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勝ちにこだわった5連戦ラストゲーム～明治安田生命J2第15節 V・ファーレン長崎vsベガルタ仙台～

Jリーグ2022

　さて、今回はV・ファーレン長崎戦を振り返ります。5連戦のラストゲーム。

 

スタメン

　ベガルタ仙台は、前節・東京ヴェルディ戦で1-3の敗戦。ボール保持するヴェルディに対して守備がハマらずに右サイドから3失点喫した格好となった。仕切り直しとなる今節は5連戦のラストゲームであるV・ファーレン長崎戦。富樫や氣田、原崎監督にとっては古巣戦となる。連敗しないためにもしっかり勝利して連戦を終えたい試合だ。

　今節は長崎よりレンタル移籍中の名倉が契約上出場できない。そんななかで前節から6人を入れ替えた。右サイドバックに真瀬、ダブルボランチにデサバトと中島、右サイドハーフに鎌田、富樫を頂点に1.5列目に遠藤という構成となった。ベンチには杉本、大曽根が久々のメンバー入りを果たした。

　一方のV・ファーレン長崎は、前節・いわてグルージャ盛岡に4-0の完勝。ターンオーバーを採用した試合で、出場した選手が結果を出した形となった。大型補強を敢行し、昇格候補と目されていたものの、ここまでは想像していた勝点と順位を取れていない。岩手戦の勝利をきっかけに上位に位置する仙台を叩くことで、一気に勢いを加速させたい一戦だ。

　今節は、仙台同様に6人のメンバーを入れ替えた。右サイドバックに奥井、センターバックには古巣対戦となる二見、ボランチにカイオ・セザール、右サイドハーフにクリスティアーノ、左サイドハーフに米田、2トップはハットトリックを達成した山崎とエジカル・ジュニオのコンビとなった。

 

前半

(1)長崎の可変式ボール保持

　この試合は、キックオフから長崎がボールを保持して仙台陣内へと侵入することが多かった。

　長崎は右サイドバックの奥井がセンターバックと並ぶ形で3枚を形成し、加藤聖とクリスティアーノがウイングバックの立ち位置になる3-4-3のシステムに可変する。

　長崎は基本として中央からよりもサイドからの前進を試み、キック精度の高いクリスティアーノや縦への突破からクロスを上げられる加藤聖の攻め上がりから仙台ゴールへと迫っていった。

　特に攻撃回数が多かったのは左サイドだった。米田が真瀬と平岡の間にポジショニングを取り、彼らをピン止めすることで、加藤聖がフリーとなる。そこへ二見がロングフィードを送り、一気に左サイドから攻撃していくことが多かった。

　一方で右サイドでは、山崎（もしくはエジカル・ジュニオ）がピン止めするわけではなく、縦へ抜ける動きをするため、ボールを受けたときにクリスティアーノは孤立気味になることが多く、そこへ内田や氣田のプレスバックによって攻撃が封じられ、機能している感じはなかった。

 

　仙台は、長崎のボール保持に対して4-4-2で構えるのだが、前節同様に2トップがボランチを守備基準点にするため、ビルドアップ隊3人（奥井、二見、江川）は時間とスペースが生まれ、前述したように二見からの展開を許すような形となってしまった。

　よって序盤から長崎がボールを保持する展開でゲームが進むことになる。

 

(2)徹底したボランチ封じの長崎と起点を変えた仙台

　また、長崎が主導権を握れたのは仙台のボール保持に対してしっかりと対応できていたからだった。

　この日の仙台は内田がセンターバックと並ぶ形でボール保持が行われ、ボランチと遠藤が中央に氣田と真瀬が幅を取り、鎌田はハーフスペースで、富樫が頂点という形だった。

　長崎が徹底していたのは、仙台のダブルボランチに対するケアだった。ビルドアップ隊3人へはそれほどプレスに行かないのだが、ボランチへボールが入ると2トップとダブルボランチがしっかり寄せることで前を向かせない。

　もし、遠藤が降りてきても2トップとダブルボランチがマークを受け渡すことで常に自由を与えない守備をしていた。

　また仙台がボランチ経由の前進をしなければロングボールを選択するので、そこは4バックが競り勝ってセカンドボールを回収することで、長崎のターンへと移行させていった。

 

　仙台としても起点となるボランチが掴まり苦しい時間が続くが、24分に変化を見せる。

　仙台は鎌田と遠藤の位置を変えて、遠藤を右サイドへポジションチェンジする。遠藤をサイドに配置することでボランチを経由せずともポイントを作れることが狙いだった。

　そして直後の25分にこのポジションチェンジが実を結ぶことになる。

　ポジションを移した遠藤を起点に右サイドから攻め入ると、その遠藤のクロスに内田が折り返し、最後は富樫がダイビングヘッドで押し込み先制点を奪う。

　ポジションチェンジ直後での得点は驚いたが、長崎が主導権を握っていた展開での先制点はとても大きかった。

 

　また、このポジションチェンジから守備でも変化が生まれ、富樫と鎌田を中心に長崎のビルドアップ隊3人へ前からプレッシングを開始するようになる。前からプレッシングを行うことで二見からのロングフィードが減り、時間の経過とともに守備が安定するようにもなった。

 

　前半は全体的には長崎が攻守において主導権を握った展開だったが、仙台がワンチャンスを生かしてリードした格好となった。

 

後半

(1)長崎の左サイドへの対応とボール保持時の立ち位置の変化

　前半は、多くの時間で長崎がボールを保持して仙台陣内へと攻め入ることが多かったが、仙台が遠藤のポジションチェンジを起点に先手を奪った展開となった。

 

　前半の内容を鑑みて、まず修正を施したのは仙台の方だった。

　ボール非保持においては、まず長崎の左サイドに対して守備基準点を明確にする。真瀬と平岡の間に立ち、ピン止めのような役割だった米田には真瀬が、加藤聖に対しては遠藤が見る形になった。よって江川は基本的に放置し、出し手よりも受け手を防ぐことで相手に時間とスペースを奪う形を取った。なお、江川へ遠藤がプレッシングを行うときは真瀬が加藤聖へ、平岡が米田へスライドして対応するようになっていた。

　また長崎の右サイドは、前半同様にクリスティアーノへ内田がプレッシングを行い、その背後をキム・テヒョンがカバーする約束事になっていた。氣田も奥井へのプレッシングとクリスティアーノへのプレスバックをしっかり行うことで長崎の右サイドを封じていった。

 

　ボール保持に関しては、前半は内田がセンターバックと同じ列になって3人のビルドアップ隊を形成していたが、後半はオリジナルポジションを維持するようになった。

　前半はボランチが掴まってしまい、前進することが難しかったが、後半はサイドハーフが長崎のボランチの位置に登場することで、彼らの動きを制限し、サイドバックからサイドハーフがボールを受けてボランチに下げることで、ボランチが前を向くことができるようになった。また状況に応じて、サイドバックから2トップへボールを当てることもあった。

　前半よりもボールを保持できる時間を多く作れたものの、長崎も縦パスに対してしっかり潰してきたこともあり、起点を作れずに前半同様に長崎のターンになることが多かった。

 

(2)ターゲットを明確にする両者

　仙台は55分に鎌田からカルドーゾへスイッチ。その後63分にはデサバトからフォギーニョへ交代する。

　1点を追いかける長崎は65分に澤田と加藤大。続く71分には植中と都倉を投入する。

　守備の時間が長い仙台は、カルドーゾを投入することで長いボールからでもカウンターからチャンスを作ろうという意図を見せる。実際に74分にはクリアボールに対して体をぶつけながらマイボールにするとサポートした富樫が回収して決定機を作り出している。

　一方の長崎はロングボールやクロスのターゲットとして都倉を投入。実際にサイド攻撃が多い長崎だったので、都倉が中央にいることは仙台にとっては脅威だった。

 

　しかし79分に仙台は3回目の交代を行い、若狭、吉野、皆川を投入する。ロングボールやクロスが多い長崎に対して、肉弾戦に強い若狭や吉野を投入することで対応する。また皆川も前線で収めることとセットプレーの守備での対応を期待されての投入となった。若狭や吉野が投入されたことで、長崎の長いボールを使った攻撃は抑えられたし、非常に効果的な交代となった。

 

そして試合はアディショナルタイムを迎え、90＋4分に仙台が突き放す。

　氣田がルーズボールを回収しカルドーゾへ。そしてカルドーゾの丁寧なスルーパスにスプリントしていた氣田が反応し、最後は切り返しから2人を交わして左足を振り抜き追加点を決めた。

　古巣対戦だった氣田は、ここまで目立ったプレーはなかったものの、攻守で献身的にチームを支え、連戦の疲労が溜まっていた試合終盤に力を振り絞って恩返し弾を決めた。そんなところに彼のこの試合に掛ける想いが見て取れた瞬間だった。

 

　そしてタイムアップ。仙台は2-0で勝利し、勝点を29に伸ばした。

 

最後に・・・

　終始、長崎にボールを保持され自分たちが思うような試合展開には持って行けなかったものの、少ないチャンスを生かし切り、勝ち切った。まさに勝ちにこだわった試合だった。

　5連戦の最後で疲労も溜まり、しかも酷暑の長崎でのゲームで非常に苦しい条件が揃った中だったが、そういう条件下で勝てたことはチームの自信につながると思う。

 

　これでゴールデンウイークの5連戦を4勝1敗で終えることができた。勝点12は上出来の数字だと思う。そして多くの選手を起用し、勝てたのは大きい。カルドーゾが得点を奪い、またケガで離脱していた吉野や遠藤らも結果を出し、出遅れていたデサバトも徐々にチームに馴染んで、期待の小畑もしっかり5連戦で定位置を確保したなど多くの収穫があった。

 

　今後もまだまだ気の抜けない試合は続いていく。次節は、ホームにツエーゲン金沢を迎える。こちらも長崎同様に守備のベースがしっかりしているだけに、この長崎戦での課題を金沢戦ではクリアしたい。また1週間でいい準備をして、次節こそ仙台らしい攻撃的なサッカーで勝点3を積み上げて欲しい！！

 

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