さて、今回はレノファ山口FC戦を振り返ります。
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スタメン
ベガルタ仙台は、前節・V・ファーレン長崎戦で1-2の敗戦。新型コロナウイルス陽性者も多数出て、出場できるメンバーが限られている中で攻勢を強める時間があったものの上位対決に敗れた。連敗が許されないなか、今節も出場できるメンバーは限られているが、その中で最大限のパワーを発揮し勝点3を持ち帰りたい一戦だ。
仙台は、前節から2人のメンバーを変更。ボランチに中島がスタメンで復帰。また2トップの一角には富樫も戻ってきた。ベンチにも長期離脱していたカルドーゾをはじめ、吉野や皆川も復帰している。また仙台ユース所属で2種登録の山田泰樹がベンチ入りしている。
一方のレノファ山口FCはここ4試合勝てていない。前節の栃木SC戦も開始早々にクロスから2失点を喫し敗戦。少しずつ降格圏が近づいてきている。上位対決ではあるが、地の利を生かして5試合ぶりの勝利を目指す。
山口は前節の後半から採用した3バックでこの試合に挑んだ。キーパーはリーグ初スタメンの19歳・寺門が起用され、ヘナンと眞鍋が出場停止の最終ラインには、高橋、渡部、生駒の3人。W佐藤がダブルボランチを組む。右ウイングバックに兒玉、梅木を頂点に高井と沼田のシャドーの布陣となった。ベンチには山瀬や岸田、大槻、高木など攻撃的な選手が名を連ねる。
前半
(1)可変する山口のボール保持
前半序盤は、3バックの布陣にした山口が勢いよくゲームに入り、前線のプレッシングから押し込む展開を作っていった。
この試合では3バックを採用した山口だったが、ボール保持では可変を行うことでボール保持率を上げて、いつもの4バックと同じ戦い方ができるようにとチャレンジしていた。
山口はボールを持つと高橋が右サイドバックになり、後方が渡部と生駒の2人になる。ボールを持っている高さと仙台の守備の立ち位置に応じて、彼ら2人の間に寺門か佐藤謙介が入ってビルドアップを助ける。
右サイドでは高橋が幅を取るので、横幅から兒玉が解放され、中へポジションを移動する。またシャドーの一角である沼田と梅木が2トップになり、もう片方のシャドーである高井はバランスを取りながら下がってボールを受けたりする調整役に徹していた。ゆえに左サイドの攻撃は桑原が1人で頑張るような形が多かった。
前半序盤は、そんな山口のやり方に慣れない仙台は少し自陣で受けるような格好で試合に入った。平岡や佐藤を中心に跳ね返しながら、カウンターのチャンスを窺う序盤の試合展開だった。
(2)ビルドアップミスからの失点、からの修正
徐々に試合が落ち着いていくと、仙台がボールを保持する時間が増えていく。
仙台のビルドアップは富田がセンターバックの列に降りてくるところからスタートする。
これで上手くいけばよかったのだが、山口のこの日のボール非保持は3-4-3だったため、仙台の3人(平岡、佐藤、富田)と山口の3人(梅木、沼田、高井)がぶつかる形になってしまう。
また、山口の前線からのプレスはしっかり設計されていて、梅木は中島へのパスコースを消して、シャドーとウイングバックで仙台のビルドアップ隊とサイドバックにプレスを掛ける約束となっていた。
仙台としては中島やその奥のサイドハーフないしは2トップへボールを届けたいのだが、パスコースがなかなか見つけられず、迷いのある状態でボールを保持していた。
そんな中で生まれたのが22分の失点だった。佐藤から石原へのパスを高井に奪われると、最後は沼田に決められて先制点を奪われる。
仙台としては迷いのある状態が生んだ失点となったし、山口としては狙いの1つがハマった形となった。
しかし、その直後の飲水タイムですぐさま仙台は修正する。
仙台は、富田の位置を下げずにプレーさせることで、ビルドアップ隊の配置を整理する。これで梅木のタスク(中島を消す)を迷わせることで仙台は少しずつボール保持に安定が生まれた。
また仙台は高い位置を取るウイングバックの背後をシンプルに使うようにもなる。佐藤の対角フィードや奪ったボールをシンプルに2トップへ預けることで徐々に山口陣内へと侵入する回数を増やせるようになった。
そして34分に中島の右コーナーキックから佐藤の折り返しを中山が合わせて同点。
続く37分には氣田のキープから右サイドの蜂須賀に展開し、蜂須賀のアーリークロスに富樫が合わせて逆転ゴールを決める。
ボール保持を安定させ、また前から来る山口の背後を突くことで主導権を握った仙台が、前半のうちに逆転に成功できた。
前半はミスから先制点を与えるも、飲水タイムを境に修正し逆転して折り返す。
後半
(1)配置をいじらなくなった山口
両チームとも後半開始からの交代はなく、後半が始まった。
前半の山口はボール保持・非保持の局面で可変を行っていた。しかし、守備では得点シーンのような場面を作れた一方で攻撃では効果的なシーンを作り出すことが少なかった。
よって、後半の山口は配置を変えず、ボール保持・非保持の局面でも3-4-2-1を継続してプレーするようになる。
ビルドアップ隊を3バックとダブルボランチに固定したことで、仙台の守備に対して安定してボールを保持できる局面が増えるようになった。
よって、生駒や高橋からワントップとシャドーへ楔のパスをチャレンジする回数が増えた。結果的に、後半に入るとより山口の攻撃は積極性を増したように感じたのだ。
一方の仙台は、夏場の戦いであり、リードしている展開なので、無理に前からは行かずにある程度コンパクトな陣形を維持しながら、山口の攻撃に対抗していった。
山口の縦パスに対しては、平岡、佐藤の両センターバックがしっかり対処し、奪ったボールを2トップが収めて起点になったところからカウンターを発動できていたので、そこまで流れが悪い状況ではなかった。
たらればを言えば、そのカウンターから早めに追加点を奪っていれば、かなり試合を楽に進められたことは事実だった。
(2)慎重な采配を強いられた原崎監督
前述した通り、後半は基本的に山口がボールを保持し、仙台は構えたところからカウンターで追加点を狙う構図になった。
後半序盤は山口に攻撃に対して、ある程度対応できていたし、カウンターも発動できていた。
しかし、計算外だったのは仙台がボールを保持する時間が後半はほとんどなかったことだろう。山口のプレッシングの厳しさもあり、なかなか落ち着いてゲームを進められなかったことは確かだった。ゆえに仙台の体力の消耗は予想以上に激しかったと思う。
そして、65分に内田が足を攣ったことによる交代から少しずつチーム全体の動きが重くなり出す。
前線も疲労が見え始め、後半序盤のようにボールを収められる回数が減っていく。また途中投入で入った鎌田や吉野もなかなか存在感を出せずに、押し込まれる展開が続いた。
また、原崎監督の試合後のコメントにもあったように、暑さと疲労があり、内田の交代のようなアクシデントも発生したことで簡単に選手交代をできず、慎重な采配を強いられた。
それでも、山口のパスミス絡みからチャンスを作り、一方で危ないシーンもありながら杉本の好セーブでなんとか1点差を耐え凌いでいった。
そして86分に中山からカルドーゾに代えた段階で、仙台は5バックにシフトチェンジをし、1点を守り切る采配へと打って出た。
しかし、アディショナルタイムに入った90分に、山瀬の右コーナーキックから高木にニアフリックを許し、最後は渡部に押し込まれ同点に追いつかれる。
アディショナルタイム5分間で、再度攻撃へと転じた仙台だったが、中島の直接フリーキックも寺門にセーブされ決めきれず。
試合は2-2の引き分けに終わった。
最後に・・・
前半は序盤こそ先制される苦しい展開だったものの、修正から逆転までは見事だった。一方で後半は山口の修正に対して、なかなか自分たちのペースにゲームを戻すことができず、最後は前節同様にセットプレーからの失点を喫してしまった。
このチームのスタイルから言えば、やはりチャンスが作れていた時間帯にもう1点、2点を決めていれば、より勝利を手繰り寄せることができていたと思う。そういう意味ではまだまだトレーニングを積み重ねて、もっと突き抜けていく必要があるだろう。
また一方では、この試合でもセットプレーから失点してしまったことは反省しなければならない。特に先に触られている場面が非常に多く、失点以外でも危ないシーンを招いていた。マンツーマンを基本としている守備なので、まずはマークを離さないこと、そしてしっかり先に触ることは徹底して、失点を減らして欲しい。
不幸中の幸いで、今節は横浜FCと新潟ともに勝てなかったので勝点差が縮まらなかった。もちろんここで勝てば縮められるチャンスだったことは間違いないが、どこのチームもやはり新型コロナウイルス感染者の離脱や夏場の戦いで苦しんでいるという証拠だろう。大事なのはしっかり切り替えてトレーニングから積み上げていくことだ。
次節もアウェイ。ツエーゲン金沢との対戦。前回対戦ではホームで大勝している相手だが、油断はできない。リーグも残り3分の1。1つ1つ集中して戦って、勝点を積み重ねて行って欲しい!!