ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

いつ・どのタイミングでスペースを突くか~明治安田生命J2第30節 ツエーゲン金沢vsベガルタ仙台~

 さて、今回はツエーゲン金沢戦を振り返ります。

 仙台にとってはこの試合が初めての声出し応援実証試合となりました。

↓前節のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

↓前回対戦のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

 

スタメン

 ベガルタ仙台は、前節・レノファ山口を相手に2-2のドロー。またしても課題となっているコーナーキックから終盤に追いつかれ勝点2を失った。リーグも残り3分の1を切り、連戦が続くなかだが落とせない試合が続いていく。ここからは総力戦でラストスパートを掛けたいところだ。

 仙台はコロナによる離脱者も徐々に帰ってきた。スタメンではボランチにフォギーニョ、右サイドハーフに名倉が復帰。ベンチにもキム・テヒョンと吉野が戻ってきた。

 一方のツエーゲン金沢は、コロナ陽性者が連日出ており、非常に苦しい状況となっている。前節のブラウブリッツ秋田戦も0-3の敗戦。困難な状況が続いているなかで、仙台を相手にどれだけ足掻けるかという一戦となった。

 スタメンでは2人の変更。左サイドバック長峰ボランチに平松が起用されている。またベンチメンバーが5人しかおらず、前節よりも苦しいメンバー構成となっている。

 

前半

(1)空いているスペースはどこか

 開始序盤は金沢のアグレッシブな戦いに少し受ける格好で入った仙台。4分にはフリーキックの場面から豊田にチャンスを作られる。

 ただ、次第にゲームが落ち着いてくると仙台の狙いが輪郭を表すようになっていった。

 まず金沢の守備を見ていくと、金沢はボールサイドに人数を掛けることで、スモールフィールドにして、そこで局地戦を仕掛けることでボールを奪うのが狙いだった。

 よって、ボールサイドと反対のサイドハーフ(図だと嶋田)がボールサイドまで寄って守備をする場面はとても多かった。

 また、金沢は局地戦を仕掛けるため、人への意識が強い守備を行っていたのが特徴的だった。

 

 そんな金沢の守備に対して、仙台は「幅」と「奥行き」を使いながら、うまく交わしていく。

 この試合では特に金沢の局地戦に対してボランチを経由して逆サイドへ展開することでプレスを搔い潜り、一気にゴール前まで運んでいくシーンが目立った。試合後の原崎監督のコメントにあったように、そこは狙いの1つだった。

 また、金沢のサイドバックは仙台のサイドハーフに食いつくので、その背後が空く。そこへ2トップがランニングすることで、チャンスを作ろうとしていた。

 そして、この狙いが得点シーンを生むこととなる。

 蜂須賀のロングフィードに抜け出した中山が白井に倒されてPKを獲得。それを中山自身がきっちり決めて、早い段階で先手を奪うことに成功した。

 

 その後も攻勢を強める仙台は、続く18分にも追加点を挙げる。

 コーナーキックのセカンドボールを回収し、フォギーニョから中島へ。中島のシュートは白井に弾かれるものの、富樫がしっかり詰めて追加点を奪う。

 この試合では、トランジションで金沢を上回り、即時奪回の回数が前節よりも多かった。それが実を結んだ得点となった。

 

(2)攻め急ぐようになってしまった仙台

 幸先よく2点を奪った仙台だが、その後は少し攻め急ぐようになってしまう。

 どうしても空いているスペースを意識してしまい、そこへ早いタイミングでボールを送ることが多くなり、前線と合わずにパスミスが増え、金沢にボールが渡るようになった。

 集音マイクからも、仙台ベンチから「早いっ!!」という声が時折聞こえていたので、ベンチでも攻め急いでいると感じてはいたようだ。

 

 よって、時間の経過とともに金沢がボールを保持する時間が増えていくようになる。

 金沢のボール保持は必ず、ボランチもしくはサイドハーフがハーフスペースに立つことで、サイドバックを高い位置へ押し上げる仕組みとなっていた。

 対する仙台は、サイドハーフがハーフスペースを基準点に、金沢のハーフスペースに立つ選手を見ながら、サイドバックへボールが渡ったときにはスライドして対応できる距離を保てていた。

 また金沢のサイドバックがより高い位置を取った場合は、仙台のサイドバックがプレスへ行くシーンもあったので、そこはケースバイケースとなっていた。

 よって金沢のボール保持の局面で危ないシーンはほとんどなかったが、押し込まれたとき、特にサイド攻撃ではクロッサーへの寄せが甘いところがあり、金沢にチャンスを与える場面があったので、そこは継続しての課題となった。

 

 前半は、金沢の守備に対して準備してきた形から先制点と追加点を奪えたものの、自ら攻め急いでしまったために守備に追われる時間帯も長くなってしまった。

 仙台が2点リードで後半へと折り返す。

 

後半

(1)焦れずにボールを動かすようになった仙台

 後半への課題は明白で、ボールを持ったときに攻め急がないことが求められた仙台。決して前へ急がず、焦れずにボールを動かすことで保持率を上げながら金沢ゴールへと迫っていく。

 後半に入っても狙いは変わらない仙台。ボールサイドではボールホルダーに対して各選手が角度を作りながらパスコースを形成し、タイミングを見て逆サイドへ展開。そこからギアを上げてゴールへと襲い掛かる。

 またサイドバックの背後が空けば、そこへボールを送り2トップやサイドハーフが抜け出していく。

 

 そして、仙台は後半の早い時間帯に3点目を決める。

 金沢のスローインからボールを奪うと、そのまま氣田が左足を一閃。ゴール左隅に突き刺さり3点目を奪う。氣田の得点は15試合ぶり、久々の得点となった。

 

 その後も丁寧にゲームを進める仙台。4点目は66分に生まれた。

 中島のフリーキックを白井が弾ききれずに、こぼれを氣田がシュート。これを中山がコースを変えてさらに追加点を決める。

 得点が取れる場所にいる中山のまさに点取り屋らしいゴールだった。

 

(2)3人交代から少しバランスを崩す

 66分までに4得点を奪い、勝利をグッと手繰り寄せた仙台。飲水タイムのタイミングで両サイドバックと富樫に代えて、真瀬、石原、皆川を投入する。

 

 この交代を機に仙台は少しバランスを崩すことになる。スタートから出場していた選手に疲労の色が見え始め、入った3人もうまく立ち位置を取れずに、ボール保持の安定感を失ってしまった。

 結果的に75分にビルドアップのシーンから石原のパスミスを奪われ、林に決められて1点を奪われる。

 

 その後は時間の経過とともに選手たちもアジャストできたため、リズムを取り戻してゲームを進めることができた。

 終盤にはキム・テヒョンと吉野を投入。守備強度を保ちながらゲームの締めに掛かる。

 

 金沢は交代選手が少ないため、疲労困憊になり中盤にスペースが生まれるようになった。

 そしてアディショナルタイムには氣田の仕掛けからPKを獲得する。しかし、このPKを皆川が白井に止められたところで試合は終了。

 最後の締めは良くなかったが、ホームで対戦したときと同じスコアで金沢に勝利。3試合ぶりの勝利を挙げた。

 

最後に・・・

 金沢は離脱者も多く、準備に時間とパワーを割けられなかったのだろう。その差が前半の2得点に繋がったと思う。

 仙台としては何としても勝点3が欲しい試合で、序盤から優位に試合を進められたのは良かった。

 また、前半は空いているスペースへ早くボールを持っていこうとしてミスが多かったが、そこをハーフタイムで修正できたことも良かった。

 一方で試合の締め方やミス絡みでの失点は課題が残る部分。そこは日々のトレーニングから改善していくことが必要だろう。

 

 次節は、ホームに大宮アルディージャを迎える。大宮は今節、横浜FCに勝利しているし、残留に向けて後がない状況だ。勢いに乗ってユアスタに乗り込むだろう。そんな大宮に対して、今節のような焦れずにボールを動かして、空いているスペースを突いていけば自ずとチャンスは生まれるはずだ。

 次節に向けてもいい準備をして、8月攻勢を掛けていきたい!!

 

ハイライト


www.youtube.com