ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

やるべきことが出来ていなかった仙台~明治安田生命J1第19節 ベガルタ仙台vs清水エスパルス~

 さて、今回は清水エスパルス戦を振り返ります。前半戦ラストゲーム

↓前節のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

 

スタメン

f:id:khigu:20210627145354p:plain

 ベガルタ仙台は、前節・鹿島アントラーズ戦で終了間際に追いつかれ、悔しい引き分けに終わった。我慢強く戦えていただけに、非常に不運で悔しい試合となった。

 連戦となる今節は同じ勝ち点で並ぶ清水エスパルスとの対戦。残留争いを考えたうえでも大事な6ポインターとなった。

 今節の仙台は3バックをチョイス。中2日の鹿島戦からは6人を変更した。ゴールキーパーにはクバが帰ってきて、それ以外にも照山、蜂須賀、中原、上原、加藤が名を連ねている。

 一方の清水エスパルスは、中断明けの初戦となる。ルヴァンカッププレーオフは鹿島と対戦し、敗退。天皇杯では福山シティに辛くも勝利し2回戦を突破した。最近は3バックと4バックを併用する中で、自分たちの戦い方を模索しているところだ。

 今節は4-4-2を採用した清水。ディフェンスラインにケガ人が相次ぐなか、原が復帰し、左サイドバックにはユーティリティな片山が起用された。前線にはサンタナと鈴木が並ぶ。

 

前半

(1)3バックの意図と嚙み合わせから得られる配置的優位性

  仙台は、この試合を3バックでスタートした。

 手倉森監督は、試合終了後のコメントでその意図についてこう語っている。

我々は連戦のなかで幅を持ってやってくる清水に対して、序盤から4バックでやって、スライドで横に動かされていたらたぶん苦しいゲーム状況になったと思います。

そのなかで、テル(照山颯人)がこのチームにいることで、5枚でのスタート(の作戦)を練れました。

2021明治安田生命J1 第19節 清水エスパルス | ベガルタ仙台オフィシャルサイト

  清水は、先週末に試合がなく、仙台は中2日で試合を迎えている。このことからも連戦による影響と横幅を使ってくる清水のサッカーを考慮し、3バックで試合をスタートさせた。

 しかし蓋を開けてみると、ここ数試合を3バックで戦ってきた清水がこの試合では4-4-2を採用した。またシステムの噛み合わせと清水の戦い方もあって、予想と反して仙台がボールを保持する展開となった。 

f:id:khigu:20210627152750p:plain

 仙台のボール保持は、3バックからサイドへの展開で前進することがほとんどだった。

 清水は4-4-2で守備ブロックを構築する。簡単なルールとしては2トップが、仙台の3バックからボランチへのパスコースを消す。その代わりサイドハーフが3バックへ圧力を掛ける。後ろはゾーンでの守備を行う。

 そんな清水に対して仙台は、出てくるサイドハーフの背後を使うことを目的としていた。前半は右サイドからの前進が目立った仙台だが、真瀬が高い位置を取り、片山をピン止めし、加藤がカルリーニョスの背後にポジショニングし、照山からのボールを引き出す。この動きで前進すると、仙台は右サイドから幾度となくチャンスを作ることができた。

 またクロスを上げるときも、中央よりもファーを意識することで4枚で守る清水の守備を上手く揺さぶることができた。3つ、4つチャンスがあるなかで1つでも生かしていたら、ゲームをさらに優位へ進められていただろう。

 前半に関して言えば、仙台が嚙み合わせのズレをうまく活用しながら攻め込むことができていた。

 

(2)リスクマネジメントできていなかった1失点目と活かせたセットプレー

 試合の展開は、12分に清水がカウンターから先制点を奪い、その後20分に仙台がセットプレーから追いつく流れだった。

 

 清水の先制点は、仙台にとってみればリスクマネジメントできていなかったことが原因の1つだった。

   f:id:khigu:20210627154549p:plain

 このシーンではカウンターを受ける前の攻撃で、ダブルボランチの2人が前へ出て行ってしまった。このことで後方は3対3の同数に。

 鈴木に入ると読んだ吉野だったが、その背後のサンタナへとボールが渡り、仙台は清水にカウンターを発動させてしまう。

 基本的には、やはりボランチはカウンターを受けられないように、またセカンドボールを拾うために中央には1人いて欲しい。このシーンでは2人とも同じ動きしてしまったことで、中央にスペースを生んでしまった。

 その後の上原と中原は、1人が中央にいるようにして、カウンターへのリスクマネジメントを取れていたので反省したのだと思う。カウンターになりそうなところも遅らせることができていた。なので次はスタートからできるようになって欲しい。

 

 仙台の同点ゴールは22分だった。

 右コーナーキックからショートコーナーを選択して上原がファーへクロス。平岡が折り返して吉野が決めた。

 セットプレーでの失点が多いという清水に対して、しっかり準備してきたであろう形でゴールが取れた。ゾーンで守る清水に対して揺さぶるという教科書通りの攻略方法でゴールを奪った。

 

 前半は、嚙み合わせのズレを活かしながら攻撃へ出れた仙台が、主導権を握って45分を過ごせた内容だった。

 カウンターから先制点を奪われたものの、セットプレーで追いつき同点で折り返す。

 

後半

(1)ミラーゲーム。守備基準点をハッキリさせた清水

f:id:khigu:20210627160111p:plain

 後半から、厳密に言えば前半終了5分前から清水は3バックへ変更する。これで仙台と同じシステムにし、ミラーゲームにすることで守備基準点をハッキリさせた。

f:id:khigu:20210627161430p:plain

 清水はシステムを変えてミラーゲームにした中で、前からのプレッシングを行うわけではなく、ある程度仙台にボールを持たせて、入ったところを潰していくような守備になっていた。

 サンタナボランチを監視しながら、3バックの前に立つ。2シャドーのカルリーニョスと鈴木も同じく3バックの前に立つ。後方はマンツーマン気味で見る。特にビルドアップの出口となっていた加藤と氣田のところには原と立田が迷わず行くようになり、仙台の前進を許さない守備をしていた。

 守備が機能しだした清水は後半開始早々から決定機を3つ作る。仙台は、なんとかクバが救ってくれたが、明らかにゲームの様相が変わっていった。

 

f:id:khigu:20210627162333p:plain

 仙台は清水はミラーゲームにしたことで、攻撃に停滞感が出始める。前半の流れもあってか、シャドーもウイングバックも足元でボールを受けようとすることが多く、そこで潰されるシーンが増えていった。

 マンツーマン気味で守るので、やはりシャドーなんかは機転を利かせて、背後を取るような動きで相手を引っ張ることも必要だったと思う。苦しいときこそ相手の深い陣地でプレーすることが大事だ。そういうプレー判断がここでは必要だったと思う。

 

(2)サンタナとディサロという2つのポイント

 清水は61分にカルリーニョスに代えてディサロを投入する。

f:id:khigu:20210627163436p:plain

 清水もミラーゲームにしたことで、守備基準点がハッキリされ、攻撃では苦しむ可能性もあったが、違いを見せたのがサンタナだった。サンタナの単純な強さ、収める力があり、ロングボールを送ってもサンタナが収めてくれることで前進できていた。また状況に応じては裏へ抜け出して起点を作るなど、なんでもできる選手。仙台にとっては90分間とにかく手を焼いた。

 また、3バックがサンタナに対してチャレンジ&カバーを取るので、遠くまで行くシャドーへは付いていけない。投入されたディサロは斜めに落ちてポイントを作ることで右サイドからの前進を上手く機能させた。前半は仙台が加藤が同じような動きで、前進させていたが、今度は清水が同じような展開でボールを前進させていった。

 

 徐々に主導権を握り始めた清水は、72分に勝ち越し点を決める。

 セットプレーのセカンドボールを竹内が折り返し、それをディサロが合わせて清水が勝ち越しに成功する。

 

(3)あまりにも稚拙だった同点直後

f:id:khigu:20210627164546p:plain

 ゴールを奪いに行かなければいけない仙台は、80分に皆川を投入して4-4-2のシステムへ。

 5枚で守る清水に対してサイドで数的優位を作りながら、クロスで糸口を見出そうとする。

 それが実を結んだのは、83分だった。

 左サイドで関口が粘ってコーナーキックを獲得。上原のキックはクリアされるも、こぼれを拾った松下のシュートが相手の足に当たりコースが代わってゴールへ吸い込まれた。

 

 しかし、僅か1分後だった。清水に三度勝ち越しを許してしまう。

 仙台が同点の勢いそのままに前プレするも、上手くハマらずに原の縦パスがディサロに入る。ディサロのパスを受けたサンタナは照山と平岡を振り切ってゴール左へと流し込んだ。

f:id:khigu:20210627165854p:plain

 もちろん、サンタナを抑えられなかった照山の責任もあるし、無理に前プレに行ってしまったところも反省点だが、個人的にはその前のプレーを取り上げたい。

 キックオフして間もない場面。ロングボールの競り合いから上原が右サイドでボールをフリーで拾えたのだが、すぐにそのボールを前線へ送ってしまう。これをクリアされ、再びルーズボールの拾い合いになったところで清水に拾われ、そこからの流れでゴールを奪われてしまった。

 得点直後、最も気を付けるべき時間帯だっただけにアバウトにボールを蹴ってしまったことは残念だった。もちろん追いついてイケイケな雰囲気もあるし、フルで戦った上原は疲労もあったと思うが、あそこでボールを落ち着かせて、マイボールにできていたら、違った展開になっていたかもしれない。そう考えると少し残念なシーンだったし、反省すべき場面だったと思う。

 

 残りの時間、パワープレーで攻めに出る仙台だったが、最後は集中した清水の守備に跳ね返され、万事休す。

 試合は2-3で清水の勝利。仙台にとって痛い敗戦となった。

 

最後に・・・

 今年のチームというかベガルタ仙台というチームは、個の力がないだけにいかに陣形をコンパクトに保ち、攻守において局面局面で数的優位を作って戦うかというところが大事な部分になっている。

 この試合での1失点目と2失点目(それ以外のシーンでも)は、相手にオープンな状況を作らせてしまったことでの得点だった。このことからも、自分たちがいかにやるべきことが出来ていなかったかということが、この2失点から分かると思う。

 3バックに変更して試行錯誤したなかでの戦いというのは理解できるが、システムや配置を変えても基本的にはやるべきこと、チームコンセプトは変えてはいけないし、あくまでコンセプトに沿った中で試行錯誤というものはしていくべきだと思う。

 この試合では、やはりチームコンセプトに沿った戦いができていなかったし、そこは反省して次に生かして欲しいところである。

 

 システムを変えてボールを保持したときにはいい攻撃もできていた。そこは収穫だと思う。その一方で攻めているときのリスクマネジメントや、配置を合わせられたときの臨機応変さというのはこれから求められる部分かなと感じた。

 

 次節もまたホームで試合ができる。相手は浦和レッズ戦。もう一度自分たちがやるべきことを徹底して、仙台らしい戦いで、浦和に立ち向かって欲しい!!