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【自分たちが積み上げたものを信じて】明治安田J2第29節 ベガルタ仙台vs水戸ホーリーホック

 さて、今回は水戸ホーリーホック戦を振り返ります。

↓前節のレビューはこちら

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↓前回対戦のレビューはこちら

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スタメン

 ベガルタ仙台は、前節・愛媛FCに1-1の引き分け。勝利したジェフユナイテッド千葉戦で機能したミドルブロックを基軸とした守備で挑んだものの、試合序盤から愛媛のパスワークに翻弄され失点。その後は終始押し込む展開だったものの決め手を欠き、ようやく最終盤に山内のPKで追いつき、辛くも勝点1を獲得した。

 いよいよ残り10試合となったJ2。例年以上の混戦を抜け出すためにもホームでの勝利が欲しいところだ。中断期間を挟んで、今節は首位・水戸ホーリーホックとの対戦。前回対戦ではカウンターから2点を先行されるも、郷家と宮崎の得点で追いついた。

 千葉戦のような高い強度の戦いを取り戻し、勝点3を奪取したい一戦となった。

 今節は、2人のメンバーを入れ替え。ボランチに松井、2トップの一角にエロンが起用された。右サイドハーフには荒木が入り、鎌田と郷家はベンチスタートとなっている。

 

 一方の水戸ホーリーホックは、前節・レノファ山口FCに2-2の引き分け。終盤までリードを保っていたが、終盤に追いつかれて悔しい勝点1となった。

 ここまで首位を快走してきた水戸だが、ここ最近は終盤に追いつかれることも多く、ペースも落ちてきて、次第に2位以下との勝点差も詰まってきている。

 水戸にとっては悲願の初昇格に向けて、ここが正念場と言えよう。中断期間を経て、再度チームの約束事を整理し、この試合に勝利することで昇格に向けて加速していきたい一戦となった。

 水戸は、ゴールキーパーの西川とセンターバックの鷹啄がそれぞれスタメンに復帰。ボランチの一角に山崎、左サイドハーフに新井が起用され、渡邉とU-20ワールドカップに選出された齋藤が2トップを組む。ベンチには関東学院大学在籍中の特別指定選手である佐々木や大怪我から復帰した梅田、岐阜から今夏加入した粟飯原が前節から代わってメンバー入りとなっている。

 

前半

(1)がっぷり四つの主導権争いと齋藤俊輔のゴラッソ

 4-4-2を採用し、同じようなコンパクトで高い強度の守備をベースに戦っているチーム同士だけあって、試合開始から中盤の激しい攻防が繰り広げられた。

 それ故に、試合序盤はファウルで試合が止まることも多く、試合が途切れ途切れになり、がっぷり四つな主導権争いとなった。

 

 そんな中で、最初のチャンスを活かしたのは水戸だった。

 大森のロングフィードに抜け出した渡邉が左サイドで収めてキープをすると、内側でパスコースを作っていた齋藤へパスを出す。

 齋藤は3人に囲まれながらも、巧みなステップで交わしてペナルティエリアに侵入して右足を振り抜き、水戸が先制に成功する。

 まさに水戸が得意としている形だった。大森のロングフィードも、渡邉の背後への抜け出しからのボールキープも、齋藤のステップとシュートもクオリティが高かった。

 仙台としては、警戒していた渡邉の抜け出しをケアできず、また齋藤にも3人で囲みに行きながらも取り切れなかったことは悔やまれるが、これは水戸のクオリティの高さが上回ったと言えよう。

 しかしながら、愛媛戦に続いて先制を許す展開となってしまった。

 

 その後も先制した勢いそのままに水戸が自分たちのストロングポイントである守備でペースを握る。ボールホルダーへの素早い寄せと、ボールを奪われた後の素早いネガティブトランジションでプレッシャーを掛け続けて、仙台のパスミスを誘発。奪ったら渡邉を起点とした素早いカウンターからゴールを目指した。

 試合序盤はがっぷり四つな展開だったが、水戸が得点した以降は、勢いそのままに主導権を握ってゲームを進めていった。

 

(2)プレッシングの口火を切るエロン

 水戸ペースでゲームが進むなかで、仙台も守備から主導権を握り返そうとアクションを起こしていく。

 前節までは8月の猛暑でのゲームでどうしても体力的に前からプレッシングを掛けにくい気候だったが、9月に入り暑さも和らいできたことで、前半からプレッシングを解禁する。

 口火を切ったのはエロンだった。3-4-2-1に可変する水戸のボール保持に対して、エロンがボールホルダーへプレッシングを仕掛け、小林が水戸のダブルボランチを背中でケアする。

 エロンのプレッシングをきっかけに2列目、3列目も連動して人を掴まえに行く。水戸のパスルートをサイドへと誘導させて、サイドでボールを奪い切る狙いを持っていた。

 エロンは前半から非常にハードワークし、プレッシングをけん引。目には見えにくいところでチームに大きな貢献をしていた。

 24分には高い位置で松井がパスカットし、エロンが素早くゴールを狙うも相手ディフェンスにブロックされる。ただ、この辺から次第に仙台が主導権を握り返してゲームを進められるようになった。

 

 ボール保持においても、序盤は水戸の積極的なプレッシングを前にミスも多かったが、ビルドアップ隊に武田、松井のダブルボランチが低い位置でボールをピックアップしながら保持率を上げることで、水戸のプレッシングを鈍化させていく。

 また、ダブルボランチがボールを触る回数が多くなったことで、真瀬が高井位置を取れるようになり、右サイドからの前進が多くなっていく。

 38分には押し込んだ形から荒木のスルーパスに真瀬が抜け出してグランダーのクロスを上げるが、小林にわずかに合わなかった。

 44分には武田の右コーナーキックがミスキックになったものの、そのセカンドを拾って奥山のフィードからエロンがフリーでシュートを放つが、西川にセーブされる。

 

 試合序盤は先制されて水戸の守備にも苦しめられたが、エロンのプレッシングをきっかけに守備からリズムを取り戻し、攻撃ではボール保持率を高めて押し込めるようになった仙台だった。1点ビハインドで後半へと折り返す。

 

後半

(1)フリーマン鎌田と左サイドを活性化させる石井

 1点を追い掛ける仙台は、奥山と小林に代わって石井と鎌田を投入。水戸も前半早々にカードを貰っていた山崎に代えて長尾が投入された。

 

 前半途中からボール保持率を高めて押し込みながらも追いつけなかった仙台は、選手交代をしてさらに厚みのある攻撃でゴールを目指していく。

 まず自陣でのビルドアップでは、停滞気味だった左サイドに石井が入ったことで、石井を起点に加藤の周辺を利用しながら前進していく。相良が飯田をピン止めし、その手前のスペースを松井や鎌田が利用して石井からボールを引き出していく。

 また右サイドでは、前半から引き続き井上を起点として荒木、真瀬のコンビネーションで前進を図っていった。

 水戸も前半のように積極的なプレッシングは仕掛けずに4-4-2で撤退守備をする時間が長くなっていく。

 敵陣でボールを保持するようになった仙台は、鎌田がトップ下でフリーマンとなり、センターバックやダブルボランチからあらゆるエリアで顔を出しながらチャンスを窺う。

 鎌田がトップ下になり、両サイドバックも高い位置へ押し上げたことで相良と荒木は中央のエロンに近い位置でのプレーが増えていく。

 攻撃に厚みを持つことが出来るようになると、49分には左サイドから中央へ侵入し、荒木のキープから最後はペナルティエリアに侵入した真瀬がシュートを放つがゴール上へと外れる。

 62分には、右サイドから荒木、真瀬、鎌田の関係で前進していくと、鎌田の絶妙なスルーパスにエロンが反応するも、西川のセーブに阻まれる。

 鎌田のフリーマン起用と石井の左サイド活性化によって、前半よりもゴールの匂いが徐々にしてくるようになった。

 

(2)逆転への狼煙。無念のオフサイド

 後半は終始仙台が押し込む展開だったものの、カウンターが得意な水戸はボールを奪えばロングカウンターから攻め込むこともあった。

 ここぞのところでサイドハーフを含めて、しっかり長い距離を走るのは水戸の強さの秘訣だったが、仙台もセンターバックコンビや松井を中心に簡単にシュートまで持ち込ませない。ここぞのところの集中力は仙台も落ちていなかった。

 

 60分以降になると両ベンチも動き始める。水戸は61分に新井と加藤の両サイドハーフに代えて山本と多田を投入し、守備強度を維持しながらカウンターでの追加点を狙う。続く67分には先制点を挙げた齋藤に代わって粟飯原が投入された。

 

 一方の仙台は65分にエロンに代えて宮崎を投入。直後の67分には石井の楔パスから鎌田がアウトサイドのフリックでディフェンスラインの背後へボールを送ると宮崎が抜け出すも、これも西川に阻まれる。

 続く69分には武田に代わって郷家が投入され、鎌田と松井のダブルボランチに、郷家が右サイド、荒木が宮崎と2トップを組む形に変更された。

 そして押し込み続けた仙台がついに追いつく。

 石井のロングスローからの二次攻撃。左サイドから松井と真瀬を経由して郷家へ。郷家は迷わずクロスを入れると、ニアで待っていた菅田が合わせて同点に追いつく。

 郷家のクロスと菅田のヘディングシュートは双方ともに質が高いもの。ここぞのところで得点に絡む郷家はさすがだった。

 

 アディショナルタイムを含めて約20分を残して追いつけたことで、逆転への狼煙を上げられた。

 同点直後には荒木の楔パスから郷家がフリックして、真瀬が左足でシュートを放つも枠を捉えられなかった。

 

 両チームともに疲労の色が見え始めた終盤は足が攣り始める選手が続出。水戸はセンターバックの板倉が足を痛めて佐々木が投入される。

 仙台は、最後のカードで荒木に代わって山内が投入され、相良が最前線にポジションを上げた。

 

 水戸は5枚のカードを切ったものの、飯田など足を攣っていた選手がいたことで5-4-1にシステムを変更する。

 ホームで是が非でも勝利が欲しい仙台は、ユアスタの雰囲気を味方に付けて押し込み続け、アディショナルタイムに入ると右サイドでフリーキックを獲得する。

 石井のキックに宮崎が合わせてネットを揺らし、逆転に成功かと思われたが、ファーサイドで詰めていた菅田がプレーに関与したためオフサイドの判定となる。恐らくゴールキーパーを邪魔したというより、ファーでボールに触ろうとしたプレーがオフサイドと見られたのだろう。

 

 その後は水戸も攻め込む時間を作り、勝ち越しを目指す。一進一退の攻防がアディショナルタイムのラストプレーまで繰り広げられたが、両チームともにネットを揺らすことなく、試合は1-1の引き分けで終わった。

 

最後に・・・

 愛媛戦同様に、前半に先制を許して、その後は押し込み続ける展開となり、追いついて引き分けという内容だった。

 しかしながら、前節に比べると前半からプレッシングを解禁したことである程度守備が機能して、そこからペースを握ることが出来たのはポジティブな部分だったと思う。

 この試合の入りは両者ともに球際のバトルが激しい展開で難しかった。先制点も水戸のクオリティを褒めるべきだろう。森山監督が言う1点はしょうがないに値するものだと思うし、後半はオーバーアタックするなかでセンターバックを中心によく追加点を許さなかった。

 同点ゴールは73分と、逆転するには十分時間を残しており、宮崎のゴールがオフサイドでなければ勝つことが出来ていた。

 悪い状態から少しずつ底は打ってきていると思うので、あとは自分たちが積み上げてきたことを信じて戦うことが重要だ。

 

 次節はモンテディオ山形とのみちのくダービー2ndラウンド。前回対戦では、今後語り草になるであろう激しい打ち合いを制することが出来た。

 山形も前節、今節と3ゴールを奪って調子を上げてきており、プレーオフに向けて一縷の望みを掛けて戦いに来るはずだ。

 仙台はそんな山形に対して受けに回らず襲い掛かっていくことが求められる。そんな中でも試合の入りには気を付け、アラートさを持ちながら相手陣地でのプレー時間を増やしていきたいところだ。

 ホームユアスタで絶対に勝つというパッションは持ちながら、頭はクールに戦いたい。

 プライドを掛けた戦い。ホームを最高の雰囲気にして、まずは目の前の山形を倒すことに集中し、ハードワークとパッションで襲い掛かって欲しい!!

 

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