ヒグのサッカー分析ブログ

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【片鱗】明治安田生命J2第1節 FC町田ゼルビアvsベガルタ仙台

 さて、長いオフシーズンも明けていよいよ2023年シーズンの開幕です。

 今シーズンもよろしくお願いします。

 ということで、開幕節であるFC町田ゼルビア戦を振り返っていきます。

khigu-soccer.hatenablog.com

 開幕前に書いた記事です。こちらもよろしければ。

 

スタメン

 昨シーズンは序盤こそ好調だったものの、夏の大失速から最終的に7位でフィニッシュしたベガルタ仙台プレーオフに届かない悔しい結果に終わった。

 このオフはどこよりも早く動きはじめ、富樫以外の主力選手をプロテクトし、その上に即戦力となる選手を補強できた。またコーチには渋谷ヘッドコーチ、堀コーチをはじめ、伊藤監督の脇をしっかり固める陣容で昇格に向けた本気度を感じる編成となった。

 開幕戦は3-1-4-2を採用。林、菅田、小出、エヴェルトン、相良、ホ・ヨンジュンら新戦力6人が早速スタメンに起用された。ベンチにもオナイウと山田がメンバー入りを果たし、開幕戦勝利を目指す。

 

 一方、昨シーズンは15位と結果が振るわなかったFC町田ゼルビア。3ヶ年計画のラストイヤーだったポポビッチ監督に代わって、青森山田高校を長年率いた黒田剛新監督が就任。ヘッドコーチにはサガン鳥栖で監督を務めていた経験のある金明輝氏が就任した。

 新戦力も大量19人を迎え、特に前線にはミッチェル・デューク、エリキと強力なメンバーが加わった。また守備陣も強化し、池田やチャン・ミンギュ、カルロス・グティエレスらJ2での実績が十分な選手も加入し、初のJ1昇格に向けて大きく戦力アップを図った。

 そんな町田は4-2-3-1の布陣。池田、チャン・ミンギュ、下田、平河、髙橋大悟、エリキ、デュークと7人のメンバーが新加入ながらスタメンとなった。ベンチにはグティエレス、沼田、稲葉、荒木、高澤と5人の新戦力がメンバー入りとなった。

 

前半

(1)定跡通りにボールを保持していく町田

 開始直後の蹴り合いの時間帯が過ぎて、最初にボールを保持してゲームの主導権を握ろうとしたのは町田だった。

 町田のボール保持は4-3-3が基本。アンカー役の下田が2トップをピン止め、また両ウイングの平河とエリキも仙台の両ウイングバックをピン止めすることで、ビルドアップ隊のボール保持を安定させる役割を担った。

 町田は5-3-2で守る仙台に対して、定跡通り3センターの脇に両サイドバックを配置してボールを前進させていく。

 特にボールを奪ったときには素早く逆サイドへ展開し、ボールを受けたサイドバックやウイングがドリブルで運んでいくシーンはデザインされたプレーだった。

 特に完成度が高かったのは右サイドで、平河と奥山に加えて高江がサイドで数的優位を形成することで右サイドからのクロスの回数を増やしていったことは印象的だった。

 一方で左サイドはエリキ、翁長、高橋がうまく絡んでいくというよりもエリキの仕掛けに重きを置いていた印象で、そこは仙台も小出と真瀬がうまく対応したことで崩されるシーンはほとんどなかった。

 ただ、28分に菅田のクリアを奪ったエリキが単独突破でシュートまで持ち込んだシーン(バー直撃)を見るとやはり一発の怖さがあったのは確かだ。

 

 仙台は2トップから積極的にプレッシングに行くというよりかは、5-3-2である程度構えて守ることを優先していた。それは開幕戦でかつアウェイであったことや、町田の前線にデュークやエリキがおり、彼らに対して複数人で対応できるようにするためだったのかもしれない。

 

(2)垣間見えた仙台のボール保持と町田の積極果敢なプレッシング

 前述した通り、仙台は構える形で試合を進めていたため、ボールを奪う位置も低く、自陣でボールを奪うことがほとんどだった。

 よって攻撃を開始するときも自陣の低い位置やキーパーから始まるケースが多かった。

 仙台のボール保持はキーパー+3バックのビルドアップ隊から始まるが、特徴的なのが3バックの中央である菅田が左右バックよりも少し高い位置となり、アンカーのような立ち位置を取ることだ。その代わり左右バックは少し絞ってハーフスペースの入り口からボランチ脇に位置するインサイドハーフや降りてくるホ・ヨンジュンまたはサイドへとボールを展開させていく。これは、今シーズンの仙台がボールを前進させる1つのやりたいスタイルだと思う。

 前半序盤はこの立ち位置からインサイドハーフやホ・ヨンジュンにボールが収まって前進することができていた。

 しかし、町田も仙台のビルドアップ隊へ積極的にプレッシングを掛けていき、時間とスペースを奪っていく。また、前線のプレッシングに呼応してボランチサイドバックもしっかり人を捕まえて徐々に仙台の前進を許さなくなった。

 結果的に、町田が前から来ることで、中盤にスペースが生まれるものの、受け手の準備ができていない状態や捕まっている状態のときに縦パスを送るため、そこでノッキングしてしまい町田にカウンターを食らうシーンが増えていった。

 カウンターを食らっても、最後のところで体を張ってゴールを守れていたことは良かったが、時間の経過とともにボール保持が安定しない時間が長くなった。

 

 前半は、積極果敢にプレスを掛ける町田に対して仙台が苦しむ展開で折り返す。

 

後半

(1)左サイドの立ち位置と役割の微調整

 後半スタートから積極的に前へ出て行けたのは仙台だった。

 システムや配置に変更はなかったものの、中島と相良の立ち位置や役割が少し変わっていた。前半はエヴェルトン周りでスペースが空いてしまうこともあったが、後半は中島が横でサポートし、空洞化を防ぐ動きを見せる。

 また相良はボールを受けると縦ではなく横へドリブルすることを選択するようになり、相良から2トップへボールが渡ることで攻撃のスイッチが入った。

 仙台は、48分にセカンドボールを拾った流れからホ・ヨンジュンが決定機を迎え(ポープ・ウィリアムがセーブ)、それで得たコーナーにエヴェルトンが合わせるも惜しく左に逸れた。この試合、一番の決定機だった。

 

(2)ゲームを落ち着かせる高江と両監督の采配

 後半開始直後は仙台が勢いよくゲームに入った。しかし、町田は高江が最終ラインに落ちてボールを受けることで、ゲームを落ち着かせることに成功する。

 しかし、町田もボール保持時にパスミスが目立ち、主導権を握るまでには至らなかった。よって試合は拮抗した状態で進んでいく。

 

 そんな中でまず動いたのは伊藤監督だった。66分に中山とホ・ヨンジュンに代えて山田と遠藤を投入する。

 遠藤が入ったことで、仙台は中盤に厚みが生まれた。遠藤が町田の選手間でボールを出し入れすることで、中島と氣田のエリア(ボランチ脇)にスペースが生まれ、彼ら2人がシャドーとして前線へ飛び出すシーンが再び増えるようになった。

 町田の中盤を突破してペナルティエリアで待つ山田へボールを送ることができたが、集中力の高い町田の守備を前にシュートまで持ち込めなかった。

 

 遠藤が投入後、強度が落ちて中盤を支配され始めた町田は、高江とエリキに代えて稲葉と沼田を投入する。特に稲葉は、中盤の強度をもう一度上げる役割として、仙台の中央からの攻撃にしっかり対応したことで、ゴール前まで運ばれるシーンは少なくなっていった。

 

 その後、両チームともに攻撃のカードを切りながらも、失点しないように守備のオーガナイズを維持するような采配を行っていた印象だ。

 

 そして最後まで両チームともにゴールは生まれずスコアレスドロー

 得点はなかった開幕戦だったが強度の高い、見応え十分な試合だった。

 

最後に・・・

 両チームともに発展途上のチームだったが、それでも各所の攻防は見応えのある試合だった。

 

 仙台は、攻守ともにその片鱗を示すことはできたように感じる。

 守備では、最後まで集中して体を張ってゴールを守れていた。特に新加入の小出と菅田は両選手ともに守備時のポジショニングと対応が素晴らしく、小出はエリキを完封していた。また左ウイングバックで起用された相良も平河に対して粘り強く対峙していたのは印象的で、攻撃的なイメージしかなかったのでうれしい誤算となった。

 

 攻撃については、ボール保持で菅田を一列前に上げるなど面白い形が見えていた一方でプレッシングを受けたときに、早く縦パスを送る傾向があり、そこで奪われると一気にカウンターを食らってしまうので、受け手と出し手の関係性や受け手の準備や立ち位置は鍛錬と修正が必要になってきそうだ。

 また攻撃では奪ったボールを素早く縦に送る場面が多く、より縦に早く、相手の準備が整っていないうちに攻め切るというのも狙いっている印象だった。特に菅田は奪ったボールを前線に付けるのが上手かった。

 

 もちろん、この試合で見せた姿がすべてではないだろうし、これからさまざまなバリエーションが見えてくるかなと期待している。今シーズンは、そんな各試合での狙いを整理しながら書き進めていきたい。

 

 次節はホーム開幕戦である栃木SC戦。栃木も激しいプレッシングが特徴的なチームだと思うので、早速今節で課題となった部分が試されそう。そんな激しいプレッシングを掻い潜り、今シーズン初勝利をホームでゲットしたい!!

 

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