ヒグのサッカー分析ブログ

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【我慢強さと光った修正力】明治安田J2第26節 水戸ホーリーホックvsベガルタ仙台

 さて、今回は水戸ホーリーホック戦を振り返ります。

↓前節のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

↓前回対戦のレビューはこちら

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スタメン

 ベガルタ仙台は、前節・清水エスパルスに2-1の勝利。中断期間明けの初戦に満員のユアスタで首位を撃破。内容としても攻守においてアグレッシブで仕掛けていく姿勢と集中力の高い守備が復活。2ゴールともに高い位置でボールを奪ったところをキッカケとしたもので大きな自信を得た試合となった。

 今節は水戸ホーリーホックとの対戦。大事なのは清水戦と同じ集中力と強度を保って戦うことである。今節もアグレッシブな姿勢を貫いて連勝と行きたいところだ。

 今節は前節同様の18人をメンバーに選んだ。

 一方の水戸ホーリーホックは、前節・V・ファーレン長崎に対して2-1の勝利。長崎に23試合ぶりの土を付けることに成功した。残留争い真っ只中である水戸は途中就任となった森直樹監督のもとでコレクティブな守備と機動力のある前線のカウンターを活かしたサッカーへ切り替え徐々に調子を上げてきた。

 この勢いをさらに加速させ、上位仙台に勝利して残留に向けてさらに勝点を上積みしたい一戦だ。

 水戸は3-4-2-1のシステム。前節からは安藤に代わって野瀬がスタメンとなっている。ベンチには湘南ベルマーレから加入した富居や長崎戦で決勝ゴールを決めた中島大嘉らが控えている。

 

前半

(1)仙台を苦しめた水戸の準備

 試合開始の無秩序なロングボール合戦が落ち着くと、次第に仙台がボールを保持するターンへ局面が移っていく。

 仙台は5-2-3で構える水戸に対して、ビルドアップ隊が水戸の前線3枚を引き付けながら、空いたシャドーの背後のスペース(ボランチ脇)で待つ有田や中島へ届けることでプレスを脱出していこうとした。

 序盤こそは右サイドでのコンビネーションからクロスまで持っていくシーンを作り出せたが、次第に水戸のプレッシング強度が高まると仙台は時間の経過とともに苦しんでいくことになる。

 水戸は仙台がボール保持のためにセンターバックゴールキーパーへ下げると一気にラインを押し上げて人を掴まえる。

 草野と野瀬はセンターバックへ、甲田は髙田を掴まえる。また仙台のダブルボランチに対しても水戸のダブルボランチが勇気を持って掴まえに行くことで仙台にストレスを掛けて時間とスペースを奪っていった。

 戦前の予想では、水戸がそこまでプレッシングを掛けてこないというスカウティングもあってなのか、仙台も無理にボールを繋ごうとしたところを奪われてカウンターから何度か危ないシーンを迎えてしまった。

 特に髙田は狙い目とされていて、髙田へボールが渡ると素早くスライドして甲田がプレッシングを掛けるシーンが印象的だった。

 

 また、水戸の守備が機能し始めると次第にボールを保持する時間も作れるようになる。

 水戸のボール保持は、櫻井が3バックの列へ降りてビルドアップをサポートしながら前進していく。櫻井と前田のダブルボランチはパス技術も高く、仙台の長澤、松井のように彼らが水戸のリズムを作っていた。

 左サイドでは新井が低めのポジションを取ることで真瀬を食いつかせて、その背後を野瀬が抜け出していく。野瀬の背後の動きは非常に厄介で、仙台の實藤、真瀬のイエローカードを誘発するプレーでこれが結果的に真瀬の退場へと繋がる。

 右サイドでは長澤がロングボールの的になり、甲田は中間ポジションから落ちてボールを受けたり背後へ抜け出したりするプレーを行っていた。また牛澤が運ぶドリブルで右サイドの攻撃構築に貢献したり、ロングフィードで大きな展開を狙うなどのプレーが目立った。

 

 水戸はこの1週間でしっかり仙台をスカウティングして準備していたのが分かる内容だった。27分のロングカウンターで長澤のアーリークロスを草野が合わせたシーンは前半最大の決定機だった。

 

(2)エロンへのロングフィード

 水戸のプレッシングとボール保持に対して、なかなか清水戦のようなアグレッシブさを発揮できなかった仙台。そんな我慢が求められる展開でも攻撃の糸口を見出していく。

 14分あたりから前へ来る水戸に対して林からエロンを目掛けたロングフィードを送る。この日のエロンはしっかり収めどころとなって2列目で待つ郷家や中島、有田へボールを届けることで水戸陣内へ侵入しチャンスを作っていく。

 この試合展開は中断前の徳島ヴォルティス戦と似た内容で、徳島戦ではなかなか梅木が収められず防戦一方となったが、この試合はエロンがしっかり収めて前進できたことで水戸のプレッシングを無効化し防戦一方にならなかった。

 

 また、我慢強くボールを動かしながらロングフィードを活用して前進していくと、水戸も35分すぎからむやみやたらに追いかけることを止めて5-2-3でのミドルブロックへ移行していく。

 この変化によって仙台もセンターバックから落ち着いてボールを運ぶことができるようになった。特に右サイドでは實藤から真瀬のパスラインを確保できるようになったことで、右サイドから押し込んでいくシーンを作り出していく。有田、真瀬のコンビに加えて松井、郷家らが絡んでいくことで右サイドの奥深くまで侵入しコーナーキックを獲得できるようになった。

 

 前半は、水戸がアグレッシブな守備からのカウンターとダブルボランチを中心としたボール保持で仙台とがっぷり四つの展開に持ち込む。一方の仙台もロングフィードを駆使しながら粘り強く戦うことで対抗した前半だった。

 スコアレスで折り返す。

 

後半

(1)交代直後に結果を残した相良

 仙台は後半から前節同様に有田に代えて相良を投入する。左サイドハーフに相良、右サイドハーフに中島を配置する。

 

 後半の仙台は、まず水戸のボール保持に対する守備のタスクを整理する。

 まず2トップは水戸の心臓であるダブルボランチをケアすることを優先し、山田へはそこまで圧力を掛けない。

 前半、背後を取られていた右サイドは中島がやや低めのポジションを取って、真瀬と近い距離で守れるようにすることで背後のスペースを埋めて、自分たちの手前でプレーさせるように徹底した。

 左サイドでは相良が若干高い位置から牛澤へ睨みを利かせてボールが渡ったらいつでもプレスを仕掛けられる準備をする。

 

 そしてこの修正が実ったのが51分の先制点だった。

 大崎の横パスを相良がカットすると、そのままドリブルで仕掛けて山田を交わすと左足でゴールを決めて先制に成功する。

 水戸のミス絡みではあったが、後半に守備タスクを整理し直したことで奪えたゴールとも言えるだろう。

 

 その後、仙台はゴールの勢いそのままにチャンスを作っていく。右サイドに中島、左サイドに相良となり、右サイドで中島が起点を作りながら、左サイドでは相良が積極的に背後を狙う形を作っていった。

 53分~56分の間には4連続コーナーキックを獲得すると中島のヘディングシュートや相良のミドルシュートなど惜しいシーンを作る。

 続く64分には林からエロンへのロングフィードを起点に相良がセカンドボールを回収すると、最後は中島の強烈なミドルシュート、松原が弾いたこぼれを真瀬が押し込むも最後は牛澤のゴールカバーで追加点とはならなかった。

 この時間帯で追加点を奪えれば理想的な展開ではあったが、それでも連続してチャンスを作り出すことでペースを完全に握り返すことができた。

 

(2)潮目が変わった真瀬の退場と10人で粘ってのクリーンシート

 攻勢を強める仙台に対して水戸は55分に齋藤と中島を投入、65分には安藤を投入してシステムを4-4-2へ変更する。

 潮目が変わったのは67分のプレー。新井の仕掛けに対して真瀬が手を掛けて倒すとファウルの判定でイエローカード。これが2枚目となり、真瀬は退場となった。

 前半からガンガン仕掛けていった野瀬、新井のプレーが真瀬の退場を誘発させた。

 

 よって、ここから先は10人での戦いを強いられる仙台。まずは右サイドバックに工藤蒼生を投入して穴埋めを行う。

 続く78分には松下と梅木を投入し、松下を左サイドバック、髙田を右サイドバック、工藤をボランチへ配置変更を行った。

 左サイドからの攻撃が増えた水戸に対して髙田と郷家でケアをし、守備範囲の広い工藤をボランチにすることで中盤の競り合いでボールを拾っていくことを狙った配置変更だった。

 

 10人の仙台に対して攻め込む水戸。基本的には安藤と中島を目掛けたクロス攻撃がメインだった。しかし肝心のクロス精度が低かったり、シュートも枠を捉えられないなど水戸にとってはもどかしい展開が続く。

 水戸は最後の交代で落合と長井を投入し、終盤には山田をパワープレーで上げて攻勢を掛ける。

 一方の仙台は、89分に小出を投入し5バックで守り切る態勢を整える。

 

 水戸のパワープレーに対して、仙台はしっかり弾き返しながら余裕があるときは大きくクリアすることでしっかり陣地回復を行った。

 集中力が最後まで途切れなかった仙台がアディショナルタイム5分を逃げ切り、1-0で勝利。これで中断明け連勝となった。

 

最後に・・・

 前半から決して楽な試合ではなく、むしろ水戸の対策に苦しめられた内容だったが、エロンへのロングフィードなど攻撃の糸口を見出しながら押し返す展開も作った。後半もハーフタイムの修正が機能して幸先よくゴールを奪えたことも良かった。

 真瀬の退場で数的不利な状態が約30分間続いたが、誰1人集中力を切らさず、今節も接戦を制することができた。

 

 今節のように相手のスカウティングもあって、自分たちの思うような内容にならないときは今後も多きなるだろう。そんなときに我慢しながらピッチ内で、もしくはハーフタイムで修正できれば今節のように自ずとペースを取り返せていけるはずだ。

 有田の台頭やエロンの好調もあって少しずつ選手層が厚くなってきた。次節は真瀬、松井が出場停止なので、ベンチやベンチ外だった選手にとってはチャンスとなる。こういうチャンスで結果を残せれば、さらにここからチームは成長していけるはずだ。

 

 次節はホームで鹿児島ユナイテッドFCとの対戦。前回対戦では、非常に苦しい展開のなかで接戦を制した相手。こちらも水戸同様に残留に向けて負けられない状況が続いている。また、この夏には多くの選手を獲得し、監督も交代しているため前回対戦とはまた違うチームになっているはずだ。

 次節も苦しい時間帯があるかもしれないが、今節のように我慢強く戦いそしてチャンスを生かしたいところ。次節もまた相手に襲い掛かっていってゴールを刈り取って3連勝を達成して欲しい!!

 

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