ヒグのサッカー分析ブログ

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土壇場の同点劇~明治安田生命J1第10節 横浜FCvsベガルタ仙台~

 さて、今回は横浜FC戦を振り返ります。

↓前節のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

 

スタメン

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 ベガルタ仙台は、前節・横浜F・マリノス戦で今シーズン初のクリーンシートを達成。集中力の高い守備で攻撃力の高いマリノスを抑えた。今節は横浜連戦。順位が1つ下の横浜FCとの対戦。絶対に負けられない戦いだ。

 仙台は前節と同じ11人で挑む。サブには合流が遅れていたオッティがベンチ入りしている。

 横浜FCも仙台同様に今シーズン未勝利のチーム。下平監督を解任し、早川監督が立て直しを図る。就任初戦は、サガン鳥栖に対して0-3の敗戦。ホームに戻っての今節はサポーターの前で是が非でも勝ちたい一戦だ。

 横浜FCは4-4-2のシステム。センターバックに伊野波、ボランチに齋藤功佑、2トップに渡邉千真とジャーメインを起用した。

 

前半

(1)伊野波からの前進とボランチの役割分担、仙台の4-4-2ブロック

 この試合を見て、お互いに似た者同士だなという印象を受けた。

 4-4-2のソリッドな守備や、センターバックボランチから丁寧にビルドアップしていくところ、サイドからの突破を目指すなどなど。

 ただ、似た者同士のなかでも自分たちが得意な部分、一日の長がある部分は違ったなと感じる。まずはそんなところを書いていきたい。

 はじめに横浜FCから。

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 横浜FCは、下平監督になり、後方から丁寧に前進していくところに注力していたし、巧みだった記憶が昨年対戦時からある。この試合も横浜FCは、後方からの前進を試みる。

  横浜FCは基本的にはシステムを可変することなく、ビルドアップを行っていた。特徴的だったのは右サイド。伊野波がハーフスペースに登場し、バランスを取るために左サイドバックの袴田が内に絞るポジションを取る。

 右ハーフスペースに位置を取る伊野波と右サイドバックの前嶋、右サイドバックハーフの小川の3人の関係で、仙台の左サイドの攻略を図った。

 仙台は、例にもれず4-4-2で構える。2トップはいつも通りボランチを基準点とする。なので、伊野波がハーフスペースにいると、西村はプレスを掛けたいのだが距離が遠く掛けられない。行き過ぎるとボランチがフリーになるといった感じで、伊野波にプレスへ行けず、前進を許すシーンはいくつかあった。

 また横浜FCボランチもしっかりと役割分担がなされており、瀬古は調整役としてボールを引き出して、中盤の底から展開していく。齋藤は、どちらかというと前線に絡んでいくプレーで3人目として飛び出したり、数的優位を作る役割を担っていた。

 

 横浜FCがボールを前進させることに一日の長があるならば、仙台は守備組織で横浜FCよりも一日の長がある。

 前述通り、伊野波の前進を許すことはあったが、全体として4-4-2の守備組織が大きく崩れることはなく、時には前線からプレッシングでボールを奪い、ショートカウンターへ繋げられたシーンもあった。

  前節・横浜F・マリノス戦でクリーンシートを達成したことで、いくらか自信は付いていると思う。平岡と吉野のセンターバックコンビも連携が向上しており、ジャーメインの抜け出しの対応やラインコントロールも良かった。

 

(2)ボール保持時の狙いどころ、左サイドの関係性

 この試合では、以前の試合よりもボールを保持できる時間帯が長かった。その際の仙台の狙いどころと課題を見ていきたい。

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  この試合では、ボール保持のときにボランチの片方が落ちて、3枚+ボランチという形でビルドアップ隊を形成していた。

 横浜FCは守備の整理がまだ付いている感じはなく、前線からのプレッシングもなかったので比較的余裕を持って、ボールを持つことができた。

 仙台はそこからサイドへ展開、もしくは落ちる赤﨑を経由しながらボールを前進させていく。

 このときにサイドハーフはハーフスペースの位置から相手サイドバックの裏へランニングすることを1つの狙いとしていた。

 右サイドでは、うまく松尾と袴田を釣り出して、サイドバック裏を使えたシーンもあったが、左サイドでは課題が浮き彫りとなった。

 左サイドは崇兆がボールを受けたときに小川がプレスを掛ける。このときに氣田は狙い通り裏へランニングするが、崇兆は裏へ出せない。迷った崇兆はボールを奪われたり、下げてやり直したりを繰り返していた。

 確かに小川のプレスは上手かったが、ここは崇兆の状況を見て、氣田は受け方を変えたりや立ち位置を変化させるべきだし、崇兆も左足でサイドの裏へ配球する能力が必要になってくる。

 

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 また仙台は、もう1つの狙いとしてサイドチェンジからの攻撃もあった。特に左サイドから右サイドという展開は1つの狙いだった。

 象徴的だったのは前半ラストプレー。左サイドで複数人が絡み、横浜FCのブロックを左サイドに集めてから一気に真瀬へ展開。真瀬のクロスに赤﨑が合わせるもゴールとはならなかった。

 仙台としてはボールを握れる左サイド。真瀬や加藤といった突破力のある右サイドという編成の中で、真瀬や加藤に広いスペースを与えられることは狙いだったと思う。ここは継続して取り組んで精度を高めていきたいところだ。

 

(3)繰り返してしまったセットプレーでの失点

 ゲームは17分に動く。横浜FCの右コーナーキック。伊野波がニアでフリックして、袴田がプッシュして、横浜FCが先手を取った。

 またしてもセットプレーでの失点。確かに伊野波のフリックは上手かったが、ここでも肝心の中央を空けてしまっている。これは神戸戦の繰り返しだ。

 守備組織が向上しているだけに、こういう流れとは関係ないセットプレーでの失点を繰り返すのは、0ベースでゲームを進めたい仙台にとってはあまりにも痛い。早急に修正が必要だ。

 

 ただ横浜FCに先制点を許す展開だったが、ここまでの試合と比べてボールを保持できている。加えて高い位置でボールを奪えてもいるので、内容的には悲観することはなかったと思う。焦れずに後半に巻き返しを図る仙台だった。

 1点ビハインドで折り返す。

 

後半

(1)反撃の狼煙。諸刃のマルティノスと重戦車オッティの登場

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 仙台は後半から氣田→蜂須賀。機能していなかった左サイドをテコ入れする。

 

 後半の仙台は、積極的に前からプレッシャーを掛けて、相手に時間とスペースを与えない。おかげで後半の出だしからチャンスを作ることができた。

 そして早い段階で仙台は動く。両サイドハーフマルティノスと新戦力オッティを投入する。

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 マルティノスとオッティの登場で、サイドを制圧することに成功した仙台。この交代以降は横浜FCも完全に撤退するようになり、仙台のターンが繰り返されるようになった。

 彼ら2人を投入しても狙いはサイドからの攻勢。マルティノスもオッティも、サイドバックの裏を狙いとしながら、繰り返しランニングや仕掛けていくシーンが見られた。

 初出場となったオッティだが、いい意味で予想を裏切ってくれた。大外だけじゃなくてハーフスペースでも受けられるし、無理な仕掛けをせずに味方の上りを待つ判断もできる。そして何より強靭なフィジカルを活かしたドリブルは、非常に効果的。対峙した前嶋を苦労させていた。守備面では気になる部分もあったが、チームにとってアクセントとなる戦力になると思う。

 

 攻勢を強める仙台だったが、なかなかフィニッシュまでは持っていけない。赤﨑もサイドに流れたり、落ちたりしてペナルティエリアにいないので、西村しかクロスにいない。またいいクロスが上がらなかったりと苦しんだ。

 そして攻め疲れが見え始めた68分に横浜FCに2点目を与えてしまう。

 途中から左サイドハーフに移った小川のクロスから齋藤がダイビングヘッドで合わせて追加点を決める。このシーンの守備というよりは、手倉森監督もコメント通りで、押し込んでいても攻めきれなかった状況が問題だったと思う。シュートで終わらないとセカンドボールを拾われたところから回収されてカウンターを発動させてしまう。このシーンでもセカンドボールを拾われたところからサイドへ展開されたシーンだった。なので、やり切るところをやり切らないといけない。そこは今後の課題だろう。

 

(2)重い扉をこじ開けた西村。そして追いつく仙台

 2点目を奪われたことは非常に痛かった。しかし、残り20分以上ある中で1点返せれば分からない展開。横浜FCがその後も引いてくれたことで、仙台は変わらずサイドからの攻撃でチャンスを作り出そうと仕掛ける。

 そして、82分。蜂須賀の仕掛けからコーナーを獲得する。上原のキックに西村が合わせて1点を返す。

 このシーンの前、75分にも左コーナーから西村が合わせたシーンがあったが、それが伏線となる形だった。おそらく準備していた形でのゴールだったのだろう。

 チームとしては4試合ぶりのゴール。ここまで前線でハードワークし続けた西村が重い扉をこじ開けてくれた。

 1点を返せたことで、勢いを増すことができた仙台。一方の横浜FCは選手交代などで策を打つこともなく、とにかく撤退して跳ね返すことで精いっぱいという状況だった。

 

 そして90+1分。オッティが前嶋との競り合いで獲得したコーナーキックマルティノスのキックにニアで平岡がフリック。西村がプッシュするも南に弾かれ、そのこぼれを吉野が押し込んで追いつく。

 土壇場で追いついた仙台。ラストプレーでも蜂須賀のクロスに途中投入の皆川が合わせるも惜しくもゴール左へ逸れて試合終了。仙台が終了間際に追いつき勝点1をゲットした。

 

 最後に・・・

 2点先行されて苦しい展開だったが、諦めずに攻めたことでセットプレーから追いつくことができた。

すべては、前半の失点が自分たちを苦しくさせた。やはりセットプレーの守備は早急に改善が必要だろう。

 

 ただ、これまで守備にフォーカスしてきたなかで、ある程度のレベルまで上げることができ、次はどうやってゴールを奪うかというところで、西村がこじ開けてくれた意味はとても大きいと思う。次は流れの中でどうやってゴールを奪うのか。そこが勝つためのポイントになってくるだろう。

 もちろんこの試合も勝ちたかったが、少しずつだが確実にチームとしてできていることは増えているし、奪えてなかったゴールも奪えたことはポジティブに考えたいところだ。

 

  ミッドウィークにルヴァンカップサンフレッチェ広島戦を挟んで、次節はアウェイ・北海道コンサドーレ札幌戦となる。ピッチを広く使う相手に対して、しっかりとした守備組織で対抗し、確実にチャンスをものにしたいところだ。次節は高い集中力とアグレッシブな攻撃の姿勢に期待したい!!