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【試合の流れを手繰り寄せる試合運び】明治安田J2第36節 愛媛FCvsベガルタ仙台

 さて、今回は愛媛FC戦を振り返ります。

↓前節のレビューはこちら

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スタメン

 ベガルタ仙台は、前節・横浜FCに3-0の勝利。リーグ最少失点でJ1自動昇格に王手を掛けていた横浜FCに対して、粘り強い守備とハードワークをベースに今シーズン初の3点差勝利を挙げた。

 プレーオフに向けて引き続き勝ち続けなければいけないなかで、横浜FC戦のプレー強度を維持できるかが今節のカギとなる。前半戦では逆転負けを喫した愛媛にリベンジマッチを挑む。

 仙台は相良が出場停止。代わりに中島が左サイドハーフで起用され、中山とエロンが最前線でコンビを組む。また左サイドバックは奥山がスタメンとなった。ベンチには内田、出場停止明けの松井が名を連ねている。

 一方の愛媛FCは、前節・鹿児島ユナイテッドFCに0-4の敗戦。ここ8試合勝てておらず、調子を落としている。この試合が始まる前には残留を争っていた鹿児島、栃木が敗れたことでJ2残留は確定した。

 しかし、今シーズンこのままでは終われるはずもなく、ホームで意地を見せたい一戦となった。

 愛媛は、4-4-2のシステムを採用。左サイドバックにユ・イェチャン、ボランチに谷本、右サイドハーフに古巣対戦となる茂木が前節と代わってスタメンとなった。ベンチには、佐藤、藤原、舩橋がメンバー入りとなっている。

 

前半

(1)時間とスペースを奪いに来る愛媛

 前半は、仙台が試合序盤からなかなかリズムを掴めない展開となった。

 その原因は、自分たちというよりも愛媛の積極的なプレッシングによってのものだった。

 愛媛は仙台のビルドアップ隊に対して、前線から積極的にプレッシングを仕掛けることで時間とスペースを奪いに行く。

 2トップのプレッシングを合図に、ダブルボランチも仙台のダブルボランチに対してしっかりマークに付きに行くので、仙台としてはなかなか落ち着きどころがない展開となった。

 この試合は、鎌田のボールロストが目立つことが多かったが、それも愛媛のプレッシングが機能していた証だった。12分には林のスローインを受けようとした鎌田から谷本がインターセプトミドルシュートを放つ。このシーンが愛媛が狙いとしていた部分だった。

 仙台としては、地上戦で苦しい場合はロングボールを2トップに送るのだが、それも愛媛のセンターバックコンビが跳ね返して、ポイントを作ることができない。

 また、愛媛は仙台の右偏重の攻撃に対してもしっかり準備しており、ボールサイドでは曽根田、ユ・イェチャンがマンツーマンで対応し、ディフェンスラインでは右サイドバックの尾崎がスライドして絞ることで2トップとセンターバックを同数にしない。

 さらに言えば、尾崎のスライドにより小川は真ん中を気にせずに、いざとなったらサイドの背後のカバーリングに出ていける格好となっていた。

 よって、仙台は右サイドの攻撃も手詰まりになることが多く、どうしてもバックパスをして攻撃をやり直すことが多かった。

 

 しかし、時間の経過とともに仙台も変化していった。

 愛媛のダブルボランチに掴まっていた鎌田と工藤を助けるために、郷家が下がってボールを引き出そうとする場面が増えていく。

 また林のロングボールも2トップではなく、左サイドの中島へ送るようになった。

 18分には、郷家が下がって小出からボールを引き出すと、鎌田、奥山を経由して左サイドの中島へ展開。中島のアーリークロスに郷家がヘディングシュートで合わせるシーンを作り出す。

 このような変化もあって、仙台は徐々に敵陣でボールを持ち、押し込める時間帯も増やしていった。

 

(2)ミドルブロックで構える仙台

 一方で愛媛がボールを持ったときには、仙台はミドルブロックで構えることが多かった。

 愛媛のボール保持は、ダブルボランチセンターバックの4人からなるビルドアップ隊がスタートとなる。ダブルボランチである深澤と谷本はどちらかが仙台の2トップ間に立ち位置を取り、もう片方が2トップ脇にいることでセンターバックからのボールを引き出しながらボール保持の安定を図る。

 左サイドではユ・イェチャンが幅を取り、曽根田はフリーマンとして比較的自由に動く。右サイドは茂木が幅を取り、尾崎がハーフスペースに立ち位置を取るが、右サイドは役割を変えることもあった。

 愛媛としてはボール保持を安定させたところから、仙台の中盤のラインを楔パスで越えることが狙いだった思うが、仙台も無理に前からプレッシングを仕掛けるのではなく、ミドルブロックで構えていたため、ビルドアップの出口となりそうな選手はある程度抑えることができていた。

 それでも21分には、深澤からハーフスペースにポジションを取っていた尾崎にパスが通ると、押し込んだ流れから最後は茂木のフィニッシュまで持ち込むシーンを作る。

 愛媛としては、このプレーが理想的なシーンだっただろうが、それ以降はなかなかボール保持攻撃からチャンスを作り出せなかった。

 

 逆に言えば、仙台はしっかりミドルブロックで構えながら対応できていた。

 愛媛の技術的なミスに助けられた部分もあるが、ボール保持を基軸とする愛媛に対して、夏場以降に築いてきた守備ブロックで危ない場面を作らせなかった。

 

(3)8本目のコーナーキック

 この試合は、前半から多くのコーナーキックを獲得することができた仙台。

 前述したように、前半序盤こそ愛媛のプレッシングに手こずったものの、攻撃に変化を加えながら押し込むシーンを増やすと、サイドの奥深くを取れたり、シュートシーンを増やすことでコーナーキックを獲得することができた。

 そして、そのコーナーキックから得点に結びつけることに成功する。

 前半のラストプレーにして、8本目のコーナーキックだった。

 鎌田の左コーナーキックから中山が背中で合わせた。

 はじめ、鎌田のキックは精度を欠いていたが、本数を重ねるごとに精度が上がっていくと、前半ラストプレーで得点に繋がることができた。

 

 前半は愛媛のプレッシングに苦しみ、なかなかリズムを掴めなかったが、数多く得たコーナーキックを活かせたことで先手を奪うことに成功した。

 仙台リードで後半へと折り返す。

 

後半

(1)オナイウ投入と畳みかけての追加点

 仙台は後半開始から中山に代わってオナイウを投入する。オナイウは右サイドハーフに入り、郷家が左サイドハーフへ。横浜FC戦の後半と同じ配置でスタートした。

 

 後半開始から押し込めたのは仙台。オナイウが投入された右サイドから押し込んでいくと連続してスローインコーナーキックを獲得していく。

 そしてその流れから追加点を奪うことに成功した。

 小出の縦パスから郷家が収めて中島へ落とすと、中島はダイレクトでエロンへパス。そのままエロンが流し込んでリードを2点に広げた。

 後半序盤の畳みかけた時間帯にリードを広げらたことは試合を進めるのに当たって貴重なゴールとなった。

 中島の鋭いパスはもちろん、2試合連続ゴールとなったエロンもここに来てゴールの嗅覚が研ぎ澄まされてきた。

 

 その後の仙台は、リードを広げてもなおボールを動かしながら試合を進めていく。

 前半は手詰まり感のあった右サイドの攻撃だったが、オナイウが入ったことでユ・イェチャンに対して仕掛けていくシーンを作り出しながら、真瀬もハーフスペースの高い位置を取り、後方では工藤や小出がサポートを行う。また鎌田や中島も加わりながら、前半以上に人数を掛けることで、ボールを握ることに成功した。

 また、右サイドで愛媛の守備を引き寄せれば、ボランチを経由して左サイドの郷家へ展開する形も生まれ、左右に揺さぶりながら攻撃することで、仙台はボールを動かしながら試合を進めることに成功する。

 追加点後も3点目を奪えるチャンスも作り出し、特に53分の鎌田の右コーナーキックに菅田が合わせたシーンは決定的なシーンだった。

 

(2)若さゆえにムラが出始める愛媛

 流れを変えたい愛媛は、55分に曽根田、茂木の両サイドハーフに代えて窪田と佐藤を投入する。続く73分には谷本と松田に代えて石渡と舩橋をピッチへ送り込んだ。

 愛媛は出てくる選手が若くフレッシュさはあるものの、どうしてもこういう試合展開だとミスが増えたり、焦りからファウルが多くなっていく。

 

 若さゆえのムラが出始めた愛媛に対して、仙台は引き続きボールを動かしながら試合を進め、守備時はしっかり全員で守ることで愛媛の攻撃を防いでいった。

 仙台は75分に鎌田とエロンに代えて松井と梅木を投入し、守備強度を保つ交代を行う。83分には郷家に代わって石尾。石尾はそのまま左サイドハーフの位置で起用され、左サイドでポイントになりながら、いざとなったら得意のドリブルで仕掛けるなど存在感を見せていた。

 クロージングに掛かりたい仙台は、中島に代えて松下を投入。トップ下に松下を起用し、守備強度を保持しながら、攻撃の際はリンクマンとしての役割を担った。

 アディショナルタイムにはオナイウのクロスに梅木が合わせた惜しいシーンがあったもののダメ押しとはならず。

 それでも最後まで愛媛の攻撃を抑えながら、しっかりとゲームを進めた仙台がこのまま試合を終わらせた。

 2-0で勝利した仙台は、大事な最終盤に連勝を達成。プレーオフに向けてさらに一歩前進となった。

 

最後に・・・

 前半は、愛媛のプレッシングや守備に苦しめられたものの、そんな中で獲得し続けたセットプレーを活かすことが出来たのは大きかった。

 また後半からオナイウを投入し、勢いを落とさずに早い時間帯で追加点を奪えたこと、またハーフタイムの修正も相まってしっかりボールを動かせたことで安定した試合運びが出来たことも良かった。

 早い時間帯に追加点を奪えたのは、悔しい引き分けを喫したヴァンフォーレ甲府戦と同じ流れで、若干心配もあったが、そんな心配を吹き消す試合運びだったと思う。

 

 プレーオフを争うライバルが勝ち続けるなかで、今節もしっかり勝点3を取れたことはなによりの収穫。いよいよリーグも残り2試合。プレーオフ圏に留まるためにも残り2試合での勝利は引き続き必須条件となる。

 次節は、アウェイでロアッソ熊本との対戦。前回対戦では熊本のボール保持に苦しめられて辛うじて引き分けた相手。今回も同様に熊本の特異なボール保持に食ら付いていけるかが勝負のカギとなってくるだろう。

 次節は出場停止明けの相良も帰ってくる。守備での粘り強さ、高い強度のプレーを継続しながら、攻撃では数多くのバリエーションで攻めていきたいところだ。

 次節も今節同様に全員でハードワークし、1つの塊となって勝利を目指して欲しい!!

 

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