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【あの手、この手で】明治安田生命J2第2節 ベガルタ仙台vs栃木SC

 さて、今回は栃木SC戦を振り返ります。ホーム開幕戦。

↓前節のレビューはこちら

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スタメン

 ベガルタ仙台は、前節・FC町田ゼルビア戦でスコアレスドロー。町田の攻撃に対して体を張った粘り強い守備で対抗し、アウェイで勝点1をゲットした。開幕戦では守備については一定の手応えを感じたものの、攻撃は構築中といったところでチャンスも多くはなかった。

 ホームに戻ってきての今節は、そんな構築中の攻撃で堅い栃木の守備網を攻略できるかがポイントとなる試合となった。

 前節からは、氣田に代わってケガで開幕戦を欠場していた郷家が移籍後初スタメンとなった。それ以外は変更点なし。ベンチには松下も今シーズン初のメンバー入りとなった。

 

 一方の栃木SCはホームでのロアッソ熊本戦で、先制点を奪われたものの熊本に退場者が出たことで攻勢を強め、後半アディショナルタイムコーナーキックから追いつき勝点1をゲットした。

 昨シーズンから堅固な守備は変わらずだが、そこにどれだけ攻撃力がプラスされるかが今シーズンのカギとなりそうな栃木である。

 スタメンとベンチともに前節と全く同じ18人を時崎監督は選んだ。

 

前半

(1)前プレ・セカンドボール回収・サイドアタック

 仙台サポーターの声援を嫌がって時崎監督はエンドを変えて試合に挑んだ。

 

 試合開始から勢いよく試合に入ったのは栃木だった。

 栃木は、仙台の3バックに対して1トップ2シャドーが前線からプレスを仕掛ける。それに呼応してウイングバックも仙台のウイングバックにへ高い位置からプレスを掛けてビルドアップを阻害した。また中盤では右バックの福島が一列前に出て、中島へ迎撃することがあった。

 積極的に前からプレスを仕掛けて、仙台から時間とスペースを奪っていく。そして仙台にロングボールを蹴らせて、セカンドボールを回収することを狙っていた。

 ボールを回収した栃木は、根本や髙萩が前線でボールを収め、その間にウイングバックがサイドを駆け上がり、そこへ素早く展開して、手数を掛けずにサイドアタックを仕掛ける。実際に栃木のチャンスシーンのほとんどはサイドアタックからだった。

 しかしながらシュートの精彩を欠き、林を脅かすシーンを作ることはできなかった。

 

(2)出口を見出そうとする仙台

 前半の仙台は、栃木の積極果敢なプレッシングの前になかなか落ち着いてボールを保持することができなかった。

 それでも時間の経過とともに、少しずつボール保持からチャンスを作ろうと模索していく。

 この試合でのボール保持では、まず菅田が状況を見ながらエヴェルトンと同じ列まで上がって、栃木の前線3人のプレスに牽制を掛けながら、ビルドアップの出口となる。

 左サイドでは相良が低い位置取りをし、黒崎を釣り出す。その背後のスペースを中島やホ・ヨンジュンが活用しようとしていた。

 一方の右サイドは真瀬が高い位置を取り、大森をピン止め。真瀬の後方のスペースに郷家が顔を出して、ビルドアップ隊からボールを引き出す動きをしていた。

 ピッチ中央では、中山が時々栃木のボランチ間に降りてボールを受けようとする動きを見せていた。

 しかし、前述した通りで栃木は積極的にプレッシングを掛けることと、人への意識が強い迎撃守備を行うため、受け手がいい状態でボールを受けられなかった。よってパス回しにもテンポが生まれず、苦しい時間を過ごすことになる。

 時間の経過とともに、中島が独力でマーカーを剥がして前進できるケースも見られたが、組織として効果的にボールを運ぶことが困難な展開だった。

 また背後にランニングするホ・ヨンジュンも動き出しはいいものの、そこまで足の速いタイプではないため、ディフェンスラインの背後でボールを収められず、それも攻撃が停滞した理由の一つとなっていた。

 

 前半は、積極的にプレッシングを仕掛ける栃木に対して、ボール保持で落ち着いた状況を作れず苦しむ仙台だった。スコアレスで折り返す。

 

後半

(1)立ち位置の修正とマンツーマン守備への対応策

 栃木のプレッシングと迎撃守備に苦労した仙台。

 後半に入るに当たって仙台は、立ち位置を修正することで栃木のプレッシングを掻い潜れるようになる。

 後半の仙台が狙いとしていたのは、栃木のダブルボランチ周辺を攻略することだった。

 エヴェルトンの列まで上がっていた菅田はそのままステイして、代わりに郷家がエヴェルトン横に降りるようになる。

 加えて小出が右サイドバック化することで森を引き出し、菅田から郷家、エヴェルトンへのパスコースを作り出す。

 エヴェルトンと郷家でダブルボランチを釣り出して、彼ら2人に中島などがサポートに入ることでダブルボランチ周辺で数的優位を作って突破していく。

 栃木は人への意識が強いために、仙台はそれを逆利用した形だった。

 仙台は立ち位置を修正したことで、選手間の距離感が良くなり、栃木のプレッシングを苦にしないようになっていく。

 栃木のダブルボランチを突破できるようになり、徐々に栃木陣内でプレーする時間は増えた。しかしその先の3バックを攻略することができず、シュートまで持っていくシーンは少なかった。

 

(2)遠藤と山田の登場

 前半よりも窮屈にならずにボールを持てた仙台だが、栃木守備網を崩すまでには至らない。

 そこで65分に中島とホ・ヨンジュンに代えて遠藤と山田を投入する。

 2人を投入し、仙台はより中盤での支配力を上げていく。

 投入された山田はボランチ間に位置して、ダブルボランチの動きを制限しながら、起点を作る。遠藤は郷家とともにシャドーの位置に入り、ハーフスペースからチャンスメイクや仕掛けを行っていく。

 郷家が降りなくなった代わりに再び菅田が列を上げて、ビルドアップの出口となっていた。

 これで仙台は、より一層中盤での支配力を上げながら、栃木を自陣へと押し込んでいく。徐々にペナルティエリア内に侵入できる回数は増えていったものの、それでも中央が堅い栃木の守備を崩すまでには至らなかった。

 

 一方の栃木も前線に大島、宮崎を投入し、前線に勢いとパワーをもたらしたいところだったが、仙台の攻勢になかなかシュートチャンスが巡ってこなかった。

 

(3)4バックへの変更。そしてこじ開けたゴール。

 ボールを保持し攻め込む仙台。セカンドボールもしっかり3バックを中心に回収することで、自分たちのターンを継続し攻撃を続けられた。

 82分には郷家と相良に代えて松下とオナイウを投入する。この交代で仙台は4バックへシステムを変更する。

 テーマは変わらずダブルボランチ周辺を狙い撃ちすることだった。

 今度は、左サイドで山田がハーフスペースに立ち、右サイドでは真瀬がハーフスペースに、オナイウが大外に立ち位置を取っていた。自由を得た遠藤はフリーマンとしてあらゆるところに顔を出す。

 栃木も終盤になり、アウェイで勝点1狙いにシフトチェンジをして、5-4-1で守備ブロックを築くようになった。

 

 そして、仙台の攻撃がようやく実ったのは90分のことだった。

 エヴェルトンから左ハーフスペースで山田が受けて、中山、遠藤と繋いで最後は山田が決めて均衡を破った。

 狙い続けていたダブルボランチ周辺から中央へ侵入できたことで生まれたゴールだった。また、中山が降りたことで結果的にセンターバックの岡崎を引き出すことに成功し、栃木の守備に風穴を開けられたこともポイントだっただろう。

 

 最後は守備固めに蜂須賀を投入し、栃木のパワープレーを跳ね返した。

 ホーム開幕戦は苦しい試合展開だったが、選手交代や配置変更をうまく活用した仙台が土壇場でゴールを決めて今季初勝利をゲットした。

 

最後に・・・

 前半は苦しい試合展開だったが、後半は栃木のダブルボランチ周辺を狙いながら前進することで徐々に勝ち筋を見出せていった。

 また、後半は選手交代を交えながら2つ3つとあらゆる手段でゴールを目指せた。このことからも今シーズンの選手層の充実さと戦い方の幅が広がりつつあることを予感させる内容だった。

 手放しで称賛できる内容ではなかったが、それでも最後にゴールを奪って勝利できたことがなによりも自信に繋がった試合だったと思う。

 

 次節はアウェイで徳島ヴォルティスとの対戦。徳島はラバイン新監督を迎えてチームを構築中という印象があるが、柿谷や渡の復帰もあり、もちろん侮れない相手だ。

 まずは堅い守備をベースに戦い、付け入る隙を突いてゴールを奪いたい。アウェイではあるが、今シーズン初の連勝を目指して欲しい!!

 

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