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【意地と意地のぶつかり合い】明治安田J2第21節 モンテディオ山形vsベガルタ仙台

 さて、今回はモンテディオ山形戦を振り返ります。

 みちのくダービーセカンドラウンド。

↓前回対戦のレビューはこちら

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スタメン

 ベガルタ仙台は、前節・V・ファーレン長崎と2-2の引き分け。後半は仙台が主導権を握って、終盤には松下の逆転ゴールで勝利が目前に迫ったが、ラストプレーでフアンマに決められ悔しいドローとなった。

 この悔しさを持って今節挑むのはモンテディオ山形とのみちのくダービー。ホームでは2-0で勝利を納めたが、敵地に乗り込む今節は簡単な試合にはなりそうにない。意地と意地とのぶつかり合いとなる試合で、仙台はシーズンダブルを目指す。

 仙台は長崎戦と同じ18人をメンバーに選んだ。逆転ゴールを決めた松下、得点に絡んだ有田らが今節もベンチに控える。

 一方のモンテディオ山形は、鹿児島ユナイテッドFCに終盤に連続失点を食らい、1-2の逆転負け。

 昇格候補と目されながらも、現在は下位に沈んでおり、昇格を目指すためには後半戦の巻き返しが必須となる。ダービーとなれば順位やチーム状況は関係ない。ダービーを制することで、ここからギアを上げていきたいところだ。

 今節は、ワントップに高橋を起用。それ以外は変更なし。ベンチには菊地、狩野、有田がメンバー入りとなった。

 

前半

(1)両ウイングを生かしたサイドアタックと列移動によるボール保持

 試合開始から山形がロングボールからセカンドボールの回収で仙台陣内へと前進していく。そして時間の経過とともに、そのまま山形がボールを保持する展開へと変化していった。

 J2屈指のボール保持率を誇る山形に対して、仙台は前線からプレッシングを仕掛けるよりも、2トップが山形のダブルボランチを背後で消しながらセンターバックへ睨みを利かせる守備ブロックを形成していった。よって仙台はボールを奪いに行くよりも中央を閉めることで危険なエリアへボールが入らない守備を優先した。

 

 そんな仙台のボール非保持に対して山形も変化をしていった。

 南がセンターバックの列に降りてビルドアップをサポート。この移動をトリガーに吉田がハーフスペースへ出て行く。

 右サイドでは國分が列を降りれば、小西が前へ出て行く。この國分の動きで長澤を引き出すことで、前へ出て行った小西は仙台のライン間でボールを受けることが可能になった。

 また山形の最大の武器は両ウイングの突破力にある。中央での列移動やボール保持率を高めて、仙台の守備を中央に寄せることで空いたサイドから両ウイングが仕掛けるシーンは再現性があった。

 特に右サイドのイサカ・ゼインは開始序盤から髙田に対して果敢に仕掛けてチャンスを演出していった。

 

 一方の仙台は、サイドからの仕掛けに苦しみながらも、最後はペナルティエリアでシュートを打たせない守備で跳ね返していく展開となった。

 

(2)ダブルボランチを挟み込む山形のコンパクトな守備ブロック

 山形が押し込む展開が続くなかで、仙台はボール保持でもいつものようなリズムを掴めない時間が続いた。

 この日の仙台も右肩上がりのボール保持で前進していこうとする。

 対する山形はコンパクトな4-4-2の守備ブロックを形成。特に警戒していたのは仙台のボール保持の中枢を担うダブルボランチで、山形は2トップが背中で、ダブルボランチが守備基準点をハッキリしながら仙台のダブルボランチをケア。

 ダブルボランチへボールが入りそうになれば、2トップのプレスバックやダブルボランチとの挟み込みでボールを奪っていこうとする。

 

 そんな山形の守備に対して、ダブルボランチを経由できない仙台はいつものようなボール保持のリズムを掴めていけなかった。

 よってサイドからの前進から攻め手を見出そうとする。特に右サイドでは真瀬とオナイウのコンビネーションによって打開を図ろうとするシーンが非常に多かった。

 サイドからの前進で押し込むことができれば、山形も11人が自陣に引いてくるので厚みのある攻撃をすることができたが、自陣からの前進には非常に苦労した展開だった。

 

(3)PKによるゴール

 基本的には、仙台に対してしっかり準備してきた山形がペースを握る展開だったが、先に試合を動かしたのは仙台だった。

 29分に山形のビルドアップを引っ掛けると、オナイウのクロスが吉田のハンドを誘ってPKを獲得。

 このPKを中島がきっちり決めて先制点を奪った。

 

 しかし、山形もすぐさま追いつく。

 今度は國分のフリーキックのこぼれ球を南がシュートを放つと小出の肘に当たったとしてPKの判定となる。小出の腕は体にくっついていただけに仙台にとっては厳しい判定だった。

 このPKは今度は古巣対戦となる氣田が右隅に決めてゲームを振り出しに戻す。

 

 前半は内容的には山形が準備してきたことを表現できた展開だった。一方の仙台としては、守備で中を閉めることを優先したためにサイドから押し込まれる展開となった。

 前半は両チームともにPKでの得点で1点ずつを分け合い、後半へと折り返す。

 

後半

(1)前線からプレッシングからゲームを動かす仙台

 前半は中を閉めることを優先した守備だった仙台だが、後半は積極的な前線からのプレッシングでゲームを動かしていく。

 前半はダブルボランチのケアを優先的に行っていた仙台の2トップだったが、後半は片方がボールホルダーへプレッシングを掛けて、もう片方がボランチをケアするようになる。これは前節・長崎戦と同様で自分たちがプレッシングを掛けることによって、ゲームを一気に動かしに行った。

 

 ビルドアップ隊だけではなく、ゴールキーパーの後藤へのプレッシングを仕掛ける仙台は、苦し紛れのフィードや縦パスを後方が高い位置で奪うことで前半よりも山形ゴールへ迫る回数を増やしていった。

 しかし、自分たちが前線から行けば当然自陣にはスペースが出来るので、山形も仙台のプレッシングを越えれば一気にチャンスが巡ってくるようになる。

 山形もよりゴールに直線的に向かっていくシーンが増えて、試合は一気にオープンな展開へとなっていった。

 

(2)中盤での激しい攻防・意地と意地のぶつかり合い

 オープンな様相を呈してきたなかで、お互いに守備時の戻る距離であったり、相手に寄せる距離であったり、特に中盤での攻防はより一層激しくなっていった。

 そんななかでも両チームのダブルボランチは中盤の主導権を握らせまいと球際でのバトルが激しくなり、よりダービーらしいバチバチとした展開になっていく。

 

 そんなゲームのボルテージが上がっていくなかで、仙台は前線からのプレッシングで高い位置でボールを奪いショートカウンターを狙う形へ、山形は前から来る仙台に対して前線に一気にロングボールを送り次の1点を狙っていった。

 

 拮抗した展開もあり、両チームともに交代カードをなかなか切れない状況でもあった。仙台が最初に切ったのは68分の中山、山形は75分に狩野と後半も半分を過ぎたところだった。

 仙台は78分に高い位置でボールを奪うと中島の絶好のクロスに中山が合わせるもヒットせず、山形も86分にカウンターからイサカゼインが絶好機を迎えるも枠を捉えることができなかった。

 終盤まで激しい攻防が続くなかで、仙台は名願、有田、松下を投入。山形も坂本と有田が投入された。

 特に仙台の松下と有田は、前節同様に短い時間ながらも存在感を出した。松下は広い視野とスペースへのパスで一気に展開しチャンスを作り、有田は積極的な背後への動きでボールを引き出した。

 

 オープンになった後半は、両チームともにチャンスを生みながらも決め切ることができずにスコアは動くことがなかった。

 みちのくダービーセカンドラウンドは1-1のドロー。痛み分けとなった。

 

最後に・・・

 仙台がホームだったファーストラウンド同様に、両チームのサポーターの熱量も相まってダービーらしいお互い譲らない展開となった。

 ダービーは勝ってなんぼで、勝利以外は意味をなさないが、両チームのそんな情熱と熱量のぶつかり合いが、最終的には勝敗を決さない形となったと思う。

 

 仙台としては、前半はある程度我慢しながらという展開のなかで、PKで先制点を奪えたまでは良かったが、不運なPKもあって長い時間リードを保てなかった。

 後半は自分たちから仕掛けることでゲームを動かし、オープンな展開からチャンスも巡ってきたが、決め切ることができなかった。やはり最後に仕留めきる最後のクオリティは高めていかなければならない。

 一方で前節同様に選手交代もうまく使いながら、終盤は足が止まることなく攻めることができたのは、夏場の戦いに向けて収穫。キャンプから取り組んできた走力の部分が発揮できているので、これを継続すれば勝点1を終盤で3に変えられる試合も作れると感じた。ここは夏場に向けて自信を持ちたいところだ。

 

 次節はホームに帰って栃木SCとの対戦。前回対戦は1か月前だが、そのときの栃木は小林伸二監督の就任初戦で、逆転勝利を納めることができた。しかし栃木も若い選手を積極的に起用し、ここ2試合は大分、千葉に連勝。調子を上げてきている。栃木も残留に向けて負けられないし、簡単な試合にはならないだろう。

 仙台としては、しっかり高い強度と走力で負けずに、最後のクオリティを高めて、チャンスを生かしたい試合だ。次節も一筋縄ではいかないだろうが、アグレッシブな姿勢で栃木に襲い掛かって4試合ぶりの勝点3をゲットしたい!!

 

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