さて、今回は横浜F・マリノス戦を振り返ります。
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スタメン
ベガルタ仙台は前節・柏レイソル戦で大量5失点での敗戦。ジョンヤや中原などボールを保持することをテーマとしたメンバーで、挑んだが上手くいかずにカウンターからの失点を重ねてしまった。
今節の相手は横浜F・マリノス。川崎同様にボールを持たれる時間が長いことが想像され、いかに耐えながらカウンターから得点を奪えるかがポイントの試合となった。
今節も大幅にメンバーを代えてきた。システムも4-2-3-1に変更。センターバックには流通経済大学在学中のアピアタウィア久が抜擢され、ボランチは椎橋と吉野のコンビ。ここまで逆足を置いていたウイングは、今回は順足に。ジャーメインが左サイドで西村が右サイドで起用された。トップ下には関口。また、サブにはケガから帰ってきた松下が復帰。攻撃の切り札として出番を待つ。
一方の横浜F・マリノスは、ここまで調子がなかなか上がってこない。前節の北海道コンサドーレ札幌にも敗戦し、これでリーグ戦4敗目を喫した。チアゴマルチンスや仲川輝人など昨年の優勝に大きく貢献したメンバーが離脱していることも原因だと思う。また、前節を持って遠藤渓太がドイツへと旅立った。ここが踏ん張りどころのマリノスである。
そんなマリノスのスタメン。キーパーには朴一圭が復帰。右サイドバックには小池龍太が入り、センターバックには松原健がコンバートされた。また、遠藤が抜けた左ウイングには仙頭啓矢が起用されている。
前半
(1)人数を掛けてマリノスの攻撃を阻む仙台
開始の笛とともにプレッシングを仕掛けた仙台。そのことからもこの試合の仙台は、決して引いて守るのではなく、前から行くぞ!という姿勢が見られた。
しかし、王者はいとも簡単に仙台の狙いを把握した。そしてマリノスの中盤がさっそく動いた。
この試合の仙台はダブルボランチを置く4-2-3-1。ボール非保持は4-4-2のような形になる。仙台は1トップから2トップにすることでよりセンターバックへの圧力を強められる配置にした。
マリノスは手始めに扇原が2トップ(長沢と関口)の間に立つことでピン止め。センターバックへのプレスを規制させる。
このことでセンターバックに時間とスペースが生まれ、マリノスは簡単に自分たちのターンへと変化させた。
この試合のマリノスは、徹底的にサイドアタックからの攻撃を目論んだ。タッチラインを踏む水沼、仙頭の両ウイング。彼らがサイドいっぱいに広がりボールを受けることで、仙台の4バックを広げる。
そして仙台のセンターバックとサイドバック間のスペースをマリノスのサイドバックや天野、エジガルが突いていく。このパターンが、マリノスの攻撃のメインだった。
対する仙台は、開始から15分までは、このランニングするマリノスの選手に付いていけなかった。というか付いていくべきか迷っていたように思える。特にサイドハーフはマークを見放すシーンが散見された。この理由に関しては後述することとしたい。
よって、序盤は危ないシーンとまでは行かなかったが、侵入されるケースが多く、失点してもおかしくなかったように感じる。
ただ15分を過ぎたあたりから、仙台のサイドハーフがマリノスのサイドバックへ付いていくようになる。この辺は選手間で話し合った結果なのかもしれない。付いていかないと危ないし。
ということで後ろ重心にはなってしまったが、人を掛けて守るようになった。
仙台は人を掴まえることを意識しながらも平岡がカバーリングできる位置で守ることでマリノスの攻撃を阻んだ。前半は、しっかり守っていた時間帯では危ないシーンはほぼなかった。
また、アピアタウィア久はエジガル絶対許さないマンとして、エジガルを徹底的にゴール前から追いやった。平岡にカバーを任せて、自分は前へとチャレンジしていく。恐れず積極的な姿勢で、J初出場を感じさせないプレーを披露していた。
(2)カウンターを発動できなかった仙台
ボールを保持する時間が短かった仙台が、唯一好機を作り出すとしたらカウンターでのチャンスだった。
しかし、前半はなかなかカウンターを発動できずにいた。
カウンターのパターンとして狙ったいたのが主に2つ。
1つは、奪ったボールを一旦中盤でワンクッション置いて、その時間を利用して駆け上がったサイドハーフへ出して、発動するパターン。
2つ目は、奪ったら高いラインのマリノスディフェンスラインの裏を長沢が走るというパターン。
仙台のメインパターンは1つ目だと思う。これはどの相手に対しても行っている。仙台の生命線はウイング(この試合だとサイドハーフ)。この両翼が高い位置を取れるかが重要となっている。なので、序盤は相手サイドバックにつられて下がることを躊躇ったのではないかと思う。攻め残りをなるべくしたかったのだと。しかし、現実的なことを考え、サイドハーフを下げるという選択に至った。
よって、サイドハーフが下がり、後ろ重心になったことで、1つ目のパターンは発動しづらかった。またトランジション時に中盤での球際バトルで負けたり、自らのパスミスで再びマリノスのターンになることが多かった。なんなら、このトランジションからマリノスに決定機を与えてしまっていたことがほとんどだった。
2つ目のパターンは、マリノスのハイラインを狙った形だが、この試合で復帰した朴にことごとくカバーされる羽目になった。ここは朴を褒めるべき。あれだけ高い位置を取ってカバーするだけではなく、落ち着いてマイボールにするのだから文句の付けようがない。おそらく仙台としては準備をしてきた形だろうが、朴の存在はそれを上回る結果となった。
前半は、マリノスの攻撃を人数を掛けて守る仙台という構図だった。スコアレスで折り返す。
後半
(1)合図は、「後ろ」と「横」
マリノスは仙頭に代わって大津が投入された。
前半は、マリノスの攻撃に対して後方で人数を割いて守備を行っていた。
しかし、もう一度前から行きたい仙台は、ハーフタイムに再び守備を修正して後半に挑んだ。
仙台は、後半に入ると積極的に前からプレッシングに行けるようになる。
それは仙台がプレッシングに行く「合図」を決めたからだと考える。
後半の仙台は、マリノスのビルドアップに対して前半同様に構えることからスタートする。マリノスがサイドバックへボールを展開させると仙台の両翼は縦のコースを切るようになる。縦を切り、マリノスがやり直すためにセンターバックへとボールを下げると、仙台はそれを合図にプレッシングを開始する。
特に印象的だったのが西村。西村はボールを下げさせると、そのままセンターバックへと二度追いをする。そして、2トップもそれに援護し、前プレを決行するのだ。
そして西村は二度追いするときに必ずサイドバックを消すようなコース取りでセンターバックへとプレッシングをする。このことで、マリノスのパスコースを限定し、より他の選手が狙いどころを絞りやすくできた。
また仙台はもう1つの「合図」があった。それはマリノスが横パスを選択したときだ。
マリノスがセンターバック間やキーパーからセンターバックへの横パスをしたときに、仙台の2トップは1人が扇原をマークし、もう1人がセンターバックへプレスに行くようになった。ここもハーフタイムで修正した部分だろう。
仙台は、前から無闇に行っていたというよりは、行けるとき、整っているときにプレッシングを掛けていた。なので、前半同様に後方で我慢する時間もあったが、前半よりも前から行く回数は格段に増やすことができた。
(2)シュートが増えた理由
また仙台は、前半よりもシュートを打てる回数を増やすことができた。これは前述したように前からプレッシングを掛けたこともあるが、70分過ぎるとマリノスもスタミナが落ちて、前半のような即時奪回ができなくなっていった。
よって、仙台はボールを奪っても中盤で落ち着けるようになり、カウンターやボール保持からマリノスゴールへと襲い掛かることができた。
この辺りはスコアレスでゲームを進められたことで、得られたものだろう。先制を許していたらもっと違う展開になっていたはずだ。
(3)持久戦を制するはずだったが・・・。
この試合を持久戦へと持ち込めた仙台にとって、ラスト10分にゲデスと松下という攻撃的なカードを切ったことは、非常に論理的であり、マリノス相手にゲームプラン通りに進められた証拠だと思う。
我慢に我慢を重ね、持久戦に持ち込み、ラスト10分で勝負する。そんな戦い方が、木山監督のなかにあったはずだ。
だからこそ、松下の出場後即ケガというのは、とても不運だった。そして、交代回数を使ったところでのケガだったこともあり、大きくゲームプランが狂う形となった。
松下負傷後に映った木山監督の苦い顔がとても印象的だった。
仙台は応急措置的に真瀬を右サイドバック、柳をボランチに、ゲデスを右サイドハーフで、松下をトップ下に配置した。
仙台は得点を狙いながらも、マリノスの攻撃を弾き返していく。
しかし、90+5分に、マルコスジュニオールに決められ、ついに決壊した。
失点シーンは、ティーラトンに対するゲデスの寄せの甘さ。急造ボランチだった椎橋と柳のコンビが中央のスペースを与えたことが失点に繋がってしまった。
マリノスに最後の最後に隙を突かれた。王者は見逃さない。
ということで、最後まで戦った仙台だったが、王者相手に0-1で敗戦。これで3連敗となった。
最後に・・・
不運だったと思う。松下の負傷さえなければ、もっとやれたはずだ。それだけに非常に悔しい。
今の仙台がマリノスに勝てる道筋としたら、この戦い方だったと思う。そういう意味では、木山監督の青写真はほとんど描かれたはずだ。
ハーフタイムでの修正はチャレンジングでありながらも、しっかり形となっていたし、見事だったと思う。特に西村、関口、長沢、ジャーメインの前プレ隊は頭を使いながら、しっかりピッチ上で表現できていた。
あとは、もっと守備で使っているエネルギーを攻撃に回したいのが本音。そのためにはボールを保持できる時間を増やす。形を作ることが求められる。そこはこれからの課題だろう。
これで3連敗となったが、下を向く必要はないと思う。まずは積み重ねていくこと。できることを増やすことが重要だ。日々是精進である。
次節はアウェイでヴィッセル神戸との対戦となる。またも手強い相手となるが、まずは自分たちができることを精一杯ピッチ上で表現してほしい!!