ヒグのサッカー分析ブログ

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目指しているスタイルでの勝利~明治安田生命J2第25節 ベガルタ仙台vsヴァンフォーレ甲府~

 本業が忙しく、ご無沙汰になっておりました。また更新を再開したいと思います。

 ということで、今回はヴァンフォーレ甲府戦を取り上げます。

↓前回対戦のレビューはこちら

 

khigu-soccer.hatenablog.com

 

 

スタメン

 6月に勝利のなかった仙台は、前節・FC町田ゼルビア戦で3-2の勝利。実に5試合ぶりの勝利となった。セットプレーとサイド攻撃から効率よく3ゴールを奪うものの、終盤の町田の攻勢に押されて1点差まで詰め寄られた内容だった。

 まだまだ守備面での課題がある中で、それを克服しながらもいかに今の攻撃力を保っていくかが今後のキーとなる。連戦となる今節はまず町田戦の反省を活かしたい試合となった。

 町田戦で遠藤が負傷交代し今節は欠場。代わりに皆川が2トップの一角に起用された。それ以外のメンバー変更はなし。ベンチには福森、鎌田、出場停止明けの富樫がメンバー入りしている。

 一方のヴァンフォーレ甲府は、前節・V・ファーレン長崎に0-1で敗戦。新監督を迎えた長崎に対して、チャンスは多く作れたものの決めきることができない内容だった。

 甲府は得点力に課題があり、リーグ戦に関しては複数得点をなかなか奪えていない状況である。なので、仙台に対して先手をとってより有利にゲームを進めていきたい試合となった。

 甲府は長崎戦から2人のメンバーを入れ替えた。右ウイングバックに関口、ワントップにウィリアン・リラを起用。ベンチには山本や飯島、パライバなどが名を連ねている。

 

前半

(1)「地上戦」と「空中戦」を上手く使い分けた前進

 この試合は、前半から仙台がボール保持においても、ボール非保持においても甲府に対して強度の高いプレーができたことで、終盤まで主導権を握れた試合となった。

 

 まずはボール保持からの攻撃においてどんな狙いがあったのかを見ていきたい。

 仙台のボール保持攻撃の前に甲府の守備について見ていくと、甲府は敵陣でのプレッシングと自陣での撤退守備に分かれていた。

 敵陣での甲府の振る舞いは、リラと鳥海が仙台のセンターバックへ圧力を掛けて、関口が一列上がって内田を、長谷川は真瀬を監視する。そしてダブルボランチは仙台のダブルボランチを捕まえに高い位置までポジションを取っていた。

 自陣では、5-4-1の守備ブロックを形成し、中央に人数を割く人海戦術で守備を行うのが甲府の守備パターンだった。

 

 そんな甲府に対して仙台は「地上戦」と「空中戦」を使い分けることで前進していく。

 地上戦では両サイドで狙いが異なっていた。左サイドでは内田が高い位置を取り関口をピン止め。内田が高い位置を取ることで鳥海の背後のスペース(ボランチ脇)が空くので、そこへ氣田が降りてきてキム・テヒョンからのボールを引き出すポジショニングをしていた。

 一方の右サイドでは真瀬が高い位置を取り、フォギーニョが横でサポート。加藤はハーフスペースからディフェンスライン背後へランニングしたり、甲府ボランチ脇で真瀬からボールを引き出す。

 地上戦では、うまく甲府のプレッシングを掻い潜って、甲府陣内へと侵入できても、そこから崩していくことは、甲府も人数を掛けておりなかなか苦労した部分であった。

 

 そして効果的だったのは、「空中戦」からの前進だった。

 仙台は甲府の前プレを掻い潜れなさそうになったら、甲府ディフェンスラインと駆け引きする2トップへロングボールを送る約束事となっていた。

 ロングボールに対して背後へ抜ける選手とセカンドボールを回収する選手の役割分担がハッキリして、かなりの確率でロングボールのセカンドボールを回収することに成功した。

 狙いなのか偶然なのかは分からないが、仙台は甲府左バックの大和を目掛けてロングボールを送り、セカンドボールを回収していた。弱冠18歳の大和を狙い撃ちにすることで、高い位置でボールを収めることは、もしかするとスカウティングのなかであったのかもしれない。

 仙台は結果的にこの空中戦からの前進をきっかけに2ゴールを奪うことに成功した。

 1点目はフリーキックを獲得したシーン。2点目は杉本のロングボールを回収し、擬似カウンターを作り出したことで奪えたゴールだった。

 仙台は、「地上戦」と「空中戦」を状況に応じて使い分けることで効果的にゴールを決めることができた。

 

(2)積極的にボールへアタックした仙台

 続いてボール非保持の局面についてだが、この試合の仙台は積極的にボールへアタックしていき、高い位置で奪い取ることができていた。

 

 甲府のボール保持攻撃を見ていくと、甲府はボール保持時に山田がアンカーになり、石川と長谷川がインサイドハーフになって3-1-4-2のような布陣となる。3バックからハーフスペースに立つインサイドハーフか大外のウイングバックがビルドアップの出口となり、仙台陣内へと押し込んでいく。

 そこから中央からのコンビネーションか、サイドからクロスを送る形で得点を狙った。特に仙台がサイドからの攻撃に弱いということもあって、クロスをファーに上げるなどサイド攻撃を重視しているように感じた。

 

 対する仙台は、前節の町田戦では酷暑ということや町田の攻撃力を考慮して、自陣にブロックを組んでから守備をスタートすることが多かった。しかしこの試合では、3バックに対して積極的にプレッシングを仕掛けるシーンが多く、高い位置からボールを引っ掛けてショートカウンターに繋げるシーンを作ることができた。

 甲府のビルドアップ隊へは2トップが浦上とアンカーの山田に対してマークを受け渡しながらプレッシングを掛け、須貝と大和へは両サイドハーフがプレッシングを掛ける。

 そこから後方のボランチサイドバック甲府ウイングバックインサイドハーフを捕まえることで、簡単に前進を許さなかった。

 結果的に甲府パスミスを誘発したり、奪いきることで甲府の攻撃を寸断することに成功した。

 

 前半は、攻守ともにアグレッシブに仕掛けていくことで主導権を握り、中島の直接フリーキックと中山のゴールで2点先取し、後半へと折り返す。

 

後半

(1)甲府のシステム変更にも慌てず対応した仙台

 2点を追いかける甲府は後半から宮崎と荒木を投入する。システムも2トップにして3-1-4-2に変更した。

 

 後半の甲府はゴールに奪いにいかなければならないので、より人数を掛けて仕掛けるようになる。

 特に右サイドでは右バックの須貝が高い位置を取るようになり、左利きの荒木が右サイドになったことで、荒木のカットインと須貝のインナーラップの合わせ技で仕掛けるようになる。

 

 対する仙台のスタンスは、後半も大きく変わることはなく、甲府のボール保持攻撃に対して積極的なプレッシングからボールを奪って、ショートカウンターを仕掛けていく。

 後半は前半よりも甲府が前への勢いが増したことで、甲府陣内にスペースが生まれて、2トップや氣田、加藤の両サイドハーフが前を向いて仕掛けていくシーンが増えた。

 また押し込んだ際には、甲府の中盤の枚数が1人減ったことで生まれたスペース(アンカー脇)にサイドハーフが潜って、サイドバックからボールを引き出すことで、バイタルエリアに侵入でき、そこからシュートまで持っていくシーンも増やすことができた。

 

(2)連戦を考慮した早めの交代

 2点リードを奪い、後半も主導権をしっかり握ってプレーできた仙台は、連戦を考慮して早めの交代カードを切っていく。

 66分には中島と中山に代えてデサバトと富樫を投入。71分には内田に代えて久々の登場となった福森を投入する。

 しかし、72分に途中投入したデサバトが右ふくらはぎを負傷し、アクシデントによって交代を余儀なくされる。ここでデサバトと氣田に代えて鎌田と名倉を投入する。

 

 名倉は短い出場時間ながら、疲弊し始めた甲府に対して的確にスペースを見つけて、攻撃のアクセントを加えた。特に相手の狭いスペースに潜り込んでボールを受け、そこからの展開が絶妙だった。

 そして79分には、そんな名倉がダメ押しとなる3ゴール目を決める。

 このゴールもフリーキックではあるが、ロングボールからのセカンドボールを回収したことがきっかけのゴールだった。

 

 その後も前節の反省を活かして守備で集中を切らさない仙台。アディショナルタイムには甲府のサイド攻撃が続くがセンターバックを中心に、しっかり跳ね返してゲームを締めた。

 

 仙台は3-0での勝利。クリーンシートは第18節ファジアーノ岡山戦以来。またクリーンシートでの勝利は第15節V・ファーレン長崎戦以来となった。

 

最後に・・・

 前半開始から終了のホイッスルまで、攻守のおいて強度の高いプレーを継続し、主導権を握っての勝利。今シーズンの仙台が目指すスタイルでの勝利だったと思う。

 また前節の反省を踏まえて、最後まで集中力を切らさずに守り切ったこともチームとして自信が付く。

 

 前々節から若狭、遠藤、デサバトとまた少し負傷離脱が増えてきたことは気がかりだが、代わりの選手がしっかり活躍して欲しいと思う。またガンバ大阪から佐藤瑶大の育成型期限付き移籍での獲得も発表された。佐藤の活躍にも期待したい。

 

 3連戦最終戦は、アウェイでのFC琉球戦。今節が涼しいなかでの試合だっただけに、次節は再び酷暑の中でのゲームが予想される。コンディション的には苦しいとは思うが、総力戦で3連勝を目指して戦って欲しい!!

 

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