さて、今回は浦和レッズ戦を振り返ります。
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スタメン
ベガルタ仙台は、同じ勝ち点で並ぶ清水エスパルスに敗戦。本来チームとしてやるべきことが遂行されずに打ち合いの末に敗れた。今節は、もう一度自分たちがやるべきことを明確にして挑みたい。好調な浦和を相手にどこまでやれるか楽しみな試合だ。
今節は4-4-2に戻した。現状のベストメンバーといったスタメンだ。サブにはカルドーゾやオッティ、氣田といった攻撃陣が控える。
一方の浦和レッズは、好調を維持。新加入組のパフォーマンスも高く、リカルド・ロドリゲス監督のサッカーも浸透してきた印象だ。前節・アビスパ福岡戦に勝利し、今季最高順位となる5位に上昇。このままACL圏内を目指したい浦和だ。
今節は、前節から2人のメンバーを入れ替えた。センターバックにトーマス・デン、左サイドハーフに汰木が起用された。ベンチには仙台キラーの興梠をはじめ、武藤や関根、山中といったメンバーが控える。
前半
(1)サイドから前進を試みる浦和。サイドチェンジさせたくない仙台。
試合のメインテーマとしては、ボールを保持する浦和が仙台の守備網をどう崩していくか。逆に言えば、浦和のボール保持に対して、しっかり仙台が守れるかがテーマだった。
そんななかで、浦和は中央を閉める仙台の守備に対してサイドから前進を試みる形を取ってきた。
浦和のビルドアップは伊藤敦樹が落ちて、柴戸が２トップの間に立ってピン止めする。横幅をサイドバックが取り、サイドハーフはハーフスペースにポジショニング。小泉はフリーマンとして自由に動いて、ユンカーはフィニッシャーとしてセンターバックと駆け引きをする。
さらに細かく見ていくと、左サイドは明本が横幅を取ってウインガーのような振る舞いをする。ボールを持ってドリブルで仕掛けることが得意な汰木は、下がってボールを受けて仕掛けたり、明本とのコンビネーションから崩していこうとする。また、伊藤が時折ボールを運んで、仙台の守備をずらそうと試みていた。
右サイドは、基本的には西と田中達也の関係のみだった。右サイドは2人で崩していくというよりかは、槙野などビルドアップ隊からの対角フィードを受けて、手数を掛けずにユンカーへのクロスへと繋げていたシーンが多かった。5分の決定機はまさに狙い通りの形だっただろう。
浦和は無理くり中央から崩していかずに、ボールを左右に揺さぶりながら仙台のブロックを動かし、機を見てサイドから仕掛けてユンカーへクロスを送るパターンがほとんどだった。これも中央で絶対的な信頼があるユンカーがいてからこそだろう。開始早々のチャンスを生かせれば、浦和にとって優位にゲームを進められたはずだ。
一方の仙台は、いつも通りの4-4-2のブロックを組む。そのなかで最も警戒していたのは、中央にスペースを与えてしまうことと、大きなサイドチェンジによって大きくスライドすることだろう。
よって、基本的には自陣で守備網を築く。浦和がショートパスでレーンを変えるものなら、しっかりスライドしてズレを作らないようにする。当たり前のことをこの試合でも愚直に11人でやっていたのが印象的だった。
また、状況に応じて前からプレッシングを掛けることも行っていた。
前述したように大きなサイドチェンジをさせたくない仙台は、ビルドアップ隊へプレッシングを掛けるときは、サイドへと追い込むように2トップからプレスを掛けていく。
多かったシーンは、上図のように2トップと関口が連動して仙台の右サイドへボールを誘導。最終的には、真瀬のところでボールを奪い取るような守備だ。
開始5分に槙野の対角フィードから決定機を与えしまったが、その後は中央を閉めながら時折前プレを掛けて、浦和のボール保持に対して愚直に集中力を高く保って守備を行えていた。
(2)ボール奪取後に目指した2つのエリア。
どうしても守備の時間が長くなる仙台にとって、奪ったときにどうやってボールを運んでいくか。浦和のネガティブトランジションを搔い潜るかは1つのポイントになった。
仙台は、主に2つのエリアを目指すように準備されていた。
1つは同サイドの奥深いエリア。浦和の攻撃が左サイド（仙台の右サイド）が多かったが、そこでボールを奪ったときに西村がサイド裏へランニング。そこへ長いボールを送って、相手の深い位置を取って押し込もうとする。
もう1つは、奪ったボールを松下経由で逆サイドへ展開する。このときは赤﨑がサイドへ広がってボールを受ける動きをする。また、状況によって崇兆や加藤へと展開することもあった。
この2つに共通することは、浦和の両サイドバックの背後ということだ。ボールを持ったときに高い位置を取る浦和のサイドバックの背後でポイントを作ろうというのはチーム全体が意識していたことだと思う。
しかし、22分に西村がアクシデントでカルドーゾと交代することとなる。
西村と違ってカルドーゾは大きな体を生かしてボールを収める選手。タイプの違う選手になったことで、一時はなかなか浦和陣内の深いエリアを取ることができなくなり、浦和のターンが続く時間帯もあった。
しかし、35分以降になるとサイドハーフが気合いでサイド裏へのランニングが増えるようになる。守備で追われる時間が長く負担も多いなかで、関口と加藤が走ってくれることで、仙台は陣地を回復し、浦和陣内でプレーする時間を増やすことができた。
前半は、西村のアクシデントがありながらも集中力を高く保った守備を中心に浦和のボール保持に対抗できた。スコアレスで折り返す。
後半
(1)タスクを整理してチャンスを作り出した仙台。
後半は開始早々にセカンドボールを小泉にかっさらわれて、ピンチを迎えるも小泉のシュートとこぼれ球のユンカーのシュートを立て続けにクバが連続でセーブし、九死に一生を得る。
その後も前半同様に浦和がボールを保持し、仙台がそれに対応する構図となった。しかし仙台は、ハーフタイムにタスクを整理したことでチャンスを作り出せるようになる。
ポイントは3つ。まず1つは前半同様に継続して相手サイドの奥深くを取っていくこと。
2つ目はカルドーゾの高さを生かすこと。後半になるとカルドーゾを信頼してロングボールを送るようになり、カルドーゾが収めて前進できることができるようになった。
3つ目はボランチからの展開。前半も奪ったボールを松下経由で展開するシーンがあった。浦和はユンカーがあまりの守備に参加しないので小泉の両脇が空く。そこで意図的にボランチがそこで受けて前を向き展開することが多くなった。
51分の加藤のポスト直撃の決定機も、巻き戻すと松下が右サイドから左サイドの崇兆へサイドチェンジしたところがきっかけだった。
後半の仙台は、ハーフタイムにタスクと狙いどころを整理したことで、チャンスを作り出せるようになったが、クバに負けじと西川もビッグセーブで得点を許さなかった。
(2)興梠の投入。個の強さで押し返す浦和。
ゲームの流れが変わったのは67分。浦和が岩波と興梠を投入したところだった。
浦和は2トップに変更したことで、仙台のセンターバックと同数に。また興梠の背後への飛び出しによって、仙台のラインは下がって対抗する時間が長くなっていく。
加えて、右サイドにポジションが変わった小泉がラインが下がった仙台に対して、サイドから中へ侵入し襲い掛かるようになる。
浦和は個の力を上手く生かして、流れが変わりかかったところをうまく戻すことに成功し、仙台が自陣から出られないようにした。この辺りはリカルド・ロドリゲス監督の見事な采配だったと思う。
しかし、仙台もラインは下がったもののセンターバックを中心に食らい付くことができた。シュートが打たれそうなら足を伸ばし、クロスに対してもしっかりサイドバックが絞って跳ね返すことができていた。こういう部分は手倉森監督のサッカーというか信条が、選手たちに植え付けられてきたなと思うシーンだった。
(3)ただでは転ばぬ手倉森監督
今までだったら押し込まれ続けてなんとか跳ね返してという試合展開だったと思う。しかしこの試合は違った。
まずは79分に氣田を投入。氣田に託されたのは、下がってしまった全体を押し上げるプレー。左サイドに入った氣田はボールを受けると得意のドリブルで運んでファウルを受ける。
特にフルで出ている西のサイドに置いたことで、氣田の仕掛けは効果的で西のイエローカードを誘発することができた。
86分には上原とオッティを投入。上原はトップ下に、オッティは右サイドに配置した。
上原はトップ下としてボールを受けることで中盤の支配力を上げ、また二列目からの飛び出しでチャンスを作り出す。
オッティもまた疲労が見え始めている明本を強襲。真瀬とともに明本へと仕掛けて、右サイドを制圧していった。
交代選手の効果的なプレーもあり、終盤にはファウルからセットプレーをいくつか得ることができたが、こちらも集中力を高い槙野を中心とした浦和の守備陣に跳ね返されてしまう。
浦和も最後に関根、山中、武藤を投入し、最後の最後まで仙台ゴールを目指すが、仙台もまた最後まで集中した守備でゴールを割らせなかった。
両者ともに集中力の高い好ゲームは、最後までスコアが動かずスコアレスドロー。仙台は後半戦を引き分けでスタートすることとなった。
最後に・・・
お互いにチャンスがあり、勝っても負けてもおかしくないゲーム。両ゴールキーパーのビッグセーブもあり、引き締まった面白い試合だった。
仙台としてはホームだったし、チャンスもあったので決めきって勝ちたかった試合だった。
今まであれば、押し込まれしまうと中々脱出できずになんとか引き分けという内容だったが、今節は交代カードをうまく使いながら押し返すことができた。ようやくそれだけのスカッドが揃ってきた証拠だろう。
あとはやはりこういうゲームでゴールを奪って勝ち切ることができれば、チームとして大きな成功体験になるだろうし、もう一皮剥けるはず。そして残留の可能性を高めることになる。
そこまで突き抜けられるかどうか。時間が迫っているがそこまで成長できているので、本当にチームには頑張って欲しい。
東京オリンピックの中断期間前ラストゲームとなる次節は、ホームで北海道コンサドーレ札幌を迎える。前半戦で悔しい敗戦をした相手だけに、ホームで借りを返したい試合だ。また最善の準備をして、集中力の高い戦いを期待したい！！
