ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

【取り戻した自分たちらしさ】明治安田J2第25節 ベガルタ仙台vs清水エスパルス

 さて、今回は清水エスパルス戦を振り返ります。

↓前節のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

↓前回対戦のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

 

スタメン

 ベガルタ仙台は、前節・徳島ヴォルティスに0-2で敗れて連敗中。ファジアーノ岡山戦に続いて自分たちの長所である高強度のプレーが鳴りを潜めて中断期間に入った。

 約2週間あったこの期間では、守備において前から行くときと一旦構えて守備ブロックを構築することの使い分けを重点的にトレーニングした。もう1回自分たちの特徴を見直して「良い守備から良い攻撃」で立て直しを図る。

 今節は首位・清水エスパルスとの対戦。J2トップの個人能力を有する西の横綱に対して、中断期間で見つめ直した守備を中心に塊となって襲い掛かれるかが勝敗のカギを握る。

 仙台は4-4-2の布陣に戻した。センターバックは實藤が菅田とコンビを組み、出場停止明けの髙田が左サイドバックに。右サイドハーフにはリーグ戦初スタメンとなる有田と左サイドハーフに中島が起用され、2トップはエロンと郷家のコンビとなった。ベンチには今シーズン初めて松澤が名を連ねて、工藤蒼生もメンバー入りを果たした。

 一方の清水エスパルスは、前節・大分トリニータに2-0で勝利し3連勝で首位と好調を維持している。リーグ屈指のタレントを有して、多彩なコンビネーションでゴールを奪っていく。この夏にはFC町田ゼルビアから宇野をレンタルで獲得し、ガーナ人フォワードのアブドゥル・アジズ・ヤクブも補強。さらなるパワーアップを図った。

 懸念材料があるとするならば、今シーズン敗戦した試合はすべてアウェイでの試合。そんなアウェイ・ユアスタでの試合で勝利し、自動昇格圏内をしっかりキープしていきたいところだ。

 清水は4-2-3-1のシステム。住吉がセンターバックに復帰し、両サイドバックはそれぞれ北爪と吉田が起用された。ボランチには新加入の宇野が起用され、原、山原、中村は欠場となっている。ベンチにはヤクブやドウグラス・タンキ、前回対戦でゴールを決めた西原らが控えている。

 

前半

(1)試合開始から球際バトル

 試合開始から中盤での球際バトルが繰り広げられて始まった。

 特に仙台は清水のボールホルダーに対してタイトな守備で自由を与えずに、中断期間で取り組んできたことを表現し、そしてこの試合に掛ける強い想いを感じ取れる入り方ができた。

 

 そして4分に仙台がゲームを動かすことに成功する。

 この試合初めてのボール保持局面から實藤が右サイドの背後へ抜け出した有田へフィード。有田の粘りから真瀬のクロスは一度カットされたものの再び松井が奪い返すとエロンの落としに中島が左足を振り抜き先制点を奪った。

 ここ最近見られなかった積極的な背後へのランニングと素早い切り替えからの即時奪回がキッカケとなりゴールに結びついた。

 

(2)両サイドで異なるタスクを持つ仙台の守備/宮本の斜め落ち

 幸先よく先制した仙台はその後もチャンスを作っていく。

 8分には中島のカットからカウンターを発動し松井のシュートまで繋げ、直後のコーナーキックからはこぼれを髙田が狙いも相手のブロックに阻まれる。

 

 しかしその後は次第に清水がボールを保持する時間が増えていく。

 13分あたりからボランチの宮本がセンターバックの列に降りてボールを動かし始める。

 対する仙台は、無理に前線からのプレッシングをせずに4-4-2で構える。

 このときに左右で守備タスクの違いがあった。左サイドでは中島が背中でルーカス・ブラガへのパスコースを遮断しながら2トップと同じ高さを維持する。その背後では大外の北爪に対して守備範囲の広い髙田がスライドして対応する約束となっていた。

 右サイドでは基本的に清水の吉田・カルリーニョスに対して真瀬と有田がマンツーマンでの対応で守備基準点をハッキリさせる。浮遊している乾に対してはボランチと協力しながらマークを受け渡し対応していた。

 清水のボールを保持される時間は長くなったものの、全員が集中してブロックを組むことでそこまで危ない場面はなかった。

 自陣に押し込まれてもサイドハーフ、2トップも戻ってプレスバックを行う。特に前節に比べると引いたときにボールサイドと逆のサイドハーフがしっかり絞ることで守備の穴を埋めていたのは良かった。

 

 しかし、それでもこじ開けるのが個人能力が高い清水。38分に同点ゴールを奪う。

 清水が右サイドから押し込む展開を作ると、宮本の横楔から乾がフリックし、最後は宇野が鋭いシュートを突き刺して同点に追いつく。

 仙台としては集中して守れていたものの、このシーンでは清水の右サイドでボランチの宮本が加わったことで数的不利となり、マークがズレたことで一瞬の隙を与えてしまった。

 そして直後の39分にも清水が右サイドを突破すると、乾のマイナスクロスに宮本が合わせ、そのこぼれを北川が押し込もうとするもゴール上を越えていった。

 

 その後、仙台も有田のフリックからエロンが抜け出してポスト直撃のシュートを放つ惜しいシーンを作った。

 

 前半は、仙台が試合開始から激しい球際バトルで勢いづいて先制点も奪い、その後も集中力の高い守備で清水の攻撃を阻んだものの一瞬の隙から追いつかれて同点で後半へと折り返す。

 

後半

(1)右サイドを制圧した中島・真瀬コンビ

 仙台は後半開始から有田に代わって相良を投入。右サイドハーフに中島をポジションチェンジした形となった。

 

 後半の仙台は狙いを清水の左サイドに設定する。

 仙台は右サイドハーフとなった中島が内側に絞ってビルドアップ隊からボールを引き出しながら吉田を食いつかせ、大外の真瀬は高い位置から背後を狙うことでカルリーニョスを押し下げることに成功する。

 前半から有田と真瀬との走り合いで負担が掛かっていた吉田は後半も中島や真瀬の対応に苦慮し、パスを受けてもらしからぬプレーで簡単に失っていた。またカルリーニョスに守備を任せるのもチーム戦術としては現実的ではなく、仙台としてはしっかりハーフタイムの修正で狙いどころを明確にしたことで制圧することができた。

 そして勝ち越しゴールも、その右サイドの波状攻撃を起点に決まったものだった。

 右サイドからのクロス攻撃から一旦は弾き返されるも、乾のキープを中島と真瀬の2人で奪い返すと中島がクロスを上げる。北爪が態勢の悪い状態でクリアしたこぼれに長澤が反応してシュートはゴール左へと吸い込まれた。

 仙台としては後半開始から狙いとしていた右サイドからの攻撃を起点に波状攻撃からゴールを奪い切ることができた。

 

(2)両チームに巡ってくるチャンス/ゲームをコントロールする長澤和輝

 得点直後の仙台は、前半同様に4-4-2の守備ブロックを構築しながら清水のボール保持へ応戦する。

 リードしたこともあって、前線から積極的に行くことよりも構えながらタイミングを見て2トップのプレッシングを合図に前プレを開始するようになる。

 

 ただ、そんななかでも清水は隙を見逃さずチャンスを作っていく。59分には宮本の縦パスをキッカケに中央を崩していくとルーカス・ブラガに決定機が訪れるが枠の右へ逸れる。

 続く63分にも中央へドリブルで侵入したルーカス・ブラガから北川が背後へ抜け出すも林が右足でなんとか食い止める。それ以外にもカウンターからクロスに合わなかったシーンなど清水も仙台ゴールに迫るシーンを作っていった。

 

 一方の仙台も61分には押し込んだ局面から左サイドの相良がシュートを放つも北爪のブロックで枠の上へ外れ、直後のコーナーキックでは郷家がフリーで合わせるも追加点とならなかった。

 

 そんなお互いにチャンスが巡ってくる慌ただしい時間を落ち着かせたのは長澤だった。長澤はボールを受けると前へ急ぐのではなく、しっかり後方からボールを繋いでいくことでボール保持の局面へ移行していった。

 清水の守備は試合を通して前線からのプレッシングをあまり行わなかったために、ボールを保持できればビルドアップ隊からしっかり繋ぐことができた。長澤のゲームコントロールもあり、守備一辺倒にならずにボールを保持しながら体力をセーブできたのは終盤まで体力が持った大きなポイントとなった。

 

(3)清水のスクランブルアタックと仙台のしぶとい守備

 清水は65分にカルリーニョスから矢島、73分にはルーカス・ブラガと北川に代わって西原とヤクブを投入し、終盤に差し掛かった81分には吉田と乾に代わって高木とドウグラス・タンキを投入し前線にパワーのある選手を投入していく。

 一方の仙台は、前半からポストプレーや守備で体を張ったエロンに代えて梅木を投入、81分には松井と中島に代えて工藤とオナイウを投入した。

 

 清水は外国籍選手を前線に並べてスクランブルアタック気味に仕掛けるのに対して、仙台は工藤やオナイウなど機動力のある選手を投入し、しぶとい守備を継続しながら中盤での攻防で制してボール保持へ移行していく。特に工藤は中盤でしっかりボールを拾う役割をしながらボールを受ければ長澤とともに落ち着いて捌くことでゲームをコントロールできていたことが印象的だった。

 

 仙台は最後に實藤に代わって小出を投入。アディショナルタイム6分間は清水も後方からのロングボールを前線に送っていくが仙台としては菅田を中心にしっかり弾き返すことができた。清水のサイドハーフが西原と矢島になったことでクロッサーがおらず、パワープレーに徹してくれたことは仙台としては守り方がハッキリし、むしろ助かった面が大きかった。

 そして最後まで集中を切らさずにこのままゲームをクローズ。仙台は再開初戦の満員のユアスタで首位を撃破。自分たちが信条とする高強度のプレーと集中力の高い守備が復活し、3試合ぶりの勝点3をゲットした。

 

最後に・・・

 中断期間を経て守備を見つめ直した仙台。中断期間前の徳島戦に比べると守備の強度が段違いとなり、開幕当初のプレー強度の戻った印象がある。

 また守備の修正だけではなく、この中断期間でずっと試合に出続けていた選手の疲労もかなり回復できたことも最後まで走り負けなかった要因の1つではないかと見ている。

 加えて攻撃でも中島がサイドハーフで起用されたことで中盤でタメを作れる場所が増え、攻撃の幅が広がったことも大きなトピックだろう。石尾が離脱して以降は、攻撃の構築でダブルボランチに負担が掛かることが多くなったが、ダブルボランチの近くに中島がいることで起点となる場所が増えたことで2人への負担を軽減できた。

 

 首位清水を撃破したことは大変喜ばしいし、かなり自信が付く勝利となった。満員のユアスタで勝てたことでさらに勢いづくことができるだろう。

 しかし、森山監督のコメント通りこの戦いを次の試合以降でも続けなければならない。そういう意味でも次節の戦いは今後に向けてすごく重要になってくる。

 そんな次節はアウェイで水戸ホーリーホックとの対戦。水戸は今節、23戦負けなしだったV・ファーレン長崎を下し、こちらも中断明けに勢いを付けている相手だ。前回対戦からは監督も変わっており、また夏の戦力補強も図っただけに侮れない相手。

 今節の勝利が生きるのは次節の勝利があってこそ。次節も相手よりハードワークして、襲い掛かって勝点3をもぎ取ることを期待したい!!

 

ハイライト


www.youtube.com

 

公式記録

www.vegalta.co.jp