ヒグのサッカー分析ブログ

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圧倒された中で得たものはあったか?~明治安田生命J1第2節 ベガルタ仙台vs川崎フロンターレ~

 さて、今回は川崎フロンターレ戦を振り返ります。ホーム開幕戦。

↓前節のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

 

 

スタメン

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 ベガルタ仙台は、前節・サンフレッチェ広島戦では前半でシマオ・マテが退場となり、1人少なくかつ1点リードされる展開のなか、焦れない戦いをして終盤に追いついて勝点1をもぎ取った。アウェイで価値あるドローでの2021年シーズンのスタートとなった。

 ミッドウィークにルヴァンカップを挟み、今節を迎える。前節から2人の変更。センターバックの一角に吉野が入り、ボランチには大けがから帰ってきた富田が起用された。また前線では、登録の済んだ西村を起用。トップ下にマルティノス、右サイドハーフに関口という配置となった。

 一方、昨年王者の川崎フロンターレ。開幕から相変わらずの強さを見せつけ、開幕戦の横浜Fマリノス戦では2-0。ミッドウィークに開催されたセレッソ大阪戦では3-2で勝利し、連勝スタートとなっている。

 今節は連戦の3戦目ということもあり、ターンオーバーを採用。センターバックは山村と車屋のコンビ。中盤にルーキーの橘田。前線3人は長谷川、遠野、小林の3トップとなった。ベンチには三笘や家長、レアンドロ・ダミアンなど豪華メンバーをそろえている。

 

前半

(1)破壊された左サイド

 試合は、言わずもがな。川崎がボールを保持し、仙台が構える構図でゲーム開始から行われた。

 仙台は、4-4-2または4-4-1-1で構える。前線では、マルティノスが川崎のビルドアップ時にシミッチを監視したりしなかったりという光景が見て取れた。

 そんな振る舞いから仙台としては中央からの侵入を防ぎ、サイドでの局面から守備を行うという狙いが分かる。

 しかし、その見立ては甘かったように思う。川崎は川崎でしっかり仙台の守備を見て、攻めに出ていた。

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 川崎の攻撃は、なかなか図に表すのが難しい。それは再現性ある攻撃ではなく、個々人のアイデア・連携やユニットでの流動的な攻撃をメインとしているからだ。

 あえて、この試合で再現性のあった攻撃はと言われれば、川崎の右サイド、仙台の左サイドでの攻撃だろう。おそらく川崎は、仙台の左サイドはウィークポイントだとスカウティングしていた。

  基本的なポジショニングは、サイドバックの山根とウイングの遠野がサイドに張り出し、仙台のブロックを広げる。そしてインサイドハーフの田中が仙台のボランチの脇にポジショニング。広がった仙台のブロックに対して田中(もしくは橘田)が裏を取ったり、ライン間にポジショニングすることで山根からボールを引き出し、遠野や山根と連携して、ペナルティエリアの角から仙台の守備を崩しにかかった。

 仙台は、流動的に攻めてくる川崎に後手を取る形となり、侵入を許したり、サイドからフリーでクロスを上げさせてしまった。

 特に秋山は、目まぐるしい川崎の攻撃にボールウォッチャーとなり、自身が見るべき選手を見失ってしまうことが多々あった。もともとサイドバックが本職ではない秋山にとっては非常に苦しい経験だっただろう。この試合を糧に更なる守備の向上に努めて欲しいと思う。

 

 ということで前半だけで4失点した仙台だったが、そのうち3失点が左サイドを崩されたものだった。

 特に4点目は、前述したシーンを象徴する得点だった。得点では左インサイドハーフの橘田が侵入しているが、仙台のブロックを広げて、その生まれたエリアに侵入することで、川崎はペナルティエリアへの入り込むことに成功した。小林悠の動きも見事だった。

 

(2)息をさせてくれない川崎フロンターレ

  圧倒的な川崎ペースでゲームが進んだわけだが、圧倒的なボール保持攻撃だけではなく、圧倒的なプレッシングと切り替えスピードもこのゲームを掌握した理由の1つだ。

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 川崎は仙台がボールを保持し、ビルドアップを開始すると、前から順々に人を捕まえてパスコースを消す。このスピードが速い。まだまだボール保持が未熟な仙台は、川崎に捕まえられてしまい、ロングボールを前線に送らざるを得ない展開となった。 

 またボールを奪ってカウンターを発動させようものなら、川崎の素早い切り替えですぐさま寸断、即時奪回されてしまう。

 これは、もちろん昨年から川崎が持っていた特徴の1つだが、まだまだチームとして未成熟な仙台としては厳しい現実を突きつけらた。

 まさに「息ができない」。そんな状況の前半45分だった。しまいには関口が、前半に負傷交代してしまう。

 川崎に圧倒された前半。0-4で折り返す。

 

後半

(1)王者から1つでも多く得るために

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 前半だけ4失点を喫した仙台は、3枚替え。前半に負傷した関口に代わって崇兆。後半からは平岡、真瀬、松下が投入された。これで、ボランチには吉野、トップ下に上原、最前線にマルティノスという布陣となった。

 一方の川崎は連戦だったシミッチに代えて塚川を投入する。

 

 前半は、王者・川崎の前に手も足も出なかった仙台。後半は王者に対して、どれだけ歯向かっていけるかの戦いとなった。

 そんな後半の仙台は、前半と打って変わって積極的な姿勢を見せる。

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 人と配置を変えた仙台は、川崎のビルドアップ隊に対して、前からプレッシングを掛けていくようになる。マルティノスと上原は、アンカーの塚川を監視しながら、ボールホルダーにプレッシングを掛ける。それに呼応して後方も人を捕まえて高い位置でボールを奪い取ろうと仕掛けていった。

 このスタイルに変更したことで、仙台は高い位置でボールを奪えるようになり、相手のペナルティエリアまでボールを持っていけるシーンも作り出せるようになった。

 もちろん前半で大量リードした川崎のプレー強度が落ちたこともあるが、トップ下に入った上原が広範囲でボールに関わりリズムを作ったことや吉野と松下になったことで中盤が安定したこと。また、蜂須賀が左サイドバックになったことで守備の安定、加えて川崎のプレスを脱出できるようになったことで自分たちのターンを増やせることができた。

 そして、58分に1点返すことができた。

 上原のアーリークロスから氣田が折り返してマルティノスがシュート。それが相手に当たったこぼれを上原が押し込んだ。クロスで大きく振ったことによって生まれた得点。広島戦同様に、こぼれを押し込んだゴールだった。

 

(2)潮目が変わった家長と三笘の登場

 その後も、川崎の攻撃を抑えながら攻めに出る仙台だったが、72分に潮目が変わる。

 川崎は両ウイングの遠野と長谷川に代わって家長と三笘が投入される。

 プレー強度が落ちていたところに両ウイングが代わったことで、再び川崎がゲームの主導権を握る。家長のタメや三笘の一人カウンターで徐々に押し返されてしまう形となった。

 

 83分には仙台の左サイドで捕まりボールを奪われると、最後は一時的に右サイドバックとなっていた旗手に決められてリードを広げられてしまい、万事休す。

 最終スコアは1-5。仙台としては、王者の強さをまざまざと見せつけられた試合だった。

 

最後に・・・

 全体を通しても見れば、結果論に過ぎないかもしれないが、前半に無失点を終えることを意識しすぎて、受けに回りすぎてしまったかなと思う。

 結果として前半は川崎にボールを握る時間を増やしてしまったことで、考えさせる時間を与えてしまい、あのような衝撃を食らうことになってしまった。

 前半から勇気を持ってラインを高く設定し、前線からプレッシングを掛けていった方が、川崎は困ったかもしれないし、嫌だったかもしれない。そこは次回対戦までの課題だろう。

 

 ポジティブな要素を上げるとすれば、あれだけ前半やられた中で、メンタルを持ち直して後半は積極的な姿勢を見せれたこと。そしてその中で1点を奪えたことだと思う。昨年までならこういう展開で沈んで終わりだったかもしれないが、なんとかホームで歯向かうことができたことは、昨年失ったものを取り返そうという意思の表れだと思いたい。

 個人では上原や氣田が積極的な仕掛けを見せてくれた。新加入選手が早くも特徴を出していることは嬉しいし、今後も期待したい。

 

 次節はミッドウィーク。アウェイでのサガン鳥栖戦。開幕2連勝と好調な相手だが、先々のことを考えれば落とせない一戦。王者から得たものを活かして、次節は前半から積極的な姿勢を見せて欲しい!!