ヒグのサッカー分析ブログ

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vsハイプレスとの戦い~明治安田生命J2第2節 水戸ホーリーホックvsベガルタ仙台~

 さて、今回は水戸ホーリーホック戦を振り返ります。

 中山にとっては、さっそくの古巣対戦。

↓前節のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

 

スタメン

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 ベガルタ仙台は、開幕戦となったアルビレックス新潟戦をスコアレスドロー。新潟にボールを保持され、自分たちが表現したいことができず、課題の多い試合となった。開幕戦の反省・課題を修正して今節は水戸ホーリーホックとの対戦。ハイプレスで来る相手に対して、飲み込まれずに戦えるかが勝負のポイントとなった。

 仙台は前節から3人を変更した。ボランチに富田、左サイドハーフに氣田、2トップの一角に富樫が起用された。リャンと遠藤はベンチ。赤﨑はベンチ外で皆川がベンチ入りをした。

 一方の水戸ホーリーホックは、前節・大分トリニータ戦が中止になり、これが開幕戦となる。今シーズンも多くのメンバーが入れ替わった編成だが、秋葉監督はよりアグレッシブなサッカーを目指す。鹿島アントラーズとのプレーシーズンマッチも勝利し、鼻息荒く、開幕戦へと挑む。

 水戸は4-4-2の布陣。楠本、前田、曽根田、木下が新加入組のなかで先発。特に木下は長らくヨーロッパでプレーし、190㎝の体格を活かしたプレーが得意で、前述の鹿島戦でもゴールを決めている。ベンチには山口、高井、梅田、唐山が新加入組となっている。

 

前半

(1)無秩序な15分間をコントロールできた水戸

 風が強いなかで行われた試合は、開始から両者ともに長いボールを蹴り合う時間が続いた。

 水戸は長身の木下を目掛けてロングボールを送る。一方の仙台は相手サイドバックの背後へロングボールを送り、高い位置でのプレーを目論む。

 お互いがロングボールを蹴り合うなかで効果が出たのは水戸だった。開始1分には木下がロングボールを収めてシュートを放つ。平岡との競り合いで、ある程度勝てた木下がポイントになれたことで、水戸が仙台陣内でプレーする時間を増やせた。

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 また、水戸は仙台がビルドアップを開始するとハイプレスで襲い掛かる。基本的にビルドアップ隊へ2トップとサイドハーフが同じ列になり、「4-2-4」のような形でプレスを掛けることで、仙台の時間とスペースを奪う。

 16分の先制点も、仙台のビルドアップに対してハイプレスでロングボールを蹴らせて、そのセカンドボールの回収をきっかけに発動したカウンターだった。

 

 仙台は、ビルドアップ時に時間とスペースを奪われたことで可変する時間も作れずに前節同様にバランスが悪い形でのボール保持となった。

 先制点のシーンでも無理に可変したことで、全体のバランスが崩れ、中央からのカウンターを許した格好となった。

 

 水戸としては無秩序になった序盤にハイプレスを行うことで、試合をコントロールでき、先手を奪うことに成功した。

 

(2)ハイプレスからの脱出

 序盤は水戸のハイプレスにタジタジだった仙台。結果的にカウンターからの失点を喫することになった。

 しかし、失点後は水戸のハイプレスに対してしっかりスペースを見つけることで脱出に成功し出す。

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 前述したように水戸のハイプレスはサイドハーフが2トップと同じ列まで出て行き、ビルドアップ隊に時間とスペースを奪う。

 一方で、水戸は4-2-4のような配置になるので、サイドハーフの背後(ダブルボランチの脇)のスペースは空いている。

 仙台はそのスペースに名倉と氣田が登場し、トランジション時やセカンドボールを回収したときには、彼らにボールを預けることで、徐々にハイプレスから脱出できるようになってくる。

 水戸はサイドハーフが前に出てくるものの、サイドバックは連動しないので、サイドハーフサイドバックの間にスペースが生まれる構造になっている。

 仙台としては、もともとのスカウティングで分かっていたのかもしれないが、失点以降にそこのスペースが利用できるようになった。

 

 ハイプレスから脱出できるようになった仙台は、徐々にボールを保持して押し込む時間を作れるようになる。

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 ここでも両サイドハーフで役割が違っていた。右サイドは名倉が加藤から横パスを受けて中央へ侵入する動きをする。そのときに氣田も加わり、2トップと両サイドハーフで中央突破を図る。その代わり加藤は縦へ仕掛けてクロスを上げる役割。

 左サイドでは、氣田がハーフスペースの位置から相手センターバックサイドバックの間を縦にランニングする。そこへ内田がスルーパスを送り、氣田がクロスを上げる。

 31分にPKを獲得したシーンは、まさにこの流れで内田が氣田へスルーパスを送り、マイナスのクロス。ファーで詰めていた加藤が吉野へ落とし、吉野のシュートがハンドを誘いPKを獲得。PK自体はラッキーな判定だったと思うが、それまでの流れは狙い通りだった。そして、このPKを中山が沈めて同点に追いつく。

 

 新潟戦では縦への突破が少なかったが、この試合では氣田や加藤が積極的に縦へ仕掛けることができていたし、実際にチャンスを作れた。

 序盤こそは水戸のハイプレスに苦しんだが、プレスを脱出できるようになってからは仙台が徐々にボールを握って攻撃へと転じることができた。

 1-1で後半へと折り返す。

 

後半

(1)狙いの継続と攻守における微調整

 後半開始は両者ともに大きく狙いは変わらなかった。そんななかで仙台は攻守において微調整を図ることで、前半よりも落ち着いて試合を進めることができた。

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 ビルドアップにおいては基本的には富田がセンターバックの列に降りることが原則になっているが、富田が間に合わないときは両サイドバックの片方が落ちて3枚を形成する。それと同時にサイドバックが落ちたサイドのサイドハーフ(図だと名倉)が横幅を取り、ボールを引き出す。

 新潟戦ではルールがなくて混乱していたが、この試合では原則と無理なときの次善策という形にすることで配置の整理ができていた。

 この修正によってビルドアップの配置が素早く整い、水戸のハイプレスを正面から受けることが少なくなった。

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 また守備においては積極的に前へ出ることで、水戸のボール保持に圧を掛けていく。

 平塚がセンターバックの間に落ちてビルドアップをスタートすることが多い水戸。それに対して仙台は、2トップとサイドハーフ(主に氣田)がプレス掛ける。それに連動してサイドバックも相手サイドバックまでプレスを掛けて高い位置でボールを奪うことを狙った。

 前半にも高い位置でプレスを掛けてボールを引っ掛けられたので、それを整理することで、よりプレスでハメることができていた。

 前半同様に相手サイドハーフの背後を利用すること、またボール保持の安定と前プレの整理によってビッグチャンスは生まれなかったものの、序盤から試合の主導権を握って戦うことができた仙台だった。

 

(2)縦一直線の水戸。ゆっくり攻めたい仙台。

 水戸は55分に高井と村田を投入し、両サイドハーフを代える。そして66分には安藤と木下を交代して梅田と唐山を投入する。

 水戸のスイッチが明らかに変わったのはこの2トップを入れ替えてからだった。

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 水戸はボールを奪うと間髪入れずに一気に縦へロングボールを送り込む。そこへ入ったばかりに2トップが抜け出してゴールを狙う。

 後半も風下に立った水戸はボールが伸びないことを逆利用し、高さから速さへ攻撃をスイッチしたことでチャンスを作り出す。

 またベテラン2人がセンターバックの仙台なので、疲労が溜まってくる後半に彼らを入れることで、スピードで優ろうとしたのではないだろうか。

 しかしそんな平岡と若狭、そして杉本は、冷静さを忘れずにしっかりとゴールを死守した。

 

 一方の仙台はカルドーゾ、その後に皆川と真瀬を投入する。前線がカルドーゾと皆川になったことで、2トップに収めて全体を押し上げていくような形へと攻撃が変化していった。

 縦一直線にスピードを上げる水戸と、全体を押し上げながらコンパクトにゆっくり攻めたい仙台という構図へと変わっていく。

 

 そして、次に試合を動かしたのは仙台。74分に左サイドのスローインからペナ角へ侵入すると、最後は吉野がグラウンダーのシュートを右隅へ決めて逆転に成功する。

 しかし、水戸は直後の77分にロングボールから大崎→高井と繋いでディフェンスラインを突破すると、ゴール天井へ突き刺してすぐさま同点へ追いつく。

 

(3)千両役者・遠藤康

 同点に追いつかれた仙台は、80分にリャンと遠藤の2人を投入する。

 しかし同点に勢いづく水戸が、その後も縦に速い攻撃で仙台ゴールへと襲い掛かる。しかし杉本が再三のセービングで失点を許さなかった。

 

 仙台は肝心の2トップになかなかボールが収まらずに攻撃の形ができていなかった。

 それでもアディショナルタイムに入った95分に仙台が勝ち越しゴールを決めた。

 このシーンまでなかなかボールを収められなかったが、このシーンはカルドーゾにボールが収まったところからスタートできた。

 着実に左サイドへと前進し、内田がファーへクロス。詰めていた真瀬の折り返しに遠藤が冷静にネットを揺らし、土壇場で仙台が勝ち越しに成功した。

 少ない時間ながらも冷静にチャンスを伺い、最後にゴール前で冷静にシュートを決めたあたりはさすがに一言だった。

 

 そして、残り1分を凌ぎ切ってタイムアップ。打ち合いとなった試合は仙台が最終盤に勝ち越し、今シーズン初勝利を挙げた。

 

最後に・・・

 水戸のような若くてイケイケドンドンなチームは、J1では見られなかったチームだ。J1だとよりコレクティブに戦うチームが多いが、J2では水戸のように多少の粗さを残し、時には後半のようにオープンな展開を承知の上で仕掛けてくるチームがある。

 そういう意味では、ここ数年戦ってきた相手とは違うなかで、打ち合いにはなったがしっかり勝てたことは大きいと思う。

 また守備陣は若狭、平岡、杉本を中心にここぞの場面で守り切ってくれてとても助かったし、それに応えた遠藤のゴールは素晴らしかった。

 

 チームとして課題が解決された訳ではないが、前節・新潟戦に比べれば、戦い方や各選手の立ち位置などは整理できていたと思う。そういう意味では不安要素は残しているものの、着実に成長しているのかなと思う。

 

 次節はホームに帰ってザスパクサツ群馬との対戦。渡辺広大や小島雅也、大槻監督など仙台にゆかりのある選手・監督との再会ともなる。群馬も開幕2戦は1勝1分で、簡単に勝てる相手ではない。しっかりいい準備をしてホーム初勝利を挙げたい!!

 

ハイライト


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