ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

配置によるズレと対応の連続~明治安田生命J1第31節 柏レイソルvsベガルタ仙台~

 さて、今回は柏レイソル戦を振り返ります。

↓前節のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

↓前回対戦のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

 

スタメン

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 ベガルタ仙台は、前節・徳島ヴォルティスとの直接対決に敗れて残留圏との勝点差が5に広がった。現実は厳しく窮地に立たされいることは事実だ。そんな中でも残り8試合を全力で戦い、勝点を積み上げていくことで奇跡を起こしたい。今節の相手は柏レイソル。残留を争うチームだ。アウェイではあるが勝点3を是が非でももぎ取りたい一戦。

 今節は吉野が出場停止。代わりに福森がセンターバック。両サイドバックは真瀬と崇兆に代わった。ベンチには久しぶりに平岡が入った。

 一方の柏レイソルも、前節・ガンバ大阪戦に敗れて連敗中。降格圏との勝点差はあるものの決して気を緩めることはできない状況だ。降格圏にいる仙台を倒して残留へ大きく前進したい試合だ。

 今節は4-4-2を採用。両サイドハーフに神谷と戸嶋を起用し、2トップの一角には武藤が入った。瀬川はケガで欠場。細谷はベンチスタートとなった。

 

前半

(1)配置のズレを作る柏のボール保持

 お互いに4-4-2でスタートする試合となった。そんな中で開始のホイッスルからボール保持を試みたのは柏の方だった。

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 柏のボール保持の形は、3-4-2-1。特徴的なのは左サイドだった。椎橋が左バックへと落ちることを合図に三丸が高い位置を取り、左サイドハーフの戸嶋がボランチ、武藤が左シャドーへとポジションを変える。

 4-4-2で守備ブロックを組む仙台に対して、まずは配置でのズレを作り出すこと。楔のパスを出せる椎橋を左バック。ハーフスペースでさまざまなプレー選択がある武藤をシャドーに置くことで、左サイドからの攻撃をメインに行っていた。

 武藤は、左ハーフスペースから背後へのランニングでアピアタウィアを引き出し、そこからペナルティエリアへと侵入する狙いを持っていたことが印象的だった。

 

 仙台としては、柏が可変してきたことでどこの位置からプレッシングを掛けるかが曖昧になり、開始10分間は不安定な時間を過ごした。結果的に危ないシーンをいくつか作られたが、最後の精度に助けられ失点までには至らなかった。

 

(2)可変するデメリットを生かした仙台

 本音を言えば、決して良い入り方ができたわけではない仙台だったが、開始10分で先手を取ることに成功する。

 中央から松下→赤﨑と繋いで、最後は富樫が左足を振り抜き先制点を奪う。

 右サイドからのスローインの流れからだったが、松下と上手く中間ポジションで受けた赤﨑が巧みだった。赤﨑のポジショニングによって、エメルソン・サントスを引き出せたことも良かった。

 

 先制点を奪った後も基本的には柏がボールを保持する展開が続いたが、徐々に仙台も柏のやり方に慣れてくる。

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 特にボールを奪取した後に、柏が可変することによるデメリットを生かせた。

 可変すると、守備に切り替わったときにどうしてもポジションに戻るまでの時間が必要となる。仙台は柏のネガティブトランジションを上手く交わして、真瀬につなぐことで、柏のプレスから解放することに成功する。また、真瀬から背後へとランニングする加藤へスルーパスを送って、相手陣地深いところに運べていたことも良かった。

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 また柏のプレスを交わしてボール保持へと移行すると、柏の2トップのプレッシングが緩いことが露呈されるようになる。

 仙台は上原がセンターバック間に落ちてビルドアップを開始すると、赤﨑が柏のダブルボランチをピン止めしていることもあり、松下が比較的フリーでボールを受けられるようになる。

 なので、松下からの展開から仙台は攻撃を開始することができた。先制点のシーンもスローインからの流れだったが、松下はプレッシャーを受けずにフリーの状態で前を向くことができていた。

 前半終了間際の関口の決定機も、松下からの展開だった。ここを決めきれれば、さらに優位にゲームを進められただけに悔しいシーンとなった。

 

 前半は、序盤こそ柏のボール保持に対して不安定な入り方をしたが、先制点を奪い、柏の戦い方に慣れていったことで次第にゲームをコントロールできた内容だった。

 1点リードで折り返す。

 

後半

(1)松下を抑え出す柏の修正

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 ハーフタイムを挟んで両者ともに交代カードを切る。柏は戸嶋と武藤に代わって、ヒシャルジソンと細谷を投入。システムを4-2-3-1へ変更する。

 仙台は先制点を決めた富樫が負傷交代し、西村が投入される。

 

 柏は、1点を追う展開のなかで、攻守ともにアグレッシブな戦い方へと変更する。

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 まず守備では、前半よりも前から圧力を強くする。

 仙台の最終ラインが持ったとき、特にアピがボールを持ったときには細谷がサイドへと誘導するようにプレッシング。それに呼応して周りの選手が仙台の選手を捕まえてボールを奪いに行く。

 また一列前に上がったマテウス・サヴィオが松下をケアし出すことで、前半のような松下がフリーでボールを持つことがなくなった。この修正で柏は守備がハマり出すようになり、仙台陣内でのプレー時間を増やしていった。

 また攻撃でも、自陣からビルドアップするよりも早い段階で、細谷を目掛けて仙台陣内へとボールを入れることで、矢印を前に向けられるような選択が増えていった。

 

 仙台としては、前半機能していたエリアと選手を潰されたことで、かなり展開が変わってしまった。

 強いて言うなら、柏のプレッシングは仙台の右サイドへと誘導するように設計されていたので、崇兆が捨てられおり、フリーになっていた。なので、クバを経由して左へと展開するといったことができれば良かったが、足元が不安定なクバなので、どうしてもそのような形に持っていくことができなかったのは残念だった。

 

(2)システム変更による配置のズレを作った仙台と即座に対応した柏

 試合は61分に松下がハムストリングのトラブルで富田と交代。その後も柏が押し込み、仙台が耐え凌ぐ展開が続いていった。

 そんな中で動いたのは仙台だった。72分に関口と赤﨑を代えて平岡とカルドーゾを投入する。これで3-4-2-1へのシステムに変更した。

 狙いとしては、3バックにすることで配置にズレを作ることと、前線3枚で柏のビルドアップ隊3枚へプレッシングを掛けることで、ラインを押し上げてより前から奪いに行くことだったと思う。

 しかし、柏が仙台のシステム変更に即座に対応したことで、そのプランが崩れる格好となった。

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 その3分後には柏もシステムを3-1-4-2へと変更する。このことで3バックに対して前線3枚がプレスに来る仙台に対して、インサイドハーフがその背後でボールを引き出すことでプレスを回避するようになった。

 よって、狙いを外された仙台は中盤エリアでダブルボランチが広範囲を守る格好となり、少しバランスを崩した形での守備を取らざるを得なくなった。

 そして78分に柏が同点ゴールを決める。得点自体はセカンドボールを拾われた形で神谷のシュートを褒めるべきだが、このシーンでもボランチの脇が空いてしまい、守備のバランスが悪くなっている。柏としてはしてやったりなゴールだっただろう。

 

(3)リアリスティックな交代カードを切るネルシーニョ監督

 その後は一進一退の攻防が続く。仙台もカルドーゾが入ったことで前線にポイントができ、高い位置までボールを運ぶことができるものの柏の守備網を攻略できない。

 仙台は5枚目で蜂須賀を投入し、サイドからのクロスに掛ける。

 

 しかし、ネルシーニョ監督もリアリズムな采配で仙台の攻撃を潰していく。まずは川口を右ウイングバックに投入し蜂須賀を止める。そして神谷に代わってイッペイ・シノヅカを投入し、守備強度を保ちながら一発を狙う形へと変更する。

 勝点3はもちろん欲しいものの、降格圏のチームに3を与えない考え方にシフトチェンジしたネルシーニョ監督。まさにリアリスティックな采配だった。

 

 アディショナルタイム5分も最後まで柏の牙城を崩せなかった仙台。試合は1-1で終了した。

 

最後に・・・

 互いの狙いに対して配置のズレを作ったり、逆に合わせることで対応するなどお互いの駆け引きが面白かったゲームだった。そんな中でも即時に対応した柏の方が一枚上手だった印象はある。

 これが序盤のゲームだったら今後に活かせる試合だったが、終盤に差し掛かり勝点3が欲しい状況ではやはり勝点1では満足できない。

 

 1つの妄想として、カルドーゾだけを投入しシステム変更しない状態だったら、どうだったか。柏がどういう対応を見せたかは興味があるが、パラレルワールドパラレルワールドである。

 

 今節を終えて、残留圏の徳島ヴォルティスとは勝点6差。依然として厳しい状況であるが、目の前の試合を一戦一戦やっていくしか他ない。

 次節はアウェイで大分トリニータとの対戦。他会場も気になるところだが、やはり自分たちが勝たなければ意味がない。まずは目の前の相手に集中し、アウェイではあるが是が非でも勝点3をゲットしたい。いい準備をして、次こそは勝ち切る試合を期待したい!!