ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

圧倒された90分間~明治安田生命J1第25節 横浜F・マリノスvsベガルタ仙台~

 さて、今回は横浜F・マリノス戦を振り返ります。

↓前節のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

↓前回対戦のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

 

スタメン

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 ベガルタ仙台は、前節・横浜FCとの残留争い直接対決でスコアレスドロー。終始押し込む展開もこの試合でも決め手に欠き、勝利を挙げることができなかった。今節は、絶好調の横浜F・マリノスとの対戦。前節とは打って変わり攻撃的なチームとの対戦だけに、いかに長い時間を無失点で抑えられるかが勝負のポイントとなる。

 前節から3人のメンバー変更。ボランチに富田、右サイドハーフに中原、2トップの一角に移籍後初スタメンの富樫が名を連ねた。ベンチには松下が久々にメンバー入り。オッティと加藤はケガのため欠場となった。

 横浜・マリノスは、前節・大分トリニータに5得点の快勝。第15節・柏レイソル戦以降9勝2分と破竹の勢いで川崎フロンターレを追いかける。中断期間にはポステコグルー監督からケヴィン・マスカット監督に代わったが、ここまでいい流れを継続できている。この勢いを加速させ、首位・川崎との勝ち点差をより縮めたい一戦。
 マリノスも前節から2人の変更。チアゴ・マルチンスが欠場し、代わりに岩田。ボランチに喜田が入り、右ウイングにはエウベルが入った。ベンチにはティーラトンと渡辺が前節と代わって入っている。

 

前半

(1)多彩な攻撃パターンで崩しにかかるマリノス

  やはり、この試合のポイントとしてはボールを保持して押し込むマリノスに対して仙台が耐えに耐えて、無失点の時間を長くできるかである。願わくば前回対戦のような試合展開へ持ち込みたい仙台だった。

 しかし、やはり好調マリノス。前回対戦よりも多彩な攻撃パターンで崩しにかかった。

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 ミドルサードから4-4-2の守備ブロックを組む仙台に対して、マリノスは徹底的に仙台の2トップ脇を起点に攻撃を開始した。4-4-2で組む相手に対して教科書通りのスタート。

 右サイドでは、エウベルと小池で大外レーンとハーフスペースに立つ。基本的に大外で待つ選手へ出すと、そこからインナーラップする選手へスルーパスを送り背後を取る。

 もしくはインナーラップする選手が関口を引っ張り、空いた手前のスペースにマルコスや喜田といった中盤の選手が顔を出し、中央からの突破を図る。時には大外で受けたエウベルがそのままカットインしてマルコス・ジュニオールとのコンビネーションから突破していくこともあった。

 仙台のサイドハーフサイドバックへ付いていく傾向があるので、中央はボランチ2枚になり手薄となる。そこを上手く活用した形だ。

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 左サイドも同様に大外で待つ選手とハーフスペースで待つ選手、中央で待つ選手がいて、出し手の扇原からボールを受けると一気に崩しにかかる。

 右サイドと違うのは、人の掛け方。左サイドよりも人数を多く掛けていた。先制点のときが象徴的だが、右サイドバックの小池すら左サイドの攻撃に参画するほどだった。

 右サイドに対して左サイドでは数的優位を形成することで、仙台の守備を混乱させる狙いは間違いなくあっただろう。

 

 マリノスの攻撃で特筆すべきは、サイドで人数を掛けても決して渋滞しないこと。誰かが裏抜けすれば、誰かが落ちるといった連動性。大外にいる選手とハーフスペースにいる選手の整備。またマルコス・ジュニオールの存在も大きく、味方の動きを見ながらポジショニングを微調整する。4月に対戦したときよりも、より攻撃に柔軟性が生まれている印象で、仙台はマリノスの攻撃を受けることしかできなかった。

 

(2)速攻を仕掛けたかった仙台とそれを潰した仙台

 前半から防戦一方だった仙台。もちろんゲームプランのなかで、守備にウェイトを置くことはもちろんあったし、基本的にマリノスが前から来たときにはロングボールで逃げていたことからも、無理はしないという考えのもとプレーしていたと思う。

 それでも仙台は、攻めに出るときは速攻からチャンスを作り出したい狙いは見えた。

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 前に人数を掛けてくるマリノスに対してボールを奪ったときにはサイドハーフが相手ボランチ脇でボールを受け、前を向くことで前進しようと試みるシーンは見られた。

 また2トップも高いラインを保つマリノスに対して背後を取る動きを繰り返していた。

 

 しかし、マリノスの素早いネガティブトランジションの前になかなかボールを前に進めることができない。マリノスも前回対戦よりも切り替えの速度が上がり、簡単に前進することを許してくれなかった。

 また前を向いて前進しようとするとファウルで止めるプレーもあり、より狡猾なチームになっていた印象だ。

 

 ということで、ほとんどの時間をマリノスがボール保持し、仙台はそれに対して応戦するもチャンスをたくさん作られた。1失点で済んだのは不幸中の幸いだったと思う。

 マリノスが1点リードで折り返す。

 

後半

(1)ボールを繋ぎ出す仙台

 前半は、ロースコアのゲームプランのなかで失点してしまった。そんななかで仙台にとっては、相手の攻撃をしっかり守りながら、ゴールを目指していく必要が出てきた。

 前半は、基本的にプレッシングを掛けられたら、前線へロングボールを送ることが多かったが、後半はボールを繋ぎ出すようになる。

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 後半の仙台はボールを保持したときには、クバとセンターバックはボールを繋ぎ、マリノスのプレッシングをトリガーに、サイドへのフィードやパスで剥がす狙いを持って、ボールの前進を試みた。

 後半序盤は、ボールを受けたサイドバックサイドハーフの関係からサイドを突破し、クロスまで繋がるシーンを作ることができた。しかしペナルティエリアマリノスセンターバックに跳ね返されてしまう。

 それでも前半よりかは意図的にボールを前に運べるシーンが作れた。

 しかし、時間の経過とともに再びマリノスにボールを保持されて、押し込まれる展開へとゲームの流れが変わっていった。

 

(2)決定打だった2失点目。崩れていった仙台。

 仙台はボールを前進させることができたが、後半も変わらずマリノスが押し込む展開で試合が進む。

 先に動いたのがマリノス。60分に扇原と前田に代わって天野と水沼を投入する。そして直後に試合が動いた。

 スローインの流れだったが、仙台のサイドバックサイドハーフを押し込み、手薄になった中央へ侵入し、レオ・セアラが決めた。ゴール自体はスーパーだったが、前半から狙っていた手薄になった中央を利用した得点だった。これでマリノスはグッと勝利を手繰り寄せることができた。

 

 その後、攻めに出なければならない仙台は松下、氣田、カルドーゾを投入する。

 しかし、投入直後の67分にビルドアップでミスが起きて、マルコス・ジュニオールに決められ3失点目を食らう。

 その直後にもレオ・セアラに抜け出しを許して4失点目。70分までにゲームを決められてしまった。

 

 その後も一矢報おうと仙台は前線からプレッシングをしボールを奪おうとするが、連動性がないプレスになり、結局はマリノスに剥がされてしまう。

 右サイドでは氣田と真瀬で突破するシーンを作るも決めきることができず。

 

 アディショナルタイムには左サイドを崩され、最後は天野に決められ5失点目。

 ここまで手堅い守備を構築できていた仙台だったが、久々の大敗を喫した。

 

最後に・・・

 久々になす術がない試合だった。ここまで構築してきた守備だったが、その遥か上をマリノスに越されたような形だ。

 前回対戦よりも攻撃においてもトランジション局面においても数段グレードアップしており、ここまで勝利を積み重ね、川崎にあと一歩と迫っている理由もよくわかる内容だった。

 

 仙台としては圧倒され非常にショッキングな試合だったが、ここから残り13戦で同じようなレベルの攻撃陣を揃えているチームとの対戦はないので、引きずって欲しくない。もちろんちゃんと修正すべきところは修正すべきだが、まずはしっかり自分たちの守備には自信を持って手堅く戦うことを忘れないで欲しい。

 

  連戦となる次節はミッドウィークの試合。ホームでFC東京を迎える。まずは自分たちの戦いを忘れずにしぶとい試合運びを期待したい。そしてゴールを奪って、この長く暗いトンネルから脱出できるゲームとなって欲しい!!