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【不撓不屈】明治安田生命J2第20節 ベガルタ仙台vsジュビロ磐田

 さて、今回はジュビロ磐田戦を振り返ります。

↓前節のレビューはこちら

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スタメン

 ベガルタ仙台は、前節・東京ヴェルディに2-0の勝利。セットプレーから効率よく2ゴールを奪って連勝となった。順位もプレーオフ圏内が見えてきて、尻上がりに調子が上がっている。前半ラスト2試合をしっかり勝利し、後半戦へと折り返したい。

 今節の相手は1つ上に位置するジュビロ磐田。伊藤監督、渋谷ヘッドコーチにとっては昨年まで在籍した古巣との対戦だ。ここで勝利することで磐田を抜いてプレーオフ圏内へと上昇していきたい一戦。

 仙台は、真瀬(左太もも裏肉離れ)と山田が欠場。復帰した小出が右サイドバックとなり、天皇杯藤枝MYFC戦で決勝ゴールを決めた中山が起用された。ベンチには秋山とホ・ヨンジュンが前節を代わってベンチ入りをしている。

 ジュビロ磐田は、前節・ブラウブリッツ秋田に2-0の勝利。このオフは補強禁止となったが、横内監督の下で昨年まで在籍した多くの選手が、攻守において高い強度を保ってプレーしている。特に仙台にもいた上原を中心としたパスワークは見事なもの。アウェイではあるが、6ポインターに勝利して、仙台との差を引き離したい一戦だ。

 磐田は、鈴木海音がU-22日本代表の欧州遠征に選ばれており欠場。代わりに伊藤が起用され、トップ下には山田大記が名を連ねている。

 

前半

(1)パニックに陥った仙台/左右非対称の磐田のボール保持

 試合は、磐田がエンドチェンジを行ってキックオフをした。

 ゲームはさっそく2分に動く。

 ほぼファーストプレーで菅田がジャーメインにファウルをしてフリーキックを与える。

 そのフリーキックを藤原が林の前で落ちるようなボールを蹴り込み、林が弾いたところを鈴木が押し込んだ。

 磐田としては願ったり叶ったりな得点であり、仙台としては出鼻をくじかれる失点となった。

 

 その後も磐田が前線からのプレッシングとジャーメインに背後へのシンプルなボールを送り仙台陣内へと押し込んで、ペースを握り続ける。また中盤でのデュエルも臆さず勝利していくと、磐田に追加点が生まれる。

 左スローインからボールを受けた上原がクロスを送るとそのままゴールへ流れ込む。

 仙台としては不運な面もあったが、上原に対して寄せ切れていなかった。開始の失点から完全にパニックに陥ってしまっていた。

 

 また、磐田はボール保持においても左右非対称の形から仙台の守備基準点を乱していく。

 磐田は前述したようにジャーメインの背後へ目掛けてロングボールを選択しながら、自陣からボールを繋いでいくことも行っていた。

 磐田のボール保持はボランチが縦関係になることからスタートする。三浦、センターバック、上原(または藤原)が四角形を作る。

 降りてくるボランチセンターバックと並列にならないことで角度を作り、パスコースを増やす意図があったと思われる。

 右サイドでは鈴木と松本が縦関係を維持する。松本は大外とハーフスペースを行ったり来たりし、時折山田がサイドに流れてビルドアップの出口となっていた。

 一方の左サイドは松原が高い位置を取り、ドゥドゥはハーフスペースへ移動。ドゥドゥは、松原に対して常に横のサポートとなれる位置となっていた。

 また、ボランチは真ん中にいるだけではなく、サイドの選手に対して横のサポートをしっかり取りながら、横楔が入ったときには縦パスから攻撃のスイッチを入れることが多かった。

 

 この立ち位置によって、特に仙台の右サイドでは守備基準点が狂って松原に安易にクロスを上げられるシーンが多かった。2失点目もこの立ち位置の影響があったと思う。

 

(2)追撃の仙台/流動的になったビルドアップ隊

 仙台は13分に追撃をする。菅田の縦パスが郷家に入ったことをきっかけに左サイドから攻め込むと、中島のクロスにニアで郷家が合わせて早い時間で1点を返す。郷家にとってはユアスタ初ゴールとなった。

 

 その後は、磐田の勢いも落ち着いていき次第に仙台がボールを保持してゲームを進めていく展開になっていく。

 この試合では仙台のビルドアップに変化が見られていた。

 ここ最近の仙台は、ボール保持時は3-4-3になることがデフォルトとなっている。

 この試合でも3-4-3からビルドアップをスタートさせていたが、4-4-2で守備ブロックを敷く磐田に対して、3+2の形からボランチの片割れが斜めに落ちて4+1の形に変化することがあった。

 恐らく磐田のブロックに対して2トップ脇を起点にボールを前進させたい意図があり、そこへ素早く立ち位置を取って、ボールを受けることでサイドハーフを引き出し、その背後で待つウイングやシャドーにボールを届けることが狙いだったと考える。

 もちろん2トップ脇を若狭や内田が早い段階で取れていれば、ボランチは降りてこないが、彼らが間に合わないときにフォローへ行っている形だった。

 前半は、内田を起点に前線3人へ楔のパスを配球していたことが印象的だった。

 時間の経過とともに、押し込めるようになった仙台だったが、磐田もセンターバックを中心とした守備と中盤の激しいデュエルを制して決定機は作らせなかった。

 

 早々にパニックとなった仙台は追撃の狼煙を上げたものの、同点には持ち込めず後半へ折り返す。

 

後半

(1)リトリートに徹する磐田と潜り込めない仙台

 磐田は、後半から松本に代わって金子が右サイドハーフで投入される。

 

 後半も基本的には仙台がボールを保持する展開でゲームが推移していった。

 磐田は、リードしていることもありリトリートした状態で守備をスタートした。

 また前半は縦パスを多く入れられていた反省からしっかり中央を締めることを意識した守備へと代わり、両サイドハーフは仙台の両ウイングバック(小出と氣田)に対して前半以上に警戒するようになった。

 

 ゆえに仙台は、前半のようにボランチが降りてこずとも若狭と内田が2トップ脇から攻撃を開始することが多くなった。

 しかし中央を締める磐田に対して、なかなかブロック内へ潜り込めずに攻撃が停滞する時間が長かった。磐田の守備ブロック内に侵入するだけではなく、背後へのボールも何度もトライしたが、しっかり磐田に対応され単発の攻撃で終わってしまう。結果的に持たされる形となり、なかなか攻撃の糸口を見出すことができなかった。

 

(2)氣田の中央移動/磐田の5バック化

 61分に両ベンチも動く。仙台は中島と中山に代わって相良とホ・ヨンジュンを投入。磐田は山田に代わって後藤を投入する。

 仙台は氣田のポジションを2トップの一角に動かした。ボール保持時は左ハーフスペースから中央へ移動し、狭いエリアで積極的にボールを受けることで、磐田守備網の打開を図った。

 しかし、ほぼ同じタイミングで磐田は、ドゥドゥが守備時に左ウイングバックとなり、5バック化。5-3-2の形で守ることで中央を3センターが閉めて、加えて両サイドを抑えに掛かる。

 ちなみに2トップのままにしたのはカウンターからのチャンスを狙っていたからだろう。

 

 そして、この狙いがハマったのは磐田の方だった。

 途中投入されたフォギーニョの横パスをカットするとカウンター発動。最後は鈴木の折り返しに後藤が合わせ、仙台ディフェンスに当たるラッキーも重なりゴールへ吸い込まれた。

 磐田としては攻撃の手段を残しながら、集中した守備からゴールへと結びつけた。

 仙台はボール保持の時間は長かったが、同時に停滞する時間が長かったところでの失点となった。

 

 仙台は、失点直前に投入となったフォギーニョと遠藤、また84分にはリャンを投入し攻勢を図る。

 一方の磐田は上原に代えて山本を投入し、中盤の守備強度を保つ。

 

 遠藤投入後は、遠藤が高い位置を取る相良の後ろの位置でボールを受けることで攻撃の糸口を探る。

 そして90分には若狭からホ・ヨンジュンが競り勝ちフォギーニョへ繋ぐ。フォギーニョは遠藤に出すと倒れながらシュートを決めて1点差へ詰め寄る。

 アディショナルタイムにも遠藤にフリーキックのチャンスが訪れたものの枠を外しゲームは終わりを告げた。

 

 強度の高い、激しい球際の攻防と両チームの駆け引きが多く見られた試合は、磐田が仙台のミスを見逃さずに3点を奪い勝利した。

 

最後に・・・

 序盤の2失点が悔やまれる試合となった。

 1失点目があまりにも早くミスも相まったところで混乱が生じてしまった。なんとか1失点で食い止まっていれば、もう少し勝ち筋を作り出せたのかもしれない。

 

 磐田はリードしたこともあって、ある程度守備にウェイトを置き、スペースを消すことで仙台のボール保持を苦しめた。そこに対して仙台はなかなか攻撃の糸口を見出せなかったことは今後の課題となった。

 また、ここまで広範囲でチームを助けていたエヴェルトンと鎌田のダブルボランチにも磐田の激しくそしてアラートな守備により消されてしまい、それも90分を通じて仙台が苦しむ原因となった。

 

 徐々にやり方が明確になってきたのは良いことだが、一方でそれは相手にとって研究しやすいという裏返しともなる。ここから先、後半戦に向けていよいよ正念場になってきそうだ。ここを乗り越えられなかったのが昨シーズンだとしたら、今シーズンはその反省を活かして、なんとか乗り越えて欲しい。

 

 前半戦ラストゲームとなる次節はアウェイでレノファ山口との対戦。山口は今節からフアン・エスナイデル監督が指揮を執っている。今節はヴァンフォーレ甲府に0-4と敗れたが、もちろん侮れない相手だ。まずはこの試合で得た課題と向き合って、またここまで積み上げてきたものをしっかりと表現し、勝利で後半戦へと向かって欲しい!!

 

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