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【執念】明治安田J2第13節 ベガルタ仙台vsレノファ山口FC

Jリーグ2024

　さて、今回はレノファ山口FC戦を振り返ります。

↓前節のレビューはこちら

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スタメン

　ベガルタ仙台は、前節・ジェフユナイテッド市原・千葉に0-2で敗戦。内容は清水エスパルス戦の反省もあり、かなり向上したものの決めきれない展開のなかで、反対に千葉にチャンスを活かされ、今シーズン初の連敗となった。

　ホーム連戦となる今節で連敗をストップし、再び上昇気流に乗っていきたい一戦だ。

　今節は千葉戦の後半のメンバーを採用。2トップに中島と郷家のコンビをチョイスした。ベンチには松下や仙台大学との練習試合でハットトリックの猛アピールに成功した菅原が久々にベンチ入りを果たしている。

　一方のレノファ山口FCは、前節・鹿児島ユナイテッドFCに1-0の勝利。順位を6位までジャンプアップさせた。FC大阪より志垣良監督が就任し、組織的な守備と左サイドバックの新保をはじめとするサイド攻撃での得点が特徴的なチームだ。

　アウェイでの戦いではあるが、自分たちのやるべきことを仙台にぶつけて勝点をもぎ取り、山口へ戻りたい一戦となった。

　山口は左センターバックにキム・ボムヨンを起用。それ以外の変更点はなし。ベンチには五十嵐が前節と代わってメンバー入りとなっている。

 

前半

(1)コンパクトでソリッドな守備から主導権を握る山口

　試合開始直後は、両チームともにロングボールの応酬で無秩序な時間が続いた。

　そのなかで仙台がセカンドボールを拾ったところから右サイドへ展開し、チャンスを作り出すも先制点までには至らなかった。

 

　その後、まず主導権を握ったのは山口の方だった。ロングボールの応酬から徐々にセカンドボールを敵陣で拾い出すと、それをきっかけに高い位置でプレーする時間を得ていく。

　山口は、仙台のビルドアップ隊に対して時間とスペースを与えないよう前線からプレッシングを仕掛けてロングボールを誘発し、セカンドボールを回収する流れを作っていった。

　また山口はシンプルに後方から2トップを目掛けたロングボールを送り、競り合ったセカンドボールを2列目、3列目の選手が回収する。そこからサイドへと展開して、クロスからゴールを目指す。

　特にこの試合は梅木と小出のマッチアップで梅木がリードしていたため、前半からかなり梅木がボールを収めることができていた。

　また山口のクロス攻撃はしっかりとデザインされており、サイドの奥深くまでえぐってのクロスと、ペナルティエリア角からのアーリークロスを使い分けていた。加えてキーパーとディフェンスラインの間へボールを送るために、非常に嫌らしいクロスボールが多かった。

 

　そんな山口が優勢のなかで、20分にゲームが動いた。

　セットプレーの二次攻撃から山口は左右へ揺さぶると、吉岡のカットインシュートを池上がフリックしコースを変えて、そのままゴールへと吸い込まれた。

　仙台としては、クロスを警戒するあまりに、ディフェンスラインを上げらなかったことで、吉岡へシュートチャンスを与えてしまった。

 

　その後も山口は梅木を目指したロングボールで前進し、敵陣から素早い切り替えで即時奪回を繰り返した。守備でも自陣への帰陣の早さやコンパクトな守備で仙台の攻撃に応戦し、主導権を握ったままゲームを展開していった。

 

(2)潮目となった背後へのランニング

　前述したように序盤から山口に主導権を握られ、先制点を奪われ、苦しい時間帯が長かった仙台。

　この試合は、郷家と中島の2トップにして千葉戦の後半のように中盤で山口の激しいプレッシャーをパスワークで掻い潜りながら攻めていくことを目指していたと思う。

　しかし、中盤のプレッシャーをなかなか越えられず、ボールを落ち着かせられないまま時間が経過していった。

 

　潮目が変わったのは34分のプレー。自陣で長澤がボールを奪い、相良へ展開。相良は右サイドのオナイウへ一気にサイドチェンジをし、オナイウが新保を交わしてクロスを上げ、中島がシュートを放ったシーンだった。

　この辺りから前線が背後へ抜け出すことを意識し始めたことで、少しずつ仙台も攻め込むチャンスを作れるようになる。

　山口のプレッシングが落ち着き始めたこともあるが、中島と郷家も1人が背後へとランニングし、もう片方は降りて出口を作るなどの工夫が出始めたことで、ラスト10分になって盛り返すことができるようになった。

 

　そして、前半アディショナルタイムに入ったところで同点に追いつく。

　菅田が山口のカウンターの芽を摘むと左サイドへ展開。石尾が長澤へ横パスを送り、長澤の背後へのフィードに中島が頭で合わせて同点に追いつく。

　長澤の完璧なフィードとプルアウェイの動きで背後を取った中島の見事なプレーが組み合わさって、仙台は前半ラストプレーで追いつくことに成功する。

 

　前半はほとんどの時間で山口が主導権を握ったものの、ラスト10分で盛り返した仙台がラストプレーで追いつき1－1で後半へと折り返した。

 

後半

(1)2トップへのケア

　山口は後半スタートから吉岡に代えて野寄を投入する。

 

　後半開始早々から山口に押し込まれる時間帯もあったが、時間の経過とともに少しずつ山口のやり方に対して修正していくようになる。

　まずはロングボールの出所となるセンターバックに対してしっかりプレッシングを行って、なるべくフリーで蹴らせないよう心掛けていた。

　また山口の2トップに対しては、前半以上にセンターバックとダブルボランチが挟み込むようにして自由を与えないことで、セカンドボールの回収率を上げていった。

　この修正によって、前半のように押し込まれる展開もなくなり、次第に仙台がボールを保持する時間帯を増やしていく。

　ボール保持局面が多くなった仙台は、3バック（石尾、菅田、小出）とダブルボランチがビルドアップ隊になり、局面に応じて立ち位置を取り直しながら前進を目指していく。

　またこの試合で特徴的だったのが相良のプレーだった。相良は前半から外側に張り出すだけではなく、内側に移動してボールを受けることで、自身がドリブルで前へ運んだり、横にドリブルしながら全体を押し上げを促していた。これはボール保持の局面だけではなく、カウンターの起点として同じタスクを行っていた。

 

(2)引き分け狙いではない3バック変更

　後半は仙台が守備からペースを握り返す展開となった。

　そんななかで山口は76分に池上に代えてヘナンを投入。システムを3バックへと変更した。

　一見、守備的な交代に見えるが山口としては攻撃時に3-2-5にすることで厚みを持たせなかったのだろう。特に梅木周辺に厚みを持たせることで再び押し込んでいきたいというのが狙いとしてあった。

　また右サイドバックだった前がボランチになったことで、前がセカンドボールを回収し、二次攻撃へと繋げることで再び仙台を押し込む時間帯を作っていく。

　ラスト10分は高い位置でボールを奪ってのショートカウンターやクロス攻撃からチャンスを作り出すがシュートが枠に飛ばなかった。山口としてはこの時間帯で勝ち越し出来ていたらグッと勝点3へ近づくことができただろう。

 

(3)耐えた後のご褒美・名願の名刺代わりPK奪取

　仙台は84分に中島に代えて菅原、90分に相良に代えて名願を投入する。

　80分以降は山口に押し込まれる苦しい展開が続いていたが、アディショナルタイムに突入すると、最後に耐えたご褒美が待っていた。

 

　アディショナルタイムに入ってようやく仙台のターンとなる。すると左サイドへ展開し入ったばかりの名願へボールを届ける。名願は迷わず対面の田中を抜きに掛かると、田中が背後から名願を倒して土壇場でPKを獲得する。

　倒したエリアはペナルティエリア外だったが、名願が一歩粘ってエリア内で倒れたことでPKをゲットすることができた。

　そして中山が力強いシュートを左隅に決めて逆転に成功する。

 

　激しい攻防が繰り広げられた試合は、仙台が前後半のアディショナルタイムでの得点で逆転し、2-1で勝利。連敗を2でストップさせ、順位を6位まで上げた。

 

最後に・・・

　非常に苦しい試合だった。前半から山口のオーガナイズされたサッカーに苦戦し先制点を奪われ、なおも主導権を握られていた。

　それでも最少失点で耐えることで前半ラストプレーで同点にし、後半も耐える時間をしっかり耐えながら土壇場で逆転することができた。まさに最後まで諦めずに戦う姿勢と執念が実った試合だった。

　去年だったら、こういう試合展開で連続失点し敗れていた内容だったが、今シーズンは耐えるところをしっかり耐えることで同点、逆転のチャンスを呼び込むことができている。今シーズン2回目の逆転勝利は、チームとしてまた1つ自信となる結果だったと思う。

 

　加えて途中出場した選手が、結果を出してくれたのも大きな収穫だった。名願は前節もドリブルでの仕掛けで調子の良さを窺わせたが、今節は最後の最後に大きな仕事をやってのけた。左サイドは相良以外の適任がおらず、手薄なポジションだったが、名願の台頭によって1つ解消できそうな予感がしている。

 

　次節は中2日でアウェイに乗り込み、鹿児島ユナイテッドFCとの対戦。今シーズンJ3から昇格してきたチームだが、今節はロアッソ熊本に2点差を追いつき自力のあるチームだ。連戦でタフな試合が続くため、メンバー交代も含めて総力戦となる。

　逆転勝利の勢いそのままに、鹿児島を飲み込んで今シーズン2度目の連勝といきたい！！

 

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