ヒグのサッカー分析ブログ

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一進一退~明治安田生命J1第4節 横浜FCvsベガルタ仙台~

 今節からは、制限は設けられているものの観客が入っての試合となった。少しずつであるが、Jリーグにも日常が帰ってきている。そして今後もこのまま日常へと戻ることを切に願ってやまない。

 ということで、今節は横浜FC戦を振り返ります。

↓前節のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

 

スタメン

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 ベガルタ仙台は、前節・浦和レッズに1-2で敗れ、今季初の敗戦。その浦和戦では、実に7人ものメンバーを入れ替えて挑んだ。しかし、多くのメンバーを代えた中でも一定の手応えを得ている。木山監督は多くの選手を起用して選手層を厚くする狙いを持っているが、そういう意味では、前節は負けはしたものの手応えを得ているはずだ。

 今節のスタメンは、ゲデス以外は湘南ベルマーレ戦と同じメンバー。この3連戦をすべてスタメンで起用されることになったのは小畑、吉野、椎橋、関口の4人となった。またベンチには道渕が復帰し、再開後初めて田中渉もメンバー入りを果たした。

 一方で昇格組の横浜FCは、前節・柏レイソル戦で勝利。日本のレジェンドたちが多く在籍しているチームだが、一美と斉藤光毅の2トップに代表されるように多くの若手を積極的に起用しているのが印象的である。

 そんな横浜FCのスタメンは、前節から1人だけの変更。3バックの中央の田代真一に代わり袴田裕太郎。3バックの並びを右から星キョーワン、小林友希、袴田となった。

 

前半

(1)「背中を取る」、「選択肢を複数持つ」横浜FCのボール保持攻撃

 前半は仙台が風上を取るためにエンドを変えてキックオフした。

 

 前半開始からボールを保持し、主導権を握りながらゲームを進められたのは横浜FCだった。

 まずは横浜FCのボール保持を見ていく。

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 横浜FCがボールのビルドアップは主に2つのパターンがあった。1つは通常の3-1-4-2での形。もう1つは六反(南)がボールを持ったときに3バックの中央である小林が一列上がる形である。

 どちらのパターンにも共通なのが、ビルドアップの出口である。仙台が4-3-3であるために、ウイングバックを仙台のウイングの背中に位置させ、そこにボールを出すことで、仙台の前プレからの脱出を図った。仙台は横浜FCウイングバックを掴まえたくても、距離が遠く。序盤は非常に苦しんだ。

 また、横浜FCインサイドハーフ(瀬古と松浦)は、仙台のインサイドハーフ(松下と関口)の「背中」を意識するポジションを取ることで、関口と松下をピン止めする役割を担っていた。中継では、下平監督がアンカーの「脇」ではなく、インサイドハーフの背中を取ることを指示していたのが印象的だった。

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 ウイングバックへとボールを届けたあとの横浜FCは複数の選択を持っていた。1つは、アンカーの佐藤から逆サイドへのサイドチェンジ。これは左から佐藤を経由して右のマギーニョという流れがメインだった。

 もう1つは、瀬古がランニングすることで、生まれるスペースへ2トップが顔を出し、そこへ縦パスを送る。または瀬古が裏を取る形だった。

 このあたりは仙台の守備のリアクションを見て判断することで、効果的にボールを仙台ゴールへと運べていた。

 

 仙台として厄介だったのは、瀬古や松浦のランニングだった。特に瀬古は、蜂須賀の裏へランニングすることで、蜂須賀を食い付かせて志知をフリーにすることに成功する。このランニングによって、仙台はサイドでなかなかプレッシャーを掛けられなかった。

 それでも仙台は、前進させられたとしても4-5-1の守備陣形を保ちながら、中央を封鎖し、中を割らせないことで、横浜FCの攻めを遮断していた。

 

(2)時間の経過とともにハマっていく守備

 前半序盤は、横浜FCのボール保持に苦労していた仙台だが、仙台の守備の狙いは一体なんだったのかを見ていく。

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 実は仙台としても、横浜FCウイングバックへボールが出ることは阻止したかった。仙台の守備は、3トップが3バックへとプレッシングに行くことから始まる。長沢はアンカーの佐藤を消しながら、両ウイングは、ウイングバックへのパスコースを消しながら、3バックへプレスを掛けることが、開始から見られた。

 しかし、それでも横浜FCの3バックからウイングバックへとボールを通される回数が始めは多かった。恐らく、プレッシングに行く角度だったり、詰める距離だったりが足りないことが原因だと思われる。

 前半序盤は、狙いとしていたことがハマらなくて、苦労していたという表現が正しいだろう。

 しかし、六反の負傷交代や飲水タイムで得られた時間で修正し、時間の経過とともに、守備は徐々に機能し出した。ウイングのプレッシングも改善され、徐々に横浜FCのボール保持を窒息させながら、最終的には高い位置でボールを奪うことに成功し出す。

 どうしても、序盤の印象で仙台の守備は上手くハマっていない印象だったが、よくよく振り返ると守備がハマりだしていた仙台だった。

 

(3)ボールを落ち着かせることができない仙台

 守備面で見れば、時間の経過とともに改善された仙台だが、ボールを落ち着いて持てない時間が続いた。

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 それは横浜FCの積極的なプレッシングと切り替えにあった。

 仙台はいつものように、4-3-3でボールを保持しようとする。対する横浜FCは、人を掴まえて、前からプレッシングを仕掛けていく。同じシステムの湘南ベルマーレと対戦したが、その湘南の違うのは、仙台のサイドバックへの対応。湘南はインサイドハーフが出てきたのに対して、横浜FCウイングバックが出ていく。後方を同数にすることを受け入れながら、前からハメに掛かろうとしたのが横浜FCのやり方だった。

 仙台は、そんな前プレに対して、なかなか剥がすことができずに長沢やゲデスにロングフィードを送る展開が多くなった。もちろんそこでボールを収められれば問題なかったのだが、セカンドボールを回収されたり、自分たちのミスでボールを失ったりと、苦しい時間帯が続いた。

 

 また仙台が苦しんだのが、奪った後の展開だ。湘南戦、浦和戦では、奪ったボールを複数人でパスを回すことで、相手からのプレッシングを逃れるシーンを作っていたが、この試合では横浜FCの素早い切り替えにより、なかなかプレッシングを掻い潜れなかった。ここも前半苦労した理由の1つだと思う。若くてハードワークできる選手が多く、切り替え時に素早く寄せられて、ボールをまた奪われることが多かった。ここは、直近2試合ではなかったことで、前半苦労した最大の原因なのではないかと考えている。

 

 前半は、38分にフリーキックのクイックリスタートから一美に抜け出され失点。集中した守備をしていただけに安い失点をしてしまった。

 前半は、横浜FCリードで折り返す。

 

後半

(1)より前へ出ていく仙台

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 後半戦のメンバーは以上の通り。前半10分に長沢と衝突した六反が負傷交代。代わりに南雄太がゴールを守っている。

 

 後半の仙台は、改善が見られた守備で、より横浜FCへとプレッシャーを掛けていく。

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 前半は、3トップが3バックへプレッシングを掛けるシーンは数多く見られたが、後半に入ると後方もどんどん人を掴まえて、横浜FCのボール保持を苦しめていく。特にサイドバックは、高い位置を取り、ウイングバックへとボールが入るとすぐにプレッシャーを掛けられるようになっていった。

 その代わり後方は同数を受け入れる。リスクは高いものの、得点を取る必要がある展開で、かつ前半から前プレに手応えを得ていたこともあって、木山監督はこのような判断をしたのだと思う。

 仙台は、より積極的に前から行くことで、主導権を握ることに成功した。左右からのクロスをメインに、セカンドボールを回収しながら、二次三次攻撃へと繋げていった。自分たちの手でしっかり形勢を逆転することができた。

 そして57分に同点に追いつく。右サイドから中へドリブルした蜂須賀が、逆サイドのゲデスにフィード。ゲデスはマギーニョに競り勝ち、あとは冷静に流し込んだ。

 前半から繰り返されていたゲデスへのフィードだったが、ようやく実を結ぶ形となった。蜂須賀からのサイドチェンジは、湘南戦でも見られたが、これから仙台の武器になりそうな予感がある。

 

(2)戦略変更をする下平監督

 同点に追いついた仙台。その後も横浜FCを押し込みながら、逆転ゴールを目指す時間が続く。

 そんな中で下平監督が動く。

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 横浜FCは、松尾佑介と齋藤功佑を投入する。仙台は、より攻勢を強めるために西村と道渕が同じタイミングで投入されている。

 ここで、下平監督は戦略の変更を施す。

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 後半、一気に圧力を掛けてきた仙台の背後を突く戦略へと変更。2トップがサイドで待機しボールを受ける。そこから2トップが受けてカウンターを発動させる。また松尾や齋藤功といった機動力がある選手を投入することで、カウンターをより強力にする狙いがあったと思う。実際に横浜FCは、左サイドからのカウンターで何度か決定機を作っている。この辺りは、さすが下平監督といったところだ。

 

(3)押し切れるか、やり切れるか。

 試合は、このまま押し込む仙台と、カウンターから好機を掴もうとする横浜FCという構図に変わっていった。

 仙台は、西村を中央に山田を左ウイングにしたりと、前線を入れ替えながらゴールを目指す。

 横浜FCも中山克広、皆川佑介を投入し、カウンターから得点を目指す。

 仙台は、押し切れるか。横浜FCは、やり切れるか。消耗戦のなかでそんな攻防が、繰り広げられた。

 お互いにチャンスはあったものの決めきれない。ラストプレーでスローインを奪った横浜FCが左サイドからチャンスを作る。クロスを小畑が弾きこぼれ球を中山がプッシュするも、その前に齋藤功がオフサイド。仙台は、九死に一生を得た。

 そんなラストプレーもありながらタイムアップ。しのぎを削った両者だったが1-1のドロー決着となった。

 

最後に・・・

 一進一退の攻防。両監督の駆け引き。ゲームとしては非常に面白い内容だった。ただチャンスもあったので、逆転まで行きたかったが、無念。

 後半の修正。特に後方の同数を受け入れながらも積極的に前へ行く姿勢はとても良かったし、木山監督は思い切った采配ができる監督なんだなと感じた。

 内容面は前節同様決して悪いものではなかった。しかし今回も2点目が遠かった。

 あとは、前線の勇気とか、積極性とか、貪欲さとか、そういうところに掛かってくる。戦術云々じゃなくて。本当は、そういう最後の一押しをサポーターの声で押したいのだが、今は願いを込める時期。本当に前線の選手には期待している。

 

 ということで、日常とは程遠いが次節はユアスタのサポーターが帰ってくる。相手は北海道コンサドーレ札幌。貪欲に得点を狙っていく姿勢を期待したい!!