ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

憧れと現実と~明治安田生命J1第22節 ベガルタ仙台vs横浜FC~

 さて、今回は横浜FC戦を振り返ります。

↓前節のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

↓前回対戦のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

 

スタメン

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 ベガルタ仙台は、前節・川崎フロンターレ戦で0-1の惜敗。失点を許したものの、しぶとく守り、川崎のスタミナが落ちたラスト10分間で猛攻を仕掛けるもののあと一歩及ばなかったという内容だった。首位相手に、自分たちがやれる最大限のことはやれたと思う。今節の横浜FC戦では、その自信を結果につなげたい、そんな一戦となった。

 ミッドウィーク開催ということもあり、多少なりともメンバーをいじってきた。センターバックに平岡。ボランチには長期離脱から復帰した松下が、復帰後即スタメンとなった。それ以外は変更なし。

 横浜FCは、前節・鹿島アントラーズに2-3の逆転負け。アウェイでしかも鹿島に2点を先行したものの、最後の最後で鹿島の勝負強さに屈した試合となった。

 横浜FCは下平監督の下で若い選手が躍動し、着実に勝ち点を積み上げている印象。特にマンチェスターシティへの移籍が報じられた斉藤光毅やここまで7ゴールの松尾佑介は、J1でもブレイク中だ。

 今節は斉藤光毅がスタメンに戻り、左サイドバックには志知。それ以外は変更点がなし。ベンチには中村俊輔が控えている。

 

前半

(1)前から行けなかったのか、行かなかったのか

 この試合は、主にボールを保持する横浜FCと、それに対して自陣で守備をする仙台という構図だった。戦前ではもう少しボールを握れるのかと思っていたが、横浜FCのボール保持の練度、それから素早い切り替えによる即時奪回で、仙台はなかなか自分たちのターンに持っていくことができなかった。

 

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 横浜FCのボール保持を見ていく。横浜のビルドアップは、センターバックボランチで行う。エリアによっては六反も加わることがある。

 ルールとして徹底されていたのは、ダブルボランチの片方が必ず2トップの間にポジショニングすることだった(図でいう安永)。このことで2トップの動きを規制する。

 また横浜は、かなりの頻度でこの2トップ間にいるボランチとボールを出し引きしていた。このパス交換を行うことで、仙台の2トップを中央へ収縮させ、センターバックに時間とスペースを与える。そして時間とスペースを得られたセンターバックからボールを前進させていくという形になっていた。

 前線へ目を移していくと、横浜のサイドハーフと斉藤光毅は、仙台の中盤の選手間に立つことで仙台の4人をピン止め、またはそこをスタート地点として、裏へ抜けたり、ビルドアップ隊からボールを受ける作業を行っていた。

 このことから分かるように、横浜のボール保持の練度と完成度はかなり高く、さすが下平監督のチームだな感心した。

 

 対する仙台は、この横浜のボール保持に終始苦しめられる展開だった。2トップは前線から制限を掛けようとするも、川崎戦と違って4人でビルドアップする相手に簡単に前進を許してしまう。

 前半序盤は、松下や道渕が2トップを助けに行くが、徐々にその動きもなくなり、次第に自陣へ撤退する時間が増えていった。

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 前節の川崎戦のように、中央を閉じる守備。高い位置を取るサイドバックへは、サイドハーフがそのまま付いていく。ここも川崎戦と同様の守備だった。

 ボールを保持させ、押し込まれる展開ではあったが、中央を閉じたことで、サイドからの攻撃がメインとなっていった横浜に危ないシーンを作られることはそこまでなかったように感じる。

 

 これは個人的な憶測だが、前から行きたいように見えた仙台だが、ある程度引いて守備をすることも想定していたのではないかと思う。

 というのも、川崎同様に横浜のキープレーヤーはドリブルが得意な斉藤光毅と松尾だ。彼らに時間とスペースを与えない。斉藤と松尾へは、仙台は2人で対応できるようにすることを考えていたのならば、無理に前から行ってスペースを与えるよりも2人がチャンスを作れる時間とスペースを消して、失点のリスクを減らすことを木山監督は考えていたのかもしれない。

 なので、前半は無理に前から行かずに、後ろで構えて失点を0にするというやり方にしたのかもしれない。

 

(2)不安定なボール保持

 前半、仙台も少なからずボールを保持できる場面はあった。しかし、横浜FCのボール保持に比べて非常に不安定なボール保持となっていた。これは、今に始まったことではないが。

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 仙台のビルドアップも横浜同様の形(椎橋が一列下がる)で行われていた。

 しかし、仙台はどこの選手に時間とスペースを与えて前進していくのかがハッキリされていない。よって、フリーな選手を作れないままボールを保持し、最終的に前進できないシーンが多い。

 この試合でもセンターバックや椎橋がボールを持ったときに、パスコースがサイドにしかない。もちろんサイドからの展開で、相手の深いエリアまで潜れることはあったものの、大半はサイドへボールを渡していっても、そこで相手に追い詰められてボールを奪われることが多い。

 横浜のようにボランチを使ってボールを出し引きして、フリーの選手を作っていったり、一時的にサイドハーフが顔を出して、受けたりなど、中央にいる選手も使いながら前進していく必要があるだろう。もちろんビルドアップ隊のメンバーに体の向きとか選手間を通すパスの技術とか、そういう部分を求める必要があるが、それと同時に全体的な立ち位置をいかに取っていくかは大事になっていく部分だろう。

 特に横浜のボール保持を見ながら思った部分だ。ここについてはより突き詰めていく必要があるだろう。

 

 前半は、横浜FCに圧倒的にボールを握られたものの、最後のところはやらせずにスコアレスで折り返す。

 

後半

(1)前から圧力を掛け始める仙台

 前半は、横浜FCのボール保持に対して自陣で跳ね返す状態が続いた仙台だったが、後半は前から圧力を掛けるようになった。

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 前半は、横浜のビルドアップ隊に2トップしか行けていなかったが、後半はハーフスペースへ広がるセンターバックサイドハーフが、サイドバックに対してサイドバックが一枚ずつ出て行くようになる。

 前半にできなかったことを、ハーフタイムに修正し動いた形だ。

 

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 しかし、前に出てきた仙台に対して、横浜FCは六反のフィードを使いながら、仙台のプレッシングを回避していく。

 特に前半から優位性を持てていた瀬沼とアピアタウィアのエリア、それからマギーニョとパラのエリアへフィードを送り、そこで競り勝つことで、一気にチャンスへ転じることができていた。

 よって、前から行こうとした仙台も、このフィードで徐々に前半のような守備へと戻っていくことになった。

 

(2)奪った瞬間にどこを見るか

 圧倒的にボールを保持された仙台だったが、それに加えて苦しんだのが、横浜の素早い切り替えだった。仙台が奪い取っても、横浜は素早い切り替えですぐさま仙台からボールを取り上げる。このことで、横浜はより長い時間を自分たちのターンにすることができていた。

 

 なので、仙台は奪ったボールを、いかにして横浜のプレッシングから解放していくかも課題となっていた。

 前半の仙台は、奪ったボールを前線の2トップに付けることを意識していたと思う。しかし、そこでゲデスと山田がボールを収めきれなかったり、前線へのパスコースを探している間に横浜のプレッシングに引っかかる場面が多かった。

 

 後半の仙台は、前線ではなく、一度サイドへと展開することでボールを広いエリアへ解放できるようになった。

 まずは広いエリア(サイド)へ出して、サイドハーフないしサイドバックがボールを前進させていく。このことで後半の仙台はサイドからの攻撃が増えていった。

 サイドバックも高い位置を取れる回数も増えたし、サイドからのクロスも増えた。

 しかし、クロスの精度が今一つ。シンプルに中の選手へクロスを送ったり、マイナスのクロスを上げたりと工夫は見られたが、相手にクリアされたり、シュートまで持っていくことができないことが多かった。

 

(3)選手交代で変化を付けられない両者

 前半同様に押し込みながらチャンスを作り出す横浜FC、防戦一方の前半からサイドからの前進で徐々に横浜ゴールまで運べるようになった仙台。

 後半は交代選手を含めて、得点を目指すこととなった。しかし、交代で投入された選手が、両者ともに効果をもたらしたとは言い難かった。

 よって、お互いに決め手を欠くような展開になる。横浜は松尾を負傷交代したのが痛かったし、仙台もクエンカ、シマオ・マテを投入して3-4-3にするなどの工夫を見せるも、最後までスコアが動くことがなかった。

 試合はスコアレスドロー。両者ともに勝点1を分け合うこととなった。

 

最後に・・・

 試合を振り返って、特に横浜FCの戦いぶりを見ていると、仙台もこういうサッカーを目指したいんだろうなというのを感じた。

 ボールを保持でき、押し込んだときは素早いプレッシングで即時奪回。二次三次攻撃へと繋いでいく。相手のボール保持に対しては前線からプレッシングを掛けていくアグレッシブなサッカー。

 しかし現実は程遠いように感じた。やはり、それらをチームに落とし込みには時間がない。毎週の試合をこなしながら、限りあるトレーニングの時間で練度を高めていくのは難しいだろう。

 だからこそ、今は守備に重きを置きながら、失点を抑えていくサッカーをやらざるを得ないのかなと思う。

 

 しかし、志は高く持ってほしいし、そんなアグレッシブなサッカーを諦めては欲しくない。そこは忘れずに、しかし現実と向き合いながら苦しいけど、戦ってほしいと切に願う。

 次節はアウェイでの浦和レッズ戦。次節も粘り強い守備とハードワークに期待したい!