ヒグのサッカー分析ブログ

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この完敗からなにを学ぶか~明治安田生命J2第38節 ファジアーノ岡山vsベガルタ仙台~

 さて、今回はファジアーノ岡山戦を振り返ります。ラスト5試合。

↓前節のレビューはこちら

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スタメン

 ベガルタ仙台は、前節・徳島ヴォルティス戦で遠藤が退場になる数的不利のなか一時は先制点を奪われるも真瀬のゴールで追いつきドローに持ち込んだ。徐々に伊藤監督の色が見えてきたなかで、今節は昇格を争うファジアーノ岡山との直接対決。ハイプレスと堅い守備が持ち味の岡山相手にその守備を越えてゴールを奪えるかがポイントとなった。

 遠藤が出場停止の仙台は氣田がスタメンに。それ以外は変更点なし。ベンチには福森、カルドーゾが久々に名を連ねている。

 一方のファジアーノ岡山は、前節・V・ファーレン長崎相手に3-0の快勝。2位・横浜FCとの勝点差も5と自動昇格圏内も目指せる位置に付けている。木山監督の下で初のJ1昇格への機運が高まっている状況だ。今節もホームの声援を受けて4連勝を達成し横浜FCを猛追したい一戦だ。

 岡山はミッチェル・デュークがオーストラリア代表に選ばれているため欠場。システムを3-4-2-1とし、ボランチに本山、左ウイングバックには佐野、シャドーにムークが並ぶ布陣となった。

 

前半

(1)サイドへと誘導する仙台と岡山のボール保持の変化

 開始から10分間は無秩序な時間帯のなかで、岡山が仙台に対して激しく圧力を掛けてシンプルにサイドのスペースを取る攻撃からチャンスを作っていく。

 よってスタートからペースを握れたのは岡山だった。仙台は、ここ2試合のように落ち着いてボールを持つことを許してもらえずに苦しい時間を過ごす。

 

 それでも時間の経過とともに岡山のプレースピードに慣れていくと、徐々に仙台も守備から仕掛けるシーンが増えていった。

 ゴールに直結するダイレクトプレーを得意とする岡山。対する仙台は、岡山のボールホルダーに対して厳しく寄せていくことで、岡山から時間とスペースを奪っていこうとする。

 岡山のボール保持は3-4-3。仙台も同じ3-4-3で嚙み合わせることで前線からのプレスを行った。

 ポイントになったのはシャドーの氣田と中島の守備で、彼らが岡山の左右バック(徳元と柳)に対してボランチへのパスコースを切りながらサイドへ誘導するようにプレッシングを掛ける。

 岡山が素直にウイングバックへパスを送ったら仙台のウイングバックが連動して縦スライドで対応しボールを刈り取る。刈り取れなくても連動した守備でプレスを掛けて岡山のミスを誘ってボールを奪う。

 岡山の前線に対しては3バックが同数で守備する。ボールホルダーへプレスが掛かっている状態が多かったので、ロングボールを蹴られても3バックがしっかり準備して対応できているシーンが多かった。

 よって仙台は守備から徐々にリズムを掴みだして、ショートカウンターなどからゴールへ迫るシーンを作っていく。

 

 岡山も17分すぎから仙台の守備に対して変化を見せる。仙台の守備基準点を狂わせるために、河野を下げて4人+ボランチの形でボール保持を変化させた。この変化によって特に左サイドでは徳元が積極的にオーバーラップから仕掛けるシーンが目立った。

 ただ、仙台としても守備基準点を変えなかったので、試合への影響は大きくなかった。

 

(2)安定しなかったボール保持とパスミスからの失点

 一方で仙台がボールを保持したときの局面は前述した通り、岡山が前線からの積極的なプレスもあり、苦しい状況が続いた。

 この試合の仙台も4-3-3のボール保持の形だったが、両サイドバックが内側でプレーする機会が多かった。

 岡山は3トップが前線からプレッシングを掛けるのだが、サイドバックが内側に入っているぶん、岡山の3人も二度追いできる距離にいるので、仙台は岡山のプレッシングをなかなか剥がすことができなかった。

 

 それでも27分すぎから松下がボールを受けるようになる。松下は二度追いしてくる岡山の3トップをテクニックと気合で剥がして展開していく。

 この試合は遠藤が出場停止だったこともあり、中盤でボールを落ち着かせられる存在が松下しかいなかったのは苦しかった。

 

 そんななかで仙台は自身のパスミスから岡山に先制点を与えてしまう。

 キム・テヒョンのパスをインターセプトされ、最後はムークに決められる。松下から展開できたシーンだったが、テヒョンのパススピードが遅く、また受け手の蜂須賀と氣田がポジションを入れ替えたタイミングだったことも影響した(入れ替えている最中だったので目がボールから離れていた)。

 ここまで我慢強く守備からゲームを作っていただけに、パスミスからの失点は非常に痛いものとなった。

 

 ということで、前半は岡山が1点リードで折り返す。

 

後半

(1)守備のバランスを崩し追加点を奪われる

 先制点を奪われた仙台は後半スタートから中島に代えて富樫を投入する。

 

 監督コメントを読むと富樫の投入の意図は、孤立していた中山を助けるためだった。

よって仙台は可変時に4-2-3-1のような形に変化する。ダブルボランチにしたのは、恐らくだが岡山のプレッシングに対して中盤でのパスコースを増やすことが狙いだったと思う。

 

 しかし、この交代の効果が出る間もなく仙台は追加点を許してしまう。

 仙台の左サイドを崩されると最後は河野のクロスにファーサイドの佐野が合わせてる。

 このシーンは、前半やれていた前線からの守備が機能しておらず、バイスから縦パスを送られたことで一気に岡山の攻撃のスピードが上がった。

 確かに攻めに出て行かなければならない展開だったが、攻めへの意識が強まったことで、前半できていた守備が出来なくなってしまったのは残念だった。慌てる展開ではなかったので、前半できていた守備を軸に試合を進めたかったところだ。

 

(2)強度が落ちない岡山のプレスと前線に人を割く仙台

 追加点を奪われた仙台は、59分に蜂須賀と若狭に代えて内田とカルドーゾを投入する。明確に4バックへシフトチェンジし、前線に人を割くことでゴールを目指す。

 4-4-2になった仙台はボランチ脇にサイドハーフが立ち位置を取って攻撃するようになる。65分には氣田と富樫がボランチ脇で起点を作って、最後は右サイドの真瀬のクロスからカルドーゾがシュートを放つが堀田の正面に行く。

 

 一方の岡山はそんな仙台に対して、ここまで積み重ねてきた強度が高く・そして落ちないプレッシングで仙台に好き勝手ペースを握らせない。

 特に前線からのプレッシングの強度が落ちないので仙台はいい状態でボールを保持することが少なかった。

 岡山は守備の強度を保つために、68分にハン・イグォン、79分には仙波と成瀬、89分に木村と宮崎を投入する。

 そしてアディショナルタイムに入った90+2分に岡山はダメ押しのゴールを決める。

 佐藤からボールを奪った仙波が一度は小畑にセーブされたボールを押し込み3点目を決める。

 

 これで試合終了。岡山の強度の高いプレーに苦しんだ仙台は完敗となった。

 

最後に・・・

 結果的に完敗というゲームだった。前半は前線からのプレッシングからリズムを掴んで悪くない試合運びだったが、パスミスからの失点から一気に崩れていった。そういう意味では自滅に近い敗戦とも言えるだろう。

 

 木山監督の下で一年間しっかり積み重ねてきた岡山と監督が変わったばかりでチームを再構築している仙台の差をまざまざと見せられる内容だった。それだけに、この試合から仙台は何を学んで次に繋げるかが大事になってくる。

 伊藤監督就任後で初めてハイプレスを実装するチームが岡山だったので、岡山のような時間とスペースを奪おうとするチームに対してどうボールを保持していくかが攻撃においては課題だろう。また守備においても先制点を奪われても、慌てずに我慢強く守備するところは継続していく必要があるだろう。

 多くの課題はあるが、日々のトレーニングからすり合わせしていき積み重ねていくしかない。

 

 残りリーグ戦は4試合となったが、最後まで諦めずに向上心を持って戦って欲しいと思う。次節はホームで東京ヴェルディとの試合。大事なのは負けたあと。この悔しい想いをユアスタの地で思いっきりぶつけて欲しい!!

 

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