ヒグのサッカー分析ブログ

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成長し続ける仙台~明治安田生命J2第17節 大宮アルディージャvsベガルタ仙台~

 さて、今回は大宮アルディージャ戦を振り返ります。

↓前節のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

 

スタメン

 ベガルタ仙台は、前節・ツエーゲン金沢に4-1で勝利し首位に浮上した。前節はダブルボランチがゴールをするなど多くの収穫があった試合だった。今節はここまで苦しい戦いを強いられている大宮アルディージャとの対戦。個々人のレベルが高いチームだけに、今節も隙を与えずに勝利したい一戦だ。

 仙台は金沢戦からスタメンとベンチを変えずにこの試合に挑んだ。

 一方の大宮アルディージャは、前述したように下位に沈んでいる。なんとか状況を打破しようと原博美氏をフットボール本部長に招聘したり、システムも4-4-2にし守備を再整備するなどを試みたことで、最近は4試合負けなしだった。しかし、ミッドウィークに行われたいわてグルージャ盛岡との延期分の試合に敗戦。連戦となる今節だが、ホームで落とせない一戦となった。

 大宮は岩手戦で南がアキレス腱断裂の大けがを負い長期離脱。代わりに志村がゴールマウスを守る。また茂木、小島、富山がスタメンに名を連ねている。

 

前半

(1)洗練された仙台のボール保持

 試合開始から大宮の4-4-2の守備ブロックに対して、仙台がボールを保持しながら前進を試みるという構図で進んでいった。

 大宮の守備は、前から積極的にプレスを掛けるのではなく、構えた状態から仙台のサイドバックにボールが渡ると大宮のサイドハーフがプレスのスイッチを入れる形となっていた。

 

 対する仙台のボール保持は、この1週間でより洗練されたものになっていた。

 前2試合で長崎、金沢という大宮と同じく4-4-2で守備ブロックを組む相手に、仙台はボランチに厳しくチェックされ、思うように前へ進めないことがあった。

 その反省もあり、この試合では大宮の守備ブロックに対してボランチの立ち位置を変えた。中島が2トップ間に立ち、2トップをピン止め。フォギーニョは相手2トップの右脇にポジショニングし、若狭、名倉、遠藤と四角形を作る。

 逆に、2トップの左脇には氣田が落ちてきてテヒョンからボールを引き出し、横幅は内田が、富樫は背後を取る動きで起点を作る役割を担った。

 また、最後方では小畑とセンターバック2人がビルドアップ隊になっていた。

 立ち位置を整理できたことで、仙台はスムーズに一列目を突破し、大宮陣内へと侵入していく。6分にはビルドアップの局面からいい距離感でのパス回しで大宮の一列目、二列目を突破し、最後は若狭の決定機に繋がった。

 このように大宮の守備ブロックに対して、いい立ち位置とテンポのよいポゼッションから列を越えていきチャンスを作って、主導権を握ることができた。

 

(2)慣れてくる大宮とバグを起こす遠藤

 ただ、時間の経過とともに大宮も仙台の配置とポゼッションに慣れていく。特に縦パスに対しては厳しくチェックすることが多く、仙台が遠藤や富樫に縦パスを入れたところに対してはセンターバックを中心に奪うことができていた。よって、大宮としてもそこまでやられてはいない印象だったと思う。

 また20分にはテヒョンの縦パスを奪った武田から一気にショートカウンターを発動し柴山のシュートへ繋げたシーンは大きなチャンスだった。

 

 よって仙台も少しずつ変化を加えていく。その主役になったのはこの日も遠藤だった。フリーマンである遠藤は序盤は相手ボランチ付近で起点となることが多かったが、20分過ぎになると下がってボールを受けるようになったり、他の選手(特にサイドハーフ)とポジションチェンジをしながら、ピッチを空いているスペースに顔を出すことで起点となり、仙台は落ち着く場所を確保することに成功する。

 序盤の展開から少しずつ奪いどころを設定できていた大宮としては遠藤の存在は非常に厄介で、結果ペースを握り切れない状態となった。

 

 そして、30分に仙台が先制点を奪う。

 内田のインナーラップに対してテヒョンがロングフィード。これが茂木と西村の事故を誘い、突破に成功。フリーの内田が上げたクロスを名倉が合わせて先制点を奪う。

 大宮の軽率なミスがあっての得点だが、それを作り出した内田のランニングとテヒョンのフィードを褒めるべき得点だった。

 続いて38分には、セットプレーから追加点を挙げる。

 遠藤の左コーナーキックを若狭がニアでフリックし、最後は富樫が合わせる。

 この試合のコーナーキックは、ゾーンで守る大宮の守備に対して徹底的にニアに走り込む若狭へ合わせる形がほとんどだった。スカウティングの成果もあって仙台は効率よく2点を決めることができた。

 

 前半はボール保持からリズムを作り、効率よく2得点を奪うことができた。仙台が2点リードで後半へと折り返す。

 

後半

(1)背後へのロングボールが多くなる仙台

 前半はボール保持の形からペースを奪うことができた仙台だが、後半になると相手背後へのロングボールが多くなった。

 以下は原崎監督の試合後の記者会見コメントである。

■ゲームコントロールの課題について、2点をリードして入った後半の立ち上がりに距離がうまく取れなかったりロングボールから失点したりしてばたついた時間がありましたが、どうやって立て直しましたか。

前半が終わって、選手同士の話などがあって、「相手の背後が意外と空いていたので、そこを少し突いていこう」という話をした中で、安易なロングボールが増えてしまいました。距離感の問題というよりは、そこを見る意識はよかったのですが、あまりスペースがないのにそこに入れていったり、簡単に背後を取りに行ったりするところがあったので、「もう少し下でいく」という話は、試合の中で選手にも話しました。途中からまた自分達のペースでできていた時間もあったので、先ほども言いましたようにゲームコントロールといったところはもっと成熟していかなければいけないと思っています。

引用元:2022明治安田生命J2 第17節 大宮アルディージャ

 このコメントにあるように、ハーフタイムで選手たちとの話し合いで決めたようで、このあたりはピッチで感じた選手たちの意見も含めながら戦っていることがうかがえる。

 後半序盤は、大宮の背後にロングボールを送ることでセカンドボールを回収したり、大宮ディフェンスがスローインに逃げたことで高い位置でのスローインを獲得するなど一定の成果は得られたが、コメントにもあったように安易なロングボールが増えたことで、全体が間延びし前半できていたコンパクトな陣形からのビルドアップが鳴りを潜めてしまった。

 

 結果的に自分たちでリズムを狂わしたところから仙台は失点を喫することとなる。

 フォギーニョの横パスをカットされ、小島から富山で一気にフィニッシュまで持っていき、1点差に詰め寄られてしまう。ここはダブルボランチがリスクを負って前に出たことで中央にぽっかりとスペースを与えてしまったのだが失点の原因となってしまった。

 

(2)華麗な崩しから大宮の心をへし折る3点目

 1点を返したことで息を吹き返した大宮。対する仙台は失点直後は少し受けに回る時間となった。

 今まであったら、大宮のハイプレスに対して受けに回る時間が長くなったと思うが、そうならないのが今年の仙台。

 大宮がボランチ含めて前からプレッシングを掛けるので、ボランチセンターバックの間が空いてくる。仙台はそこへボールを入れて起点を作るようになる。

 そして生まれたのが3点目だった。

 富樫が起点を作るとフォギーニョ⇒名倉と繋いで氣田へ展開。氣田はドリブルで相手を引き付けると最後はフォギーニョが2試合連続のゴールを決める。

 大宮の空けたスペースをうまく利用することで生まれた得点。一連の流れも見事だったし、大宮のペースになりかけたところを一気にへし折った仙台だった。

 

(3)選手交代による活性化を図る大宮と前線が起点を作る仙台

 大宮は失点直後に2トップを入れ替え河田と菊地を投入する。1点差に詰め寄り攻撃のギアを上げるための交代だったと思うが、投入前に突き放されてしまった。

 仙台も遠藤からカルドーゾへスイッチ。遠藤は連戦を考慮しての交代だったのかもしれない。

 

 大宮は69分にも泉澤を左サイドハーフに投入する。2トップが入れ替わり、泉澤が左サイドに入ったことで2トップが収めて泉澤へ展開し、左サイドから仕掛けていく形に大宮はなった。

 それに対して仙台は若狭が泉澤と対峙しスピードを殺し、名倉とともに簡単にクロスを上げさせないように対応していた。若狭は2018年に泉澤と東京ヴェルディでともにプレーしているので、特徴がよく分かっていたのかもしれない。

 

 仙台は72分に氣田と富樫に代わって加藤と皆川を投入する。大宮の攻撃へ対応しながら、ロングボールから2トップが起点を作るような形に変えていった。

 大宮は連戦ということもあり、時間の経過とともに次第にスタミナがなくなって足が止まり始まる。これで仙台が再びボールを持ち出すとダメ押しの4点目を決める。

 約1分半、20本以上のパスを繋ぎ、左へ展開。内田のクロスにカルドーゾが合わせて4点目を決める。

 大宮はダブルボランチを中心にプレスに行けなくなり、仙台に好き勝手ボールを回させてしまった。

 

 その後、内田と中島に代えて真瀬と吉野を投入。テヒョンを左サイドバックにする形を試す。

 大宮も最後の力を振り絞ってパワープレーに出ると90+3分に泉澤のアーリークロスセンターバックの西村が折り返して菊地が決める。

 直前に若狭が足首を痛めてスライドできなかったのが失点につながった。ここは吉野やフォギーニョが下がってくるように指示できていれば、防げたのかもしれない失点だった。

 

 そして試合終了。仙台は2試合連続の4得点で首位をキープした。

 

最後に・・・

 しっかり勝てたことはとても大きいし、何より5連戦や金沢戦を経て課題にしていたボール保持において、一定の収穫を得られたことが大きい。現状に満足せずにしっかり進化していこうとしている姿が見て取れた。

 しかし、失点シーンはミスや防げた部分もあったと思うので、そこは反省と課題かなと思う。またロングボールが増えた後半に関しては、ロングボールを蹴るところと地上で繋いでいくところの使い分けができればより良かった。そうやってできたことと課題とを出して、またその課題をクリアしていくことでさらに成長して行って欲しいと思う。

 

 次節はミッドウィーク開催。ホームにファジアーノ岡山を迎える。木山監督との再会だ。1シーズンながら仙台のために戦ってくれたことに感謝はしているが、恩返しはされたくない。連戦でハイプレスを仕掛けるチームとの対戦だが、さまざまな攻撃を使い分けて攻略し、4連勝を達成して欲しい!!

 

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