ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

似た者同士~明治安田生命J1第29節 清水エスパルスvsベガルタ仙台~

 さて、今回は清水エスパルス戦を振り返ります。

↓前節のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

↓前回対戦のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

 

スタメン

f:id:khigu:20210919073337p:plain

 前節・ガンバ大阪戦で12試合ぶりに勝点3をゲットした仙台。新加入の富樫や西村らアタッカー陣がゴールを奪い、勝利することができた。残留に向けて、この勢いをさらに加速させたい今節は、勝ち点差4で追いかける清水エスパルスとの対戦。勝てば1差まで縮まるだけに是が非でも勝利したい一戦だ。

 仙台は、富樫がハムストリングの違和感を覚え欠場。今節はカルドーゾと西村のコンビとなった。また右サイドハーフには中原が起用された。ベンチには、久しぶりに皆川が控える。

 一方の清水エスパルスは、前節・サガン鳥栖に敗れ9戦勝ちなし。なかなかトンネルを抜け出せずにじりじりと降格圏の背中が見えてきた状況だ。清水にとってもこれ以上負けられない試合。この試合を勝利することで、降格圏から離れたいところだ。

 清水は、ベンジャミン・コロリがコンディション不良のため欠場。右サイドハーフには西澤、左サイドハーフに鈴木唯人が起用されている。それ以外は変更なし。ベンチにはカルリーニョスやディサロらが名を連ねた。

 

前半

(1)似た者同士だからこそ現れた「差」~その1~

 この試合の前半を見た感想は、お互いに似た者同士だなということだった。

 両者ともに4-4-2のソリッドな守備をベースに、カウンターよりもボール保持攻撃を優先し、オープンな展開よりも、よりクローズドな展開へと持ち込みたい。

 故にミラーゲームとなったこの試合の前半は、攻守が激しく入れ替わる展開ではなく、ボール保持とボール非保持の局面になる時間帯が多かった。

 

 そんな似た者同士の戦いゆえに、仙台よりも清水の方がチーム力も個々の能力においても、数段上ということが現れてしまった内容となった。

 では、具体的にどこに差が出たのか。ボール保持局面とボール非保持局面に分けて見ていきたい。

 

 まずは清水がボールを保持し、仙台がボール非保持になる局面。

f:id:khigu:20210919213938p:plain

 清水はボール保持局面になると、ダブルボランチの一角が最終ラインに落ちて両サイドバックを高い位置へと促す。

 そんな清水のボール保持に対して仙台は、4-4-2のブロックを基軸としながら、相手のビルドアップ隊3枚(センターバックと降りたボランチ)へプレッシャーを掛けて、清水の攻撃を限定させていくのが狙いだった。

 このときに、左ハーフスペースにいる清水の選手に対して中原がアプローチを掛けるのだが、その背後に鈴木唯人が登場し、ビルドアップ隊からボールを引き出す。または、ビルドアップ隊から中原を越すロブパスで一気に片山へとボールを付ける。

 このように中原が食いついた背後のスペースを上手く利用して、清水の左サイドは仙台の列を越えていく。

 反対に右サイドでは、ヴァウドが右ハーフスペースから前進を試みる。同じくハーフスペースに立つ西澤へ縦パスし、西澤がフリックしたところを原が追い越していくのが右サイドの崩しの基本パターンだった。

 先制点はセットプレーでの得点だったが、そのセットプレーを獲得したシーンは、前述した中原の背後を鈴木唯人が利用したことで前進できたプレーだった。

 

 仙台としては、2トップの追いかけ方、後方で支援するサイドハーフのタスクをしっかり整理する必要があっただろう。前プレへ行くべきか、後方でブロックを形成するのか。ここはディフェンスラインの指示も含めてコントロールすべきだった。

 それでもなんとかなったのは、広範囲でカバーしたセンターバックコンビのおかげ。アピアタウィアと吉野は2トップを監視しながら、しっかり背後のカバーリングを行ったことで、清水に決定機を与えずに済むことができた。

 

(2)似た者同士だからこそ現れた「差」~その2~

 次に仙台がボールを保持し、清水がボール非保持になる局面を見ていきたい。

f:id:khigu:20210919215419p:plain

 仙台も清水同様にボランチを1人降ろして、サイドバックを高い位置に持っていくことで、サイドからの攻撃を試みた。

 このときの清水のボール非保持の形は、4-4-2。基本的にはブロックを敷く形だが、プレッシャーを掛けるときは藤本がスイッチャーになる。

 清水は仙台と違ってサイドハーフの役割がハッキリしており、基本的にサイドバックの位置に合わせるようにし、ビルドアップ隊からパスを寸断したり、牽制を掛ける。

 よって監視されているサイドバックは、パスコースが限定されたことで高い位置を取れずに、どうしても低い位置を取るしかなくなる。

 加えて仙台の攻撃の要となっている上原に対しては、松岡が厳しくチェックし、上原からの展開を許さない。

 仙台は、上原にボールが渡ったときに引っ掛かってショートカウンターを食らった場面が数回あったが、あれは松岡が上原を厳しくチェックしていた結果だ。

 毎試合、ボランチの位置から的確な展開でリズムを作っていた上原が封じ込まれたことで、仙台はボールを保持できていても、そこからなかなか上手く前に進めることができなかった。

 

 このように清水の方が保持・非保持の局面においてしっかり整理されており、仙台は苦しい前半を過ごすこととなった。

 前半は左コーナーキックからチアゴサンタナが決めて清水が1点リードで折り返す。

 

後半

(1)理に適いそうだったシステム変更

 後半スタートから中原→福森。仙台はシステムを3-4-2-1に変更する。

f:id:khigu:20210919221259p:plain

 3バックに変更したことで、まず効果が出たのは守備の面だった。

f:id:khigu:20210919222249p:plain

 3バックになったことで、清水のボール保持に対して守備基準点を明確にすることができ、前半よりも迷わず高い位置からプレッシングを掛けられるようになった。もちろん後方が同数になることがあり、それが裏目に出そうなシーンもあったが、得点が欲しく、自分たちのペースに持っていきたい仙台にとっては良い交代だったと思う。

 

 しかしペースを取り戻せそうだった矢先にミスから追加点を許すことになる。

 クバの判断が遅れたところを藤本に狙われ、そのままボールはゴールへと吸い込まれていった。仙台にとっては痛恨の失点だった。

 

 ただ、時間としては約40分間残されているなかで、仙台は1つずつ返そうと交代カードを切り、松下と関口を投入する。

f:id:khigu:20210919223627p:plain

 この交代以降から次第にボールを保持できるようになる仙台。

 左サイドでは福森が配球役になり、崇兆を高い位置に押し上げながら自身もサイドバック役になり、崇兆と西村の3人の関係で清水の深いエリアに侵入できるようになる。

 加えて、前半は松岡の厳しいチェックの前になかなか持ち味を出せなかった上原だが、システム変更し、松岡がシャドーを見るようになったことで、上原が前を向けるシーンが増え、そこからの展開からチャンスが作れるようになる。

 右サイドでは関口がハーフスペースでしっかりボールを受けることができ、それによって蜂須賀が高い位置を取れ、深い位置からクロスを上げる回数も増やせるようになった。

 徐々に流れを持って来れたなかで、59分に仙台は1点を返す。

 上原のコーナーキックからカルドーゾが強烈なシュートを決めて1点差へと詰め寄る。カルドーゾは来日初ゴールとなった。

 

(2)盤面を合わせる清水。ファイヤーフォーメーションで賭けに出る仙台。

 システム変更により徐々に試合のペースを取り戻せた仙台だったが、再び潮目が変わったのは67分の清水の交代だった。

f:id:khigu:20210919224606p:plain

 清水は、藤本からカルリーニョスへスイッチ。この交代と同時に清水も仙台と同じく3-4-2-1のシステムへ変更し、盤面を合わせミラーゲームを再び形成する。

 このシステム変更によって、盤面を合わせられたことで再び前進できなくなっていく。まさに前半のリピートのような状況にさせられてしまった。

 

 その後、サンタナが競り合いで首を負傷しディサロと交代。この交代と同じタイミングで仙台は赤﨑と皆川を投入。

f:id:khigu:20210919225305p:plain

 この交代でアタッカー陣4人を並べるファイヤーフォーメーションへと打って出る。

 しかし、かなりバランスを崩してしまった格好になり、うまく機能しなかった。

 

 反対に清水は、途中投入で入ったディサロがしっかりボールを収めることでチャンスを作り出す。

 アディショナルタイム8分あったなかで、仙台もパワープレーからゴールへと襲い掛かるも、最後まで同点に追いつくことができなかった。

 試合は、1-2でタイムアップ。残留争い直接対決は悔しい敗戦となった。

 

最後に・・・

 失点自体はセットプレーと自滅という形だったが、内容からすると似た者同士という側面もあって、それなりに清水とは差があったなというのが率直な感想だ。

 それでも後半、システムを変更して相手との「ズレ」を作ることでペースを取り戻せたのは良かったと思う。その後に盤面を合わせられたのは、ロティーナ監督さすがだなと。

 

 もちろん、残留を争うなかで近い順位の清水に負けたことは痛い。しかし、この試合では最後まで同点、逆転を目指して諦めずに戦っていたし、ファイティングポーズを取り続けていた。

 まだ何も決まったわけじゃないし、何かを起こすには十分なくらいの試合数が残っている。まずは諦めずに目の前の一戦一戦を集中して戦いたい。

 アウェイ連戦が終わって、次節はホームに戻り、徳島ヴォルティスとの対戦。すぐ上の順位にいるチームだけに、是が非でも勝利を掴み取りたい。

 清水戦で味わった悔しさをバネにホームで思い切ったプレーで、果敢にゴールへ向かって欲しい!!