さて、今回はFC町田ゼルビア戦を振り返ります。
↓前節のレビューはこちら
スタメン
ベガルタ仙台は、前節・モンテディオ山形とのみちのくダービーで勝利し、今シーズン初の連勝を記録。開幕5試合で3勝2分と上々のスタートを切った。しかし、前節から原崎監督が新型コロナウイルス陽性となり離脱。今週は立て続けに12人が離脱し、シーズン序盤にして1つの山場を迎えている。今節の相手は好調の町田だけに「オールベガルタ」でこの山場を乗り越えたい。
今節は左サイドハーフに氣田に代わって大曽根が起用された。大曽根にとってはプロ初スタメンとなる。それ以外は変更点なし。ベンチには加藤と福島ユナイテッドから加入した鎌田大夢がメンバー入りを果たした。
一方のFC町田ゼルビアは、前節・東京ヴェルディとの東京クラシックに敗れ、今シーズン初黒星を喫した。しかし開幕から好調で、特に攻撃陣は山形から加入したヴィニシウス・アラウージョなど選手層が厚い。今シーズンの昇格候補の1つと言っていいだろう。連敗をしたくない町田にとってアウェイながらチーム内に混乱が生じている仙台を叩きたい一戦だ。
町田も1人のメンバーを入れ替えた。安井が2トップの一角で先発。右に太田、左に平戸という中盤の構成に変わっている。ベンチには古巣対戦となる中島裕希が入っている。
前半
(1)町田の仙台対策
試合は開始から町田がペースを握る形で進むと、10分と19分に立て続けにコーナーキックからゴールを奪い、2点のリードを得て優位に試合を進める展開となる。
試合内容としては、町田がしっかり仙台対策をしてこの試合に挑んでいた。
仙台のボール保持の形はリャンがセンターバックの列に落ちて3人+フォギーニョでビルドアップ隊を形成する。
それに対して町田はチョン・テセと安井が縦関係になり、チョン・テセと両サイドハーフで3人に当て、安井がフォギーニョを見る役割となっていた。
両サイドハーフは基本的に外切り(サイドバックへのパスコースを切る)を行うことでパスコースを限定。縦パスを誘発させて、そのパスをダブルボランチが刈り取って攻撃へと転じることが狙い。
そしてポイントだったのは安井のフォギーニョへのマークだった。リャンとフォギーニョのダブルボランチとなった仙台は、彼らの役割としてリャンはサイドへ散らしたり、ゆっくりプレーすることで全体を整え、フォギーニョは縦パスを入れて攻撃のスイッチを入れていく。
町田としては攻撃の起点になるのはフォギーニョだと分析し、そこへ安井をぶつけることで仙台の攻撃のスイッチャーを試合から消すことに成功する。
また、仙台の攻撃ルートとしてサイドバックからボランチに横パスして、そこから縦パスを入れるルートがあるが、そこも安井が消すことで仙台の攻撃を寸断する。
そして仙台がバックパスをしたら、安井はフォギーニョからセンターバックへのプレスに切り替え、ロングボールを蹴らせるように誘発させていた。
加えて町田が気を付けていたのは、中盤でスペースを与えないことを徹底していた。仙台は前節・山形戦の先制ゴールのようにスペースがあると、そこを利用して一気に攻撃を加速していく。
そんな仙台に対して町田はダブルボランチ(特に佐野)が中央にいることで、仙台のショートカウンターを発動させないようにしていた。
このような徹底した仙台対策をした町田が前半はペースを握り、またセットプレーから2ゴールを奪ったことで優位に立つことができた。
(2)準備不足を露呈した仙台
一方の仙台は、準備してきた町田に対してどうボールを前進させるかでずっと悩んでいた。
スコアレスの状態であれば、無理にボールを前進できなくても、ボールを持ちながらクローズドにゲームを進められるので問題ないが、早い段階で2点差になってしまったため、前に出ざるを得なくなった。
なのでサイドから無理矢理活路を見出そうとするが、深津と高橋を中心として町田の堅いバックラインの牙城を崩せない。
おまけに中山がクロスに飛び込んだときに深津の足に乗っかってしまい、着地時に足首をひねり、赤﨑との負傷交代を余儀なくされる。
前述の通り、新型コロナウイルス感染者が続出したことで準備期間が2日しか取れずコンディションを上げることで精一杯だったのだと思う。
試合における狙いはなかなか見せられず、自分たちが日常的にやっているプレーで対抗したが、しっかり仙台対策を行い、チーム完成度の高い町田に様々な差を見せつけられてしまった展開となった。
前半はチョン・テセと平戸のゴールで町田が2点リードし、後半へと折り返す。
後半
(1)サイドハーフのインサイドハーフ化
後半スタートのメンバーは上図の通り。36分に負傷した中山から赤﨑に代わっている。
前半は、徹底した町田の仙台対策の前に手も足も出なかった仙台。監督不在のなか、ハーフタイムでどれだけ修正して、同点そして逆転まで持っていけるか試される状況となった。
そんななかで、仙台はサイドハーフの立ち位置を修正することで、町田陣内へと押し込む時間を増やしていった。
前半は攻撃のスイッチャーであるフォギーニョが安井のマンツーマン守備によって消され、ボールの前進ができなくなった。
しかし、後半はそんなフォギーニョの近くにサイドハーフが登場するようになる。町田のボランチとサイドハーフの間に仙台のサイドハーフが立つことでビルドアップ隊からのパスルートを作る。前述したように町田のサイドハーフはプレッシングを行うときに外切りを行っているので、縦のパスコースは空いている。
なので、ビルドアップ隊からサイドハーフがボールを受けて前進するようなケースを増やすことで町田陣内に侵入する回数を増やした。
また町田のサイドハーフが縦パスを気にするようになれば、自然にサイドが空くのでビルドアップ隊からサイドバックにパスする回数も増えるし、町田のダブルボランチが仙台のサイドハーフに食いつけば、ボランチとセンターバックの間にスペースが生まれるので、ロングフィードで2トップへボールを送ることもできる。
このようにして、少しずつ町田の中盤の列を突破してゴール前までボールを運べるようになったが、最後の部分でお互いのイメージが噛み合わずにパスミスが起こったりして、シュートまでなかなか持っていくことができなかった。
(2)攻撃を加速させた鎌田と加藤
仙台は62分にリャンと大曽根に代わって加藤と鎌田が投入される。加藤がボランチ、鎌田が左サイドハーフに起用された。
この交代で仙台の狙いは大きく変わったわけではないが、推進力のある加藤がボランチに起用されたことでフォギーニョのフォローをしながら、時には前線に絡むプレーを見せてくれた。
左サイドハーフに入った鎌田は、大曽根よりも前を向くプレーが多く、狭いスペースに潜り込んでドリブルからトリッキーなパスでチャンスを作り出そうとしていた。
若い力で徐々に町田ゴールへ近づいたもののゴールまでには至らず。78分の遠藤がペナルティエリアで奪って富樫にクロスを送ったが合わなかったシーンは、この試合最大の決定機だった。
(3)したたかに3点目を仕留める町田
前半で2点のリードを得た町田は、仙台の攻撃に対してしっかり守りながらカウンターへ出て行く戦い方へとスイッチしていた。
4バックとボランチの堅い守備ユニットを中心に守り、奪ったら仙台のネガティブトランジションをパスで交わしながらカウンターへと持っていく。
ヴィニシウス・アラウージョ、平河、長谷川アーリアジャスールと、前線の選手を交代して、守備強度を保ちながらカウンターの一発へ準備をする。
そして実を結ばれたのが84分。真瀬の横パスをカットすると一気にショートカウンターを発動。平戸の折り返しに平河が合わせてダメ押し点を決めた。
試合は0-3で町田の完勝に終わった。
最後に・・・
チーム完成度・熟成度に一日の長がある町田に対して、新型コロナウイルスの影響もあり2日しか準備できず、しっかり対策を練ってきた町田に対して完敗に終わった。
前半の内容が全てと言っても過言ではないが、後半に向けてハーフタイムで村上コーチと選手を中心に修正を行って、前半よりも改善されて後半を戦えたことはポジティブに捉えたい。こういう経験がチームがより強くしていく糧になると信じている。
すごくポジティブに言えば、この状況がリーグ終盤ではなく序盤戦で良かったと思う。これからS級を受講する村上コーチにとってはいい経験になったと思うし、何より選手たちもどうすればこの状況を乗り越えられるかを主体的に考えることができたと思う。
まずは罹患した方々の早期回復を願うとともに、彼らが帰ってきたときによりチームが強くなることを信じてやまない。
そして何より負けた後の次の試合が今年は重要だと思っている。ここで引きずるようじゃ昨年や一昨年の二の舞を踏むことになる。
次もまたホームで戦うことになる。相手は大分トリニータだ。頭を切り替えて大分戦勝利に向けていい準備をして、そして4勝目をもぎ取りたい!!