さて、今回は大分トリニータ戦を振り返ります。
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スタメン
ベガルタ仙台は、ミッドウィークの鹿島アントラーズ戦に敗戦し、連敗を喫している。内容も結果もなかなか光明を見出せていない中で、なんとかこの大分戦で明るい兆し、そしてホームでの勝利を挙げたいところだ。
今節は4人のメンバーを入れ替え。左サイドバックにはリーグ初先発のパラ。また左サイドハーフには崇兆。中央は長沢とゲデスが縦関係に並ぶ布陣で挑んだ。
一方の大分トリニータは、前節の湘南ベルマーレ戦では、早々に2点リードを許す苦しい展開だったが、後半に2点を追いつき、価値あるドローとなった。そんな粘り強さを今節につなげられるかどうか。
大分は3人メンバーを入れ替え。ボランチの一角に前田。左ウイングバックには香川。1トップに伊佐が起用されている。
前半
(1)自分たちの土俵へと持ち込めるか
この試合の前半は、開始から大分のボール保持、仙台のボール非保持の局面の時間帯が多い展開だった。大分が自分たちの得意な展開で試合を進められたと言っていいだろう。
前半開始から40分に関口が投入されるまでの約40分間。仙台の守備は、機能していなかった。
この試合でも仙台は前から奪いに行く姿勢を持っていた。これは木山監督が試合後の会見で話している。
しかし、実際は前から行くどころか、大分のボール保持に対して後方で人数を掛けて守備をする時間が長かった。
この試合で仙台がどのように前から奪いに行くのか、はめ込んでいくのかという設計をし準備をしていたのかわからない。しかし、ピッチで起きる現象としては上図のような構図になっていることが多かった。
最大の問題は長沢のエリアだろう。長沢1人に対して、大分はムン、鈴木、羽田の3人で後方から組み立てていく。1vs3では無理がある。このエリアでプレスが掛からないとはめ込むのも難しい。
またサイドでは、崇兆とジャメが、岩田と三竿を監視するが、その背後のウイングバックがフリーになる。仙台のサイドバックはシャドーへの意識が強く、この辺りもどう対応すべきなのか準備があまりされていなかったように思う。
結果的にフリーになるウイングバックをサイドハーフを見ざるを得なくなり、仙台は5バックのような形で守ることが多かった。
34分の大分の先制点では、ジャメが三竿に剝がされたところからスタートしている。前半の戦いぶりを象徴する失点と言えよう。
大分のボール保持に対して、セットされた状態で前からプレッシングに行くのはシステムが嚙み合わせていないと難易度が高い。なので、後述するが仙台はシステム変更をし、息を吹き返したわけだ。
そうでなければ、いかに自分たちが前からプレスしやすい状況を作り出すかが大事だ。
前半に前から嵌められたシーンの大半は、ロングボールからのセカンドを拾ってや、大分ディフェンスラインの裏へボールを送り、相手が背中を向けた状態から守備をスタートさせたシーンだった。
このことからも、このような場面を仙台が意図的に作り出せていれば、システムが噛み合わなくても高い位置からボールを奪うことができただろう。前半にあったプレーは恐らく偶発的なものだ。
自分たちの土俵の上に相手を上がらせて勝負するか、この点が、前半の仙台に足りなかった部分だと思う。
(2)甲高い声を合図に
39分にジャメに代えて関口を投入する。これで仙台は4-3-3へとシステムを変更する。
4-3-3へシステムを変更したことで、システムの噛み合わせが良くなり、大分のボール保持に対して、前から積極的にプレスを掛けられるようになった。後方は同数になりやすくなるが、それを受け入れながらも前からハメ込むことで、徐々に大分のボール保持を苦しめられるようになった。
関口の甲高い声を合図に、積極的に前プレを掛けられるようになった仙台は、ラスト5分で希望を残し、前半を終える。
0-1で後半へ折り返す。
後半
(1)攻守ともにイニシアティブを握れた仙台
前半は、仙台が大分のボール保持に対して守備が機能せずに、先制点を許す展開だった。しかし関口の交代と4-3-3へのシステム変更で希望を見出し、後半へ折り返す形となった。
後半の仙台は、前半終盤の流れを継続させ、積極的なプレッシングからイニシアティブを握る展開へと移り変わっていった。
前半終盤同様に、前からプレッシングを掛けていく仙台。大分に息をさせずにロングボールを選択させることに成功する。ここは鹿島戦と同じような展開へ持ち込むことができた。
前線の伊佐は、前半にあったような裏への飛び出しが特徴的だが、高さはそれほどない。なので、シマオやジョンヤがここで競り勝つことでセカンドボールを回収し、仙台は二次三次攻撃と、厚みのある攻撃を繰り出すことができた。前半からおそらくこのような展開へと持ち込みたかったが、守備でうまくはめ込むことができなかった。
また攻撃では、大分が自陣で守備をすることが多かったこともあるが、前節の鹿島戦よりもサイドからの攻撃が上手くいった。
右サイドでは、ゲデスがいることで、ゲデスのポストプレーに柳が抜け出し、右サイドをえぐれるようになった。
左サイドでは、パラがいることで左足から相手ディフェンスラインの裏へスルーパスを送れることができ、左サイドでも深い位置へ潜り込むことができるようになった。
このサイド攻撃からチャンスを作り出すことができた仙台。決定機は2つ3つあったが、長沢も西村も決めきることができなかった・・・。
(2)知念のフィジカルバトル
前半とは打って変わって、守備に追われるようになった大分は、前線を交代。知念と渡を投入する。
この交代で3-1-4-2となった大分だった。初めは、センターバック2人に対して2トップを当てて前プレによって、ラインを高くすることが狙いかと思った。
しかし、本当の狙いは別なところにあった。大分はこの押し込まれている状況を許容しながら、前線のパワーを使って、追加点を狙っていた。
特に知念のところはポイントになった。手薄になった仙台のディフェンスラインに対して知念を置くことで、競り合いをイーブンなものとし、セカンドボールを仙台に渡さないことが狙いだった。
そして結果的に、この交代が功を奏した。大分は80分と85分に追加点を奪うのだが、両方とも知念がシマオとの競り合いで勝ったところからの流れだった。
コンディションが上がらないシマオに対して、途中から投入した知念で勝負する。片野坂監督の策略が見事にハマった得点だった。
そして試合終了。決めきれなかった仙台とチャンスを生かした大分。スコアは0-3。完敗だった。
最後に・・・
暗中模索が続く仙台は、この試合でも長いトンネルを抜け出すことはできなかった。
前半は、鹿島戦同様に準備不足を露呈する形となった。それでも前半終盤でのシステム変更で息を吹き返し、負け筋を消せながら後半は戦うことができたと思う。
おそらく、そこから勝ち筋へと持っていくためには、自分たちのターンで決めきれるかどうかだったのではないだろうか。後半だけでも決定機は多かったし、そこを決めきるか決めきれないかの差がこの試合でも出たと思う。
ただ、長沢のシュートだったりを見ていると焦りがあるのも確かで、好調の長沢だったらしっかり枠へ飛ばしていた。そういうことも考えると、ゴールが奪えないことや結果が出ていないことへの焦りみたいなのがプレーに出ているような気もしている。
連戦で、修正する部分も修正する時間がなければ、次の試合への準備時間も限られている。時間に追われている中でのリーグ戦は、なかなか難しい面もある。
まずは、しっかりコンディションを整えながら、前回も書いたようにできることとできないことを整理しながら、今できる最大限の力を発揮するしかない。
今後の対戦相手は、FC東京、横浜Fマリノス、セレッソ大阪と強豪との対戦が続く。まずは今できること、やれることを最大限発揮しながら、木山監督には少しずつチームを成長させていってほしい。
まずは次節のFC東京戦。もう一度切り替えて、前向きなプレーを期待したい!!