ヒグのサッカー分析ブログ

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【タフで激しいバトル】明治安田生命J2第38節 いわきFCvsベガルタ仙台

 さて、今回はいわきFC戦を振り返ります。ラスト5ゲーム。

↓前節のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

↓前回対戦のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

 

 

スタメン

 ベガルタ仙台は、前節・ロアッソ熊本に1-0で勝利し5試合ぶりの勝点3を獲得した。前節は今までの戦い方とは変わって前線からのプレッシングで熊本から時間とスペースを奪っていくことで主導権を握った。後半は押し込まれる展開だったが、粘り強く守り切った。残留に向けて予断を許さない状況が続く中で、今節は同じ勝ち点で並ぶいわきとの対戦。前回対戦では、ホームで敗れているだけに借りを返したい一戦だ。

 仙台は右サイドバックに第30節・ザスパクサツ群馬戦以来のスタメンとなる真瀬が起用された。それ以外は変更点なし。ベンチには出場停止明けから菅田が戻ってきた。

 いわきFCは、首位のFC町田ゼルビアに対して3-2で勝利し2連勝中。いわきも残留に向けて予断を許さない状況だけに、スタジアムのネーミングが「ハワイアンズスタジアムいわき」に変わった最初の試合で勝利し、大きく残留へ近づきたいところだ。

 いわきはセンターバックの遠藤が出場停止。代わりに江川がスタメンとなっている。また右サイドハーフには杉山が今シーズン初スタメンで起用された。ベンチには速水、河村、芳賀らが前節と代わってメンバー入りを果たしている。

 

前半

(1)シンプルな背後への抜け出し/3人の関係での崩し

 試合開始からロングボールによって敵陣へと押し込んでいこうとしたのはいわきだった。特に杉山がいる右サイドの背後へロングボールを送り、そこから球際バトルへ持ち込む狙いがあった。

 対する仙台も、それは想定内と準備しており、その球際バトルへ負けじと対抗する。開始早々に左サイドを破られたものの、それ以外の場面ではうまく凌ぐことができた。

 しかし、いわきは前回対戦よりも攻撃での工夫が見られた。

 右サイドは前述した通り、シンプルに杉山の背後へロングボールを送る形が多かった。

 一方で左サイドでは常に3人の関係で崩しに掛かる。キーマンとなるのは左インサイドハーフである岩渕。山下と谷村は基本的に縦関係になるが、谷村は大外レーンにポジショニングしており、真瀬を引き連れることで、背後のスペースを空ける。そこへタイミングよく岩渕が抜け出して崩していく。

 また谷村が大外レーンの高い位置に張り出して、山下と谷村の間に岩渕が広がってボールを受けることで、3対2の関係を作っていた。そしてこれがきっかけとなって生まれたのがいわきの先制点だった。

 山下と岩渕で松崎、真瀬を打開し、中央の吉澤へパス。吉澤は右へ展開して杉山のアーリークロスに最後はファーで岩渕が合わせて先制点を奪う。

 いわきとしては狙っていた左サイドでの崩しがうまくハマったシーンだった。

 その後も岩渕は攻守において大きな貢献をする。背後でも足元で顔を出し続け、また守備ではサイドの深い位置まで戻ってカバーリングをする。まさにいわきのサッカーを体現しているような存在だった。

 

(2)ボール保持の修正からペースを取り戻す

 仙台は序盤のいわきの圧力に対抗しながらゲームを進めていた。

 しかし、いつものボール保持の形である4-3-3に対して、いわきもボールサイドへの守備が厳しく、思うようにボールを運べない。

 特にアンカーの長澤に対しては、いわきのインサイドハーフである山口と岩渕がしっかり監視しており、長澤を経由して展開するような場面をなかなか作れなかった。

 

 よって少しずつボール保持に変化を付けていく。

 25分すぎから仙台のボール保持は変わった。それまでは前線の山田へのフォローへ注力していた中島と鎌田のインサイドハーフだったが、25分以降になるとインサイドハーフの片割れが長澤の位置まで降りてセンターバックからボールを引き出すことで少しずつボール保持を安定していった。

 逆に長澤は中央からあまり離れないことで、両インサイドハーフが落ちるエリアを確保していたように思える。

 中盤とセンターバックがボールを出し入れすることで、次第にいわきのプレッシングも落ち着いていった。

 また、いわきは人への意識が強い守備のため、自身のマーカーをうまく引き付けることでスペースを作ることができた。そこへ中島や鎌田、山田が潜ってボールを受けることで押し込む展開を少しずつ増やしていった。

 そして、32分に氣田がペナルティエリア内で家泉に倒されてPKを獲得する。

 2試合連続となったPKだったが、氣田が冷静に左隅に沈めて同点に追いつく。

 

 前半の仙台は、いわきのプレッシャーとサイドの崩しに対して苦慮する場面もあったが、ボール保持から少しずつ立て直して同点に追いつき、後半へと折り返すことができた。

 

後半

(1)サイドでの圧力を強めるいわき/ボール保持にさらに磨きをかける仙台

 いわきは後半から杉山に代わって有田を投入する。

 

 後半序盤は、両者ともに前半良かった部分を伸ばしていこうという意図を感じた。

 いわきはサイドからの突破を狙うために、前半よりもよりシンプルに背後を狙うことが多くなった。前半からキーマンとなっていた岩渕は、後半になると左サイドだけではなく右サイドにも関与していくようになる。後半序盤からいわきは両サイドからチャンスを作るもいずれも谷村のシュートは決まらない。

 

 一方の仙台は、いわきとは正反対にボール保持に磨きを掛けていた。熊本戦では封印していた後方からのビルドアップにもトライし始める。前述したようにいわきは人への意識が強いため、うまく引き出せるとアンカー脇のスペースが空いて、そこで中島が受けることで上手く前進することが増えていった。

 

 そして次にゲームを動かしたのは仙台だった。

 57分。いわきがカウンターに出ようとしたところでミスパスが仙台に渡ってトランジションが発生。奪った松崎は中島へ渡し、中島は背後へ抜け出した山田へフライングパス。山田のファーへのクロスに鎌田がダイビングヘッドで合わせて逆転に成功する。

 

 中島、山田、鎌田とシーズン序盤から前線でユニットを組むメンバーでの得点だった。加えて山田が受けたときに氣田が中央へ走り込んだことでファーへのスペースを作った。彼ら4人の目が揃ったことで生まれた得点と言えるだろう。なかなか攻撃の形が作れない現状で、彼らのような「目が揃いやすい」面々を堀監督はチョイスしているように感じている。

 堀監督はプレー強度に対して、しっかりハードルを設けている印象だが、彼らがここに来てそのハードルを越えられたというのは厳しい状況のなかでも耀兆しと言えるだろう。

 

(2)またもサイドからこじ開けたいわき/一進一退の攻防

 逆転に成功してもなお30分以上時間があるなかで、仙台のその後の戦いはどう進めていくかあやふやだったように感じる。

 いわきが同点においつくために圧力を増していった部分もあるが、仙台もボールを握るのか、シンプルに前線にボールを送って敵陣でプレーしたいのか、どう過ごしていくべきかを悩んでいたように感じている。

 

 66分にはいわきは吉澤に代わって永井が投入され、同じタイミングで仙台も松崎から郷家にスイッチしている。

 そして直後の68分にいわきが同点に追いつく。

 スローインの流れから谷村がうまく背後へ抜け出してクロスを送る。郷家と真瀬がカバーしようとするもののクリアし切れずに、最後は投入されたばかりの永井が押し込み同点に追いつく。

 いわきとしては再び狙いである背後への抜け出しからゴールを決めた。

 仙台としてはスローイン時に谷村をマークしていた氣田が見失って突破を許したのが残念だった。ただ、その後の氣田はその責任からかしっかりと守備でファイトしていたので、なんとか挽回しようする意思を感じた。

 

 その後は両者ともに一進一退の攻防が続いた。激しい球際バトルが各所で繰り広げられ、絶対に負けたくないという意思を両者から感じることができた。

 

 仙台は80分にエヴェルトンとホ・ヨンジュンを投入する。エヴェルトンがアンカーになったことで少しずつ仙台がルーズボールを自分たちのものにできるようになった。

 またホ・ヨンジュンも相手のマークに苛立ちながらも、体を張ったポストプレーでチャンスを演出していた。

 しかし欲を言えば郷家、ホ・ヨンジュンを投入したものの、クロッサーがおらず効果的なクロス攻撃ができなかったのは残念だった。中央から攻めるのもいいが、シンプルにサイドからクロスで攻めたかったところ。

 

 いわきも諦めずにカウンターからチャンスを伺おうする。しかし、仙台の両センターバックである小出と福森がこれを許さない。特に小出は何回も有田の突破を防ぎ、攻撃の芽を摘み取っていた。キャプテンの意地・矜持みたいなものを感じたプレーだった。

 

 アディショナルタイムは6分と長めだったが、両者ともに決め手を欠いた。仙台は最後のカードで齋藤学と菅田を投入し、勝点1でもオッケーというメッセージをピッチへ送り試合は終了する。

 同勝点で並ぶ両者の対戦は一歩も譲らず2-2の引き分けで終わった。

 

最後に・・・

 非常にタフで球際の激しいバトルが繰り広げられた試合は一歩も譲らないドロー決着となった。

 仙台としては一時は逆転に成功しただけに、ふわふわした時間帯が少し勿体なかった。しかし、フィジカルバトルが得意ないわきに対して最後まで集中力を切らさずに粘り強く戦えたことは、夏場までの戦いぶりから考えると悪くないと思う。現状のチーム力から考えれば、アウェイでしっかり勝点1を取れたことを自信とすべきだろう。

 

 残りは4試合となる。今節で完全にJ1への昇格が断たれただけに、残りの試合はしっかり残留を決めるとともに1つでも上の順位で終わるために取り組んでいきたい。

 2週間の中断期間を挟んで、次節もアウェイでブラウブリッツ秋田との対戦。いわき同様にハードワークし、より縦に速い攻撃を仕掛けてくる相手だけに間延びせずにコンパクトに戦えるかがポイントとなるだろう。1つでも多く勝利して今シーズンを終えるために、まずは2週間のトレーニングで上積みを図って秋田へと乗り込みたい!!

 

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