さて、今回はザスパ群馬戦を振り返ります。
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スタメン
ベガルタ仙台は、前節・いわきFCとのプレーオフ直接対決で2-0の勝利。90分通して理想的な試合運びができ、自信に繋がる試合となった。この勝利でプレーオフ圏外との勝点差は7まで広がり、少しずつではあるがプレーオフ進出の希望が見えてきている。
だからこそ、ここで緩むことなくしっかりと勝点を積み上げていきたいところ。今節の相手は最下位のザスパ群馬との対戦。前回対戦よりも守備が堅くなった相手だけに、いかにその堅い守備ブロックを崩し切れるかが試合のポイントとなった。
今節は4人のメンバーを入れ替え。左サイドバックに内田、両サイドハーフはオナイウと相良のコンビ。2トップの一角には菅原が名を連ねた。ベンチには實藤が復帰し、有田、中島、エロンと前節スタメンだった3人が控えている。
一方のザスパ群馬は、前節・ブラウブリッツ秋田に1-0の勝利。これが今シーズンのホーム初勝利となった。依然として厳しい状況が続いているなかで、残留に向けて諦めずに戦っている。夏の移籍市場でも多くの選手を獲得し、最後まで残留の希望を見出したいところだ。
ホーム連戦となる今節も、前節の勝利の勢いを持って上位・仙台へ立ち向かっていく。
群馬は、前節と同じ11人をスタメンに起用した。ベンチには小柳、川上が前節から代わってメンバー入りとなった。
前半
(1)守備ブロック内へ侵入できない仙台
この試合の展開として、5-4-1で守備ブロックを構築する群馬に対して、仙台がボールを持ちながら挑む構図が多くの時間帯を占めた。
群馬の守備はオーソドックスな5-4-1の形で守備ブロックを組む。仙台のボール保持に対して1トップ2シャドーが行けるときはプレッシングを仕掛けるが、まずは自陣で守備の穴を塞ぐために素早く帰陣して、守備ブロックを組むことを優先した。
よって、仙台としてはどうやってこのブロックを崩すかがゴールを奪うために求められることになる。
しかし、仙台はブロック内へボールを差し込むことができない。
センターバックとダブルボランチによるボール保持もどうやって崩していくかボールを持ちながら考えるあまりにボールを動かすテンポが上がらず、終始考えながらプレーすることが多かった。そうすると細かいところでのミスが生まれ、その隙から群馬に奪われて攻撃機会が終了することが多々あった。
また、前線の組み合わせを入れ替えたことが影響してか、中間ポジションや背後への抜け出しなどでボールを呼び込むことが少なかったこともブロック内へ侵入できなかった原因だろう。唯一ブロック内でボールを受けて前進することを促せたのは郷家だけだった。
前半はほぼほぼシュートが打てなかったし、押し込んで波状攻撃をすることもできず、ボールを主体的に持って攻撃しているというよりかは、ボールを持たされているような展開が続いた。
(2)アグレッシブさが出せなかった守備
一方の守備でも、仙台らしい前線からアグレッシブに仕掛けていくプレッシングが鳴りを潜めた。
群馬のボール保持は3-4-2-1の形でオリジナルポジション通りとなっている。
ビルドアップ隊は3バックとダブルボランチの5人で形成し、ウイングバックは状況に応じてサポートを行う。
ウイングバックの高さによって仙台のサイドバックを引き出すことができれば、その背後をシャドーや河田がランニングするシンプルな狙いだった。
仙台にとって厄介だったのは群馬のビルドアップ隊だった。大槻前監督時代から群馬の3-2で構成されるビルドアップは安定感があり、それが継続されている形だった。
仙台としては2トップとオナイウで3バックへプレッシングを仕掛けたかったが、群馬のダブルボランチが上手く出口を作り出すことで回避し前進していく。ダブルボランチが出口を作れれば、仙台としてはそこを塞がないといけないので、今度は3バックへのプレッシングが掛からなくなり、結果的に受け身な状態となって守備をすることが多くなった。
群馬が前進した先で、起点を作れなかったりパスミスで攻撃が終わってしまうことで仙台としてはそこまでチャンスを作られた訳ではなかったが、アグレッシブさを出せずになかなか自分たちのペースで守備を行うことは少なかった。
前半は攻守ともにリズムが作れずに歯痒い試合展開となり、後半へと折り返す。
後半
(1)ボールを動かすテンポとダイナミックな動きを求める森山監督
仙台は後半スタートからオナイウに代わって中島が投入される。
後半の仙台は、前半の反省もあってボールを動かすテンポとダイナミックな動きで群馬の守備の背後を狙ったり、出口を作ったりしてブロックの奥やブロック内でのプレー回数を増やしていこうとする。
後方でのボールを動かすテンポを上げながら、投入された中島が機を見て前線で起点を作り次第に群馬のブロック内への侵入に成功する。
押し込むことができれば、サイドでボールを持った選手を追い越す動きで背後を取りクロスからの得点を狙った。
相手の背後を突けるようになったことで、クロスのクリアを再度回収し二次攻撃へと繋げられるようにもなったが、この試合ではいつものように波状攻撃を仕掛けられたわけではなく、回収したボランチやセンターバックでパスミスやノッキングを起こしてしまい攻撃が単発で終わることも多く、ペースを掴めそうで掴めないもどかしい展開が続いていった。
そんなもどかしい状況はミスを誘発し、次第に前と後ろでの連携が合わなくなり、ミスも増えていくようになった。
(2)左サイドからチャンスを作り出す群馬
前半から継続して人数を掛けた守備ブロックで応戦する群馬。ただ後ろで守るだけではなく行けるときはしっかりボールホルダーへプレスを掛けてボールを奪い返すシーンも作っていく。
セカンドボールを回収できるようになると、群馬はシンプルに左へ展開し、クロスが得意な山中からのクロスでゴールを目指す。52分には山中のクロスのこぼれを仙波が押し込むが、林がセーブする。
70分には河田と川本に代わって佐川と平松を投入し、クロスに対してターゲットとなれる選手を投入する。71分には山中のアーリークロスから佐川がシュートを放つも菅田がブロックする。
後半は前半よりも狙いがシンプルになったことで、よりペナルティエリアにボールを送ることに成功した。
しかし、仙台も悪い流れながらも林、菅田、小出を中心にクロスに対してしっかり反応し失点を許さない。仙台としてはこの守備こそが試合の生命線となる状況となった。
(3)オープンな展開からカウンターを仕掛ける仙台
仙台は群馬の左サイドからの攻撃を防ぎながら、攻撃では前半よりテンポを上げてボールを動かし群馬の守備ブロックへ差し込むことを狙っていた。
61分には相良と菅原に代えて有田とエロンを投入し、ここ最近の前線のユニットへ戻す形を取った。
有田には出足の早いプレッシングと背後への抜け出し、エロンには前線での起点づくりを主に期待しての投入だった。
しかし、有田がスプリントを掛けて相手にプレッシングした際にハムストリングを痛めて負傷交代。このタイミングでもともと鎌田と交代予定だった松下を有田に代わって投入する。
群馬も左サイドからの攻撃から次第に得点を奪いに前掛かりになると、背後のスペースが空き出して、仙台もカウンターを発動できるシーンが増えていった。
78分には中島がドリブルで持ち上がるとエロンへパス。エロンのシュートは枠の上を越える惜しいシーンを作る。
アディショナルタイムには郷家がエロンとの縦ワンツーからシュートを放つが櫛引にセーブされる。
試合は一進一退の攻防のなか進み、両チームともに最後まで得点が生まれずスコアレスドローに終わった。
最後に・・・
群馬の5-4-1の守備ブロックをベースにした戦い方に対して、前半から悩みながら戦っている印象で、それが仙台らしいアグレッシブな姿勢をかき消してしまう結果となった。
今節は、調子を上げてきている選手を思い切って起用することを選択した森山監督だったが、この試合に限って言えばうまく行かなった。
しかし、先々に戦いのことを考えると今スタメンで出ている選手以外の選手が結果を出すことで、戦術の幅の広がりだったり、チームの底上げにつながるはずでそこに対するチャレンジ自体は批判されるものではないだろう。
この試合でチャンスを得たものの、思い通りにいかなかった選手たちには、この悔しい想いを晴らすためにも日頃のトレーニングから再びアピールし続けて欲しい。
今までの戦いであれば、今回のような悪い内容のときに失点し負けてしまっていたはず。ただ、今節はディフェンス陣を中心に悪いなりにも最後まで失点を許さずにアウェイで勝点1を持ち帰れたわけで、今までのチームとは違うぞというところは見せてくれたかなと思う。
この勝点1をより意味あるものにするためにも、次節ホームでの藤枝MYFC戦では勝点3をゲットしたいものだ。次節の藤枝は群馬とは打って変わってピッチを幅広く使った攻撃的なチーム。ゴールキーパーを含めたビルドアップも洗練されており、決して簡単な相手ではないのは確かだ。
次も我慢の時間帯、耐えなければいけないシーンが必ず出てくるはず。今節のようにそういう時間帯を凌ぎ切って自分たちのターンでダイナミックにゴールを奪い切りたいところだ。次節もハードワークして、勝点を積み上げて行って欲しい!!
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