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【理想的な試合運び】明治安田J2第29節 ベガルタ仙台vsいわきFC

 さて、今回はいわきFC戦を振り返ります。

↓前節のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

↓前回対戦のレビューはこちら

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スタメン

 ベガルタ仙台は、前節・ジェフユナイテッド市原・千葉に2-4の敗戦。長澤のラストゲームとなった試合だったが、両サイドバックを途中で欠いていしまうアクシデントにも見舞われ逆転負けを喫した。

 今節からは長澤がいない。そこに加えて髙田が欠場と苦境に立たされた仙台だが、総力戦でこの苦境を乗り越えていきたい。今節の対戦相手であるいわきFCは、J2で一番の強度を誇るチーム。プレーオフを争うライバル相手にホームで勝利し、プレーオフ進出に向けて歩みを進めたい一戦だ。

 今節は髙田に加えて實藤も欠場。代わりに真瀬と小出がそれぞれ起用された。注目のボランチは松井と第8節ぶりのスタメンとなる鎌田が起用された。それ以外は変更点なし。ベンチにはこちらも長期離脱から戻ってきたマテウス・モラエスがメンバー入り。それ以外には梅木が前節から代わってメンバー入りとなった。

 一方のいわきFCは前節・ロアッソ熊本に3-4の敗戦。ここまで4連勝中だったいわきだが熊本との打ち合いに敗れた。

 今シーズンはエース谷村が絶好調。ここまで15ゴールを挙げ、得点ランキングトップを走る。プレーオフに向けて仙台同様に負けられない試合が続ていく。今節は仙台相手に前半戦の借りを返すとともに、プレーオフ圏内浮上を目指す一戦だ。

 いわきの3バックの並びは右から五十嵐、堂鼻、石田となった。右ウイングバックに有馬、左ウイングバックには熊本戦でゴール演出した坂岸が起用されている。1トップにはFC東京からのレンタル移籍で加入した熊田が初スタメンとなった。ベンチには、スピードのある加瀬や高さのあるブワニカなど攻撃のアクセントになる選手が控えている。

 

前半

(1)鋭い出足で先制パンチ

 試合開始から仙台は鋭い出足で球際バトルを制するとチャンスを作っていく。

 奪ったボールを背後へ抜け出す選手へ供給することで開始早々から決定機を作った。4分には中島のスルーパスにエロンが抜け出すも立川にセーブされる。

 しかし継続して鋭い出足でのボール奪取と背後への抜け出しを繰り返すと、8分に仙台がゲームを動かす。

 きっかけは奥山が背後へ送ったラフなボールに対して有田が懸命に追いかけると、スローインを獲得する。

 そのスローインから中島が左斜め45度でボールを受けると背負った状態から上体フェイントで相手を交わすと右足で強烈なシュート。これが右隅に決まって幸先よく先制点を奪う。中島はこれで自身初の二桁ゴールに乗っけた。

 

 その後も主導権を握り続ける仙台。特に右サイドから前進していく回数は多かった。

 この試合のいわきは守備時に4-4-2となる。ミラーゲームのような配置にして守備基準点を明確にした形だった。

 仙台は小出を起点とするビルドアップから攻撃をスタートさせることが多かったが、対峙する熊田のプレッシングがそこまで厳しくなかったので、小出は比較的余裕を持ってボールを運べた。

 この日の仙台のサイドハーフは右に郷家、左に有田という配置になっていた。郷家が右サイドにいることで内側に絞り、真瀬に高い位置を取らせることができた。

 小出から真瀬へのパスラインが開通していたため、真瀬はボールを受けると長い距離を運んでいく。真瀬が運ぶことで対峙する谷村は押し下げられる格好となり、仙台は右サイドから押し込むことができた。

 特に27分のシーンでは鎌田の展開から真瀬が受けて、背後へ抜け出したエロンへスルーパスを送り、エロンのクロスに有田がフリーで合わせたシーンは理想的だった。ここは有田もフリーだったので決めたかったところだった。

 

 それ以外にもいわきのダブルボランチは仙台のダブルボランチを注視するため、ダブルボランチセンターバックの中間ポジションが空き、そこで中島、エロンの2トップが収めることで起点を作れていた。

 

(2)ミドルブロックで構える仙台と持たされてるいわき

 早い時間帯で先制したこともあり、仙台は無理に前からプレッシングを掛けずにミドルブロックで構えながら守備を行う時間が長かった。

 仙台の守備を整理すると、3-1-4-2の形となるいわきのボール保持に対して2トップがアンカーの山下を消しながら守備を行う。

 左の有田は2トップと同じくらいの高さから守備をスタートし、サイドへボールが移動したときは特徴である素早いプレスバックで戻る。

 右の郷家は、やや低い位置から守備をスタート。左ウイングバックの坂岸を真瀬とともに対応しながら後方のスペースを埋めていた。

 

 そんな仙台の守備に対して、なかなか糸口を見出せないいわき。ボールは持てどもバイタルエリアペナルティエリアにボールを差し込むことができずにサイドからの攻撃が中心となる。

 前半の決定機は20分に坂岸のクロスのこぼれに山下が反応したもので、これは林の正面に飛んだ。

 

 流れを変えたいいわきは、32分にアンカーの山下に代わって下田を投入する。大きく配置が変わったわけではないが、下田がボールに触れることで徐々にリズムを作り、押し込む時間が長くなっていった。

 仙台も奪ったボールをうまく繋げられずにすぐに奪われる展開となる。前半の終盤はいわきに押し込まれるも、ここはしっかり全員で守ることで危険なシーンを作らせなかった。

 

 前半は、試合序盤から鋭い出足から先制点を奪った仙台が1点リードで折り返す。

 

後半

(1)加瀬を生かした右サイドアタック

 いわきは後半開始から2枚替え。坂岸と熊田に代わって大森と加瀬を投入する。

 

 いわきは、いつもの配置に戻したことで連携面が向上。右サイドに入った加瀬へボールを届け、加瀬のスピードと仕掛けを生かす攻撃へと変化していった。

 加瀬が仕掛けてサイドの深い位置までボールを運び、クロスを送るシーンは前半より増えたし、その仕掛けからセットプレーも獲得して押し込む展開を作っていく。

 

 仙台としては左サイドで押し込まれる展開が続いたが、奥山が最後まで加瀬に付いていき対応できたことやペナルティエリアにクロスが送り込まれても菅田や林を中心に落ち着いて対応できたことで決定機を与えることはなかった。

 

(2)途中投入された選手が強度を上げる

 少しずつ押し込まれる展開が続くなかで、今度は仙台ベンチが動く。有田とエロンに代わって相良と梅木が投入される。

 彼らが投入されたことで、再び前線の強度を上げることが主な目的だった。

 相良はボールを受ければ積極的なドリブルでの仕掛けを見せ、梅木はロングボールの的になるだけではなく、サイドに流れてボールを引き出すことで、空き出したウイングバックの背後で起点を作っていく。

 時間の経過とともに背後を突けるようになってくると、左サイドのスローインから梅木のポストプレーし、相良が受けると仕掛けてコーナーキックを獲得する。

 このコーナーキックから菅田の折り返しを中島が難しい態勢からボレーシュートでねじ込み待望の追加点が生まれた。

 決して綺麗なゴールではなかったが、中島の積極的にシュートを狙う姿勢が実を結んだ得点となった。

 

(3)攻撃の手を緩めなかった仙台

 後半に追加点を奪えた仙台は心理的にかなり余裕を持ってゲームを進めることができた。

 77分には鎌田と中島に代わって松下とオナイウを投入する。

 

 2点差を追ういわきが、より前へ出て行かなければならない状況のなかで、仙台はオナイウ、相良の両サイドが積極的に背後へ抜け出しチャンスを作っていく。

 オナイウが入ったことで右サイドの攻撃も活性化。オナイウのロングスローをはじめ、真瀬とのコンビネーションでの崩しでダメ押し点を目指した。

 ここで3点目が取れれば理想的だったが、追加点を奪ってもなお攻撃の手を緩めずに畳みかけることでいわきから攻撃機会を奪っていく。前節はリード後に攻め込むことができなかったが、今節はアグレッシブに最後まで仕掛けていった。

 

 終盤まで2点リードを保つと、最後は怪我から帰ってきたマテウス・モラエスを投入し、5バックにして逃げ切りを図った。アディショナルタイムにはフリーキックなどでいわきにチャンスが巡ってくるシーンもあったが、しっかり対応して試合をクローズした。

 第10節・モンテディオ山形戦以来の2点差での勝利。勝点を50に上積みし、再び4位へと浮上した。

 

最後に・・・

 長澤が移籍し、髙田も不在となった試合だったが、全員がいつも以上にハードワークしていわきに襲い掛かり勝点3をゲットした。序盤から強度の高いいわきに対してそれ以上の強度で対抗し、早い時間帯で先制点を奪えたことが良かった。

 得点後も決定的なシーンがありながら決めきれないもどかしい時間帯もあったが、セットプレーで追加点を奪えたこと、そこから選手交代で登場した選手を含めて攻撃の手を緩めずに戦えたことは良かった。最後は怪我明けのマテウス・モラエスを起用できる余裕もあり、まさに理想的な試合運びだったと言えるだろう。欲を言えば攻め込んだ終盤に3点目を奪い切れれば満点の試合だったのではないだろうか。

 

 長澤の穴が空いたボランチに誰が起用されるかは注目ポイントだったが、鎌田が選ばれた。今シーズンはなかなか思うようなパフォーマンスができなかったが、今節は特徴である狭いエリアでボールを受けるプレーだったり、相手をドリブルで剥がしていくプレーが見られ、本来の調子を取り戻しつつあることを証明した。守備に関しても課題はあるものの、及第点の活躍だったので今後の活躍にも期待したい。

 また實藤が欠場したセンターバックには久々に小出が起用されたが、こちらも安定したパフォーマンスで隙を与えなかった。誰かが欠けても誰かがしっかり埋られているという意味ではチームとしての底上げがしっかりできていることを小出、鎌田の2人から感じることができた。

 

 次節はアウェイでのザスパ群馬戦。群馬は最下位で残留圏ともかなり勝点差が開ている厳しい状況。それでも今節はブラウブリッツ秋田に勝利しホーム初勝利を挙げ、勢いを持って挑んでくることが予想される。相手の状況がどうであれ、まずは自分たちがやるべきことを遂行し、しっかりハードワークすることが勝利への一番の近道だ。

 正直言えば、次節は勝点3がマストのゲームになってくる。ここでしっかり勝ち星を挙げるためにも、いつも以上の準備と戦う気持ちで試合開始から襲い掛かっていかなければならない。次節も今節以上にハードワークして連勝して欲しい!!

 

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