ヒグのサッカー分析ブログ

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ゴールを狙って駆け抜けろ~明治安田生命J1第26節 ベガルタ仙台vsFC東京~

 さて、今回はFC東京戦を振り返ります。

↓前節のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

↓前回対戦のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

 

スタメン

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 前節は横浜F・マリノスに圧倒され、完敗したベガルタ仙台。久々の大量失点に加えてまたゴールを奪えなかった。連戦となる今節だが、ホームに戻っての試合でアグレッシブな姿勢でゴールを目指し10戦ぶりの勝利を目指す。

 今節はシステムを4-2-3-1に変更。ボランチは松下とフォギーニョのコンビ。両翼に関口と氣田。富樫のワントップでその下に上原が配置された。

 FC東京は、前節・ガンバ大阪スコアレスドロー。今シーズンは勝てない時期も経験しながらブラジル人トリオを生かした攻撃力で、勝点を稼いでいる印象だ。タレント豊富なチームだけに、連戦となる今節でどのような起用法と采配を長谷川監督が決断するかがポイントとなった。

 今節の東京はターンオーバーを採用。ブラジル人トリオではなく、日本人中心のスタメンとなった。中村拓海、青木、レアンドロはメンバー外。森重、東、ディエゴ・オリヴェイラアダイウトンはベンチからのスタート。代わりに鈴木、渡辺剛、三田、田川、渡邊凌磨、髙萩、永井がスタメンとなった。

 

前半

(1)前掛かりに行った仙台とその背後を取ったFC東京

 ここ最近の試合では、勝利もだがゴールも奪えていない仙台。基本的に自陣でブロックを敷き、守備にウェイトを置きながらロースコアで試合を進め、交代カードを切りながら仕掛けて1点を奪うゲームプランをベースに戦ってきた。

 しかし、ロースコアでゲームを進められても最終的にゴールを奪うことができずに引き分けや敗戦になってしまうというのが現状だ。

 

 この現状を打破するために、この試合では試合開始から積極的に前線からボールを奪いに行く姿勢が見られた。

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 富樫がスイッチャーとなり、前線からプレッシングを開始することは前半から多々見られたシーンだった。

 しかし、後方が連動できていない状況(間延びした状況)でもプレッシングを掛けることもあり、結果的に仙台のプレッシングをトリガーとされ、FC東京にプレッシングを交わされるシーンが多かった。

 FC東京の後方からの前進は基本的にオマリからスタートすることが多い。仙台の守備陣形を見ながら、ディフェンスの背後に永井や髙萩が抜け出してそこへロングボールを送ったり、サイドから経由して仙台陣内へと侵入していった。

 いつもよりも間延びした状態から守備をスタートすることが多くなった仙台は、どうしてもコンパクトさを保つことができずに、いつものような引き締まった守備ができなくなった。

 

 結果、17分に三田のコーナーキックからオマリに決められ先制点を奪われるが、これも髙萩が背後を取ったプレーから得たコーナーキックだった。

 

 仙台としては、行くときと行かないときを明確にしながら守備を行いたかったが、この試合では赤﨑と西村といういつものコンビではないこともあって、上手くコントロールができてなかった。前線だけではなく後方が前線をコントロールしていくことも必要だっただろう。

 

(2)人数を掛けて攻め込む仙台

 FC東京が序盤に先制点を奪ったことで、ボール非保持のときには4-4-2の守備ブロックで構えることが多く、仙台がボールを保持する時間もそれなりにあった。

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 この試合の仙台は、より人数を掛けて攻め込もうという意思が見て取れた。

 サイドハーフはハーフスペースに固定され、大外をサイドバックに任す。上原はトップ下からフリーマンのように動き、後方からボールを受けたり、ボランチの位置からボールを捌くなど広い範囲をカバーしていた。

 4-4-2で中央をしっかり固めるFC東京に対して仙台は高い位置を取ったサイドバックからボールを前進させていく。

 そこから、そのままサイド突破からクロスを上げたり、平行サポートするボランチへ渡し中央から崩しにかかる。この試合は上原と松下がいるので、彼らが前を向ける状況を作り出すことで、よりチャンス回数を増やそうと試みた。

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 時間の経過とともに、FC東京も仙台のやり方に対策するようになり、サイドにボールが渡ったときにスライドしてFC東京サイドハーフが仙台のボランチへのパスコースを消すことで、仙台の攻撃をサイド攻撃へと限定させ、より狭めていった。

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 それでも仙台がクロスを上げることができれば良いし、実際に両サイドからクロスを上げることができていた。

 この試合では、クロスに対してニアへ走り込む選手がおり、FC東京センターバックを引っ張ることができていたが、その背後へ走り込んでくる選手がおらず、いいクロスが上がっても合わせられることができなかった。

 仙台の攻撃パターンとしてサイド攻撃があるが、ペナルティエリアでの走り込み方が課題だった。そこでニアへ走る選手が出てきたことはポジティブなことだったが、肝心の中央ないしファーで詰める選手がいなかったことは悔やまれるところだった。

 

 前半はFC東京がセットプレーから先手を取り、1点リードで折り返す。

 

後半

(1)ハーフタイムで修正できたこと、できなかったこと

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  後半開始に当たって、仙台は中原と西村を投入し、富樫と西村の2トップへと変更する。

 

 ハーフタイムコメントで、手倉森監督は以上の2点について話をしている。

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 まず1つはクロスに対して「ポイント」に飛び込むこと。このポイントはニア、真ん中、ファーに置き換えて差し支えないと思う。前半でも書いたがニアへ飛び込む選手がいてもその後ろから飛び込む選手がいなかった。

 後半は2トップにしたことで、前線に厚みを持つことができ前半よりもクロスに対して飛び込む人数も増えたことで、可能性がある攻撃はできたかなと感じている。

 後半開始早々に西村のグラウンダーのクロスを関口が合わせたシーンがあったが、それ以外でもだいぶクロスに対して入っていく動きは前半より良くなった。

 

 もう1つは、切り替え時のカウンター対応。こちらは前半よりもFC東京にカウンターから決定機を与えることになってしまった。

 ボランチが松下と上原になり、より攻撃的なメンバーになったこともあり、中盤でフィルター役になれる選手がおらず、カウンターの機会を与えるようになってしまった。

 それでもFC東京が外してくれたり、クバのビッグセーブでなんとか失点は免れた。

 

 そんなこんなで、仙台は62分にセットプレーで追いつくことができた。

 上原のフリーキックアピアタウィアが合わせて同点。アピアタウィアは嬉しいプロ初ゴールとなったし、仙台としては久々のゴールを奪いゲームを振り出しに戻すことができた。

 

(2)交代カードによって流れを呼ぼうとする両者

 仙台が同点に追いついてからは、両者ともに交代カードによって流れを呼ぼうと動く。

 FC東京は、森重とアダイウトンを投入。森重に中盤を締めてもらい、アダイウトンの突破力で左サイドを制圧する算段。75分にはディエゴ・オリヴェイラを右サイドハーフに投入し、より得点力のある選手を前線に並べる。

 仙台は、疲れの見えた関口と富樫に代えて蜂須賀とカルドーゾを投入し、よりサイドからの攻撃を強調する。

 

 ゲームの流れとしては、やはり個の力で優るFC東京が次第に流れを引き寄せていった。徐々に仙台を押し込むと決定的なシーンを作り出していくが、残念そこはヤクブ・スウォビィク。この日も神がかり的なセーブでピンチを救う。

 しかし、89分にFC東京の右コーナーキックペナルティエリア内で福森がオマリを倒したとしてPKが与えられる。これをディエゴ・オリヴェイラが冷静に決めてFC東京が勝ち越しに成功した。

 

 残り少ない時間で仙台も同点を目指すが、FC東京のうまくゲームを殺されて万事休す。

 同点に追いつくことができたものの、最後の最後で耐えきれんかった仙台は敗戦。連敗となった。

 

最後に・・・

 慎重にリスクを最小限に留めるいつもの戦い方とは違い、ゴールを奪うために積極的に仕掛けた入りをした仙台だった。

 どうしても前プレしたときに、連動性に欠けてしまうと相手に剥がされ、手薄な守備で対応せざるを得なくなってしまう。オープンを承知な上での戦いで、いつも以上にクバの出番が増えたのは、自分たちの戦いに変化があったことの証拠だった。

 

 正直言って内容が良かったとは言えない。前述したとおり前プレも連動性に欠けていたし、後半はボールロストからカウンターを浴び、決定的なシーンを何度も作られた。

 しかし、まずはゴールを貪欲に目指そうという中で人数を掛けて攻めようとした意思は今までになかったし、覚悟が垣間見れた。

 また、このブログで再三書いてきたクロスの入り方、ポイントに飛び込むことに対して修正できてきたところが見えて良かった。あとはチャンス回数と質を高めることが必要だ。愚直にやるしかない。

 

 次節は明日、ホームでサガン鳥栖との対戦。3月に対戦したときはなす術もなく5失点して敗れている。そのリベンジの意味もあるが、まずはチャレンジャーとして貪欲に戦うことが大事だと思う。明日も仙台らしくハードワークして戦う姿を期待したい!!