ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

【2021年簡易シーズンレビュー】ベガルタ仙台の降格について

 2021年シーズンのベガルタ仙台は、5勝13分20敗の勝点28の19位でフィニッシュ。これにより来シーズンのJ2降格となり、12年ぶりにカテゴリーを変えての戦いとなる。

 新型コロナウイルスの影響で降格がなかった昨シーズンも17位でフィニッシュしており、元々下馬評では降格候補筆頭であったが、それを覆すことができなかった。

 

 多くのメディア媒体やサポーター個人が書いているブログ等で、今回の降格について様々なことが書かれているので周知の通りだと思うが、もちろん降格した原因はピッチ内外に潜んでいる。

 今回の記事では、僭越ながら全38試合書かせていただいた身として、あくまで「ピッチ内」でのことについて執筆したいと思う。

 手倉森体制となり、どんなサッカーを目指していたのか、勝てない中での試行錯誤や苦悩などを時系列で追っていき、そして原崎体制となる来シーズンに向けての期待で締めさせていただきたい。

 

 

【第1節~第11節】甘くなかった現実【0勝3分7敗】

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 今シーズンを振り返る前に前年に指揮していたV・ファーレン長崎でのサッカーを見ていくと、よく私たちが手倉森監督にイメージしている「堅守速攻型」ではなく、「全員守備・全員攻撃」を掲げ、守備ブロックを形成し守れることはもちろんのこと、ボールを保持して攻めに出て行こうとするスタイルを打ち出していた。

 今シーズン、再び仙台の指揮を取るに当たり、どのようなスタイルを目指していくのか(「堅守速攻」なのか「全員守備・全員攻撃」なのか)は注目していた。

 

 初陣となったサンフレッチェ広島戦。蓋を開けてみれば、手倉森監督は長崎時代同様に「全員守備・全員攻撃」のスタイルをキャンプ中から仕込んでいた。

 広島戦では、4-4-2の守備ブロックを形成する時間がありながらも、自分たちがボールを保持して前進していくことにも挑戦していた。アピが後方からボールを前進していくことは印象的だった。

 この試合は、前半にシマオ・マテが退場になったことで守備に回る時間が多くなったが、終了間際に赤﨑が決めて勝点1をもぎ取った。

 

 しかし、その後は現実が甘くないことを思い知らされる。

 続くホーム開幕戦・川崎フロンターレ戦とサガン鳥栖戦で5失点で大敗する。両チームともに攻撃力のあるチームだが、守備強度があまりにも足りてないことをこの時点で手倉森監督は痛感することとなる。以降、仙台は守備の再構築へと舵を切ることになった。

 第4節・湘南ベルマーレ戦、第6節・FC東京戦(第5節・ガンバ大阪戦は延期)は5バックを採用し守備の矯正を図るものの、複数失点を喫し連敗。その後、ルヴァンカップ清水エスパルス戦を挟んで、第6節・ヴィッセル神戸戦、第7節・徳島ヴォルティス戦では、4バックに戻して守備ブロックに一定の手応えを感じるものの、セットプレーでの失点で敗れる。これで仙台は第2節から6連敗となってしまう。

 春先からセットプレー(特にコーナーキック)の失点が多く、これはシーズン終盤まで足を引っ張ることとなった。

 

 第9節・横浜F・マリノス戦でようやく今シーズン初めてのクリーンシートを達成。この試合からセンターバックが平岡と吉野のコンビになり、その後は彼らがセンターバックの主軸となった。

 開幕から守備の再構築を図り、試合を重ねるごとにボール非保持の強度と練度は向上したが、前述したようにセットプレーからの失点や被カウンターからの失点が重なり、第10節・横浜FC戦はドロー、第11節・北海道コンサドーレ札幌戦では逆転負けで敗れてしまう。

 

 開幕から目指していた「全員守備・全員攻撃」とはかけ離れ、シーズンがスタートしてから守備強度が足りないことが発覚。序盤から大きく内容を変えなければならなかったのは、残留をミッションとするチームにとっては最悪な船出だった。

 不幸中の幸いで、4月にある程度守備の再構築に目途が立ったことは良かったものの、それまでに10試合を要してしまった。

 

【第12節~第17節】5月攻勢【3勝2分2敗】

 4月下旬から5月にかけてはルヴァンカップを含めて13連戦が組み込まれていた。仙台はこの期間で試合を戦いながらチームレベルを向上することに成功する。

 第12節・柏レイソル戦でようやく今シーズン初勝利を挙げる。続く第13節・浦和レッズ戦では0-2で敗れるものの、連戦となった第20節(ACL前倒し分)・川崎フロンターレ戦では2度リードされたもののアディショナルタイムマルティノスが決めてアウェイで貴重な勝点1を獲得。

 第14節・アビスパ福岡戦では終盤にゴールを奪われ0-1で敗戦するが、第15節・大分トリニータ戦、第16節・名古屋グランパス戦で連勝を達成。第17節・セレッソ大阪戦ではリードされながらも追いつき勝点1を獲得した。

 

 5月になると開幕から再構築に取り組んだ守備をベースに、前からプレッシングに行くこともできるようになりゴールを奪えるようになった。

 また連戦を戦うなかで大卒ルーキーの真瀬や加藤が急成長。真瀬は完全に右サイドバックの定位置を獲得し、加藤はルヴァンカップを含めて3ゴールの活躍だった。

 加えて、マルティノスが活躍した時期も5月だった。最終的に7月に退団することになったマルティノスだが、起用法にはかなり苦しんだ。5月はここぞというところでゴールを奪う活躍を見せる一方で、気まぐれで守備を行うのでそこがきっかけでゴールを奪われることもあった。マルティノスのお陰で勝点を取れた試合もあれば、マルティノスがいたことで勝点を失った試合もあり、収支はプラスマイナスゼロといったところだった。

 さらに隔離期間を終えたフォギーニョとカルドーゾが合流したのもこの時期。フォギーニョは、さっそくボランチで出場すると気の利いたプレーでチームを支えた。その後はケガに苦しみ、安定したパフォーマンスができなかったのが残念だった。

 

 開幕から苦しいスタートになったものの、取り組んでいたものが徐々に結果として表れたのが5月だった。ここから6月は中断期間に入るのだが、なるべくだったら中断期間なしでこのまま試合をしたかった。

 

【第18節~第25節】越えられなかったハードル【5分3敗】

 6・7月は、ワールドカップ3次予選や東京オリンピックなどで中断期間が多く、試合も間隔が空いての開催となった。

 5月の勢いを持って挑んだ6月の2試合(第18節・鹿島アントラーズ戦、第19節・清水エスパルス戦)は1分1敗。7月の2試合(第21節・浦和レッズ戦、第22節・北海道コンサドーレ札幌戦)はどちらもドロー。8月は延期分だった第5節・ガンバ大阪戦では敗れ、第23節・セレッソ大阪戦、第24節・横浜FC戦はともにスコアレスドローとなった。

 

 5月以降の戦いで堅い守備ブロックに自信を得ていた仙台は、手堅くゲームを進め失点数を大幅に減少させることに成功する。この間で複数失点を喫したのは清水エスパルス戦のみ(3失点)でそれ以外は無失点もしくは最少失点に抑えらている。

 ここで問題になったのは得点力だった。守備の時間が長く、どうしても攻めに出られる回数が少ないものの、どの試合でもチャンスがそれになりあったことは確かだ。しかしチャンスを生かせなかったことで、勝点1を勝点3に変えることができなかった。

 象徴的なのは横浜FC戦で、長い時間押し込むことに成功したものの、最後まで横浜FCの牙城を崩すことができなかった。

 

 個人的にはこの夏場の戦いで結果を出せなかったことが、1つの分水嶺になったと考えている。ここで勝利という結果を残せればチームも自信が付き、9月以降に迎える残留争い直接対決にも繋げることができた。しかし、引き分けが続いたことでチームに自信が付きづらい状況となってしまった。

 結果的に第25節・横浜Fマリノス戦で5失点で大敗する。ここでチームが築いてきた自信が崩れ始めることとなった。

 

【第26節~第36節】失われていった自信と降格決定【2勝2分7敗】

 横浜Fマリノス戦の大敗直後に行われた第26節・FC東京戦、第27節・サガン鳥栖戦も連敗し、3連敗を喫する。夏場の戦いでゴールを奪えなかったことからFC東京戦あたりからは前線からのプレッシングを行うようになり、またディフェンスラインを高い位置に設定するようになった。この戦術変更で大きく成長したのがアピだった。身体能力の高さを生かしたプレーでラインを高くしたディフェンス陣で欠かせない存在になっていく。FC東京戦ではプロ初ゴールも奪った。

 

 9月以降は残留争いの渦中にいるチームとの対戦が続いた。第28節・ガンバ大阪戦では打ち合いを制し3-2で勝利。

 しかし続く第29節・清水エスパルス、第30節・徳島ヴォルティス戦では、通年の課題であるセットプレーでの失点もあり連敗。その後の第31節・柏レイソル戦では引き分けたものの、第32節・大分トリニータ戦では敗戦。この5連戦でわずかに1勝とこの時点でかなり厳しい状況となった。

 この時期は直接対決が続き、なるべくロースコアでゲームを進めたいという意思が強くなり、慎重にゲームを運ぶことが多かった。その結果、奪ったボールをすぐにクリアし、攻撃も消極的な選択が増え、リスクを負うことを完全に怖がってしまっていた。

 そして、そのようなゲームプランで戦って勝つことができればいいが、失点を繰り返し敗れる。改めて振り返るとチームとして完全に自信を失っている状態で、この時点で負のスパイラルにチームは陥っていた。

 

 それでも第33節・サンフレッチェ広島戦では2-0で勝利し一縷の望みを繋いだが、第34節・ヴィッセル神戸では2-4で敗戦。第35節・名古屋グランパス戦では1-1で引き分け、第36節・湘南ベルマーレ戦で0-2の敗戦。他会場の結果もあり、仙台のJ2降格が決定した。

 

 夏場に結果が出ない状態で秋以降の残留争い直接対決に挑んだ結果、慎重なゲーム運びをし、リスクを怖がり、ワンチャンスに掛ける戦い方に終始してしまった。そして結果が得らなかったことで、さらにチームは自信を失い、最終的に降格の憂き目にあってしまった。

 

【第37節~第38節】再起をかけて【1分1敗】

 湘南ベルマーレに敗れ、降格が決定した仙台は、第37節・アビスパ福岡戦を前にして手倉森監督の退任を発表。後任としてヘッドコーチを務めていた原崎政人氏が暫定監督して就任した。

 

 ラスト2試合は来シーズンに向けて、希望に繋がる試合ができるかというのがテーマになった。

 原崎監督は、1年間やってきた戦術をベースに選手たちにプラスアルファを付け加え、再起をかけて残り2戦へ挑んだ。

 第37節・アビスパ福岡戦では、慎重に戦ってきたチームが攻守において積極的に仕掛ける姿勢を見せた。先制されるものの、後半は氣田のゴールで今シーズン初の逆転に成功。しかし終盤に失点してしまい引き分けで終わる。しかし、今までの戦い方とは違い、積極的にチャレンジしていこうという姿勢が見れたゲームだった。

 最終節となった鹿島アントラーズ戦も敗れたはしたものの、終盤までチャンスを作り出すことができた。しかし、そこでゴールを奪えなかったのは、今シーズンの課題を象徴するようなゲームとも言えた試合だった。

 それでも再起を掛けた2試合で、チームが積極的にチャレンジする姿勢を見せたことは来シーズンに繋がる試合にできたと思う。

 最終的に仙台は、5勝13分20敗の勝点28の19位でシーズンを終え、来シーズンはJ2に舞台を変え、再びトップカテゴリーへと戻る戦いへと挑戦することとなった。

 

来シーズンへの期待など

 改めて振り返ると非常に厳しいシーズンだった。クラブが債務超過を抱えながら、残留を目指すという非常にハードルが高いミッションへの挑戦。お金に余裕がなく、残留を目指すには編成的にも厳しいものがあった。

 それでも希望が見えた時期(5月)はあったし、ここを乗り越えられれば残留が見えてくるという時期(引き分け続きだった夏場)もあっただけに、やはりそこを乗り越えられなかったのは悔しいし、それと同時に力不足を感じた1年だった。選手もスタッフも努力をしてきただけに報われないことは非常に悲しかった。

 

 来シーズンはJ2での戦いとなる。13年ぶりのJ2は自分たちが経験してきたJ2よりももっともっと過酷なリーグになっている。それ相応の覚悟が必要だ。

 前述した通りで今は債務超過解消という最大のミッションを抱えながらの戦いとなる。それによって人件費に充てられる金額も厳しくなることは想像に難くない。

 来シーズンは原崎監督が引き続き指揮を取ることを早々に発表。クバやアピ、西村といった主力は放出したものの、ここまで多くの選手を慰留ができており、また遠藤康中山仁斗ら実力者を獲得できている。年明けにもまた動きがあるだろう。

 基本的なベースは今シーズン戦ってきたものがベースになると思うので、多くの選手を慰留できたことは大きい。今シーズンはワールドカップの影響もあり、開幕が2月中旬といつもより早い。そんななかで、キャンプからしっかりとチーム作りを進められるかは重要だ。

 

 また仙台の大きな課題は、この2年間で負け続けたことによる「負け癖」が染み付いていることだ。ここを脱却することが昇格争いに加わるうえで最重要課題だと思っている。

 いかに勝利という結果にこだわり「勝ち癖」を付けられるか。原崎監督には戦術面だけではなく、「勝つこと」にこだわる姿勢を期待したい。

 

最後に・・・

 今シーズンも多くの方々に読んでいただきました。この場を借りて御礼申し上げます。ありがとうございました。

 今シーズンは本業が忙しいなかでもリーグ戦全38試合を執筆。チームは降格しましたが、個人的には達成感のある1年でした。これも日頃から読んでくださり、Twitterでコメントやリツイート、いいねを付けてくださる皆さんがいるからこそで、それがモチベーションになって完走することができました。

 

 数えてみれば来シーズンで9年目に突入となります。9年目にして初めてのJ2となり、試合数も多くなるので、どれくらいの試合を執筆できるか分かりませんが、できる限り執筆していければなと考えています。

 

 今シーズンもありがとうございました。来シーズンこそ、笑顔が絶えない1年になると願い結びとさせていただきます。それでは、良いお年を!