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【悔しさを力に変えて】明治安田J2第23節 ファジアーノ岡山vsベガルタ仙台

 さて、今回はファジアーノ岡山戦を振り返ります。

↓前節のレビューはこちら

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↓前回対戦のレビューはこちら

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スタメン

 ベガルタ仙台は、前節・栃木SCに3-2で勝利し、4試合ぶりの白星を挙げた。先制されたものの、約6分間に3ゴールを奪って逆転。後半は早い時間に1点差に詰め寄られ、苦しい展開をなんとか逃げ切った。

 今節はファジアーノ岡山との直接対決。前回対戦では1-4と力負けを喫した相手だけに、ここでリベンジを果たして自動昇格争いするチームに追随したところだ。

 今節は3人のメンバーを入れ替えた。石尾に続き内田も負傷離脱した左サイドバックに知念、右サイドバックには髙田、ボランチに怪我から復帰した工藤蒼生が起用された。ベンチには菅原が久しぶりのメンバー入りとなった。

 一方のファジアーノ岡山は、前節・清水エスパルスに1-3の敗戦。しかしそれまでの戦いは岡山らしいハードワークをベースに連勝を重ねている。仕切り直しとなる今節は、満員のシティライトスタジアムに仙台を迎え撃つ。近年相性がいい相手だけに、満員のサポーターの声援を背に6ポインターを制したいところだ。

 岡山は、3バックの真ん中に田上、ボランチに輪笠、左ウイングバックには髙橋を今シーズン初スタメンで起用した。今節は仙波がベンチ入りとなっている。

 

前半

(1)プレスを無効化し、ペースを握る岡山

 開始から両チームともにロングボールを敵陣へ送り、前線からのプレッシングをスタートすることで試合の主導権を握ろうとした。

 そんななかで一枚上手だったのは岡山だった。仙台の前線からのプレッシングに対してボール保持で付き合おうとせずに、ルカオや柳をターゲットとするシンプルなロングボールで仙台のプレスを無効化していく。

 ゆえに序盤のロングボール合戦から最初にペースを握ったのは岡山だった。

 岡山のビルドアップは3バックとダブルボランチをメインに前進していく。

 またボール保持における大きな特徴は、両ウイングバックの高さにある。

 左サイドの髙橋はそこまで高い位置を取らずに、鈴木からの配球を受けられる距離を保ち、岩渕が髙田の背後へ抜ける動きを繰り返す。

 右サイドは柳が高い位置に張り出して、知念をピン止め。空いたスペースに田中が降りてきて阿部からの配球を受けるような設計となっていた。

 鈴木、阿部の左右バックも前方への配球と運ぶドリブルによる前進ができ、また竹内と輪笠もしっかりリズムを作ることで、岡山のボール保持を安定させていた。

 岡山は地上戦での前進だけではなく、一発の展開も持ち合わせており、17分の田上のロングボールに抜け出して柳がシュートを放ったシーンは決定機となった。

 試合開始から序盤は岡山が仙台のプレスを無効化し、ボールを保持しながら試合を進めていった。

 

(2)相手の嫌なところを突けなかった仙台の攻撃

 一方の仙台も時間の経過とともに、徐々にボールを保持する機会を得ていくようになる。

 その前にこの試合における岡山のボール非保持も見ていきたい。

 この試合での岡山は、仙台の3-4-3のボール保持に対して、前線からプレッシングに行くときは4-4-2になる。柳が一列前に出て知念へアプローチ。左サイドでは岩渕が髙田を監視しながら、小出に対しても外切りのプレッシングを行う。

 自陣に撤退するときは5-4-1、もしくは5-2-3のブロックを組む約束となっていた。

 

 そんな岡山のボール非保持に対して、仙台もいつもの右肩上がりの保持スタイルで、3バックとダブルボランチがボールを保持しながらリズムを作る展開となる。

 しかし、この試合ではボール保持においてなかなか相手の嫌なところを突けなかった。3バックとダブルボランチでボールを動かすことができても、その先のバイタルエリアにボールを届けることができなかった。

 これにはさまざまな理由があると思う。1つはボール保持のキーマンである長澤がベンチにおり、工藤と松井で楔のパスを通せなかったこと、2つ目に前線に目を向ければ郷家も中島もライン間でボールを受ける意識が強く背後への抜け出しも少なかったこと。3つ目に右サイドのオナイウと髙田の立ち位置が曖昧なことが多く、特にオナイウはサイドに広がってボールを受けようとするポジションに対して、髙田もハーフスペースにいるべきか後方でサポートするべきか迷いが生じていた。さらに左サイドでも相良が孤立する場面が多く、知念の後方でのサポートがなかった。

 よって、ボールは持てどもなかなかチャンスまでは至らない。19分から20分にかけては、ボール保持して右サイドから押し込むシーンを作り出したがシュートまで持ち込めなかった。

 

(3)怪我の功名となった負傷交代

 岡山は24分にルカオが負傷し、早川との交代を余儀なくされる。この交代によって岩渕を頂点に左シャドーに田中、右シャドーに早川という配置になった。

 ルカオという起点がいなくなったことで、少し流れが変わることも予想されたが、この交代によって寧ろ岡山の前線からプレッシングがより強度を増すことになり、仙台は苦しむこととなる。

 また左シャドーに移った田中も岩渕のタスクであった背後への抜け出しに加えて、ライン間でボールを受けることで左サイドの攻撃が活性化していった。

 そして32分に先制ゴールが生まれる。岡山が押し込んだ形から波状攻撃となり、竹内のアーリークロスを柳が折り返して、最後は岩渕が決めて先制に成功した。

 岡山にとってはアクシデントがありながらも、結果的に怪我の功名となり、先手を取ることができた。

 

 前半は、岡山が試合のペースを握り、ルカオの交代というアクシデントはありながらも1点リードで折り返す。

 

後半

(1)ボール保持を整理した仙台

 仙台は後半から小出とオナイウに代わって真瀬とエロンを投入する。

 前半は相手の嫌なところを突けなかった仙台だったが、後半はエロンが前線でポイントとなり、攻撃に奥行きを作っていく。エロンがポイントになることで郷家と中島はシャドーのポジションで前を向いてプレーすることも可能となった。

 よって、後半は序盤からエロンを起点とした前進から岡山陣内でのプレー機会を増やしていく。

 また57分には工藤に代えて長澤を投入。長澤が投入されたことで、仙台のボール保持は一気にリズムが変わる。長澤の効果的な楔のパスやサイドチェンジによってゆっくりだったボール保持は一気にテンポアップに成功した。

 徐々にペースを握り返し、このままチャンスを作って同点に追いつければゲームの流れも変わったはずだ。しかし、堅く粘り強い守備の岡山の牙城は簡単に崩せない。

 70分には菅田のロングフィードにエロンが抜け出したもののクロスを選択。ここはセルフィッシュにシュートへ持ち込んで欲しかった。

 

 仙台がなかなか押し切れずにいると、次にチャンスが巡ってくるのは岡山だった。72分に早川の左コーナーキックを林がキャッチミスすると、こぼれを田上が押し込んで追加点を奪った。

 

(2)岡山の途切れない集中力

 追加点を奪ったことでかなりゲームを楽に進められる岡山は、柳貴博と岩渕に代わって柳育崇と齋藤を投入し、守備強度を上げる。

 仙台は失点前に名願を投入して、最後のカードは菅原をチョイスした。

 その後も仙台は、途中投入の名願のドリブルなどを中心としたサイド攻撃で、なんとかゴールを奪おうと攻撃するも、岡山も途切れない集中力で最後まで跳ね返した。

 

 今シーズン最多の15,269人が来場した試合は2-0で岡山の完勝。仙台にとっては6ポインターで勝利できず、順位を6位に落とす結果となった。

 

最後に・・・

 仙台としては苦しい試合展開となった。特に前半は工藤や知念など久々の選手がスタメンで登場し、アウェイということもあって少し守備的な戦いを選択した部分はあったと思う。しかしながら、ボールを保持できた時間もそれなりにあったなかで、ボール保持でリズムを作れなかったのは痛かった。特に後方と前線の距離感や選手間のコンビネーションが上手くいかなかったのは反省点だ。

 

 やはりまだまだ発展途上のチームなんだと感じる。大切なのは、この試合で何を学び、そしてどう次へ繋げるか。まだまだ積み上げていく時間があるなかでこの敗戦を糧にさらにレベルアップしかなければならない。

 そしてJ1昇格を勝ち取るためには、プレーオフで岡山を倒す必要がある。そこまでに残りの試合で勝点を積み上げながら成長していくことが求められる。

 

 次節は、再びアウェイで徳島ヴォルティスとの対戦。前回対戦では決め切ることができずにスコアレスドローに終わった。徳島は早い段階で増田監督に変わり、ここ最近は結果が出てきている。また、今節からは夏の新加入選手が登録可能となり、徳島には岩尾憲が復帰し、名古屋からはターレスが加わった。次節もタフな試合になることは間違いない。

 一方の仙台も山口から梅木翼、横浜F・マリノスから實藤友紀が新たに加わっている。新たな力を加えながら、なんとかプレーオフ圏内を死守し中断期間を迎えたい。この悔しい思いを次節にぶつけ、再び浮上のきっかけをつかむ試合にして欲しい!!

 

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