ヒグのサッカー分析ブログ

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課題多き船出~明治安田生命J2第1節 ベガルタ仙台vsアルビレックス新潟~

 みなさん、ご無沙汰しておりました。今シーズンもよろしくお願いします!

 

 ということで、開幕戦・アルビレックス新潟戦を振り返ります。

 

スタメン

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 昨シーズン、J1で19位となりJ2降格の憂き目にあったベガルタ仙台。今シーズンは「CRAWL UP」のスローガンを掲げ、1年でのJ1復帰を目標に42試合の長丁場を戦っていく。監督は昨シーズンラスト2試合を率いた原崎監督が続投。クバや西村など主力選手が何名か抜けたものの、主力の残留と新戦力の補強で昇格を目指せる編成を組むことができた。

 そんな仙台のスタメンには、3シーズンぶりに戻ってきたリャン・ヨンギを含めて7選手が名を連ねた。またサブには大卒ルーキーの大曽根が入った。

 一方のアルビレックス新潟は昨シーズンJ2で6位。アルベルト・プッチ監督がFC東京の監督に就任し、代わりにコーチだった松橋さんが監督に就任する形となった。今シーズンこそ5シーズンぶりのJ1昇格を目指して戦う。本間や高木などの主力の残留に成功し、トーマス・デンやイッペイ・シノヅカらJ1経験者を補強。今シーズンもボール保持を主体とするスタイルで挑む。

 新潟は4-3-3のシステムを採用。新戦力は伊藤とイッペイ・シノヅカのみ。ベンチには本間が控える格好となった。

 

前半

(1)整理された新潟のボール保持攻撃と仙台の守備対応

 ボールを保持しながら攻めていくことを今季のスタイルとして掲げている両者。なので、ボールを握ることで主導権を取りたいなかで、先にボールを保持できたのは新潟だった。

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 新潟は、4-3-3のポジションをほとんど可変させずにボールを握る。特にビルドアップ隊の4人(GK、2CB、アンカー)のポジショニングとボールを前進させる技術が安定しており、序盤から主導権を握ることができた。

 中央を閉める仙台に対してサイドから前進していくことが多かった。左サイドでは、イッペイ・シノヅカが外レーンから縦に仕掛けていき、積極的にクロスを上げていく。

右サイドでは藤原が幅を取り、舞行龍からボールを引き出し前進。谷口や高木、左IHの伊藤も加わってサイドから中央へと侵入を試みる。

 また、仙台の守備ブロックに穴ができると見るや千葉は楔のパスを入れ、一気に攻撃のスピードを加速させていく。

 このようにサイドから中央からとボールを動かしながら、仙台陣内へと押し込んでいった。

 

 それに対して仙台の守備は我慢を強いられる時間が続く。

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 仙台は嚙み合わせ上、どうしても浮いてしまうアンカーの高の位置を2トップの守備基準点としていた。なるべく高にはボールを入れさせずに、センターバックからセンターバックの横パスが入ったのを合図に2トップの一角がセンターバックへとプレッシングを開始する。特に千葉→舞行龍にボールが渡ったときに赤﨑がプレスをしていたことが多かった。

 仙台としてはプレスを開始したのと同時に、後方の選手は人を捕まえてパスを引っ掛けたかったところだが、捕まえきれずに前進を許してしまうシーンが散見された。

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 特に左サイドハーフの名倉はセンターバックからインサイドハーフの縦パスを警戒することも求められたことで、守備の立ち位置がずれてしまい、舞行龍から藤原のパスに対して後手を踏んでいしまうシーンが見られた。

 なので、前半途中から名倉の立ち位置が2トップと同じ列に立つようになる。このことでインサイドハーフのパスコースを遮断することとサイドバックのパスコースを遮断することを両立させる。

 もし舞行龍から藤原にパスをするとしたら浮き球のパスになるので、そうなったらボールが浮いている間にスライドして対応する。そうすることで新潟の攻撃のギアを上げさせることを制限した。

 

 劣勢な状況であることは変わりないが、原崎監督がコメントした通り、ある程度ボールを持たれることを想定しながら、できる限りの対応はしたのかなと思う。

 

(2)2センターバック+1を作る。盛り込みすぎたボール保持設計。

 序盤から守備に追われた仙台だが、時間の経過とともにボールを保持できそうな局面を作れるようになる。

 仙台のビルドアップは、だいたい3パターンくらいに分かれていた。

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 基本ルールとしては2センターバックと両サイドバックの片方、もしくはボランチが落ちてきて3枚を形成。アンカー脇を狙いたいので、4-1-4-1でブロックを組む新潟に対して3-4-3のような形で前進したかったのが狙いだったと思う。
 上図からもわかる通り、恐らく色んなパターンのボール保持を試みたいのが今季の仙台だと思う。

 しかし、この試合ではどのパターンにするかはピッチ上の選手たちに委ねられていることもあって、可変するなかでイメージが共有されてなく、ヘンテコな可変になることが多かった。例えば若狭と加藤のポジションが被ったり、加藤と遠藤が同じレーンに立っていたり、リャンが落ちてきたけど平岡がポジションを取れてなかったりとボール保持するための立ち位置にズレが生じて、パスが合わずに新潟に簡単にボールを奪われてしまうシーンが多かった。

 リャンや遠藤があえてカウンターを仕掛けずにキープして時間を作っていたのも、そんなところが理由かなと思う。

 志は高いが、前半の内容からすれば少し盛り込みすぎたかなと思うボール保持の設計だった。

 

(3)カウンターを発動させなかった新潟のポジショニング

 ぎこちないボール保持になっている仙台にとっては、奪った後のカウンターを発動させることでチャンスを作り出したかったところだ。

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 仙台はアンカー脇に赤﨑が登場し、そこへボールを収めることで一気にカウンターを仕掛けたいところだった。

 しかし、新潟も高がしっかり赤﨑を潰すことでカウンターの芽を摘む。また高がチャレンジできるように堀米(もしくは藤原)が内に絞ることでしっかりとネガトラの準備ができていた。

 そのような新潟の対応もあって、仙台はなかなかチャンスを生むことができなかった。31分にはようやくカウンターを発動できたものの、内田のクロスは失敗に終わった。

 

 新潟が主導権を握るなか、仙台は我慢強く守備で応対し、スコアレスで折り返すこととなった。

 

後半

(1)吉野のサリーによる立ち位置の修正

 前半の仙台は、新潟にボールを握られ守備に追われる展開になった。またボールを保持ししても立ち位置が定まらずに描いていたイメージと程遠いボール保持となった。

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 前半は、色んな選手が2センターバックのエリアに落ちてきたが、後半は吉野が落ちてくることで立ち位置を修正した。

 またリャンがアンカーポジションとなり、状況に応じて遠藤も助けに来るようになった。

 この変化で良くなったのは吉野だった。前半は、役割の多さからか雑なプレーが目立ったが、後半は中盤でどっしり構えられたことでボール奪取やセカンドボール回収に貢献していた。

 

 しかし、仙台のボール保持に対して「前プレを仕掛けたら奪えそう!」と考えた新潟は、前半よりも仙台のビルドアップ隊に圧力を掛けるようになった。

 よって立ち位置は修正できたものの、新潟のプレッシングを掻い潜れずに高い位置でボールを奪われる展開が続いていった。

 

(2)選手交代による変化とペナ角からの攻略

 立ち位置を修正したものの、新潟の圧力に苦しめられた仙台は選手交代による変化で流れを変えようと試みる。

62分に赤﨑と遠藤に代えてカルドーゾとルーキーの大曽根を投入。69分には中山に代わって富樫を投入する。

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 時間の経過とともに少しずつ敵陣に侵入できるようになる。仙台としてはペナルティエリアの角(略してペナ角)からの攻略を図っているように感じた。ペナ角から相手の背後を突くスルーパスやドリブル突破、クロスなどで仕掛けていこうとするシーンはいくつか見られた。

 しかし、ペナ角が埋められてしまったときの次善策がなく基本的にはやり直すのだが、結局最後まで仕掛けられずに攻撃が終わってしまった。

 攻撃が詰まったときに、もう少しサイドバックが縦へ仕掛けて(えぐってクロス)もいいと思ったが内田も加藤も仕掛けられず。そういう意味では早い段階で真瀬を投入しても面白かったかなとは思う。

 

(3)両者ともに最後まで崩し切れず

 新潟は前線の鈴木、イッペイ・シノヅカが負傷により交代を余儀なくされたことで、恐らく予定していた交代とは違うものになった。

 それでも途中投入された三戸は縦への積極的な仕掛けを見せ、本間もドリブルキープから堀米とのコンビネーションで崩しにかかった。

 ラスト10分は、守備に追われた仙台のスタミナが消耗したことで新潟が仕掛けるシーンが多かった。

 しかし、杉本、若狭、平岡を中心に最後までゴールを割らせない。特に両センターバックは体を張ったシュートブロックやクロス対応で最後までペナルティエリアで新潟にいい形でシュートを打たせなかった。

 

 両者ともに最後までゴールを奪うことができずに試合終了。開幕戦はスコアレスドローとなった。

 

最後に・・・

 ボールを保持したい両者の対戦だったが、昨年からのメンバーが多く残り練度の高い新潟の方が一日の長があった。

 それでも最後まで新潟に牙城を崩させなかったのは、昨年までJ1だったチームの意地だったかなと思う。

 

 開幕戦を見る限り、原崎監督の理想像は高い。ボール保持では前述したようにあらゆるビルドアップのパターンを考えているし、仕掛けにおいてはポジションチェンジを含めたより選手間のコンビネーションを求めている。より選手たちがピッチ上で考えていく必要があるだろう。

 また、守備ではあまり下がりたくない。サイドハーフがより高い位置を取っていたことが象徴的で、より高い位置でボールを引っ掛けてショートカウンターで仕掛けていくことも狙っていると思う。

 

 選手も口々に話しているように、まだまだ課題が多い状況だ。まずは選手間のコンビネーションを高めることが必要になってくるだろう。

 次節はアウェイで水戸ホーリーホックとの対戦。水戸は開幕戦が中止になったために、この試合が開幕戦となる。かなり気合いの入った状態で来るだろう。相手の勢いに飲み込まれずに、しっかりやるべきことをやって今シーズン初勝利をもぎ取って欲しい!!

 

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