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【今のチームが見せる二面性】明治安田生命J2第40節 ベガルタ仙台vsレノファ山口FC

 さて、今回はレノファ山口FC戦を振り返ります。

↓前節のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

↓前回対戦のレビューはこちら

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スタメン

 ベガルタ仙台は、前節・ブラウブリッツ秋田戦で1-0の勝利。悪天候の厳しい条件下でも林や守備陣を中心とした集中した守備で秋田をシャットアウトした。これでリーグ戦は3戦負けなし。ほぼほぼ残留を手中に収めている。残り3試合ではまず1つでも上の順位でフィニッシュできるように戦い、来シーズンに向けて少しでも希望が残るものとしたいところだ。

 今節は右サイドバックに小出を起用し、菅田がセンターバックでスタメンとなった。ベンチには久々にキム・テヒョンがメンバー入りをしている。

 レノファ山口FCは、前節・ファジアーノ岡山戦で2-2の引き分け。終始押し込まれる展開だったが、土壇場で池上の直接フリーキックが決まり、勝点1を拾った。降格圏に沈んでいた大宮アルディージャの勢いがここに来て増してきて、残留に向けて負けられない試合が続く。残留を大きく手繰り寄せるためにも是が非でも勝点3が欲しい一戦だ。

 山口は、3-1-4-2のシステムを採用。左バックにヘナン、アンカーに前、右ウイングバックに吉岡が起用されている。ベンチには前節スタメンだった成岡とシルビオジュニオールが前節と代わって名を連ねている。

 

前半

(1)事前準備がハマった仙台

 前半は、試合序盤から仙台がペースを握る形で進んでいく。

 仙台としては1週間のトレーニングで準備してきたことが攻守両面においてハマった内容となった。

 

 まず攻撃面から見ていくと、山口の高いディフェンスラインに対して山田や氣田を中心に幾度となく背後へ抜け出していくシーンを作っていった。

 山口の守備は5-3-2で構えるため、システムの噛み合わせ上仙台のサイドバックのエリアが比較的時間とスペースが生まれる。よって、仙台はセンターバックからサイドバックへ渡る横パスをきっかけに山口のディフェンスラインが高く上がった隙を見て、山田や氣田が背後へ抜け出していく。また、横にボールが動いているときに中島も落ちる動きでマーカーを引き出すことで山口の3バックにギャップを作っていたことも見逃せない。

 この背後への抜け出しで特に山田は序盤からチャンスシーンを作っていく。もちろんオフサイドに掛かるシーンもあったが、チームとして狙いを持って攻撃が行えていた。

 

 また背後への抜け出しを繰り返すことで、次は3バックの手前のスペースが空いてくる。いわゆるバイタルエリアだ。

 そのバイタルエリアへ小出、秋山の両サイドバックから楔のパスを通して攻撃のスイッチを入れる。

 そして生まれたのが18分の先制点だった。仙台のボール保持の局面で左サイドから右サイドへ展開し、小出へ渡る。このボールの動きに合わせてバイタルエリアへ侵入していた氣田へ小出が楔のパスを通し、氣田はワンタッチで郷家へパスするとアウトサイドに掛かったシュートがゴールへ吸い込まれる。

 仙台としては背後の動き出しとそれに伴い空いた山口ディフェンスラインの手前のスペースを上手に活用することでゴールを奪えた。

 また前述したようにこの試合ではサイドバックにスペースが生まれるため、両サイドバックはウイングを追い越すことよりもサイドバックの位置から攻撃の起点を作ることが求められた。よって上下動を得意とする真瀬よりも楔のパスを刺し込むことが得意な小出が起用されたのではないかと思っている。

 

 続いて守備について見ていく。

 この試合でも仙台は前線からのプレッシングで山口のビルドアップ隊から時間とスペースを奪っていく。

 この試合での前線からのプレッシングの目的は、相手にロングボールを蹴らせることだった。

 山口はビルドアップに手こずるとツインタワーである2トップへロングボールを送ることで陣地回復を狙っていた。

 しかし仙台としては、そこを防ぐことでボールを回収し再び自分たちのターンへ持っていくことを狙っていた。

 仙台は福森と菅田のセンターバックコンビがしっかりと梅木と皆川の2トップに収めさせないことでペースを握ることに成功する。菅田がスタメンで起用されたのもこの辺りの作戦があったからだと考えている。

 

 よって仙台は、事前に準備してきたことがハマって攻守両面で主導権を握ることができた。

 

(2)守備基準点をハッキリすることでゲームを落ち着かせた山口

 前半は仙台に主導権を握られて苦しい展開を強いられた山口。

 ビルドアップ隊もなかなかビルドアップの出口を見つけ出せず、ロングボールを送っても仙台に回収される厳しい状況となった。

 

 そんななかでエスナイデル監督は動いた。

 山口は中盤の形を3センターから矢島がトップ下の正三角形の形へと変化させる。

 仙台のボール保持においてビルドアップの出口であり、中継点となっていた長澤に対して守備基準点をハッキリさせることで、守備に落ち着きを取り戻していった。

 この変化から次第にゲームの流れが落ち着き出す。仙台も主導権を握れていた時間よりもボール保持で思うようにいかず背後へ送ることが多くなり、ボール非保持においても構えて守備をする時間帯が増えていった。

 なかなかチャンスを作れなかった山口は、44分の吉岡のカットインシュートがファーストシュートとなる。それでもゲームの流れを落ち着かせることで、最少失点で前半を終わらすことができた。

 

 前半は、今シーズン10点目となる郷家の得点で仙台がリードして折り返す。

 

後半

(1)ウイングバックの高さとロングボールのポイントの修正

 山口は後半から高橋に代わって沼田を投入する。

 山口は、ハーフタイムを挟んでウイングバックの立ち位置とロングボールのポイントを修正する。

 ウイングバックは最初から高い位置を取らずに、低い位置で3バックからビルドアップの出口となるようボールを引き出す。そして仙台のサイドバックを連れてくることで、空いたサイドバックの背後を2トップの片割れ(特に梅木)が抜け出してサイドに起点を作る。

 ロングボールに関しては、2トップへ送ることを止めてサイドチェンジで展開することが多くなる。特に右から左ウイングバックに入った沼田へのサイドチェンジから横に広く展開して前進することが多くなっていった。

 

 仙台からしてみれば、この試合の目的であるロングボールを蹴らせて回収するという狙いができなくなり、次第に前線からのプレッシングがハマらなくなっていった。

 

 それでも山口がペースを握り返せなかったのは、中盤でのパスミスやボールロストで仙台が前を向いて出て行けるチャンスがあったからだった。

 前半でも書いたように山口は仙台の中盤とマンツーマンになるような立ち位置になったので、逆にそこを突破されると3バックが晒されるようになった。

 しかし、仙台もそんな前を向けるチャンスがあったもののカウンターの質が低くて追加点を奪うことができなかった。このどっちにもチャンスがあるときに追加点を奪えていれば、かなりの確率で勝つことができただろう。

 

(2)選手交代で勢いを増した山口と勢いが落ちた仙台

 ミスからの危ないシーンはあったものの、ハーフタイムの修正によって少しずつ勢いを増していった山口は66分に前と皆川に代わって成岡とシルビオジュニオールを投入する。

 一方の仙台は長澤と山田に代えてエヴェルトンとホ・ヨンジュンを投入する。直後の71分には足の攣った中島から加藤へスイッチする。

 

 山口は梅木とシルビオジュニオールの2トップになったことで2人とも背後へ抜ける動きで仙台のディフェンスラインを押し下げていく。また成岡も中盤でのキープ力と展開で山口の攻撃に勢いを与えた。

 

 77分には矢島と池上に代えて河野と五十嵐を投入。若い中盤の攻勢で一気に攻撃的に出ると直後の78分に追いつく。吉岡から右サイドを抜け出した梅木が受けると、グランダーのクロスにシルビオジュニオールが合わせた。

 仙台としては直前にホ・ヨンジュンの余計なカードがあり、一瞬集中力が切れてエアポケットになった時間だったし、山口からすれば狙っていたサイドバックの背後を突いた得点となった。

 

 その後は83分に仙台がホ・ヨンジュンが中央で起点を作り、中央を突破すると最後は加藤が左足を振りぬくが関に防がれる。

 

 84分の仙台は秋山と氣田に代えてキム・テヒョン齋藤学を投入。リスク管理をしながら勝ち越しを目指した。

 しかしアディショナルタイムに入ってホ・ヨンジュンが完全なアフタータックルで2枚目のカードを貰い退場。その後は勝点1を拾うことに舵を切った仙台が山口の攻撃を跳ね返して試合終了となった。

 

最後に・・・

 前半だけ見ればほぼパーフェクトな試合内容だったが、山口がゲームのなかで修正を施したところに対応できずに、次第に自分たちの土俵でプレーする時間が少なくなった。

 加えて、相手が整ってない状況で攻撃ができるチャンスがあっただけにカウンターの質が低かったことで追加点を奪えなかったことも勝点3が取れなかった原因だった。

 熊本や秋田のように、自分たちのスタイルがあり大きく変化しない相手には今の状況でも耐え凌ぐことはできたが、いわきや山口のように試合のなかで修正を施してくるチームにはリードを守り切れない結果となった。

 これも夏場に監督交代があり、手を加えられる部分が限られているためだとは思う。逆に言えば順位の近いこの4試合を2勝2分で切り抜けて、今節での残留を決めたのだから現状のベストの成績は出せたのではないかと思う。

 

 残り2試合はどう捉えて、来シーズンへ残していくのか。本当の意味での消化試合ではあるが、ここまで悔しい想いを沢山してきただけにどんな試合でも勝利を目指し、そして1つでも上の順位でフィニッシュすることを期待したい。

 次節はアウェイでV・ファーレン長崎との対戦。プレーオフの可能性を残す上位の長崎に対してまずはどこまでハードワークして戦えるかが重要になってくるだろう。次節もこのクラブのため、チームのために戦う姿を見せてくれることを期待したい!

 

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