節、藤枝はどんな相手でもぶれずに自分たちの志向しているサッカーを披露する。

 今節は、前節と同様のスタメン。ベンチにはアンデルソンが名を連ねた。

 

前半

(1)左右非対称な藤枝のボール保持

 前半は、開始5分間で両チームともに決定機を迎えスタートした。

 その後は積極的なプレッシングと安定したボール保持で藤枝が主導権を握って進んでいく。

 藤枝のボール保持の特徴は左右で非対称な立ち位置を取ることである。

 ビルドアップ隊はゴールキーパーも参加し、北村、川島、鈴木の3人が起点となる。小笠原は右サイドバック化し、久保が高い位置を取る。左サイドは藤枝で一番の質的優位となれる榎本が大外で待機する。

 中盤は杉田、水野、横山がお互いの役割を補完できる関係にあるため、ポジションチェンジを繰り返しながら、ビルドアップ隊からボールを引き出す。

 うまく仙台のプレッシングを掻い潜ったら、そのまま擬似カウンターを仕掛けるし、いざとなれば大外で待機する榎本へのサイドチェンジから一気にサイドを突破していくのが攻撃の形だった。

 

 仙台は、この試合でも高い位置で4-4-2の守備ブロックを敷き、2トップのプレスを皮切りにサイドへ誘導しながらボールを奪い取る狙いだった。

 しかしながら守備がハマらない。特に中盤では藤枝がポジションチェンジを繰り返すためにダブルボランチが捕まえきれずに突破されるシーンが散見された。また若狭の右サイドでも榎本に縦の突破を許すシーンを作られていた。

 時間の経過とともに、右サイドでは郷家が鈴木に対して外切りのプレスを行いながら、榎本へのパスコースを制限する。加えて、郷家はサイドチェンジに対して榎本へ対応できる準備をすることで若狭の負担を軽減するタスクをこなしていた。

 

(2)横のサポートを消され苦しむ仙台

 前述したとおりに藤枝はボール保持に加えて積極的なプレッシングで仙台のボール保持を阻害していた。

 藤枝のプレッシングは、ウイングバックの縦スライドとシャドーの立ち位置がポイントとなっている。

 藤枝は仙台のビルドアップがスタートすると渡邉とシャドーの1人がセンターバックへプレスを行う。そこでサイドバックへパスルートを誘導し、ウイングバックが縦スライドでさらに圧力を掛ける。また仙台のボランチに対してはもう1人のシャドーが監視することで横のサポートを消すことで、仙台のボール保持を窒息させていった。

 苦しくなった仙台は背後へのロングボールを選ぶことになる結果的にそれが繋がらなかったり、奪われたりすることで藤枝のターンとなっていった。

 

 ボール保持では苦しむシーンが多々あったが、仙台のこの試合での狙いはどちらかと言えばカウンターだった。藤枝は前線に人を掛けるので、カウンターは仕掛けやすかった。奪ったボールの1つ目が上手く繋がれば鎌田や氣田、中島を起点としてカウンターを発動できていたし、シュートまで完結したシーンも3つほど作れた。特に開始早々の鎌田のポスト直撃のシーンが決まればもう少しゲーム展開は変わっていたのかもしれない。

 

(3)ロングボールによる事故

 藤枝が主導権を握った前半は、45分に得点が動く。

 北村のロングボールをキム・テヒョンと林が交錯し、渡邉が冷静に流し込んで先制点を奪う。

 仙台としては連係ミスでの失点。それは確かなのだが、ロングボールを蹴られた際にダブルボランチが下がり切れていないことで渡邉がフリーとなった。中盤の選手もラインを下げることをもっと強く意識してプレーしていれば、ダイレクト打たれずに対応できたシーンだったかもしれない。そういう些細な部分も現状で失点が重なっている原因のように感じている。

 前半は、この渡邉の得点で藤枝がリードし折り返す。

 

後半

(1)コンパクトな守備・ボールホルダーに対するサポートの修正

 前半は、前線から積極的なプレッシングを仕掛けたものの、藤枝の巧みなボール保持に機能しなかった仙台。後半は改めてコンパクトに守備をすることを再確認し、守備からゲームに入っていった。

 後半は、前から行くことを止めて最終ラインの高さを維持しながら、各選手がスペースを意識した守備に切り替え。藤枝のボール保持に対して丹念にスライドしながら対応することが多くなった。前半はダブルボランチが藤枝の中盤に対して数的不利で対応することが多く、それをまずは無くしたかったのだと思う。

 ただ、藤枝がボールを保持する時間が長くなることは変わりないので、1人剥がされると危ないシーンは作られていた。49分の榎本のカットインシュートを林のセーブで難を逃れる。

 

 仙台はボール保持でもサポートの微調整で修正を図ろうとしていた。

 前半よりもキム・テヒョンに対する内田のサポートが平行になることでボールを受けたときに前を向けるシーンが多くなった。

 また、前半は背後へのロングボールが多かったが、後半は2トップやサイドハーフの足元に縦パスを通して、攻撃のスイッチを入れる狙いがあったが、藤枝の素早い寄せや自らのパスミスもあり、なかなか攻撃のスイッチが入らない展開が続いていった。

 

(2)相良、加藤、中山が与えた影響

 縦パスが入らない状況を見て伊藤監督は60分に3人替えを行う。氣田、中島、山田に代えて相良、加藤、中山が投入される。中山の1トップに郷家がトップ下となった。

 この交代による一番良かった点は、中山の登場によって前線に起点ができたことと、相良、加藤、郷家の2列目がボール保持に関与し始めたことだった。

 彼らが列を降りながらビルドアップ隊からボールを出し入れすることで、藤枝のプレッシングを抑制し、ゆっくりと敵陣に侵入することができた。

 そこから仙台は一気に逆転まで持っていく。63分に左サイドでの作りから相良がドリブルで突破し、ニアへクロスを送ると中山がニアで合わせて同点。中山はチームが待ちにわびていた今シーズン初ゴールとなった。

 続く65分には右サイドのスローインから加藤が粘るとエヴェルトンが拾い、郷家へスルーパス。これを郷家が冷静にループシュートで沈めて一気に逆転に成功する。

 ここまで氣田、郷家、中島、山田のユニットだと、素早く攻め切ろうと一気に加速することが多かったが、反対に相良、加藤、郷家、中山のユニットになったことでゆっくり攻めることで厚みのある攻撃ができた。攻撃のリズムを変えたことも藤枝の守備に多少なりとも影響を与えたに違いない。伊藤監督の采配が的中した時間帯だった。

 

(3)逃げ切り体制を図るも・・・

 その後の仙台は、引き続き4-4-2のコンパクトな守備ブロックで藤枝へ対抗する。

 しかし、1点を追う藤枝も72分に小笠原と水野に代えて久富と矢村を投入し、3-1-4-2へとシステムを変更する。前線を2トップにしたこの時間帯から藤枝が押し込む時間が続いていった。

 

 次の一手は仙台。78分に郷家に代えて蜂須賀を投入し、この段階で5-4-1へシステム変更をし、1点差を守り切る方向へ舵を切った。

 続く81分に藤枝は平尾からアンデルソンへスイッチ。この交代で藤枝は前線3人のトップ下に横山を配置するパワープレーに近い配置へと変更する。

 

 5バックにして守り切ろうとする仙台だったが、一瞬のほころびを見せてしまう。

 エヴェルトンの落としを渡邉にカットされて、一気に局面が変わる。そのままカウンターを発動され最後は久保がゴール左隅へ決めた。

 この失点で前へと出た仙台は、バランスを崩して藤枝に再逆転を許すこととなる。

 鈴木のロングボールを久富が競り勝ち、最後は矢村が狭いコースを打ち抜く。対応したキム・テヒョンが直前で足を痛めて十分に寄せ切れなかったことも運の尽きだった。

 

 その後、菅田をパワープレーで上げて同点を目指すも、ゴールを割ることはできずにタイムアップ。一時は逆転に成功した仙台だったが、自らのミスでバランスを崩し再逆転を許して敗戦となった。

 

最後に・・・

 前半から決していい内容ではなかったものの、ハーフタイムの修正と選手交代から流れを引き寄せて逆転に成功した。

 藤枝が前線に人数を掛けていたので、時間帯はやや早かったものの5-4-1に選択したことも間違った判断ではなかったと思う。

 

 だからこそ、5-4-1にしてからのプレー選択は少し残念だった。失点シーンのエヴェルトンのパスミスもだが、全体的に奪ったボールをどうするかの選択が曖昧だった。

 奪ったボールを繋いでカウンターに持ち込むのか、敵陣へクリアしてラインを押し上げ高い位置から守備に徹底するのかの判断が曖昧で結果的に中途半端なプレーが多くなったことは逆転された原因の1つだったと考えている。

 

 ただ、ネガティブなことだけではなく、中山に待望の初ゴールが生まれ、逆転まで持って行けたことは間違いなく進歩だと思う。

 伊藤体制になってからリードを逃げ切る展開は少なく、この試合の失態を糧にこれから同じ過ちを繰り返さないためにも、日々のトレーニングからチームでどう戦っていくか(時間帯、スコア状況による戦い方などなど)を共有してより強固なチームになって欲しいと願っている。

 

 次節から再び連戦がスタートする。3連戦の初戦は今シーズン好調の大分トリニータをホームで迎える。大分は昨シーズンからしっかり積み上げてきたものがあり、チームに一体感もある。そんな難敵に仙台はチャレンジャーとして果敢に立ち向かって欲しいところだ。

 仙台らしくハードワークし、粘り強く戦うことで勝機を見出して欲しい!!

 

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