ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

進化の途中で~明治安田生命J2第21節 徳島ヴォルティスvsベガルタ仙台~

 さて、今回は徳島ヴォルティス戦を振り返ります。前半戦ラストゲーム

↓前節のレビューはこちら

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スタメン

 ベガルタ仙台は、前節・ジェフユナイテッド千葉戦で0-2の敗戦。6試合ぶりの黒星となった。千葉の球際の激しい守備に対してリズムが掴めず、カウンターから失点を喫した。今節はその反省を活かしたい一戦。徳島はリーグ最少失点と守備が堅いだけに、その守備をいかに崩していくかがポイントとなった。

 今節は一気に6人のメンバーを変更。キーパーにはストイシッチ、右サイドバックに真瀬、センターバックに吉野、ボランチにデサバト、右サイドハーフは負傷明けの名倉、前線では中山が起用された。

 徳島ヴォルティスは、前節・アルビレックス新潟と1-1のドロー。1年での復帰を狙う徳島だが、ここまでは苦しい状況が続いている。前述した通りで守備はリーグ最少と安定しているが、23ゴールとゴールが奪えていない状況。前半戦最後の試合で勝利し、ここからの巻き返しを図りたいところだ。

 徳島は2人のメンバーを変更。右サイドバックエウシーニョ、アンカーに白井でインサイドハーフに玄理がリーグ戦初先発となった。

 

前半

(1)徳島のビルドアップと仙台のプレッシング

 昨シーズンから指揮を取るポヤトス監督だが、今シーズンも後方からのビルドアップからゲームを作っていく意向は変わっていない。

 まずはそんな徳島のビルドアップと対する仙台のプレッシングについて見ていきたい。

 ボール非保持が4-4-2の仙台に対して徳島はオリジナルポジションそのままに4-3-3でボール保持を開始することが多かった。

 特徴的だったのは、キーパーも加わるビルドアップで、キーパー、センターバック、アンカーの4人からスタートする。ビルドアップ隊4人が仙台の2トップに対してまずは一列目の突破を図る。基本的にはアンカーの白井にボールが渡ることで列を突破することに成功していた。

 仙台は、ビルドアップ隊に対して2トップがキーパーとセンターバックへコースを限定させながらプレスを掛ける。ボールを奪いに行くのは主にサイドバックへ入ったときで、特にエウシーニョへは氣田が厳しく寄せていたことが印象的だった。

 ただ、開始2分の決定機であったようにエウシーニョが中へドリブルして縦パスを送るようなプレーは手を焼いていた。

 

 また徳島は状況に応じて、白井がセンターバックの列に降りてくることがある。このときの仙台は両サイドハーフが徳島のセンターバックへプレスに行くような約束となっていた。

 

 徳島は、サイドバックインサイドハーフ、ウイングが列とレーンを移動することでパスコースを形成することができ、その動きでビルドアップ隊からボールを引き出すことで、仙台の守備を突破していった。

 しかし、徳島は前進していくなかでパスミスも多く、仙台がそのパスミスを高い位置で奪ってショートカウンターを仕掛けられそうな場面は多かった。なので仙台としても徳島に前進させられるリスクはありながらも、高い位置からプレスすることを止めなかった。

 仙台としては高い位置でボールを奪えていたものの、連係ミスでフィニッシュまで持ち込むことができずいたことは悔やまれた。

 

(2)改めて仙台のボール保持について考える

 話は変わって仙台のボール保持について触れたい。

 徳島戦終了後に、前半戦振り返りと題したvegaltalkに参加させていただいた。

 そこで話題の中心になったのが、fukuharaさんが話していたボール保持についてだった。今のやり方はイタリアのサッリ氏が17/18シーズンまで3シーズン率いていたナポリに似ているということ。

 詳しい内容はvegaltalkのアーカイブを聞いて頂きたいが、今回の内容を踏まえて改めて見直すと見えてきたものもあるので、自分なりに考えていきたいと思う。

 

 基本の原理原則になるのは、ボールサイドに対しての立ち位置である。イメージとしてはセンターバックから楔のパスが入ったとき。このときに頂点の選手に対して、斜めに位置する選手と底の位置する選手がいることである。楔のパスを斜めないしは底の選手に落とすことで、相手の列を越えて敵陣へスピードを上げて侵入していくイメージだ。 

 四角形のどのポジションにどの選手がいるかは決められていないので、各選手が味方の位置と相手の位置を把握しながら立ち位置を取る必要がある。

 なので、例えば遠藤が下がって底に位置しているのに、中島が同じ底の位置に立つということが度々起こる。そうすると立ち位置が被っているので正しい立ち位置を取れていない。そういう状況でパスを回すとミスが生じることが多くなる。特に前節の千葉戦はそんな感じだった。

 この試合では基本的に左サイドが中心だったが、千葉戦の反省もあり立ち位置の取り方は改善されたことでボールの循環は良くなった。ただ、そこからペナルティエリアへ侵入していくまでは行かず苦労していたという印象だった。

 また余談だが、本来センターバックと駆け引きする1トップや逆サイドのサイドハーフが状況に応じて四角形に混ざるケースもある。

 

 ちなみに、この試合の右サイドは比較的役割が固定されており、デサバトセンターバックの列に降りて、名倉を頂点に、横幅を真瀬がもう片方は流動的に選手が出入りする形となっていた。右サイドでは特に名倉がボールを受けてターンし、味方に預けるプレーが効果的で、名倉がいることでスムーズに行ける場面が多かった。

 

 実際にボール保持の形からチャンスが作れたわけではなく、まだまだ選手間での連携強化と戦術理解向上が必要であることは確かだ。試合を通じて少しずつ成長していくことに期待したい。

 

 ということで、前半はスコアレスで折り返す。

 

後半

(1)「幅」を意識し出す仙台

 前半は、徳島のビルドアップに対して高い位置でボールを奪えそうな雰囲気のなかで、奪えたり突破されたりをした仙台。また、ボール保持においては今までチャレンジしたことをこの試合でもやりながら、なかなか崩し切れない展開が続いた。

 

 後半開始からの仙台は、まずボール非保持においては前半のように高い位置からではなく、少し構えた状態から守備をスタートすることが多くなった。後半でお互いにより仕掛けていく展開になる中で、プレスを剥がされて危ないシーンを作り出すにはリスキーだと判断した結果なのかもしれない。

 

 またボール保持については、前半よりも「幅」を意識するようになる。

 徳島はボール非保持に4-4-2で守備をする。この日の仙台はデサバトセンターバックの列に降りて両サイドバックが高い位置を取るので、後半はそのサイドバックをより使うことで徳島の中盤の列を広げさせるようなボール循環に変化した。

 徳島の中盤が広がれば、ハーフスペースに立つ氣田と名倉はボールを受けられるし、狭くなっていればサイドバックを経由して、氣田と名倉がハーフスペースから背後へランニングする。このようにして少しずつ徳島の奥深くまで侵入できるようになった仙台だった。

 

(2)急に狂いだした歯車

 徳島にボールを保持されながらも、自分たちがボールを持てば幅を使った前進でチャンスを作り出せた仙台。

 しかし、63分に徳島が渡井と浜下に代えて児玉と西谷を投入したあたりから仙台の歯車が狂い出す。

 この時間帯辺りからセカンドボールを回収しても、前に急いでしまって雑なパスで徳島のボールを奪われるシーンが散見されるようになる。

 そして、69分にそれが原因で失点を喫する。

 テヒョンのパスが白井に引っかかるとそこから右サイドに展開され、一気に徳島が攻め込むと杉森のクロスに一美が合わせて徳島が先制点を奪う。

 

 しかし仙台も直後に同点に追いつく。

 吉野の対角フィードから左サイドに展開すると、遠藤、デサバト、氣田で突破。マイナスのクロスを富樫がジャストミートできずに、こぼれを内田が押し込んですぐさま追いついた。

 このシーンでは幅を使った攻撃が実を結んだシーンとなった。

 

(3)パワープレーから九死に一生を得る

 同点直後に仙台はデサバトと氣田に代えてフォギーニョと加藤を投入。一方の徳島は一美から佐藤へスイッチする。

 

 同点に追いついた仙台だが、その後も落ち着かない展開に終始してしまう。奪ったボールがなかなか前線へ繋げられず、徳島のターンがしばらく続いていった。

 その時間を抜け出せずにいると、再び徳島にリードを奪われる。

 セットプレーのこぼれを児玉がボレーシュート。そのシュートがカカに当たりコースが変わって決まった。得点自体はラッキーだったが、それまでの時間は徳島が仙台陣内に押し込んでいたことを考えれば、このゴール自体は妥当なものだっただろう。

 

 後がない仙台は、内田と遠藤に代えて若狭と皆川を投入する。皆川と富樫を最前線に置き、そこへロングボールを送ることでパワープレーのような形に方針を換えた。

 一方の徳島は足の攣った玄とエウシーニョに代わって安部と田向を投入し、5バックで逃げ切りを図る。

 

 徳島が後ろに重心を置いてくれたことで、後方から落ち着いてボールを持つことができた仙台は、2トップへボールを送り、そのセカンドボールをサイドハーフボランチが拾って徳島陣内へと攻め入る。

 そして、このパワープレーが報われたのはアディショナルタイム5分だった。

 左サイドバックになったテヒョンの緩やかなクロスを競った真瀬が田向に引っ張られてPKを獲得する。

 このPKを皆川が一度は止められるも、そのこぼれを冷静に押し込んで土壇場で同点に追いつく。

 

 そしてこのプレーがラストプレーとなり試合終了。2-2の引き分けに終わった。

 

最後に・・・

 まさに九死に一生を得た試合だった。内容としては、前節からの改善も見られたものの、崩し切るまでには至らず。ショートカウンターの場面でも仕留めきれなかったことで、徳島に流れが傾いた格好となった。

 

 これで前半戦が終了し折り返しとなった。前半戦終了時で2位というのは想像していたよりもいい位置に付けたなという印象だ。ただ、今は勝てていたプレースピードが速いサッカーから少しずつ変化を加えているところで、それがボール保持へのチャレンジというところだ。今は進化過程での産みの苦しみというか、やはりチャレンジしていくなかで、理想を突き通すところと妥協するところと色んなことを考えながら原崎監督も指揮を取っているなという印象がある。

 相手の研究・対策が今後も進んでいく中で、それを越えて勝っていくことができなければ上位に留まることはできないし、ひいては昇格も難しい。

 今やっていることが少しずつ結果として表れることを切に願っている。

 

 次節からはいよいよ後半戦。後半戦初戦は初っ端から直接対決。横浜FCとの対戦だ。前半戦では逆転負けを喫しているだけに、ホームではしっかり借りを返したいのと同時に、ここで勝利して勢いづけたい。次節はホームのサポーターを力に変えて勝点3をもぎ取って欲しい!!

 

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