さて、今回はロアッソ熊本戦を振り返ります。
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スタメン
ベガルタ仙台は、前節・愛媛FC戦に2-0で勝利し2連勝中。前半は苦しい展開を強いられたものの前半アディショナルタイムで先制し後半に追加点を奪って自分たちで試合の流れを手繰り寄せることができた試合だった。
今節の相手はロアッソ熊本。ホームでの前回対戦ではスコアレスドローとなり、熊本のボール保持に苦しめられた試合だった。
前日に千葉が長崎に敗れたことで熊本戦に勝利すればプレーオフ出場が確定する状況となった。厳しい試合となることが予想されるが、熊本に競り勝ってプレーオフ出場を決めたい一戦だ。
仙台は出場停止明けの相良が左サイドハーフでスタメン。ベンチメンバーは前節と同じ7人となっている。
一方のロアッソ熊本は、前節・モンテディオ山形に0-1の敗戦。試合序盤にコーナーキックから失点を食らうも、その後はチャンスシーンを多く作ったが山形の牙城を崩すことが出来なかった。
今節はホーム最終戦となる熊本は、大木監督の続投も発表されており、来年に向けての戦いがすでにスタートしている。一方で今シーズン限りで大木監督の右腕だった藤本主税ヘッドコーチが退任することが決まっており、藤本ヘッドコーチのために、勝利でホーム最終戦を飾りたいところだ。
熊本は、左ウイングに東山を起用し、唐山が控えに回っている。それ以外の変更はなかった。
前半
(1)電光石火の先制ゴール
試合開始のホイッスルとともに仙台が熊本のビルドアップに対して、積極的なプレッシングを仕掛けると、そこから先制点が生まれた。
試合開始早々、#中島元彦 の先制弾!🚀
— Jリーグ(日本プロサッカーリーグ) (@J_League) 2024年11月4日
🎦 ゴール動画
🏆 明治安田J2リーグ 第37節
🆚 熊本vs仙台
🔢 0-1
⌚️ 2分
⚽️ 中島 元彦(仙台)#Jリーグ pic.twitter.com/mZcW3XpLfW
岩下のパスをインターセプトした鎌田がそのまま右サイドを駆け上がってクロスを上げると、最後は中島が左足で合わせて、仙台が幸先よく先制点を奪う。
勝てばプレーオフが決まる仙台としては、願ってもない先制点が開始早々に決まった。
先制点後の仙台は継続して、熊本のビルドアップにプレッシングを仕掛けて押し込んでいった。
(2)仙台のミドルブロックと相性が悪かった熊本のボール保持
開始直後から積極的なプレッシングを仕掛けた仙台だが、時間の経過とともにミドルブロックへと移行していく。
そうすると次の展開としては、熊本がボールを保持する局面が多くなっていった。
熊本のボール保持に対して、仙台のミドルブロックとの相性は決して良くはなかった。
仙台のミドルブロックは、2トップとサイドハーフが背中で相手選手を消しながら守備をすることが特徴だが、3バック+3センターでビルドアップをする熊本は、その背中のエリアで3センターが流動的に立ち位置を変えながらボールを引き出すために、仙台の2トップとサイドハーフは背中で消し切れていない状況が続いていった。
そうするとサイドハーフはどうしても2度追いをしなければいけなかったり、背後のフォローをボランチやサイドバックが出て行ったところで、熊本の細かいパスワークで剥がさてしまうなど、熊本のボール保持に対して上手く守り切れていない印象があった。
さらに加えると、熊本の最前線である石川やトップ下の古長谷もビルドアップの出口を作るために降りてくるため、仙台としてはマークの受け渡しやスライドなどをかなりの頻度で行わなければならず、落ち着いて守備をすることが徐々に出来なくなっていった。
そんな展開で、次にスコアを動かしたのは熊本だった。
#石川大地 が背後からのロングボールにワンタッチで合わせた!👏
— Jリーグ(日本プロサッカーリーグ) (@J_League) 2024年11月4日
🎦 ゴール動画
🏆 明治安田J2リーグ 第37節
🆚 熊本vs仙台
🔢 1-1
⌚️ 16分
⚽️ 石川 大地(熊本)#Jリーグ pic.twitter.com/X6WAkVchK4
細かく繋いでいく熊本だったが、同点ゴールはシンプルな背後への抜け出しだった。
石川のゴールがスーパーであることに異論はないが、仙台としては守備ブロックを組んだなかで、もう少し大西に寄せたかったところ。また石川に対してもCBの間にポジショニングさせてしまったことは良くなかった。2vs1の状況であったために、菅田と小出はチャレンジ&カバーを明確にして対応したかったところだ。
(3)時間の経過とともに攻撃の糸口を見つけ出す仙台
同点に追いつかれた仙台は、その後も熊本の細かいパスワークに苦しむこととなる。
失点直後の18分にも左サイドから中央への侵入を許して、最後は大本にきわどいシュートを放たれる。
ペースをなかなか掴めないなかで、仙台はボール保持からリズムを取り戻そうとするが、こちらも苦労することとなる。
熊本の守備は基本的にマンツーマンで掴まえに行くことで、仙台のビルドアップ隊から時間とスペースを奪おうというのが狙いだった。
特に仙台のダブルボランチに対して、古長谷と上村がマンツーマンで抑えに行くことで、仙台のボランチからボールを配給させないようにしていた。
試合開始序盤は、マンツーマンで掴まっているなかでエロンを目掛けたロングボールで糸口を探るが、江崎、大西らがしっかり対応することで起点を作らせてもらえなかった。
しかし、仙台も熊本のマンツーマン守備に慣れてくると、時間の経過とともに攻撃の糸口を見つけ出せるようになる。
熊本はアンカーの上村が出てくるために、その背後には比較的スペースがあった。
よって、仙台は小出や菅田を起点にサイドから中央へ入っていく郷家、相良へ差し込んで敵陣に侵入する回数を増やしていく。
またエロンと中島も縦関係になることで、熊本の中盤とディフェンスラインの間のエリアでボールを引き出すことが出来るようになった。
よって、35分以降は仙台が押し込む展開を作れるようになる。
39分には奥山が斜めに差し込んだところをキッカケにエロンがスルーし、最後は中島がシュートを放つもディフェンスのブロックに阻まれる。
45分には押し込んだ展開から奥山、郷家を経由して中島がゴールキーパーとディフェンスラインの間にクロスを送るもエロンにわずかに合わなかった。
仙台は電光石火の先制に成功するも、その後は熊本のパスワークに苦しめられて同点に追いつかれる。しかし、その後は攻撃の糸口を見つけ出しながら、最後は攻勢を強めて後半へと折り返した。
後半
(1)守備の微調整
前半は熊本のボール保持とパスワークに苦しめられた仙台。そこでハーフタイムに守備の微調整を行うことで、よりボール奪取できる態勢を整えていく。
前半は、ミドルブロックで構えたときに、2トップとサイドハーフの背中を消し切れなかったが、後半は相良が熊本のパスワークの中心となっていた豊田をマークし、郷家は2トップと同じ高さに立ち位置を取って、3バックへのプレッシングをサポートする。
また後方でも上村や古長谷へはダブルボランチがマークに付いて、降りてくる石川に対してはセンターバックのどちらかが迎撃守備を行う。
全体的に守備基準点も明確になり、熊本のビルドアップ隊へのプレスも掛けやすくなったことで、前線からのプレッシングからボールを奪って熊本陣内へと押し込める回数が増えた。
また同時に熊本の攻撃機会を減らすことができ、後半序盤は仙台がペースを握ることが出来たと言える。
56分には真瀬のクロスにエロンが頭で合わせるもゴール左へ逸れた。
(2)交代直後の勝ち越しゴール
ペースをつかみ始めた仙台は、59分に最初のカードを切る。相良とエロンに代わってオナイウと石尾を投入する。守備で消耗した相良を下げて石尾を左サイドハーフに、オナイウを右サイドハーフにして、中島と郷家が2トップとなった。
この交代でさらに攻勢を強めようとした仙台だったが、直後に失点を喫することとなる。
熊本のエースが今季10得点目🔥#石川大地 のダイビングヘッドで逆転!
— Jリーグ(日本プロサッカーリーグ) (@J_League) 2024年11月4日
🎦 ゴール動画
🏆 明治安田J2リーグ 第37節
🆚 熊本vs仙台
🔢 2-1
⌚️ 61分
⚽️ 石川 大地(熊本)#Jリーグ pic.twitter.com/jWax9HBM0C
林のゴールキックのセカンドボールを回収すると、左へ展開。東山のニアへのクロスに石川が合わせて勝ち越しゴールを決める。
仙台としては交代直後でここからというところでの失点。熊本にとってはなかなかチャンスが作れないなかで後半最初のチャンスを生かした形となった。
その後は、再び仙台が押し込む展開を作っていく。
仙台は中間ポジションでボールを受けることが上手な郷家と中島のコンビに加えて推進力のあるオナイウを二列目に置くことで、より攻撃力を上げていく狙いがあった。
実際に前半のリピートで小出のパスを起点に熊本のディフェンスラインと中盤の間のポジションの差し込むと、オナイウと真瀬の突破力を生かした攻撃で何度かチャンスを作ることが出来ていた。
66分にはオナイウの突破からオーバーラップした真瀬がクロスを上げ、最後は郷家のヘディングシュートまで繋がるが、田代の正面にシュートが飛んだ。
交代の狙いがハマっていただけに、仙台としては同点の状況で攻勢を強めたかったところだった。
(3)悪手となってしまった2回目の交代
熊本は70分に三島、東山、大本から黒木、松岡、大崎を投入する。黒木と松岡は左サイドでの起用となり、攻勢を強めてきた仙台の右サイドを抑えながら、松岡の突破力を生かしたい交代だったと思う。
仙台は75分に真瀬と工藤に代えて松井と梅木を投入した。
しかし、仙台としては結果的にこの交代が悪手になってしまった。右サイドに奥山が入ったことで守備の安定感はもたらしていたが、真瀬の推進力を失ったことでオナイウが孤立するようになる。対面する黒木にもしっかり対応され始めて、仙台の右サイドは徐々に勢いを失うこととなった。
直後の77分には2ゴールの石川に代えて唐山を投入すると、熊本が追加点を決める。
#大﨑舜 が熊本の勝利を決定づける!💪
— Jリーグ(日本プロサッカーリーグ) (@J_League) 2024年11月4日
🎦 ゴール動画
🏆 明治安田J2リーグ 第37節
🆚 熊本vs仙台
🔢 3-1
⌚️ 78分
⚽️ 大﨑 舜(熊本)#Jリーグ pic.twitter.com/ly5hU52IWN
仙台の右サイドに対してプレッシングを掛けてボールを奪うとショートカウンターから最後は大崎が決めてリードを2点に広げる。
仙台としては、前に出なければいけないという状況下で焦りが出てしまったシーンとなった。
なんとか点差を強めようとする仙台は、終盤に菅田をパワープレーに上げて熊本ゴールへ迫るが、この日はパワープレーの精度を欠いて、ビッグチャンスを作るまでには至らず。
後半は、ペースを掴みかけた時間帯があったものの、少ないチャンスを熊本に生かされて敗戦。プレーオフ出場は次節へ持ち越しとなった。
最後に・・・
幸先よく先制できたものの、結果的には熊本にチャンスを生かされた形となってしまった。
確かに熊本のボール保持に苦しんだ時間帯はあったものの、後半に関してはしっかり修正して対応できていたし、攻撃面においても押し込んでチャンスを作るシーンも出来ていたので、内容としてはそこまで悲観するものではないと思っている。
ただ、チャンスを生かすかどうかの差がこの試合では大きく左右したし、やはり勝てばプレーオフ出場が決まるといったシチュエーションのなかで焦りや迷いがあったようにも感じる。そういう経験をほとんどしてこなかった選手がこのチームには多いし、これは最終節に向けてのいい経験だったとポジティブに捉えることが重要なのではないだろうか。
ということで、いよいよ次節がリーグ最終節となる。次節は山形と千葉が直接対決のために、仙台としては大分トリニータに勝利できれば無条件でプレーオフ出場が決定する。
このシチュエーションは、2年前とほとんど同じ。あの時は雨の秋田でゴールレスドローに終わり涙を呑んだ最終節だった。
同じ轍を踏まないためにも、今節の敗戦があると思っている。この経験も活かしながら、最終節は満員になるであろうホーム・ユアスタでのサッカーを思う存分楽しんで欲しい。
対戦相手は大分トリニータ。開幕戦では引き分けに終わり、大分は苦しいシーズンのなかでなんとかJ2残留を果たした。大分はここまで連勝中で調子を上げてきているし、梅崎との別れに花を添えたいはずだ。決して簡単な相手ではない。
最終節、色んなことが決まるゲームではあるが、いつも通りのハードワークと高強度のプレー、そしてなにより満員のユアスタで純粋にサッカーを楽しんで、プレーオフ出場を勝ち取って欲しい!!
ハイライト