ヒグのサッカー分析ブログ

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ReStart~明治安田生命J1第37節 アビスパ福岡vsベガルタ仙台~

 さて、今回はアビスパ福岡戦を振り返ります。

↓前節のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

↓前回対戦のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

 

スタメン

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 前節・湘南ベルマーレに敗れたことでJ2降格が決定したベガルタ仙台。11月23日には手倉森監督の退任と原崎ヘッドコーチの監督就任というリリースがあった。残り2試合だが、来シーンに向けて少しでも希望を見出してシーズンを終えたいところだ。

 リスタートとなる今節は、4人のメンバーを入れ替えた。センターバックに平岡、ボランチには吉野が開幕戦以来の起用、左サイドハーフに氣田、2トップの一角にはカルドーゾが名を連ねた。なお、西村は出場停止。

 一方のアビスパ福岡は、今シーズンの目標である10位以内、勝点50の目標を達成。今シーズンは、組織的なサッカーで堅実に勝点を積んでいった。来シーズンの長谷部監督の続投も決まり、来シーズンに向けての準備が始まっている。

 ホーム最終戦となる福岡は、大幅にメンバーを入れ替えた。輪湖や石津、城後など今シーズン出場機会が少ない選手を起用した。

 

前半

(1)ボールを繋いでいく意思を見せる仙台

 湘南戦までの仙台は、残留争いの最中ということもあって慎重にゲームをスタートさせることがほとんどだった。

 自陣で奪ったボールは基本的には敵陣にクリアをしたり、ビルドアップに詰まったらクバからロングボールを送ったりなど、セーフティにゲームを進めていた。

 

 しかし降格が決まって失うものがない今節は、開始からボールを繋いでいく意思を見せた。

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 仙台は敵陣でボールを奪うと、クリアするのではなくボールを繋ぐことを選択。理想としては奪ったボールを2トップに縦パスを入れ、2トップのポストプレーを受けた2列目や3列目の選手がスピードを上げながら全体で前進していくことで、カウンターを発動させたり、敵陣に侵入して福岡を押し込む形を目指していた。

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 また、仙台はサイドから崩しにかかるシーンが多かったが、このときは大外レーンにいる選手がボールを持っているときにサイドハーフボランチがハーフスペースをランニングすること、逆サイドのサイドハーフがボールサイドまで寄ることで数的優位を形成することなどが行われた。

 加えて、今まではサイドをえぐってクロスを上げることが多かったが、今節はえぐらずにアーリークロスを上げることも増えた。

 以上のことは、原崎体制になり今節までにトレーニングでやってきたことだと思う。

 

 チャレンジしていく中で、どうしてもビルドアップの繋ぎや奪ったボールを最初に繋げるところで福岡に引っ掛かることは多かったが、今までになかったチャレンジのなかでの失敗だったので、個人的には悪いことではない思っていた。

 

(2)飲水タイム前後で変えた福岡のプレッシング方法

 試合序盤からインテンシティの高いプレッシングで仙台のボール保持に圧力を掛けていた福岡。実は飲水タイム前後でプレッシングの方法が変わっていた。

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 開始から飲水タイムまでの福岡は、ビルドアップ時にボランチが落ちる仙台に対して2トップとクルークスが1列前に出ることで同数を作り、ビルドアップ隊へとプレッシングを行っていた。

 もちろんこれでボールを奪えることができていたが、クルークスの背後で崇兆が受けることでプレッシングが剥がされることもあった。

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 なので飲水タイム後は4-4-2のままで、3枚のビルドアップ隊に対して2トップを当て、両サイドハーフは仙台のサイドバックを見ることで、仙台のビルドアップの出口を封鎖した。

 このことで仙台はビルドアップ隊がボールを持つことができるようになったが、出しどころが見つけられずに、迷っているところで福岡にボールを奪われるケースが増えた。

 先制点を得たセットプレーも福岡が高い位置でボールを奪ったことがきっかけだった。

 クルークスのゴールはワールドクラスのゴールだったが、強いて言えば氣田にはもう少し間合いを詰めて欲しかったところだ。

 

 仙台はトレーニングでやってきたことをトライするものの、インテンシティの高い福岡のプレッシングになかなか上手くいかなかった前半だった。

 1-0で後半へと折り返す。

 

後半

(1)シンプルにスペースを突く・準備していたセットプレーで逆転

 前半は、福岡のプレッシングになかなかペースが掴めなかった仙台。後半は、よりシンプルにスペースを突くことで形勢を逆転させた。

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 福岡のボール保持はサイドハーフが中に絞り、両サイドバックが高い位置を取る4-2-2-2だった。

 なので、福岡が押し込むと福岡陣内ではサイドバックの背後のスペースが空くような図式になる。

 仙台は自陣で守備ブロックを敷きながら奪ったら、シンプルに2トップをサイドバック裏へ走らせることでカウンターを発動させたり、2トップがドリブルで持ち上がることで前進する回数を増やせた。

 この日の富樫とカルドーゾの2トップは、両方とも推進力があり、特にカルドーゾは力強いドリブルで持ち上がることが得意なので、選手の特性と狙いがうまくハマる形になった。

 

 徐々に流れを掴めた仙台はセットプレーから逆転に成功する。

 両ゴールともに右コーナーキックからニアでカルドーゾがそらして、ファーで氣田が合わせた形だった。

 試合後の監督コメントでもあったが、狙い通りであり準備していた形だったようだ。

 見事にハマって今シーズン初の逆転に成功する。

 

(2)5バックにして逃げ切りを図るも逃げ切れず

 このまま試合が終われば今シーズン初の逆転勝利となる仙台は、80分に逃げ切りに図る。

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 平岡と関口に代わって福森と富田を投入。システムを3-4-2-1にして後方の守備人数を増やした。

 

 しかし、87分に同点ゴールを奪われることとなった。

 福岡の攻撃に対して人数を増やして、丁寧に対応できていたがクルークスのクロスにファンマ・デルガドが折り返すと最後は金森に押し込まれた。

 クルークスの左足を切っていたにも関わらず右足でいいボールが入り、ファンマ・デルガドアピアタウィアが空中戦で勝てなかった。福岡の外国籍選手の質にやられてしまった格好となった。

 

 その後、お互いに勝ち越しを目指してゴールを目指すも得点は動かず。

 2-2のドローで試合終了となった。

 

最後に・・・

 原崎監督の初陣となった試合。少ない時間のなかでトレーニングから狙いを持って取り組み、それに対して試合でトライしていこうという意思は見えたし、仕込んでいたセットプレーは結果を出した。またハーフタイムの修正も的確で逆襲することにも成功した。

 最後にどう試合を締めるかということは、この試合に限らないが課題が露呈した部分だろう。

 降格が決定し、監督交代という状況で気持ちに整理がついていないであろう状況だったが、チームはそれでも前を向き、勝利に向かって戦ってくれたことがなによりも嬉しかったし、それがこの試合の一番の収穫だった。

 

 残る試合は1試合。このチームでやれる最後の試合だ。最終節はホームで鹿島アントラーズを迎える。一旦J1と別れることになるが、また帰ってこれるように鹿島相手に意地を見せて欲しい。終わり良ければ総て良しではないが、最後まで勝利に向かって戦う姿を期待したい!!